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2011年11月 6日 (日)

『空中庭園の奇妙な事件』(Short Version:似て非なるもの - ヒイラギ vs セイヨウヒイラギ)

【『嬉しいことー、その後。』改題&刈込】

 

必死で辻褄合わせ(*)やってたら、なんだかダラダラ長くなるだけで、当初のバカバカしさのスピリットみたいなのが失せ飛んでしまったので、凝縮のShort Version復活です。ま、中島敦「山月記」的に(こらこら)。ぶっちゃけ、横溝正史の「犬神家の一族」、いやむしろ「悪魔が来りて笛を吹く」の不出来パロディですが。

 

*:絢爛たる一族の話のハズなのに当主とその姪しか出てこないのは物足りないし、そうなると皆苗字が違うのに合理的説明つけなきゃいけないし、犯人は何故こんなことをしたのか、そもそもどんな犯罪が行われた(行われようとした)のかが書いてないしで。一方、犯人(or送り主)は結局誰だったのか、木の種類を間違えるとどうしてそんなにマズいのか、なんて核心を書くつもりはハナっからなかったんだけど。(しっかしバカさ加減をなくさないようにするのにはほんと苦労したすよ^^;)

 

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謎を呼ぶ斑入りの木

 

(薮椿邸、秋色深まる空中庭園@下丸子を臨む応接室にて)

 

金田一数珠丸探偵:
「・・・あの朝、一族の方々は、何者かから届けられたあの木をヒイラギだと皆さん信じ込まれた。しかし、そこに犯人の巧妙な心理トリックが隠されていたのです」

 

玉之裏ツル代:
「ええっ金田一先生、でもあれは間違いなく斑入りヒイラギだったはずですわ。犯人からのメールにも確かに『ヒイラギの件』と・・・」

 

数珠丸探偵:
「いいえ、そうではないのですよ。思い出して下さい皆さん、初めにあれがヒイラギだと言い出したのはどなただったでしょう?」

 

薮椿亀乃進男爵:
「そう言やぁ・・・ありゃああんた、ツル代しゃんやったばい」

 

数珠丸探偵:
「そうなのです。小包には六つの鉢植えが入っていました。植物の好きな貴女は素敵な贈り物だわと喜んで、一鉢ずつ取り出していかれた。まず、貴女と同じ名前を持つ薮椿の銘花『玉之浦』」

 

ツル代:
「そうです、あれこそわたくしが長いこと探し求めていた椿でした」

 

玉之浦(上柄!)

 

数珠丸探偵:
「そして白一重の雪椿『夕月』、錦葉椿の『金世界』。それから百日紅、仏桑華と順に声に出していかれて、最後に貴女は、まあなんてきれいな斑入りの柊かしらとおっしゃってあの木を取り出されたのです。いつも庭仕事に精を出しておられる貴女のツルの一声で、居合わせた一族の方は皆あれがヒイラギだと信じてしまわれた、いわば集団催眠にかかったように。犯人はその盲点を巧みに突いたのですよ。メールが届いたのはその直後でした」

 

亀乃進男爵:
「ばってんありゃあ俺も確かめてみたが、ただのヒイラギの斑入りやったばい」

 

数珠丸探偵:
「皆さんが見間違えたのも無理はありません、本職の私も初めは騙されたのですから。確かにあの木はヒイラギとしか見えなかった、でも真相は違っていたのです。おわかりになりませんか、ツル代さん」

 

(ツル代、フランス窓から走り出てバルコニーの鉢をつぶさに調べる、やがて驚愕)

 

ああ、これは・・・!!

 

ツル代:
「ああ、これは・・・違う、違うわ・・・・・・これは、イングリッシュ・ホーリー!!!!」

 

数珠丸探偵:
「そうです、そのとおり。この木は黒い実のなるモクセイ科のヒイラギではなくて、赤い実をつけるモチノキ科のセイヨウヒイラギだったのですよ」

 

ツル代:
「わたくしの・・・罪でしたのね・・・・・・ああ!」

 

亀乃進男爵:
「泣かんでよか、ツル代しゃん。誰でん間違いはあるくさ」

 

ツル代:
「いいえ、いいえ伯父さま、そうではないの。あの時・・・わたくし、あれが父からの贈り物ではないか、いいえそうであってほしい、そうに違いないと思い込んでしまったのです。七年前に失踪したわたくしの実の父、棘林柊麻呂からの」

 

数珠丸探偵:
「だからこの木もヒイラギに違いないと貴女は思われた」

 

ツル代:
「ええ、わたくし、お父さま恋しさのあまりとんでもない過ちを犯してしまった・・・」

 

数珠丸探偵:
「貴女は本当のお父さま、棘林伯爵が今も生きておられると信じていらっしゃるのですね」

 

亀乃進男爵:
「妹の百々千世が親の決めた縁談で玉之裏の家に嫁いた時にゃあ、もう幼馴染みの柊麻呂しゃんの子供ば身籠っとった。それがツル代しゃん、あんたたい。あんたば産んでから産後の肥立ちが悪うてとうとう亡うなってしもうたが・・・
ばってんが金田一しぇんしぇい、あれがヒイラギじゃなかてどげんして気がつきんしゃったとですか」

 

数珠丸探偵:
「初めに妙だと思ったのは、いくら若木とは言え、この時季に一つも蕾をつけていなかったことです。モクセイ科のヒイラギなら秋遅くから冬の初めにかけて花を咲かせますからね。これが姿の似ているモチノキ科のヒイラギモチ、またの名をシナヒイラギやセイヨウヒイラギと呼ばれる植物ならば、花の咲くのは初夏ですから今蕾がなくてもおかしくない」

 

亀乃進男爵:
「ばってん金田一先生、シナヒイラギいうたらちぃと葉っぱの形が違うとりまっしょうが」

 

数珠丸探偵:
「そげんです、ああいや、そうなのです。シナヒイラギつまりChinese Hollyならば葉の棘が少ないからすぐに見分けがつく。けれどもEnglish Hollyにはヒイラギと見分けがつかないほどよく似た葉を持つものがあるのですよ。狡猾な犯人はそこまで計算に入れていたのです」

 

亀乃進男爵:
「ほー、とつけむなか。ふてぇがってぇどうじゃろかい」

 

ツル代:
「わたくし今気づいたのですけれど、他にも違うところがありますわ。ヒイラギの葉なら対生のはずなのに、この木は互生になっていましてよ。モチノキも確かに互生だわ」

 

互生か、対生か・・・??

 

亀乃進男爵:
「ツル代しゃん、あんたよう気のついたなあ」

 

ツル代:
「だって伯父さま、博多のお屋敷にヒイラギもクロガネモチもあるのですもの、それは剪定のたびに気がついてました。だのにわたくしあの時はすっかりとりのぼせてしまって、ちっとも気が回らなくて。恥ずかしいわ」

 

数珠丸探偵:
「いやいやそれも貴女の日頃の精進の賜物ですよ、ツル代さん。
でもよかったですね、お父さまのヒイラギだけではない、貴女のお母さまの名前の中にも「モチ」という言葉が入っているではありませんか」

 

ツル代:
「ええっ!?・・・玉之裏百々千世・・・まあ!!」

 

数珠丸探偵:
「全くもって、不思議な巡り合わせでした」

 

ツル代:
「金田一先生、亀乃進伯父さま、わたくしこの木を心を込めて育てますわ、お父さまともお母さまとも思って。いつの日か輝く赤い実をつけるまで、冬もお部屋の中に取り込んで」

 

亀乃進男爵:
「おうツル代しゃん、そいがよかよか。ばってんあんたも草木ばっかし面倒見よらんと、よか人見つけにゃ行き遅るるばい、ガハハハ」

 

ツル代:
「まあ、いやな伯父さま!」

 

(一同の笑い声、空中庭園に響き渡る)

 

−大団円−
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