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2018年8月19日 (日)

【加筆編のおかわり】闇に葬る公募デザイン(山本作兵衛コレクションロゴ)

(承前)

前回の「金川牛ロゴ」とは順番が前後するけれど、八谷早希子による田川市「たがたん」が2012.05.13の「世界記憶遺産登録記念式典」でお披露目された際には、実はもう一つ別の公募デザインも発表されていた。

福岡県田川市
世界記憶遺産「山本作兵衛コレクション」ロゴマーク
井川(いかわ)真奈(田川市:九州産業大学芸術学部デザイン学科4年)
山本作兵衛コレクションロゴ

採用対価は同時募集のキャラクター(=「たがたん」)と同額の10万円。でも応募総数はキャラクター312点に対して79点と、ひどく差をつけられてしまった。むしろこっちの方がメインだったはずと思うのに、この結果はPR不足という以外に理由が思いつかない・・・。それともそんなものなのかな、どこでも。

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(2012.06.01 広報たがわ No.1336 抜粋)

〔前略〕

炭坑節に登場する[お月さん]や煙が立ち上る[二本煙突]を背景に、作兵衛氏の炭坑記録画にも描かれている、[つるはし]を持つ[炭坑労働者]をあしらったこのロゴマークは「一目見て山本作兵衛コレクションを表すマークだとわかるように」という思いを込めて制作されたそうです。
井川さんは「デザインが採用されてとても驚いています。未来永劫、このロゴマークを使ってくれることを期待します」と喜びを口にしました。
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しかし井川の願いは叶わなかったようである。その後の使用例がどうしても(ネット上では)探し出せません。どこからか(どこから?)クレームでもついたってことなのかなあ。
だから、広報紙に載った上掲の式典ステージの写真こそ、このデザインがこの世に存在した事実の唯一のエビデンスということになりそう。結構好きなデザインなんだけどなあ。

山本作兵衛(1892.05.17〜1984.12.19)はご当地筑豊の炭鉱労働者で、還暦を過ぎてから絵筆を取り、坑夫/坑婦の日常を描きとどめた記録画家、というより「ヤマの絵師」としてその名を残す。
ツルは、福岡出身のせいか、あるいは自分の父親が旧制中学の頃田川に住んでいたことも手伝ってか、作兵衛翁の話は子供の時から知ってました。まあ、歴史的に価値のあることなんだろうな、ぐらいの感覚でしかなかったけれど。他の鉱山にはそういうのってないのかなあ、と半ば不思議に思っていたような気もする。
今にして、フランスの郵便配達員Ferdinand Chevalが一人で造り上げたという奇想の建造物、かの「シュヴァルの理想宮」のことをちょっと思い出したりします。

「世界記憶遺産」(現在では、ユネスコによる "Memory of the World/MoW" を和訳した「世界の記憶」という名称が用いられるようになってきているらしい)に選ばれるという大面目については、確かご当地は初め、筑豊炭田関連の施設を世界文化遺産にすることを目論んでいたはずで、作兵衛コレクションはそのためのSupporting Documentとしての扱いに過ぎなかったと記憶している。ところがこの記録画が専門家の現地調査でことのほか高い評価を受けたことから、ハード面本体が文化遺産選考から漏れた後も「目指せ!世界記憶遺産登録!!」てな具合に切り換えて生き残ったのだと思う。登録決定は2011年5月、日本初の世界記憶遺産だった。

降って湧いた僥幸で、コレクションの大半を所蔵する田川市石炭・歴史博物館もにわかに脚光を浴びたことだろう。炭鉱労働経験者による「語り部講座」なども開かれている由です。

やっぱ、こういうRealな歴史に裏打ちされたものって強いよね、先日取り上げた「佐賀県遺産」みたいなふわっとした「歴史企画」モノと比べても(cf. 2018.07.05「剽窃か融通か、誇りなのか懼れなのか」)。
ヤマの歴史というものは、負の記憶たる部分も大きいだろうと思う。同じ福岡県にもう一つあった産炭地、筑後の三池炭田も然り(昭和の時代に大爆発事故を経験している)、栃木県の足尾銅山も然り。そこを、違う文脈に置き換えてみせたのだから。

因みに大牟田市等ではこの3年後、2015年に三池炭坑関連の資産が「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の一つとして世界文化遺産に指定された(一方この時、筑豊炭田からは何も選ばれていない)。日本の公害の原点とされる足尾銅山でも、世界文化遺産にという動きは前からあるけれども、なかなか一枚岩とはいかないようです。

うーん、そんなこんなだからこそ、うやむやに終わってしまった感のあるこのロゴマーク、子細が知りたいんですけれども。

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