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2014年10月24日 (金)

吉田神社から春日大社、そして坂東まで足を延ばしてみた

(承前)

徒然草のことが出たついでに、作者の兼好法師の出自である吉田神社のことも調べてみますと。

吉田神社

吉田神社は京都市左京区、京都大学裏手の吉田山にあり、吉田兼好(正式には卜部兼好)はここの神職の家系です(cf. 2009.12.16「京都花園妙心寺 筑紫太宰府観世音寺」)。
吉田山はたーくさんの神社がひしめき合っていてさながら神社のデパート状態なんですが、吉田神社の主祭神は;

建御賀豆智命/たけみかづちのみこと(武甕槌命/建御雷神)
伊波比主命/いわいぬしのみこと(=経津主命/ふつぬしのみこと)
天之子八根命/あまのこやねのみこと(天児屋根命)
比売神(ひめのかみ)

の四柱で、奈良の春日大社から勧請されている。

春日大社

武甕槌と経津主は出雲神話の「国譲り」で国津神を平定/制圧する神であり(cf. 2012.03.17「八王子 − 五男神にこだわってみた Part II」;ただし経津主は古事記には出てこない)、前者は茨城県鹿嶋市の鹿島神宮に、後者は千葉県香取市の香取神宮に祀られている。

鹿島神宮 香取神宮

この両宮は利根川を挟んで相対する位置関係にあって、直線距離でわずか13.4kmしか離れていません。昔から対偶的に捉えられており、どちらも延喜式に明神大として載る古社で、近代では官幣大社。鹿島神宮は常陸国の、香取神宮は下総国の、それぞれ一の宮です。

それだけではない。宮中の「四方拝」に揃って登場するんですね。これは元日早朝に天皇が四方諸神を遥拝する年頭の儀式で、この時に拝されるのは、現在;

神宮(伊勢神宮)
天神地祇(天津神・国津神の諸神)
神武天皇陵
先帝三代陵(明治天皇 伏見桃山陵・大正天皇 多摩陵・昭和天皇 武蔵野陵)
武蔵国一宮 氷川神社(*)
山城国一宮 賀茂別雷神社(上賀茂神社)・賀茂御祖神社(下鴨神社)
石清水八幡宮
熱田神宮
常陸国一宮 鹿島神宮
下総国一宮 香取神宮

となっている。明神大も官幣大社も数ある中で、このセレクションは意外ですよねえ。特に関東の辺りが。

(*)武蔵国の一の宮には、東京都多摩市にある小野神社を当てる説もある。

スサノオを祀るさいたま市大宮区の氷川神社はちょっと別としても、祭神が皇統に直接係わっているわけでもない鹿島・香取の両宮が宮中行事に登場したり、そもそも坂東の神社が遠く離れた出雲神話の神々を祀っていたり、結構驚きの連続です。しかもそれが奈良の春日大社や京都の吉田神社のルーツになっている(逆じゃないよ)というのは一体どういうことなのか。

吉田神社は藤原一族の氏神、春日大社はその前身たる中臣氏(蘇我馬子暗殺に始まる大化の改新を主導した中臣鎌足が死の前日に藤原氏を賜っている)の氏神として創建された社で、この中臣氏の地盤が実は常総地方であったとされる。だから、いわば郷里の神さんを都まで勧請してきたわけ。(正確には、中臣氏が信奉していたのは鹿島神宮の武甕槌で、香取神宮の経津主は本来物部氏の祭神だったらしい。もっともこの物部氏は大和朝廷の物部氏とは異なる由。)

一方、その中臣連のさらに祖として古事記に出てくるのが天児屋根で、こちらは岩戸隠れの際に祝詞を読み、アマテラスの前に鏡を差し出して岩戸から誘い出した神様。
そして、比売神は前回書いたとおり一般的な女神の呼称ということになるけど、この場合は天児屋根の妻の天美津玉照比売命/あめのみつたまてるひめのみことという次第。

古代の常総地方は大和朝廷の蝦夷進攻の前線基地として要衝の地だったそうで、そんなことやら神武東征の話やら皇室と中臣氏/藤原氏との関係やら諸々考え合わせると、これらの神社の祭神の構成はいかにも象徴的だなあ。

時代が下ると武甕槌と経津主は軍神・武神としての性格を強め、武家にも崇拝されていった。今でも武道場でたいてい「鹿島大明神」「香取大明神」の対の掛軸を掲げているのも、その表れなんだそうです。

(続く)

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