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2010年11月12日 (金)

似て非なるもの - シロウオ vs シラウオ

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博多の春先の風物詩、シロウオ漁で知られる室見川が博多湾に注ぎ込むあたり。
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昔からちょっと知識おたくなとこがありまして。
特に、似てるけどちょっと違うなんてとこには惹かれちゃう。ぱっと見のいいネタだったりするとついつい食い付いてしまうワタシ。むろん、生きていく上では特段必要のない知識どもに限られてますが(ばっさり)。

 

で、いきなりですがシロウオとシラウオ。違う種だということなら知ってるけど、具体的にどっちがどうだということは覚えてない・・・。で、調べてみました。

 

シロウオはスズキ目ハゼ科。一方のシラウオはちょいと複雑で、キュウリウオ目(1994年にサケ目から独立)キュウリウオ科(2006年にシラウオ科から統合)。「目/order」というのは「科/family」の一つ上の分類です。

 

ハゼ科については説明するまでもないだろう。

 

じゃあ、キュウリウオって一体何でしょう?北半休冷水域に棲む魚で、キュウリの香りがするらしい。キュウリウオ科の代表選手といえばシシャモとアユ。

 

一般に「子持ちシシャモ」として出回ってるのは別属のカラフトシシャモという種で、ノルウェー、アイスランド、カナダあたりからの輸入。
本物のシシャモはわずかに北海道で獲れるのみでほとんど市場には出てこない。でもこちらの方がほんとは食味佳良なりとか。
また、キュウリウオの小型個体もシシャモの代用にされることがあるんだそうで、知らなかった。

 

ちなみに、2003年からJAS法改正により、「原材料」としてはカラフトシシャモをシシャモと表示することはできなくなった。
ほら、食品偽装で、やれ銀ムツだ、いやメロだ、サザエだ、いやアカニシガイだなどと問題化した時です。
ただしこれにはちゃんと抜け穴があって、干したり塩漬けにしたりの加工工程を経たものの「商品名」としてはシシャモ表示もOKなんだと。うーん、それってやっぱり釈然としませんね。
ちなみにツルは、わらびもちにワラビの成分が入ってないのは許せん、ってほうです。

 

川魚の代表アユも瓜類の香りを持つとされていて、香魚の別名がある。なんでも、水質のよいところに棲むものはスイカの香りが、やや劣るところではキュウリの香りがするというのが釣り人の間では常識なんだそうで(ホントかよ)。それってアユが食べる水中の苔の種類によるんじゃないのかね。清洌な川で生息数の多いところだと、川原じゅうに爽やかな西瓜の香りが満ちるんだとか。

 

ということはですよ、同じキュウリウオ科のシラウオの身にもそんな香りがあるんですかねえ?

 

 

ええ、はなっから脱線。そもそも知りたいのはシロウオとシラウオの相違点と共通点、それから、文学的表現における「白魚」の語がいずれを指すのかという点だ(いきなり)。

 

まずは形態上の区別からお勉強。

 

ハゼ科のシロウオ、漢字で書けば「素魚」は体長5〜6cmで頭部が丸いのに対して、キュウリウオ科のシラウオすなわち「白魚」は8〜10cmとやや大きく、頭は尖る。

 

・・・・・・うーん、そんなざっくりした説明じゃ、「これはどっちでしょう」って差し出されてもまるで見分けがつかんじゃないか!
心配御無用、外見上の明らかな差異として、シラウオには背鰭と尾鰭の間に脂鰭/あぶらびれという小さな鰭があるのだ。
普通はそんなもんしげしげ観察するチャンスなんてまずないだろけど、これでアナタも区別はばっちり!高級料亭でも臆することなく、蘊蓄の一つも傾けながらシロウオ/シラウオ料理をご堪能になれます(笑)。

 

脂鰭はサケ目の魚の特徴として知られている。普通の鰭と違って鰭条(つまり筋ね)を欠くところからこの名があるんでしょう。上述のとおりキュウリウオ目もかつてはサケ目に入れられていたぐらいだから、同じ特徴を持ってんですね。
熱帯魚飼ってる人なら知ってると思うけど、ネオンテトラなんかのカラシン目やナマズ目にもあるよな。

 

一方、生活史にはやっぱり共通点も多くって、ともに1年で一生を終える「年魚」。アユもそうですよね。
汽水域に生息し、早春〜春に川を遡上して産卵するところも同じ(ただしシラウオは海で産卵することもある由)。
どちらも遡上したとこを捕えて、春先の珍味としてやれ寿司ねたにしたり踊り食いにしたりするわけだ。まあ、あまり家庭で食するものではないかもって感じの、今どき高級食材でしょう。

 

シラウオの現在の産地が東日本にやや偏るのに対して、シロウオはそんなことはなさげ。福岡の室見川の名物になっているのも後者だそうです。

 

学生の時、父親にせがんで室見川畔の料亭にシロウオ料理フルコースを食べに連れて行ってもらったことがある。
メインディッシュはなんといっても踊り食い。染付だか祥瑞だかのでっかい浅鉢に水を張ったものが出てきて、よく見ると透明な体のシロウオがたくさん入っている。(ハゼの仲間のせいか、泳ぎ回るというより水底を這い回る感じに近いです)
これを小さい手網で掬って、三杯酢かなにかにつけて食べるわけ。まあ、風流の極みというか残酷無慈悲というか。味らしい味なんてしないのですがね、でもやっぱり生を食するのが一番だということになった。加熱すると、釜揚げシラスなんかと何も変わりゃしなくなるんだもん。有り難みが薄れちゃう、ていうと顰蹙買うかな。

 

シロウオは死ぬと著しく味が落ちるとされ、生きたまま流通するのに対し、シラウオの方はそれほどでもないらしく、普通の魚同様死んだ状態で出回る。
いずれも生きているうちは半透明の体で、死ぬと白濁するというのは魚類にはよくある話。ツルが飼ってるナマズの一種、トランスルーセント・グラスキャットなんかその超典型ですね。
つまり、「白魚のような指」というのは科学的には「死んだシロウオ/シラウオのような白い指」ということなのであろうよ(笑)。

 

でもその「白魚の指」がどちらを指すのかは、やっぱりよくわからない。
話をややこしくしているのは、常に混同がつきまとうこと。たとえば福岡でも、一般には「室見のシラウオ料理」とかって言ってたような気がするし。

 

いろいろ考え合わせると、白魚の指はやっぱりシラウオのことじゃないかと思えてくる。体長5cmだと指としちゃ短すぎなんじゃないかとか、透明の状態じゃ白い指には見立てんだろとかね。
ただ、ずーっとずーっと昔、何かで「大きい方はごつくて女性の指の形容にはふさわしくない」と書かれたのを読んだ記憶があるんだよね。シラウオの方が大きいわけだから、ということは(この説によれば)白魚の指の正体はシロウオだってことになる。
うーん、8〜10cmでごつ過ぎるとは思えないんだけど・・・ツルの私見ですがね。

 

あ、素魚の指じゃなくて白魚の指と書くのだからシラウオの方でしょ、なんてのは一応ナシにしておきます。
 
 
 
曙や白魚白きこと一寸

 

うげえ、芭蕉翁はどっちを詠んだんだ?

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