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2012年2月10日 (金)

遠い海の記憶 そして つぶやき岩の秘密

鎌田敏夫関連でもう一曲まいりましょう。

前回も書いたとおり、この人の作品では、音楽が大きな役割を果たしていることもまた異論のないところだと思う。

「サインはV」の「♪V・I・C・T・O・R・Y サインはV!」でしょ、
「飛び出せ!青春」なら「♪君は何を今見つめているの 若い悲しみに濡れた瞳で」、
「われら青春!」なら「♪悲しみに出会うたび あの人を憶い出す」でしょ、
「金曜日の妻たちへ」になると「♪もしも願いが叶うなら 吐息を白い薔薇に変えて」だし、
「男女7人夏物語」だと「♪YOU あなたらしくもない しくじったぐらいで」・・・
ホラ、どれも主題歌、浮かんでくるでしょ?(若い子は知らんか

ツル的にここに一つ加えたいのは、NHK少年ドラマシリーズの一つ、1973年に放送された「つぶやき岩の秘密」です。

つぶやき岩の秘密 DVD

お話は、幼い頃に両親を海で亡くした少年(原作では小学6年の設定)が、旧日本軍が地下要塞に隠したと伝わる金塊にまつわる秘密と、両親の過去の不慮の死の謎を追っていくというミステリー仕立てです。謎が解き明かされていく中、孤独な少年は出会いと別れを通し、少年の日々と訣別して大人の入り口に立つ。全6回。

でも、このドラマの本当の主役は「海」かもしれない。全編にわたって、昼間の海、満月の夜の海、夕焼けに輝く海、ギラギラと油照りに照り返す海、暗く時化た海と、「海」が様々な表情で魅力的に登場します。
主人公が舟を櫂ではなく艪で漕ぐシーンなども出てきて、たまたま横で見ていた父が「お、懐かしいな、和船を艪で漕ぐのは難しいんだぞ」なんて言ってたことが思い出されます。

オールロケで三浦半島の三戸浜で撮影され、舞台となった海辺の断崖の別荘(「白髭さん」のね)なども最近まで建っていたそうだし、岸壁には今も撮影当時のハーケンやカラビナ(ロッククライミングのシーンがあるんです)が残っているそうな(@_@)
ファンがロケ地を尋ねたブログなんかがネット上に結構あります、今でも。

この作品、フィルムによる撮影だったせいか、NHKには珍しく元映像が残されていて、DVDも出ているのは幸せなこと。ツルは大人になってからこの作品を再び観ることができた時、ほんっと生きててよかったって思いましたもん。

原作は新田次郎(1912〜1980年)の同名小説。「八甲田山 死の彷徨」「孤高の人」など山岳小説で知られた人ですが、本作は珍しく海を舞台にしたもの。新潮少年文庫というハードカバーのシリーズの中の一作でした。1972年1月刊行だから、その翌年の春のドラマ化というのはかなり早いペース。実はツルはこの単行本持ってるんですわ、ドラマを見た後に買ったんだけど。今も目の前で久しぶりに開いてる。やっぱ宝物だな。
新潮社のこのシリーズ、ジュブナイルとして子ども向けに当代の人気作家が書き下ろしたもので、他にも星新一とか三浦哲郎とか、相当豪華な顔触れ。三浦哲郎の書いた「ユタとふしぎな仲間たち」はその後劇団四季でミュージカルに仕立てられて有名になりました。

そうそう、この本の装丁と挿絵は司 修(つかさ おさむ)(1936年〜)が手がけてるんだよね。今や装丁の第一人者、大江健三郎の著書なんかも多く手がけてる人。作家・エッセイストでもあり、芥川賞候補になったり、川端康成文学賞を受けたりもしている。昨年も「本の魔法」という著作で大佛次郎賞を受賞しました。「つぶやき岩の秘密」が出た時には36歳だったんですね。今は御年76歳か。あ、1937年生まれの鎌田敏夫とは同年代なのだな。

新田次郎って、実は繊細な表現をする人だという印象をツルは持っているんだけど、そこを最大限活かしながら鎌田敏夫がドラマ化したわけ。このころからやっぱり「神奈川」だったんですね(原作も三浦半島が舞台ですが)。
でも、ツルは大人になって再びこの作品に出会うまで、鎌田氏が脚本を書いていたこと、知りませんでしたけど。

で、本題のドラマ音楽のこと。
このドラマを知ってる人なら必ず口にするのが「音楽が印象的だったよねーーー」ということ。本当に!
主題歌「遠い海の記憶」は石川セリ(井上陽水の奥さんです)が歌っている。すごく好きだったなー、この歌。同時代のアニメ「海のトリトン」の音楽全般(Fusionの大家、鈴木‘コルゲン’宏昌が担当してる!)と同じくらい好き。
あ、海が舞台ってことも、少年期の出会いと別れを描いたという意味でも、この2作品は確かに似ているな。

最終回のラスト、金塊が鈍く光りながら波間に揺らめいて海底深く沈んでいく映像から、そのままこの歌の流れるエンディングに入っていく一連のシークエンスの美しさにはもう鳥肌が立ちます(この結末は原作とは少しばかり変えてありますが)。Youtubeにも出てますよ。

作曲は当時「ステージ101」などでNHKの子飼いだった樋口康雄(ピコ)。一方作詞がちょっと変わっていて、作詞には素人だった同番組のAD、井上真介氏。
確か、レーザーディスク版のライナーノーツだったと思うけど、ご本人がいきさつを書いていて、ミステリー仕立てのこのドラマの主題歌を作詞する羽目になり、アパートに帰ってこのお話に合う歌詞を書こうとしたものの、考えれば考えるほど言葉が浮かんでこない。焦るうちに日にちばかりが過ぎていって締め切りも迫った頃、ストーリーから離れて自由に書いてみようとふと思った時に、自分が子供時代を過ごした故郷宇和島の海のことがまざまざと思い出され、一気に書き上げたと。そして樋口康雄により曲がつけられ、レコーディングの日。自分の予想を遥かに超えた素晴らしい出来映えに鳥肌が立ったそうです。オンエアされるや、「あの曲は何?レコードになってるの?」という問い合わせが殺到したとか。「そして私は生まれて初めてファンレターというものをもらった。」と締め括られていました。
実はこの方、ADなんだけど本作では出演もしているんです、「水死体」の役で。重要な役なんですよ(笑)

この曲はその後アレンジに手を加えて彼女のアルバムにも収められている。またこちらの編曲もいいんだよねー、はー。寄せては返す波のような長ーいイントロから始まって、繊細にして流麗なメロディが流れます。そして、アドレサンスの輝く憂愁に満ちたこの歌詞も・・・↓

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遠い海の記憶
 作詞:井上真介
 作曲:樋口康雄
 歌: 石川セリ

いつか思い出すだろう
大人になった時に
あの輝く青い海と
通り過ぎた冷たい風を

君を育み見つめてくれた
悲しみに似た風景
追憶の片隅で
そっと溶けてしまうのだろう

今だ 見つめておけ
君のふるさとを
その美しさの中の
ほんとの姿を

いつか思い出すだろう
大人になった時に
あの輝く青い海が
教えてくれたものは
何だったのだろうと・・・
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今、こんな完成度の高い子供向けのドラマなんてないですよね・・・アニメは別として。人形ドラマ、「新・八犬伝」なんてのもみーんなが見てたなあ。僕らの世代って、恵まれていたのかな。

いつか大人になって思い出す、あのころの遠い記憶。今でも海は別れ難く好きです。

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