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2013年3月13日 (水)

五七調の歴程

(承前)

オール七五調の歌はたくさんあるのに、オール五七調ってのはなかなかなさそう。たいていが七五調と五七調のミックスです。
七五調の方が流麗繊細で旋律に乗せやすいということなんだろうか、いわゆる手弱女振りの古今調で。

てなわけで、音楽の素人が記憶の底からやっと拾い上げてきた、一応オール五七調の歌ひとつ。

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椰子の実
 作詞:島崎藤村
 作曲:大中寅二


なもしらぬ とおきしまより
ながれよる やしのみひとつ
ふるさとの きしをはなれて
なれはそも なみにいくつき

もとのきは おいやしげれる
えだはなお かげをやなせる
われもまた なぎさをまくら
ひとりみの うきねのたびぞ

みをとりて むねにあつれば
あらたなり りゅうりのうれい
うみのひの しずむをみれば
たぎりおつ いきょうのなみだ
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はー、美しいですねえ。漸進法っていうんですかね、この歌詞。叙景から始まってだんだんと胸に迫ってくる。手弱女振りに始まって益荒男振りに終わるって感じもあり。形式から言うと、五七五七五七・・・と重ねていく長歌/ちょうかに当然似てくるわけだ。(因みに舞台は愛知県田原市の渥美半島の先端、伊良湖岬とされる。民俗学者柳田國男の実体験を島崎藤村が聞き取って詩にしたという。)

ところがですよ。三番まで歌い終えた後、さらに結びというんでしょうか、短いフレーズがくっついてくる。

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おもいやる やえのしおじお
いずれのひにか くににかえらん
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ここでいやが上にもぐっと盛り上がるわけです。この部分はやっぱり外せない。だからと言って、即座に一番 → 結びというわけにもいかんでしょう、それじゃ味わいってもんがね。ということは結局この歌、二番三番も省略できず、フルコーラスで歌う/聞くしかないだろって気がします。
で、言いたいのは、最後の最後になって「七・七」音が現れるってこと。

この歌の「一番 + 結び」と全く同じ音節パターンになっているのが次の例。詞の区切りはまるで違っているんですがね。

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ああ栄冠は君に輝く
 作詞:加賀大介
 作曲:古関裕而

くもはわき ひかりあふれて
てんたかく じゅんぱくのたま
きょうぞとぶ わこうどよいざ
まなじりは かんこにこたえ
いさぎよし ほほえむきぼう
ああえいかんは きみにかがやく
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おなじみの夏の高校野球の歌です。こちらは確かに雄渾って感じですな。

こういうのってやっぱり、「五・七」音を連ねた末に「五・七・七」を入れて締めるという長歌の構成に似ている。この長歌に対する反歌として、五七が一回だけのものを置き、これが五七五七七の短歌として独立していくわけですよね。


山上憶良

うりはめば こどもおもほゆ
くりはめば ましてしのはゆ
いづくより きたりしものぞ
まなかいに もとなかかりて やすいしなさぬ


しろがねも くがねもたまも
なにせむに まされるたから こにしかめやも


五七調の歌は万葉集の長歌にルーツを持ってたわけだ。

Well, ということはだよ。ひょっとして、憶良のこの長歌&短歌のペアから「やすいしなさぬ」と「なにせむに」あたりをさくっと削っちゃえば、「椰子の実」や「ああ栄冠は君に輝く」のメロディに乗せて歌い切ることができるんじゃないか?

♪うりは〜め〜ば〜
 こども〜お〜もほ〜ゆ

ほらね!(これは「椰子の実」バージョン)

♪し〜ろが〜ね〜も〜
 くがね〜もた〜ま〜も〜
 まさ〜れるた〜か〜ら〜
 こ〜にし〜かめ〜や〜も〜

おお、最後の盛り上がりもばっちりです!!(こっちは「栄冠」バージョン)

ああ、高柳順子氏に教えてあげたいわ。

(続く)

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