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2017年6月15日 (木)

【番外編】お上にはお上の事情と紋章:ホ(スポーツ庁)

(承前)

文部科学省の下に「庁」は双子的に二つあって、一つは前回の文化庁、もう一つは2015年10月に発足したここ。

スポーツ庁/Japan Sports Agency
シンボルマーク
野村恒司(32歳:建築デザイナー)
(ロゴタイプ)勝井三雄(グラフィックデザイナー:スポーツ庁シンボルマーク選定委員)
スポーツ庁

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日本の官公庁で唯一カタカナで始まるスポーツ庁の頭文字[ス]をベースに、右下へは国民を表す[人]を配し、全体的に健康的な「疾走感」が感じられるフォルムでデザイン。カラーは、活力や太陽を想起させる[オレンジ]。
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ふむ、「品格」は求められなかったのでせう。

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「スポーツ庁シンボルマーク」は、カタカナの[ス]や漢字の[人]をベースにデザインされたものであり、右上に伸びる太い[二重線]と太陽を連想させる[オレンジの色]があいまって、ぱっと見て印象に残るような「力強さ」を持っています。また、オレンジには仲間意識を高めたり、緊張を和らげ力を出せる心理効果もあります。
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概して、こんな文章に「○○も」という助詞が入ってたら信用できんと思っていいのじゃないかしら。大切なのは、not「アレもコレも」but「アレかコレか」ではないのかね、デザインに限った話ではないけど。その行為を繰り返していって最後に残ったものこそ、一期一会の邂逅と呼べるのかもしれない。何も、天啓に打たれて生まれ出たものだけをそう呼ぶのではないはず。

もとい。この公募の不幸は、選考途中にあの騒動が発生したことである。

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(2016.03.25 日刊工業新聞 抜粋)

当初、2015年10月1日の同庁発足に合わせて決定する予定だったが、東京オリンピック・パラリンピックの公式エンブレムの白紙撤回問題を受けて選考を中断。その後、選考の透明性を高めるため、一般からの意見募集を選考プロセスに追加することを決めた。
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で、2016年の1〜2月に意見募集を行った上で、発表は3月末となった。でもね、五輪問題ではあれほどヒステリックに騒いだのに、このパブコメではたったの183件しか集まらなかったというんだよね・・・。
で。

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(同上)

鈴木長官は同庁発足からの半年間を振り返り「スポーツ庁はメダルを獲得するための庁と思われがちだが、国民の健康増進、競技力の向上、スポーツを通じた国際貢献、地域経済の活性化のすべてが重要だ」と強調。
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へっ、「メダルを獲得するための庁」!?超意外。そんなこと思ってるの、五輪メダリスト上がりのアナタだけじゃ!?それとも2020年までの期間限定庁!?(案外図星かも)

しかし本件について、最も示唆に富むのは次の記事であると思う。

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(日経デザイン 2016年4月号 抜粋)

〔前略〕

実はオリンピック・エンブレム問題以降、国民の声を反映し開かれたデザインを目指す動きが強まっている。シンボルマークなどのデザイン案を一般公募して、広く意見を集めながら最終案を決定する形でのデザインプロセスを採用する例がかなり増えていると言う。
「いま公共的なデザインの仕事では、随意契約によるプロ同士のコンペがかなり減っており、一般公募型に切り替わりつつある。問題は、オリンピックという世界的なイベントのエンブレムにもかかわらず、100万円という金額で公募を行ってしまったこと。今後デザインを募集するに当たって、公共団体がこの金額以上を出すことは、おそらくない」。あるデザイナーはこう危惧する。つまりはデザインの価格破壊だ。
実際、スポーツ庁のロゴマークの場合、採用時の対価は「感謝状のみ」。与えられるのは名誉だけだ。同庁は「別のかたちでクリエーティブに対する対価を払えないか、検討はしている」としているが、その具体策は現時点では見えない。公募だと、それでもデザインが集まってしまうのも問題だ。
さらにデザインフィーの価格破壊の動きは民間でも進み始めている。2月、三菱UFJフィナンシャル・グループが、インターネットを活用してデザイン業務などを公募するクラウドソーシングと呼ばれるサービスを活用し、10万8000円(税込み)で新サービスのロゴを募集した。
日本グラフィックデザイナー協会が公表するデザイン価格表では、例えば年間100万円程度の販促費を使うブランドのロゴマークで、80万円程度の対価がふさわしいとしている。この基準からすると10万円という数字は、ほとんど販促にお金を掛けられない零細企業レベルの金額だ。
単純にロゴマークを提供する、絵を提供するというだけの仕事では、これからは確実に高い報酬を取れなくなってきている。デザインを提供する前の、コンサルティングに近い部分から企業としっかりと付き合い、その企業の「問題を解決する」姿勢を見せなければ、デザインは確実に“買いたたかれる”時代となっている。
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奈良の某県議に聞かせてやりたいわ(cf. 2016.10.23「デザイン文化に対する暴挙を許すな」)。あそこは同じ2016年3月に540万円で随意契約してますが。

国民文化祭・なら2017

つまりはコミュニケーション・デザインの危機ということであろうか。
ツルは、例の「Spec Work」論には必ずしも同意しかねる一方、随意契約が一概に不当な方法とは全く思わないので、この記事のように説明されると確かに納得させられちゃう。
10年続いた公募バブルの限界と崩壊、でもさすがに賞金なしとは思わなかった。「血税を無駄遣いできぬ」という一見全うで実は横暴な理屈の前に、デザイン界もひれ伏した形です。そりゃ、それが標準になりゃ全国の公募ガイダーは激減するだろうけど。

添えられたロゴタイプが、2007年に親玉の文部科学省シンボルマークを手がけた勝井によるというのもひんやりです。選定委員も務めたこの御大にはきっと報酬が出たんだろうなあhappy02

にしても赤い銀行=零細企業とはまさに目から鱗!目先の営利に狂奔しているうちに、貧しい国になっていくのね。
いろいろ、オリンピック後がコワイです。

(続く)

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