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2013年1月24日 (木)

A社に聞くインサイダー取引防止への取り組み:上

 A社ではインサイダー取引の防止に向けた様々な取組みが行われている。そこで,担当者であるXX課のツル様に,事業会社におけるインサイダー取引防止策の重要性,社内整備のあり方を語って頂いた。


インサイダー取引防止体制

―まず,インサイダー取引防止に向けた貴社の取組みを教えてください。

ツル:基本的なところから申しますと,親会社である当社だけでなくグループ会社まで対象とした「グループ規程」という規則体系がありまして,その中に「内部者取引防止基本規程」というものを定めています。この規程の中では,内部者取引の禁止と情報管理の徹底とをうたった上で,金商法にもとづいて,当社あるいはグループ会社において「どういった情報が重要事実に該当するのか」「軽微基準(重要事実とならない基準)は何か」を別表形式でまとめてあります。当初の制定は1989年で,この時の証券取引法改正によって,各社さんともこうしたものを作られているかと思います。
しかし,これだけでは決して十分ではありません。この「基本規程」はなにぶん堅苦しいものですし,「別表」部分も分量が多いですから,法務部員や実務担当者でもなければなかなか理解しきれるものではありません。そこで,とにかく新入社員にでも分かりやすいものが別途必要だと。文章量も極力減らして,「何々をしてはいけません」「これこれをしてください」といった基本的,一般的な指針を「インサイダー取引防止ガイドライン」として示しています。これらは電子的な掲示板に常時掲載して周知徹底を図っているわけですね。
でもこれも,自分で掲示板を見に行って初めて内容がわかるというものでは効果が限定的になってしまいます。これを実務対応で解決しようということで,1998年から,重要事実が社内に滞留する時,例えば決算発表等に際して,いつからいつまでは自社株式を売買してはいけませんよという電子メールの「売買禁止のお知らせ」を送るようにしました。従来の実務から一歩踏み込んで,こちらから情報を発信することで機動性と実効性を高めたわけです。
また,役員の自社株売買については,事前に可否を「情報管理委員長」に照会する仕組みを取っています。


インサイダー取引防止の強化に向けて

―不幸にも数年ほど前,貴社の監査役(当時)によるインサイダー取引が発覚しましたが,それを受けての再発防止策などありましたらお聞かせください。

ツル:この件についてはもう,ただただ申し訳ないと思っています。これは社長はじめ経営陣も心底同じ気持ちであったと思います。
 ではどうやって再発防止を図るか。これは社内だけで進めるのではなく,公正な社外の眼を入れるということで,弁護士による再発防止委員会に検証していただきました。委員長は当社社外取締役(当時)でもあった弁護士です。この委員会の調査,提言をまとめた報告書はもちろん公表していますけれども,その中では「当社の内部者取引防止の取組みは総じて有効にワークしている。けれども,コンプライアンス体質の強化を目指すには,規程・仕組み等のハードの整備だけではなくて,ルールの対象となる役員,従業員への意識付けのための施策作りが重要である」と結論付けられています。この報告書の提言を受けて,インサイダー取引防止の強化策をいろいろと実施していきました。
どのようなところを強化したのか。まず,不正行為そのものの防止策です。先ほど申し上げたように,決算発表時には以前から「売買禁止のお知らせ」のメールを送っていましたが,この対象を役員から顧問,嘱託,派遣なども含めたグループ会社の社員全員にまで広げました。また,その内容も「売上や利益等の概要を知ったら,売買してはいけない」というものだったのですが,これを「知っていようが,いまいが」一律禁止としました。四半期ごとに決算期日の翌日から決算発表まで,自社株売買をとにかく全面的に禁止したのです。
次に,社内教育という面での取組みですが,Eラーニングを始めました。15分程度で分かりやすく学べるようにして,最後には選択形式の確認テストをつけ,解説つきの解答確認もできるようにしています。
当時,東京証券取引所がインサイダー取引防止のEラーニング教材を希望する会社に配付していましたので,それを入手して,当社の実情に合うように内容を整理した上で社内システムに取り込みました。
システム上の問題も出てきたりと,なかなかの力仕事になったのですが,若い課員たちがやり抜いてくれました。結果的に,役員から正社員,顧問や派遣社員,グループ会社まで含め,計76%の者が受講しました。正社員ではほぼ9割という数字です。これは社内で行っている各種のEラーニングの中でも高い数値となりました。
その他にも,外部から弁護士等の講師を招いて役員研修を毎年株主総会後のタイミングで行うとか,3ヵ月ごとに全役員から自社株売買の内容を会社に書面で提出させるといったコンプライアンス強化策を実施しています。

―それらの施策を実施していくにあたって,特にどういった点を検討されましたか。

ツル:まず,「分かりやすさ」です。なぜかというと,金商法の規定が分かりにくいからですね。
「基本規程」は,金商法166条にほぼ沿った内容なのですが,なかなか読み込んではもらえません。ですので,Eラーニングでは,社員が日常の業務で行き当たりそうな部分に絞り,言葉もできる限り平易なものにして,分かりやすさには特に留意しました。
もう一つは,他の制度との整合性です。自社株の売買を完全に禁止している会社もあることは承知していますが,何でもかんでも禁止すれば意識が高まるのかというと,必ずしもそうではないと思うのです。
福利厚生の一環として当社にも従業員持株制度がありますが,そこでは「株式をお持ちなさい」と奨励している。ところが一方で「株式の売買は全面的に禁止です」ということになると,果たして意識の向上は本当に望めるのか。そういったことを考えさせられました。

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