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2015年8月22日 (土)

西條八十 ぼくの帽子 vs 角川春樹 信長の首《二》

(承前)

つまるところ、角川プロデューサーは犬神家に続いて「母もの」を撮りたかったわけです、森村誠一の小説と西條八十の詩の世界を借りて。映画は激ツマで退屈でしたけど。

それにしても「ぼくの帽子」は不思議な詩だと思う。初出は児童雑誌「コドモノクニ」の創刊第2号となる大正11年(1922年)2月号。

ぼくの帽子

夢二風の挿画を見ると、左の絵では冬の日に暖炉の前で語らう母子の姿が描かれているけれども、詩から受けるツルの印象では、母親は既に亡くなっていて、息子が心の中で語りかけているようにしか感じられない。英語版もそこに焦点を当てて書かれてる気がします。
因みに縦書きの原文は全ての漢字にルビつき。「以太利」は「伊太利」ではありません。4文字分のルビがあるから「イタリヤ」と読ませるんでしょう。同様に、「埋める」は「うづめる」だと思う。

腑に落ちないことはまだある。この母子、薬売りに手助けしてもらったぐらいだから父親や男衆は付き添っていなかったということになるだろう。軽井沢駅に程近い碓氷峠から霧積まではどう見積もっても直線距離で6kmはある。しかも碓氷峠は古来中仙道の難所として知られたところだそうな。そんなところを女親と幼子だけでてくてく歩いていったんですかねえ??そこら辺からして詩人の創作なんだろうか。(であれば、まさに「霧積」の響きだけに惹かれて書いたことになりそうだ。Kiss me Mammy.)

西條八十(さいじょう やそ:本名同じ:1892(M25).01.15〜1970(S45).08.12)は、詩人にして仏文学者、早稲田大学仏文科教授。象徴派の詩人だから、「母親他界説」もそれなりに説得力あると思うのだけれど(いや、事実がどうかということではなくてね)。
作詞家としても広く知られ;

「東京行進曲」 ♪昔恋しい 銀座の柳(作曲 中山晋平 / 唄 佐藤千夜子:1929.05.01発売)

「蘇州夜曲」 ♪水の蘇州の 花散る春を(作曲 服部良一 / 唄 渡辺はま子&霧島 昇:1940.08発売 / 唄 李香蘭(山口淑子):1953発売)

「青い山脈」 ♪青い山脈 雪割り桜(作曲 服部良一 / 唄 藤山一郎&奈良光枝:1949.03.10発売)

「王将」 ♪吹けば飛ぶよな 将棋の駒に(作曲 船村 徹 / 唄 村田英雄:1961.11発売)

など戦前戦中戦後の各時代を代表する歌謡曲作品もある。ツルはなんとなく戦前の人だと思っていたけど、そんなことなかったですね。(いずれもツルの生まれる前です、きっぱり。)
戦後には日本音楽著作権協会/Japanese Society for Rights of Authors, Composers and Publishers/JASRACの会長も務めていた。作詞界の最重鎮だったことは間違いないでしょう。

そしてジョー山中(1946.09.02〜2011.08.07)のこと。亡くなっていたんですね。ミュージシャン、俳優、そしてプロボクサーでもあった(リングネーム 城アキラ:本名 山中 明)。この映画では主題歌を歌っただけでなく、準主役の扱いで混血青年を演じている。しかし1977年、大麻取締法違反容疑で逮捕、まだこの映画の公開中だったと思う。角川映画の宣伝戦略は多少つまずいたわけだ。

そして再び角川春樹。出版界・映画界の風雲児としてもてはやされたのも1980年代終わりまで。薬師丸ひろ子・原田知世・渡辺典子の「角川三人娘」に去られ、実弟とのお家騒動も表面化し、1993年にはコカイン密輸により麻薬取締法違反容疑で逮捕、最高裁まで争って結局懲役4年の実刑判決を受けた。切り落とされてしまったのは信長ではなく自らの首。

その後も(いや、塀の中でも)作句は精力的に続けてきている。近年は「俳句」と呼ばずに「魂の一行詩」と名づけていて(´ψψ`);

蛭に血を吸はせてをりぬ歌舞伎町
 「朝日のあたる家」(2006年)より

なんて作品もあります。この時64歳前後、やっぱりちょっと精力余り過ぎ

ここまで来たら、大野雄二(1941.05.30〜)のことも斬っておかう。いや、この人のことは大好きなんですよ。

前年に角川映画第1弾、「犬神家の一族」のスコアを書いた大野は、しかしその後市川−横溝映画の音楽を作ることはなかった(cf. 2015.03.23「角川映画「犬神家の一族」」・2015.03.25「愛のバラード」)。大監督の意向一つで曲がズタズタにカットされてしまうことに不満があったようです。その代わりに手がけたのが「人間の証明」ということになる。因みに翌年1978年の角川映画第3弾、「野性の証明」の音楽もね(主題歌「戦士の休息」by 町田義人の作曲を含めて)。

でもこの映画の主題歌って、Queenの "Bohemian Rhapsody"(1975.10.31リリース アルバム「オペラ座の夜/A Night at the Opera」より)と、イントロのピアノラインから歌い出しの言葉までが激似だったんですよねえ。有名な話だと思うけど。
テレビからボヘミアン・ラプソディが流れてきたかと思ったら、人間の証明のテーマだったという経験をした人は当時多かったはず。ツルも毎回ハッとしてましたもん。わかっているのに、それだけそっくりだったんです。フレディ・マーキュリーとジョー山中、声がそんなに似てるはずもないのに。

-----
Mama, just killed a man
Put a gun against his head,
pulled my trigger now he's dead
-----

大野センセイに聞きたいものです、「Queenにインスパイアされたんですか?角川社長に言われたんですか?」って。

ああ、それにしても。今回名前を出したうち、今も生きているのが角川と大野と町田しかいないなんて。角川三人娘を除けばね。

あっ!!船村 徹先生はご存命でしたっm(__)m!

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