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2013年3月24日 (日)

七五調みたび(補遺) − 「あゝ玄海」の歌詞の意味

有休を取って福岡の実家に帰省しているツル。ちょいと調べてみました。

以下、詞の出典は実家にあった旧制福岡高校の同窓会名簿『青陵会 会員名簿 平成九年(一九九七) 創立75周年 第31号』、および『福岡高等學校 學而寮史 昭和二十四年』(@_@)(@_@)であります。


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福岡高等學校 寮歌
あゝ玄海
 作詞:權藤 茂
 作曲:不詳


あゝ玄海の 浪の華
銀蛇の舞に 似たる哉
今神風に 旗高く
莫邪の劍 手に執れば
金鼓震ひて 蓋世の
雄師は迫る 敵の陣

輿望は重し 丈夫の
颶風の翼 身に借りて
征塵高く 蹴立つるを
防ぎ止むる 者在らば
天地貫く 自治の氣に
征衣の露と 打ち拂へ

戰はん哉 時到る
あゝ勝たん哉 時來る
天の暦數 指顧の中
見よ九天の 雲晴れて
虹は色濃き 筑紫潟
凱歌は籠る 梅の花
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まず、「旗」は「神風」との関連から見て日章旗すなわち日の丸を表すのだろう(スポーツの試合などでは「校旗」ということにもなるだろうが)。

「莫邪/ばくや」は『寮史』には「冥邪」とあったが誤植と考え、『名簿』に従った。「冥く邪(よこしま)な剣」ではなく「邪を莫き(なき)ものとする剣」でなければ意味が通らないし、いくらなんでも「冥」を「ばく」とは読むまい。

「震ひて」は、『名簿』『寮史』に従った。「金鼓」とは戦で用いる鉦/かねと太鼓のことだから、「奮ひて」あるいは「振ひて」だろうかと思ったのだが、考えてみれば剣を手にしながら同時に鉦や太鼓を打ち鳴らすというのも変だ。
うーむ、でもそうなると、金鼓はひとりでに鳴り出すのか?という疑問も湧いてくるが。

「蓋世/がいせい」は『史記』の「抜山蓋世」すなわち「力は山を抜き気は世を蓋う」から来た語で、意気盛んな様。しかしこれは、項羽が戦中に虞美人とともに最期を迎える場面で己を指して言う言葉である。

「雄師」も『名簿』『寮史』に従った。「敵の陣」に「迫る」のだから「遊子」つまり「家を離れて他郷にいる人」か、と取ったのだけれど、「蓋世の」からの続き具合では確かに「雄師」か。

「輿望」は「衆望」で、何を望まれているのかは後になってわかってくる。「颶風の翼」は「烈しい風を巻き起こす翼」といった意味だろう。

「蹴立つる」は「蹴立てる」の文語「蹴立つ」の連体形だが、昔からよくわからなかったのが「蹴立つる」と「防ぎ止むる」の主語。「在らば」を「防ぎ止むる者在らばこそ」で反語と見れば、前者が味方、後者が敵方となる。「征衣」は「旅衣」のほか「戦衣」の意がある。

「暦数」は『寮史』には「歴数」とあった。「天の暦数」は「天の定めためぐり合わせ」、特に「天命により当然に帝王となる運命」のこと。古代中国の「三皇五帝」の一人、聖君と称えられた尭帝が自分の子ではなく臣下の舜に位を禅譲する時に述べた言葉だという。後世、清の乾隆帝の諱/いみな「弘暦」を避けて「歴数」とも書くと。

「指顧」は「指図」と「呼べば答えるほど近いこと」の二つの意味がある。ここでは後者のはず。

「九天」は、古代中国で天を方角により九つに区分したもの、といったことはおそらくこの際どうでもよく、「九州」が掛けてあるのだろう、「筑紫潟」が出てくることも考え合わせると。

また、凱歌を宿すのが「桜花」でなく「梅の花」である理由は、福岡市近郊の筑紫国大宰府(現 太宰府市)の連想で、大宰権帥/だざいのごんのそちに左遷された菅原道真が梅花を好んだ故事から来ているのだと思う。


以上、つまりは神国まさに大東亜共栄圏の帝座に就かんと欲すの時代をもろに反映した歌詞だったわけだ。「自治」も、学生自治ぐらいのことかと思っていたがとんでもない、列強の帝国主義との対比という文脈で捉えるべきなのだろう。

権藤 茂氏は同校の第2回生(大正15年3月卒業 文乙)だった。

ちなみに『名簿』には楽譜も載せてあるが、やはりというべきか、ツルの記憶にあるものとも、YouTubeにアップされているものとも多少違っている。

いやあ、お勉強になりました(+_+)

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