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2013年1月16日 (水)

3009年新春幻想 ―― 暦の物語【FINAL Version】

【2019.11.05 改稿】

 

3009年巳年,人族は既にthe Lord of Creation万物の霊長たる地位から追われて久しく,十二支卿紫微垣に会してConclave評定を重ねた末,藍青の惑星の新たな統治者は遂にコルカタの一匹の巨きなCobra帽蛇と極った.

帝蛇厳かに宣して曰く
「余の年に因み新たな暦を定めようと念ずるが,如何なるものがよいであろう」

 

① 牛:まず答えたのはアスワンの女Astrologist占星師であった.老いた巫女は恭しく奏上した.
「365日を冬,春,雨,夏,秋,乾の6季60日に分け,1季を上下の2月に分けるのでございます.残り5日は冬を除く季節ごと1日ずつ配して祭日に.冬季には畏れながら陛下Confinement and Hibernation蟄居冬眠に在らせられますゆえ」

 

② 馬:ハイデルベルクのAuthority識者は理詰めに説いた.
「全ての月の日数を固定して,7×4×13=364日と定める方が社会合理性に適っております,なにしろ毎月同じ曜日から始まるのですから.残り1日は年末に置いて13月29日とすればこれにも響かぬかと」

 

③ 鼠:野辺山のアマチュアStargazer天文家は
「Zodiac黄道十二宮も十三宮とするのだろうか,Ophiuchus蛇遣い座が加わればあの蠱毒も弱まろうものを・・・」
などと不謹慎な思いを巡らせた・・・が,大蛇の一睨を懼れて黙っていた.

 

④ 犬:シカゴのTricksterビジネスマンはプレゼンに力を込めた.
「Ladies and gentlemen, 分割しにくい13では経済に大混乱を招きます.The best way IS, 四半期ごとの最後の月に1日ずつ加えることです.残りの1日は,陛下が目覚められる啓蟄の日を当てて,特別な祝日としようではありませんか!30×12+4+1=365日,This is the American Standardこれこそグローバルスタンダード!!」
これが採られれば爵位の授与も と恃むところ大,米国民の常としてAristcrat貴族階級には弱かったのである.

 

⑤ 鳥:既に国土を喪失しVagabond流浪の身となった南洋の美女は眼を瞑り羽を震わせ囁くように歌った
「楽土など要らないの 海と風と虹さえあれば だけどあの樹は返して
 暦など要らないわ 太陽と月と星さえあれば けれどあの人を返して」

 

⑥ 猪:「そうだとも,それにAqvavit強い酒も要るがな」
Viking海賊の血を引く極北の船乗りも頑丈な拳を振り上げた.生来頭脳を働かすことなど苦手,その上美女に心奪われて暦どころではなかったのだが.

 

⑦ 虎:デリーのEngineer技術者はおずおずと
「そんなことより僕は,Leap second閏秒を廃止してほしいんです.超超高度情報化社会でランダムに1秒を挿入するなどリスクが高過ぎる」
と述べた.

 

⑧ 羊:一方ジュネーブのClock Meister機巧名人は
「閏年は400年間に97回置かねばならん.どこにどう入れるんです」
と眉根を寄せた,完成間近い夢の万年時計の設計変更ばかりが気になって.

 

⑨ 龍:長安のAstronomer天文博士は
「そもそもSolstizio d'Inverno冬至日則ちCalendario Gregorianoグレゴリオ暦12月22日を元日となすのが宜しかろう.冬極まって一陽来復,天主教の降誕祭もこの考えを引いておるのですぞ」
と博識を披露した.実は次の帝位を窺い,蛇が眠りに落ちる大晦日から啓蟄までを長くするよう企んでいたので.

 

⑩ 兎:ミラノのデザイナーも同調した
「そうね,それなら陛下にもゆっくりご休養いただけるし」
高価な革細工に欠かせぬ美しい蛇族を捕獲するにはその動きの鈍る冬眠中が都合よく,こちらは猟期が延びるのを歓迎したのである.

 

⑪ 猫:しかしブエノスアイレスのStreetgirl娼婦が
「南半球のEnero1月は夏の真っ盛り,冬眠だの啓蟄だのお笑い種だわ.街に出ていればわかること」
と言い放つと一同は静まり返った.皇帝となった蛇に代わり,虎の推挙で諸卿入りした(無論鼠は猛反対したが)この新参者は,真っ当かつ奔放な言動の数々で周囲を振り回すのが常であった.

 

⑫ 猿:どさくさに紛れて平壌のSlave労働者は
「冬至啓蟄はどうであれ,いっそ1週を6日,1月を5週にして下さい.何なら1週5日の1月6週間でも」
と平伏した.怜にして怠,これならば週休1日の己にもいささか利するところ多しと識っての算段であった.

 

議論は果てしなく続いた.しかし憐れな皇帝と十二支諸卿はすっかり忘れていたのである.既に気候変動は進行し,Serpentes蛇族ひいてはその他のReptilia爬虫族,さらにはAmphibia両生族,Aves鳥族,果てはMammalia哺乳族に至るまで,真冬の眠りを貪る者など疾うにいなくなっていたことを・・・

 

― Inspired by「鳥の物語」by 中 勘助(1885.05.22〜1965.05.03)―

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