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2013年1月 2日 (水)

新春幻想

3009年巳年、人族は既に万物の霊長the Lord of Creationたる地位から追われて久しく、十二諸侯会して評定Conclaveを重ねた末、蒼き惑星の新たな統治者は遂にコルカタの一匹の巨きな帽蛇Cobraと極った。

帝蛇厳かに宣して曰く
「余の年に因み新たな暦を作ろうと念ずるが、いかなるものがよいであろう」

①まず答えたのはアスワンの女占星師Astrologist牛であった。老いた巫女は恭しく奏上した。
「365日を冬、春、雨、夏、秋、乾の6季60日に分け、1季を上下の2月に分けるのでございます。残り5日は冬を除く季節ごと1日ずつ配して祭日に。冬季は畏れながら陛下蟄居冬眠Confinement and Hibernationに在らせられますゆえ」

②ハイデルベルクの識者Authority馬は理詰めで説いた。
「全ての月の日数を固定するならば、7×4×13=364日と定める方が社会合理性に叶っております。なにしろ毎月同じ曜日から始まるのですから。残り1日は年末に置いて13月29日とすればこれにも響かぬかと」

③野辺山のアマチュア天文家Stargazer鼠は
「黄道十二宮Zodiacも十三宮とするのだろうか、しかし蛇遣い座Ophiuchusが加わればあの蠱惑の力も・・・」
などと不謹慎な思いを巡らせた・・・が、大蛇の一睨を慴れて黙っていた。

④シカゴのビジネスマンTrickster犬はプレゼンに力を込めた。
「Ladies and gentlemen, 分割しにくい13では経済に大混乱を招きます。The best way IS, 四半期ごとの最後の月に1日ずつ加えることです。残りの1日は、陛下が目覚められる啓蟄を特別な祝日としようではありませんか!30×12+4+1=365日、これこそグローバルスタンダードThis is the American Standard!!」
これが採られれば爵位の授与も と恃むところ大、米国民の常として貴族階級Aristcratには弱かったのである。

⑤既に国土を喪失し流浪の身Vagabondとなった南洋の美女鳥は眼を瞑り囁くように歌った
「楽土など要らない 海と風と虹さえあれば だけどあの樹は返して
暦など要らない 太陽と星と月さえあれば けれどあの人を返して」

⑥「そうだとも、それに強い酒Aqvavitも要るがな」
海賊Vikingの血を引く極北の船乗り猪も太い拳を振り上げた。生来頭脳を働かすことなど苦手、その上美女に心奪われて暦どころではなかったのだが。

⑦デリーの技術者Engineer虎はおずおずと
「そんなことより僕は、閏秒Leap secondを廃止してほしいんです。超超高度情報化社会でランダムに1秒を挿入するなどリスクが高過ぎる」
と述べた。

⑧一方ジュネーブの時計造りの親方Meister羊は
「閏年は400年間に97回置かねばならん。どこにどう入れるんです」
と眉根を寄せた、完成間近い夢の万年時計の設計変更ばかりが気になって。

⑨長安の天文博士Astronomer龍は
「そもそも冬至日Solstizio d'Inverno則ちグレゴリオ暦Calendario Gregoriano12月22日を元日となすのがよろしかろう。冬極まって一陽来復、天主教の降誕祭もこの考えを引いておるのですぞ」
と博識を披露した。実は次期帝位を窺い、蛇が眠りに落ちる大晦日から啓蟄までを長くするよう企んでいたので。

⑩ミラノのファッション業者兎も同調した
「そうね、それなら陛下にもゆっくりとご休養いただけるし」
高価な革製品の細工に欠かせぬ美しい蛇族を捕獲するにはその動きの鈍る冬眠中が都合よく、こちらは猟期が延びるのを歓迎したのである。

⑪しかしブエノスアイレスの娼婦Streetgirl猫が
「南半球の1月Eneroは夏の真っ盛り、冬眠だの啓蟄だのお笑い草だわ。街に出ていればわかること」
と言い放つと一同は静まり返った。皇帝となった蛇に代わり、虎の推挙で十二卿に仲間入りした(無論鼠は猛反対したが)この新参者は、奔放かつ真っ当な言動で諸侯を振り回すのが常であった。

⑫どさくさに紛れて平壌の労働者Slave猿は
「冬至啓蟄はどうであれ、いっそ1週を6日、1月を5週にして下さい。何なら1週5日の1月6週でも」
と平伏した。怜にして怠、これならば週休1日の己れにもいささか利すること多しと識っての算段であった。


議論は果てしなく続いた。しかし憐れな皇帝と十二諸侯はすっかり忘れていたのである。既に気候変動は進行し、蛇族Serpentesひいては爬虫類Reptiliaに冬眠を貪る者など疾うにいなくなっていたことを・・・

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