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2016年8月 4日 (木)

【番外編】恐怖の "Spec Work"(その1)

世の中的には5日から南米の某都市で五輪が始まる。てなわけで、東京五輪エンブレム公募に関してもう一歩だけ、敢えて難しい世界に踏み込んでみます。昨年末あたり、こんな記事がネットに出ていた。

 

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(2015.12.11 IT-Media News)

 

米グラフィックデザイン団体、五輪エンブレム公募に苦言 デザイナーの“ただ働き”と対価の低さ批判

 

グラフィックデザインの業界団体・AIGAが、東京五輪の公式エンブレムの公募について「多くのデザイナーに“ただ働き”を強いている」と批判する公開書簡を発表した。

 

世界的に影響力のあるグラフィックデザインの業界団体・AIGA(米国)はこのほど、東京五輪・パラリンピックのエンブレム公募に反対する公開書簡をWebサイトで公表した。広く公募するコンペ方式で実施することが実質的にデザイナーのただ働きにつながる上、作品の権利を無償譲渡することが条件になっているなど、対価も不十分だと批判。組織委の森 喜朗会長に対し再考を求めている。

五輪エンブレム問題では、アートディレクターの佐野研二郎さんによるデザインが採用されたものの、他のデザインとの酷似が相次いで指摘されるなどしたため白紙撤回され、公募で選ぶことになった。応募受け付けは先月24日から今月7日まで行われ、1万4599件の応募があったという。採用者には賞金100万円が贈られるが、応募要項やWebサイトによると、「作品に関する著作権、商標権、意匠権、その他の知的財産権、所有権など一切の権利を組織委に無償で譲渡」することなどが条件。「採用後の商品化に際して、採用作品の応募者にロイヤリティなどは発生しませんし、応募者の名前も明記されません」という。また「応募に要する費用は全て応募者の負担」となっている。

クリエイティブ分野で横行する「スペックワーク」コンペ形式は、発注者側からは複数のクリエイターから候補作品を得られるメリットがある一方、作品が採用されたクリエイター以外には候補作品を制作した対価が支払われないことがほとんど。採用される“見込み”をインセンティブとしてクリエイターの才能を都合良く利用するものだとして、こうした「スペックワーク」(spec work=speculative work)にはクリエイター側からの批判が高まっている。

問題はプロのクリエイターだけとは限らない。今年2月、厚生労働省が「アルバイトの労働条件を確かめよう!」というキャラクターデザインを募集した際、「一切の権利は厚労省に」「賞金なし」「記念品贈呈」という条件だったため、ネット上の「絵師」からあきれる声が上がったことがある。「ただ働きだし、対価も見合っていない」AIGAの公開書簡では、プロのデザイナーが創作活動に膨大な時間と能力をかけていることを指摘。エンブレム公募について、「十分な対価もなく、確実に選ばれる保証もないのに、大半のデザイナーにスペックワークを強いている」と批判する。一般から募集したことについても「経験の少ない一般人とプロのデザイナーを同列に扱っている」と、尊敬されるべきプロのデザイナーとデザインを組織委が軽んじていることを示す結果になると指摘。優れたデザインはデザイナーとクライアントのコラボレーションなしには成し遂げられないとして、広く一般から公募する方式にも疑問を呈している。

また「多くの創造的な才能が費やした時間に対し対価を支払っていないにもかかわらず、組織委は莫大なライセンス料を得ることになる」として、採用者への対価が見合っていないと指摘。著作権など知的財産権についてもデザイナーに保証すべきだとした。

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AIGAとは、 "formerly an initialism for American Institute of Graphic Arts" なんだそうな。この件はいくつかのネットメディアで報じられたが、次のものなどだいぶ論旨があやふやである。

 

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(2015.12.12 ギズモード・ジャパン 抜粋)

 

〔前略〕

 

より良いものを選ぶため、多くの人からデザイン案を募り、その中から一番を選び報酬を与えるという方法は、コンペ主催者視点で考えると、一見悪くないようにも思えます。主催者に至っては、選ばれた1人に対してのデザイン料を支払うだけで、たくさんの作品の中から一番いいものを選べるわけですしね。しかし、デザイナー視点で考えるとどうでしょうか?デザイナーにとっては報酬が未確定な仕事をするということになってしまいます。選ばれなかった場合、デザインを制作するうえでかかった労力と時間に対して支払われる金額はゼロ。主催者はたくさんの作品から一番良いものを選ぶことができるという利点を得ているにも関わらず、です。これは問題でしょう。

今回は東京オリンピックのエンブレム公募を通して、スペックワーク問題が指摘されましたが、これに限った話ではありません。今後デザイナーという職業を成り立たせていくために考えていかなければいけない問題です。東京2020組織委員会はこの問題に関してどのように考えているのでしょうか?回答が待たれます。

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ツルは、日本のご当地公募に応募してくるセミプロの公募ガイダーの腐敗を初めに目にしたせいか、AIGAの言い分に両手を挙げて賛成することはできなかった。「創作活動に膨大な時間と能力をかけている」とは露ほども思わない、思えないからです。単なるLobbyistじゃねえのかよ。AIGAさんよ、日本の実態を知ったら言葉を失うぞ。

ITメディアニュースにある厚労省の件は、本質的にはspec work云々の話ではないだろうし、ギズモード・ジャパンが「主催者はたくさんの作品から一番良いものを選ぶことができるという利点を得ているにも関わらず」「デザインを制作するうえでかかった労力と時間に対して支払われる金額はゼロ」という状態にあることが「問題でしょう」といきなり言っているのも納得できません。逆に言えば、「払った努力に対しては必ず対価が伴うべきだ」という考え方はあまりにpragmatism-pollutedだと思える。少し遡ればこんなニュースもあった。

 

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(2015.11.16 PR Newswire=共同通信JBN:トロント)

 

「スペックワーク」追放を呼び掛けるビデオ映像が世界的な議論に火をつける

1週間前、「Say no to spec」(タダ働きにノーと言え)とのタイトルで長さ2分のビデオ映像が公開され、まるでウイルス性の感染症のようなセンセーションを世界中に巻き起こしている。ビデオはこれまで広告業界で一般的だった「スペキュラティブでクリエーティブ」な仕事は、競争入札などの形で「ニュービジネス」プロセスを無料で獲得するものだった、と指摘。ビデオは150万以上のページビューを数え、期待が持てる潜在的なクライアントに無償で作業を提供することに価値があるかどうかに疑問を投げかけている。

 

〔中略〕

 

ビデオには現実の小売業者やプロフェッショナルが登場、「スペックワーク」とは何かをインタビューされている。回答者の愉快な反応は、タダ働きをするのはバカバカしい、ということだ。ビデオはStrategy Magazineの今年の最優秀エージェンシー選出のためにカナダで製作された。現場でユーモラスなジャブを繰り出すことを超えて、Zulu Alpha Kiloの創業者でビデオの監督、ザック・ムロー氏は次のように述べている。「パートナーエージェンシーを選ぶのにもっと適切なやり方がある。スペックワークは時代遅れのプロセスで、Mad Men時代から続いている。官僚的な調達機械の歯車の1つだ」

 

〔後略〕

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どうやらこの問題、ギョーカイ村では思ったよりhotな話題であったらしい。

で?疑問は一層深まる。

 

(無謀にも続く)

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