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2015年11月19日 (木)

似て非なるもの − アズサミネバリ vs ヨグソミネバリ

≪魚鳥木申すか?≫ ≪申さぬ申さぬ≫

えー、もともと植物おたくの園芸blogではあったので、このことは気になっていた。

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【2015.10.23「いはばしる バイクの臀の プレートの;B」】

一般的には櫛と言えばツゲ/黄楊/Buxus microphyllaだから、知名度の全くないミネバリ/峰榛/Betula schmidtiiなる材を宣伝するために作られた伝説なんでしょう。
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峰榛というのも混乱の多い木です。ここでいう峰榛、つまり長野県木曽郡木祖村の特産品「お六櫛」を作る植物は、高木となるカバノキ科カバノキ属のオノオレカンバ/斧折樺/Betula schmidtiiのこと。成長が遅くて目の詰まった硬い重い材に育ち、イスノキや外来のタガヤサン同様、箸などに加工される(櫛材になるとは知らなかったけど)。またの名をアズサミネバリ/梓峰榛という。

これに対し、同じカバノキ属に一名ヨグソミネバリ/夜糞峰榛と呼ばれる木がある。サリチル酸メチル(サロンパスとか、ね)を多く含んで特有の臭気があるからこんな奇天烈な名前がついたんでしょう。こちらは標準和名ミズメ/水目/Betula grossaのこと。

さらに。同じくカバノキ科のハンノキ属のヤシャブシ/夜叉五倍子/Alnus firmaのこともミネバリと呼ぶことがあるそうな。こちらは松ぼっくりを超小さくしたような果実にタンニンが多く含まれてて、染料に使われます。
中学の頃家族で登った霧島の高千穂峰に、実をつけたこの木が登山道に沿ってたくさんあって(あるいはヒメヤシャブシ/Alnus pendulaだったかも;土留めのために植えられてたんだと思う)、木彫を趣味にしていた母親が狂喜乱舞してたっけ。木彫りの仕上げの色付けにはこの実を煮出した褐色の液を塗り重ねるのが最上とされていて、その時はだいぶ集めました(微笑)。熱帯魚用のブラックウォーターを作るのにも使われるのじゃないかと思うけど未確認っす。

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オノオレカンバ=アズサミネバリやミズメ=ヨグソミネバリの別名にはさらに単なるアズサというのもあって、これがまた大層錯綜している。

まず、現代中国語では、「梓」はノウゼンカズラ科キササゲ属の木本、キササゲ/Catalpa ovataを指す。和名のキササゲは、果実の莢の形状がマメ科ササゲ属の草本、ササゲ/Vigna unguiculata(しばしばお赤飯にアズキ/Vigna angularisの代わりに用いられてます)に似ているところから来ている。
キササゲの果実は近縁のトウキササゲ/Catalpa bungei同様、日本薬局方に収録されている生薬で、民間療法的に利尿薬(つまりむくみ取りね)として用いられます。

次に、「梓」の字のつく言葉としては「上梓」「玉梓」「梓弓」あたりが思い浮かぶわけですが。

書籍を出版/刊行することを「上梓」とも言うのは、梓の材を版木に使ったことによる。
「玉梓/たまずさ」(「玉章」とも)の語も同じOriginなのかと思ってたらだいぶ違っていて、昔、便りを伝える使者は梓の杖を持っていたところから、「使者」の意味でこの言葉が使われ、それが転じて「手紙」、特に艶っぽいものを表すようになったそうな。「玉梓の」とくれば「使ひ」「妹/いも」を導く枕詞になってます。

「手紙」にはもっと雅びに「雁の玉章」「雁の使い」てな言い方もある。漢の蘇武が匈奴の虜囚となっていた時、便りを書き綴った帛を故郷のかたへ渡る雁の脚に結わえ付けて漢帝のもとへ・・・って、きりがなくなるからこの辺で。
愚blogでも何度か取り上げてきた中 勘助(1885.05.22〜1965.05.03)の短編集「鳥の物語」にある「雁の話」はこれに基づいたストーリーで、元は「漢書蘇武伝」に出てくる話です。

一方、「梓弓」は古来本邦で神事に使われ、出産等の際の魔除けの儀式の定番「鳴弦」もこれで行う決まりだったらしい。しかし、この風習は一部を除いて早くに廃れたことから、この「梓」が何の植物を表すのかについても諸説紛々としていた。現在では、正倉院中倉の収蔵品の梓弓の科学的分析から、これをミズメつまりヨグソミネバリとするのが通説になっている由、QED。「梓弓」なら「張る」「春」などにかかる枕詞です。

こってりおまけ。梓弓に対して「我こそまことの弓」の意味で名づけられたとされるのがニシキギ科ニシキギ属のマユミ/真弓/檀/Euonymus hamiltonianus。紅葉や実の美しい木ですが、実際に弓の材料となるほか、これも印鑑や櫛に加工される。
「まゆみ」と打てば「檀」と出てきますよ。宝塚出身の女優、檀 れい(ツルの大嫌いな「金麦」のCMに出てるヒトね)は「だん れい」だけど、これは本名の「山崎まゆみ(及川光博と結婚した後は及川まゆみ)」をいろいろ置き換えたものです。
檀 ふみは本名。火宅の人、父親の作家檀 一雄から受け継いだ名前ね。(NHKの「連想ゲーム」が懐かしいです
壇 蜜は「檀」じゃなくて「壇」。「仏壇」と「お供え」を表した芸名だそうで( ; ゜Д゜)。本名は齋藤支靜加( ; ゜Д゜)( ; ゜Д゜)。

ああ、蘊蓄炸裂ぶっぱなし。

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