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2008年4月

2008年4月29日 (火)

Re:お早よう

>今日は最近よく見る花について。近頃京都の庭先によく咲いてて見るんだけど、その花の名前が分からない木に咲いてて花弁は白かピンクのハート型?手のひらサイズくらいなんだけど一気にわぁって咲いててすごく綺麗なんだけど分からなかって。見当ついたら教えてください

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八重桜と同じ頃かやや遅れて満開となる、白か薄紅の花が目立つ花木、とくれば、おそらくあれしかないでしょう。落葉庭木として人気の高い木ですね。
一つ一つの花は上を向いて咲いていますよね?花に近寄ってみて、四弁であれば間違いなくそれ。

実はこの木は米国原産でして、今から90年ほど前、日本政府が寄贈しワシントンのポトマック河畔に植えられたソメイヨシノの返礼として、米国政府から贈られたのが日本に入ってきた最初とされています。一応、北米大陸を代表する花木という役どころ。
英語名はDogwood、アメリカの古い漫画キャラクター、Bettyの旦那の名前でもある(てことは彼女の名前でもあるわけだ)。
確か、映画版のミュージカル「アニー」でも、大富豪の庭園での群舞シーンのバックに、これの花盛りの白花の大木が出てきます。

しかーし!

ポトマック河の桜並木が「日本からの最美なる贈り物」「米国の国の宝」「アメリカ全土の国民はこの花が咲いたことによって春が来たのを知る」とまで賞されてずっと大切にされ、そろそろ木としての寿命(ソメイヨシノはヤマザクラやシダレザクラと違って比較的短いんよ)が尽き始める年月を重ねた今となっても見事な花を咲かせ続けているのに比べ、日本にやってきたDogwoodの方は、必ずしも順調な経緯を辿ったわけではありません。(ワンセンテンス、長過ぎっ)

当時贈られた苗木は各地に植えられたようですが、その後の消息がよくわからない。東京では数本が辛うじて日比谷公園に残っていますが、これがまた超貧弱状態。僕も上京した頃わざわざ(!)見に行って愕然とした記憶があります。日本の文化政策の貧困さを物語るエピソードとしてよく引き合いに出される話。

日本原産のヤマボウシの近縁種であるところから、当初「アメリカヤマボウシ」と名付けられましたが、長たらしいためか、この名前はあまり一般化しませんでした。僕が子供の頃の植物図鑑にはこの名で載っていたものです。今でも植物学上の標準和名はこれかもしれません。

ちなみに、ヤマボウシの名前の由来は、日本産のものの果実の有り様が、比叡山などの僧兵(すなわち山法師)の頭巾を被った頭に似ていることからとされています。山帽子ぢゃないのだよ。あ、米国産の方の実はまーるで違うんですがね。

日本でこの木の人気が出るまでにはその後も長く待たなければならず、不遇の時代が続きました。僕の記憶によれば、80年代に入ってからだったように思いますが、いつの間にか新しい名前をつけられて園芸の世界に再登場すると、今度は高い人気を呼び、それこそ猫も杓子も状態でいろんなところに植えられるようになりました。今から四半世紀ほど前のことですかね。だから、ちょっと古めの民家なんかにはあまり植わってないはずです、よく観察してみて。
多分、そうなる前、70年代あたりの「猫杓子」だったキンモクセイ(中国原産、常緑樹)がそろそろ飽きられてきていたところに、これがワーッと取って替わったんだという気がしています。そう言やぁ博多の実家(75年新築)にもキンモクセイはあるけどこの木はないな。

個人的には、ありていに言えば、枝ぶりも花の姿も繊細さに欠ける感じで、あまり好きぢゃないんですがねー。桜の返礼にコレかよ、アメリカにはもっとまともな花木はなかったんかい!てな感じ(辛口御免)。

日本産のヤマボウシの方が、トータルではなんぼか美しい木だと思いますがね。こちらは孤高の画家田中一村の初期の代表作「白い花」の題材になった木でもあるな。これには基本的にピンクの花色がなかったんですが、最近では品種改良でそれも出てきているようですし。

好きになれない理由はもう一つ、これはこの木のせいばかりじゃないんだけど、たいてい、いやほとんど、街中で目にするこの木の生育状態が相当悪いからです。葉っぱにウドン粉病が出ていたり、花の形がおかしかったり、枝枯れが目立ったり、新枝の伸びが悪かったり。可哀想に思っちゃう。
どうやら、この木は表土が深いことを好むらしいんですね。根が深いわけ。これは、道路脇の並木や宅地造成による新築の民家やマンション、はたまた公園などに植える上で、結構なdisadvantageとして働くものと考えています。だって、そんなに深いところまで肥沃な土を入れるなんて、普通はしないからね。本来、植えるからにはそれなりに環境を整えてやらなければならない、というタイプの樹種なのではないかと思っています。でも、そんなことにはお構いなしの風情で、一杯植えられていますけどね。

ちなみに、サクラやモミジは対照的に浅根性の植物の代表。根が空気を好むのでしょう。だから、花見なんかで木の根元を踏み固めるのなんか、そこそこダメージありのはず。

さすがに、21世紀に入ってからはこの舶来の木の人気も落ち着いてきたようで、最近ではもっとあっさりしたライト感覚の、ヒメシャラやナツツバキ(いずれも日本産の落葉樹)あたりに王座を明け渡しつつあるように思われます。美的感覚として、「華やかに花らしい花」ではないものが好まれるようになってきた、とも言えるのかもしれないな。

それでもなお、ある有名温泉地のホテル(関東ですがね)の名前になったり、一青窈の歌のタイトルになったりと、この木の認知度は高いものがあります。

以上、長々と書いてきましたが、もうお判りでしょうか。

この木の名前、それは「花水木」です。


(持てる蘊蓄、全て炸裂!!)

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