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2012年3月17日 (土)

八王子 − 五男神にこだわってみた Part II

(承前)

アマテラスとスサノオの宇気比でもっと奇妙不可思議なのは、「なぜアマテラスまで子を生むのか」という点だと思う。

そもそもこのお話の前後の流れを古事記で追ってみると;
死した母伊邪那美命/イザナミを慕って泣き暮らし務めにも就かぬスサノオは、父伊邪那岐命/イザナギから高天原追放を命ぜられる。スサノオが母を訪ねて根之堅洲国(≒黄泉)に赴くに先立ち姉神に会いに行ったところ、天地騒鳴震動したのでアマテラスは弟が高天原を狙って攻めてきたものと疑い、武装して迎える。スサノオは邪心のないことを示すために宇気比を行うことになるわけ。
宇気比の後は、勝って増長したスサノオが高天原を荒らし回り、これを憂えたアマテラスが岩戸隠れし、・・・〔途中省略〕・・・スサノオは罪を科されて高天原を追放される、という流れ。
(ただし、日本書紀の「一書曰」ではこの前と後が逆転しているものがある)

こりゃまたツッコミどころ満点のお話です。
イザナギだって亡き妻に会いに根の国に行ってるのに息子にゃ認めないのかよ(この点日本書紀は、勘当じゃなくスサノオが伊弉諾神の許しを得て伊弉冉神を訪ねることとして解決)。あ、でも父は自分が「見るな」のTabooを破って大喧嘩した挙げ句に夫婦別れして帰ってくる不始末やらかしてるからこそ許さんって方が自然か。
そもそも、イザナミはスサノオの母親じゃないぞ(スサノオたち姉弟は根の国の穢れを祓うイザナギの禊で生まれている)、なんてところもありますが。

スサノオが身の証しを立てるためには、「我に黒心あるべからざればいたいけなる嬰子(or 手弱女?)生まれよ」トカナントカオッシャッテ、自分のアイテムから子を生んで「ほうれこのとおり、私は潔白だ」とでも言えば済むわけで、なにもこの場面でアマテラスが子を生む必要はないと思える、アイテム取り替えて話ややこしくしてまで。ここを深掘りしてみた。

結局、古事記にせよ日本書紀(本文)にせよ、物実の件を捨象すれば、共通しているのは;
①スサノオの行為により五男神が生まれ出ること
②スサノオの勝ちとされていること
③アマテラスが五男神の帰属を唱えて引き取ること
の3点ってことになりそう。

ポイントはそれぞれのキャラの行く末です(以下も基本的に古事記より)。
スサノオは出雲に降り立ち、八俣遠呂智/八岐大蛇退治なんかしたりする、その後はあんまり活躍しないけど。この六代目の末裔(日本書紀ではスサノオの子)が大穴牟遲/おおなむちすなわち大国主命で、着々と「国造り」を進めて(≒国津神化して)いく。
一方、五兄弟の長男オシホミミは地上界すなわち葦原中国/あしはらのなかつくにを治めるよう母(?)アマテラスに命じられるが、天浮橋から下界を覗き中津国は大変騒がしいとして立ち戻る(軟弱もの!!)。そこで、次男の天之菩卑能命/天穂日命/あめのほひが、次いで天若日子/天稚彦/あめのわかひこ(これは「神」ではないらしい)が遣わされるが、どちらも大国主に服してしまう。
その後、建御雷神/たけみかづち派遣に至ってやっと、大国主の子の事代主神/ことしろぬし・建御名方神/たけみなかたを服従させ、次いで大国主本人に宮殿(=出雲大社)の造営と引き換えに「国譲り」を承服させる。

ここらへん、いかにも侵略っぽいですなー。建御雷は十掬剣を逆さに突き立てて迫ったり、建御名方とは力競べをやったりしてる。これが神々による相撲の元祖。(人間の相撲(&柔道)の起源とされる野見宿禰/のみのすくねと当麻蹴速/當麻蹶速/たいまのけはやの取組のことは日本書紀のみに記載。)こういうのは「武力制圧」っていうでしょうよ、普通。
日本書紀の「一書曰/あるふみにいわく」の中には、この件りが(出雲大社造営等の)外交交渉というか懐柔政策のお話になっているものもあったけど。

すったもんだで中津国平定が完了したところでやっと下界に降り立つのが、オシホミミの子、邇邇芸命/瓊瓊杵尊/ににぎのみこと。アマテラスの孫に当たるとするから天孫降臨と呼ぶわけだ。子じゃなく孫なのも何か訳がありそう。(ここで三男坊あたりが登場してもいいのに)
で、アマテラスの血脈=日継の皇子の系譜は、
オシホミミ
→ ニニギ
→ 火遠理命/ほおりのみこと(日本書紀では彦火火出見尊/ひこほほでみのみこと)、すなわち山幸彦
→ 鵜草葺不合命/うがやふきあえずのみこと
→ 神倭伊波礼琵古命/かむやまといわれびこ、すなわち神武天皇
と受け継がれて人皇の時代に入っていく。

ふーーーん。要するに、天降りした弟神の子孫が国造りをして、姉神が弟との誓約で得たところの子孫がその国を譲られて(譲らせて)、それが今の治世に至るという筋書きだ。
ということは、国譲りや皇統を正当化するためには、(1)アマテラスの子の存在と(あ、当たり前か)、(2)スサノオの下放および国津神との混淆融合と、両方ともが必要だったのか。
ほんでもって、譲らせた国にアマテラスの裔がのこのこ出ていって治めていくためには、なるべくスサノオとの血のつながりを濃くしておくことがベターだろう。
「やあ!同じイザナギ/イザナミの子孫同士じゃないか」じゃあちょっと弱くて、「ボクのご先祖も実はスサノオ爺さんが生んでくれたんだぜ」が決めゼリフになるわけだ(ホンマでっか)。

これに比べれば、スサノオが三女神を得たり、宇気比に勝ったりというのは追加要素に過ぎないんじゃないかという気がしてきた。極論、スサノオが証しを立てられずそのまま放逐されたって大勢に変わりはないはず。

ちなみに宇気比/誓約に用いられた勾玉は、古事記で「八尺勾珠五百津美須麻流珠/やさかのまがたまのいおつのみすまるのたま」、日本書紀で「八坂瓊之五百箇御統/やさかにのいおつみすまる」と書かれている。名前からして三種の神器の八尺瓊勾玉/やさかにのまがたまかと早合点しかけたが、それはアマテラスの岩戸隠れに際して諸神が作らせたものだから別物らしい。というより、八尺瓊勾玉とはもとは普通名詞であった由。
十拳剣/十握剣/十掬剣も同様で、この名は記紀神話にたびたび登場する。

まあそんなこんなはおいといて、ふふっ。

次回の主役は三女神の方。やっとここまで漕ぎ着けました・・・

(To be Continued...)

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