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2016年6月13日 (月)

【番外編】北の夢はこうして(たかたのゆめちゃん)その1

既に旧聞に属する、と言ってはいけないのだけれども、熊本地震から早くももうすぐ二月が経つ。
本「もうやめようよ、ご当地キャラとか。」シリーズでは、当初は思いもかけなかった「震災とご当地キャラの関わり」を知ることが数々あったけど、その「震災」の指すところもここに来て少し変わったわけです。

でも結局、この国に住む限り、多かれ少なかれ「地震」というものからは逃れられない。違うのは、強く記憶に刻みつけられたそれが世代によって少しずつ異なるという点だけです。でもそれも千年前の先人たちだって千年後の子孫たちだって同じだろう。ツルは個人的に1995年の阪神淡路大震災が様々な意味で忘れられない(被災地に住んでいたわけではないけれど)。

震災関連のキャラクターとなれば、やはりこれを取り上げぬわけにはいかないと思う。

岩手県陸前高田市
マスコットキャラクター
ゆめちゃん → たかたのゆめちゃん
北島茉也(22歳:神奈川県川崎市:立教大学コミュニティ福祉学部コミュニティ政策学科4年次)/ Maya
たかたのゆめちゃん(当初案)たかたのゆめちゃん(最終版)

2012年1月制定、今どき逆に珍しい、超メルヘンタッチなご当地キャラです。陸前高田市と言えば、東日本大震災のことが全世界に報じられた中でも、強い印象を残したであろう「奇跡の一本松」のご当地。(cf. 2015.09.26「Problems in Emblems:3」)

奇跡の一本松2

いずれ述べるけれど、この公募には(今は亡き)ニコニコ静画(動画じゃないよ)が一枚噛んでいて、2011.10.10 15:00〜11.17 23:59の期間で募集したところ、11.18 00:00:08になってから「Maya」名義で投稿されたもの(time outじゃねーか、なんてことは見て見ぬフリをしよう)。この時の説明は;

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みんなの夢を運ぶゆめちゃん
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というだけの極めて簡単なものだったのが、発表時、被災後初めての新春を迎えた2012.01.01発行「広報りくぜんたかた」No.880ではこう整えられた。

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陸前高田市の[市章]をモチーフにしたキャラです。
頭の[星]は希望の光で満ちていて、子どもたちを安全なところへ導きます。
背中の[羽根]で自由に飛び回り、[椿の花]のバッグの中に入っている夢・幸せをみんなに届けます!!
耳は[松]をイメージしました。しっぽはまんまるふわふわで、触ると癒されます。陸前高田の友達を想いながら描きました。
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現在、「たかたのゆめちゃん公式サイト」ではさらに少し変えられている。

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陸前高田市の[市章]をモチーフにしたキャラクターです。
頭の[星]は希望の光で満ちていて、子供たちを安全なところへ導きます。背中の[羽根]で自由に飛び回り、[椿の花]のバッグの中に入っている夢・幸せをみんなに届けます。耳は[高田松原の松]をイメージしました。
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陸前高田市章

因みにツバキはもちろん市の花、しかし市の木はスギ。なぜマツを用いるのか説明を要するとなったのだろうか。つまり、復活させるべきものとして高田松原は記されているのでしょう。(市の木もマツにしちゃった方が、よほど決意の程が伝わったろうという気もするが)。
でも、この文章がぐさりと突き刺さるのは、やはり「子どもたちを安全なところへ導きます」の一言を措いては考えられまい。ニコニコ静画サイトには、募集時のこんな記事が今も残る。

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岩手県南東部に位置する陸前高田市は、2011年3月11日、東日本大震災の大津波で中心市街地の8割が壊滅し、人口24,000人のうち、およそ2,000人が犠牲になるという大きな被害を受けました。多くの市民が仮設住宅での不自由な生活を余儀なくされ、依然として街は何もない廃墟のままです。
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上掲の「広報りくぜんたかた」では、次の関係者コメントも寄せられた。

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久保田 崇 副市長より
地元はもとより、遠く離れた地域の皆様の復興を祈っていただく思い、子どもたちの未来を見つめるやさしい思いがたくさん詰まった作品を、1点1点感謝の思いで拝見させていただきました。全国からいただきました応援の思いに感謝しております。陸前高田市の復興とともに、そして未来を築く子どもたちが、キラキラ輝く夢や希望を実現するため、子どもたちの応援団長として共に成長していく陸前高田市の夢☆キャラ、「ゆめちゃん」に応援をよろしくお願いします。

特別審査員 葉 祥明先生(絵本作家)より
「ゆめちゃん」まず、名前が良いです!
やさしい響きで甘くうっとりします。「ゆめ」ってもしかして、今という時代にとても必要なものではないでしょうか。
被災地にとっても、日本にとっても、また世界にとっても。本当に人類全体に「ゆめ」が必要な気がします。
そして、愛らしく、ふわふわな姿に心が和みます。きゅっと抱きしめたくなるキャラクターを「ありがとう!」

作者 北島茉也さん(神奈川県在住)より
震災により被災された方々のことを思うと心が痛いです。
そして、実際に経験された方にしか分からない辛さを考えると私は無力感でいっぱいでした。
ですから、このような機会が与えられ、小中学生の皆さんが私の作品を選んでくださったことを、大変ありがたく思っています。
復興のためにいつもがんばっていらっしゃる皆さんの心が少しでも癒されてほしい、子どもたちと一緒に明るい未来を創っていってほしい、その想いから、ゆめちゃんが生まれました。陸前高田の皆さん、どうか、ゆめちゃんと仲良くしてください。
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見事なまでにトーンが一致している。甚大な被害を受けた地方都市が復興を目指す時に必要不可欠なものなんです、という主張です。その意味で、非常にCleverなイメージ戦略が立てられたものと思う。
そりゃ、このキャラのことはツルだって前から知ってたもんね。当初は単に「ゆめちゃん」の愛称だったとは知らなかったけど、この愛称に限っては、「たかたの」を加えたのは成功だと思う。(一方、[地名]入りTシャツを着せたことと、目にハイライトを入れたことと、マンガかアニメのタイトルをそのまま持ってきたみたいなロゴタイプにしたことは手痛い失敗だと思うぞ。このリデザイン、ほとんど手は加えてないにもかかわらず、一番大事なSpiritが消し飛んでしまったという気がする。ふわふわと掴み切れない雰囲気、葉祥明好み、みたいなところは切り捨てちゃったのね。)

作者のMayaについては、ツルはこう考えていた。ひょっとしたら「北島茉也」が本名ということでもあるまい(cf.「ガラスの仮面」(1976〜)by 美内すずえ(本名 西尾鈴江:1951.02.20〜))、全てがネット上で終始してしまうなら実は男性ということだってあり得る、と。
でも、2012.03.12に市役所仮庁舎で行われた着ぐるみお披露目会にはキッチリ出席していて、市長の戸羽 太(震災1ヵ月前に市長の座に就いたばかりだった)から感謝状を受けたりもしている。それにこの件は立教大学サイトでも母校の香蘭女学校サイトでも北島茉也として載っているから、偽名、ああいやいやペンネーム、ということもまさかないだろう。間違いなく女性です。

作者は卒業後はイラストレーターを目指すと語っていたし、「ゆめちゃんと一緒にがんばるMayaのブログ」も書いていた。つまりはこのキャラの採用によって自己実現 or 自己完結しちゃったのかもしれない。自分自身をも ――もしくはその仮面をも―― 作り上げてしまったのかも。

(続く)

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