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2010年3月13日 (土)

植物相と動物相(か?)、そして眠れる森の美女

> 双方の生息地の生物相Biota
> (すなわち植物相Floraと
> 動物相Faunaの総和)の豊かさには
> 相当な違いがあるわけだから、
> 単純比較はできないだろう。

-----

このことから発展というか脱線いたしますが・・・


「眠れる森の美女」という童話がありますね。「眠り姫」や「いばら姫」の別名でも知られています。

もともとはフランスのシャルル・ペローが欧州に伝わる古い民話を収めた童話集に入っているお話。ディズニーのアニメーション映画はあまりにも有名ですね。

この映画を特徴づけるのはなんと言ってもその画の圧倒的な美しさ。ディズニー作品の中でも群を抜いていると思う(「ファンタジア」の冒頭、くるみ割り人形の「こんぺいとうの踊り」のSequenceも凄いけど)。ディズニープロ最後の手描き作品です。
全編にわたって流れるのはチャイコフスキーの同名のバレエ音楽。ロマンティックな「王子様のキス」に至るストーリー(実はそんな筋書きはもともと白雪姫にもシンデレラにもないんだよな)を甘く流麗な旋律でいやが上にも盛り立てます。

で、本題。この映画には善き妖精が三人登場しますが、この名前がFlora、Fauna、Merryweatherなんだよね。初めの二人の名は単に韻を踏んでるのかと思ってたんだけど、実は「植物相」「動物相」「好天」を司る三妖精だったとは!森羅万象、地母神的な雰囲気か。英語圏じゃここでニヤリ( ̄ー ̄)なんていうものであるかもしれない。
それに、悪しき魔女Maleficentによる永遠の「死」の呪いを、復活ある「眠り」まで弱め癒すのが三人目のMerryweather。よくできている。
一方、MaleficentのMalは一般に「悪い」の意味だから(malice/悪意、malfunction/(臓器等の)機能不全・(機械等の)故障、mal de mer/船酔い(仏語)など)、いかにも悪玉らしい名前ということになるんでしょう。

さらに脱線するけれども、「眠れる森の美女」の「眠れる」は、「森」と「美女」のいずれにかかるのであろうか。
ディズニー映画の原題 "Sleeping Beauty" には「森」は入ってないよね。「眠れる森の美女」という邦題は、「Sleeping Beauty」を詩的想像を逞しうして訳したものだとばかり思ってました。

しかーし!ペローがこのお伽話を童話集に収めた時の題名が、"La Belle au Bois Dormant" なのだよ。ここで上記の問題への解答が明らかとなる。
Belleは女性形の定冠詞Laがつくことから女性名詞(当たり前か)、Boisは男性名詞(∵auはすなわちa leのこと、leは男性形の定冠詞)。で、形容詞Dormantは、語尾にeがつかないことから男性形であることが明らかなので、結局Boisを修飾していることになるんですね、文法上。
従って、眠っているのは美女ではなく森なのであり、「眠りの森の美女」なる別名はこの見地に立ったものなんでせう。

閑話休題(もともと閑話じゃねえかよ)。
ペロー版では善き妖精は十二人になっている。ディズニーは映像の中でキャラ立ちさせるために絞り込んだんですね、さすが。

一方、あの(!)エロール・ル・カインがこのお話を絵本にしていて(1975)、こちらにも十二人描き込まれています。

この表紙絵がなんといっても最高。

ちなみにこの「いばらひめ」は「グリム童話より」と銘打たれていて、英語題は "Thorn Rose"。これはきっとドイツのグリム兄弟がその童話集で用いた原題 "Dornroschen"(2番目の「o」にはアクセント記号がつきますが)の訳語なんでしょう。

十二人と言えば、グリム童話には「踊る十二人のお姫さま」というお話もあって、ル・カインはこれも絵本にしています。姫君たちの夜な夜なの夜遊びの秘密を暴くっちゅう話やね。
確かアンデルセン童話「白鳥の王子」(グリム童話の「白鳥の王子」とは全く異なる;いずれもバレエ「白鳥の湖」とは関係なし!)も、姫君と十一人の兄王子たち、都合十二人のお話じゃなかったっけ。やっぱ「12」が好きなんですね、欧州文化。
アンデルセンに(グリムにも)ある「えんどう豆の上に寝たお姫さま」も、十二枚のマットレスが出てくると思ってたけど、これは二十枚だった・・・

最後に小ネタを一つ。ディズニーアニメでは美女すなわち姫の名はオーロラ/Aurora(極光というより暁光とか曙光のことでしょう)となっている。だけど、実はこれはペローの童話で姫と王子の間に後日生まれる娘の名前から来ているらしい。ペローの話には続きがまだあって、人喰いの姑なんかも登場するのだ。因みにペロー版だと姫には名前がないんですよ。

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