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2019年3月

2019年3月31日 (日)

もうやめようよ、ご当地キャラとか。(その226:北海道育樹祭)

(承前)

 

昨年12月下旬には、【その224】で取り上げた「なかのん」をはじめ、塩崎作品が各地でいろいろと発表された。年末だからとか、四半期末だからとかで立て込んだところはあったろう。横目でチラ見してたんですが、図柄入りナンバープレートの方にかまけていました。ここらへんでゆるっとイジりを入れてみますか。

 

北海道
第44回全国育樹祭 シンボルマーク
塩崎榮一
北海道育樹祭

 

おっ、出ましたね。

「三大行幸啓」、すなわち
・全国植樹祭
・国民体育大会
・全国豊かな海づくり大会
に次ぐ地位にあるイベントだと思う。

2020年秋に予定されており(開催日未定)、式典は札幌、「お手入れ行事」は苫小牧で行われることになっている。

 

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「第44回全国育樹祭」では、平成19年6月24日に、苫小牧市字静川(苫小牧東部地域「苫東・和みの森」)で46年ぶりに開催された「第58回全国植樹祭」において、天皇皇后両陛下がお手植えされたアカエゾマツなどを、皇族殿下にお手入れしていただく「お手入れ行事」ならびに「記念式典」などを行います。
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ご当地での開催は1987年以来33年ぶりとなるらしい。というより、そんな短いスパンでの開催ととらえるべきかな(47都道府県の回り持ちであることを考えれば)。

 

「皇族殿下」という言い方は、どうやら育樹祭に特有のものみたい。基本的に、春の全国植樹祭(1969年の第20回富山大会までは「国土緑化大会」の名称だった)では天皇・皇后両陛下が、秋の全国育樹祭では皇太子・皇太子妃両殿下が出席して行われるものであり、そうなると、2020年秋の時点で立太子礼は済んでいるのかということになりそうだ。
しかし調べてみるとこの理解も不正確だった。もう間もなく、2019年5月1日に現皇太子徳仁(なるひと)殿下が天皇に即位するのに伴って、第一皇位継承者たる秋篠宮文仁親王殿下を「皇嗣」に立てることになる(「立皇嗣の礼」は約1年後、2020年4月19日に行われる由)。呼称は「秋篠宮皇嗣殿下」だそうな。「皇太子」ではなく「皇嗣」とされる理由は、「天皇の子ではなく弟だから」だろう(従ってその後も「皇太子不在」が続くのだと思う)。いずれにせよ、「皇族殿下」が秋篠宮を想定していることは間違いあるまい。

 

あ、待てよ。となると、そんな先のことよりまず、この春の植樹祭は新天皇が出席するのであろうか。調べてみると、今年の第70回全国植樹祭は6月2日、愛知県で開催される。即位の1ヵ月後です。ご当地では盛り上がるんだろうなあ。そして秋には第43回全国育樹祭@沖縄県、さらに翌2020年の春の第71回全国植樹祭@島根県、秋の第44回全国育樹祭@北海道と続いていく。
これにさらに夏の東京五輪が絡んでくるわけです。北海道の育樹祭はそのすぐ後、日本国民がなべて腑抜けているであろう時点の挙行となるのネ。

 

で、デザインの方は例によって既視感満点。北海道の[地形]に[森林]+[双葉]、[スコップ]を持って、[三色水滴飾り]を盛って。
つまり;

 

【その52】
茨城県
第56回全国植樹祭 シンボルマーク
塩崎栄一
〔2004年11月頃発表・2005年6月開催〕
茨城植樹祭

 

【その22】
神奈川県横浜市
第20回全国「みどりの愛護」のつどい シンボルマーク
(優秀賞)
塩崎アユミ
〔2008年11〜12月募集〕
全国「みどりの愛護」のつどい

 

【その22】
滋賀県
琵琶湖森林づくりパートナー シンボルマーク
塩崎エイイチ
〔2009年12月発表〕
琵琶湖森林づくりパートナー

 

【その22】
長野県木曽郡木曽町
木曽町環境協議会
エコネットきそ
イメージキャラクター
塩田アユミ/塩崎アユミ
〔2011年4月発表〕
エコネットきそ

 

【その200】
兵庫県宍粟市
森ナビしそう
シンボルマーク
塩崎歩美
〔2017年1月発表〕
森ナビしそう

 

もういい加減見飽きたよ、こんなもん。
脈々と続くテンプレの系譜、やはり15年間何ら変わってない。([三色水滴飾り]の方はもうめんどくさいから再掲するのをやめときます。)

 

(優秀賞)
松岡英男(山形市)
庄司義行(三重県四日市市)
駒井 瞭(大阪府東大阪市)(cf. 2019.03.12「京風テンプレ、もひとつどうどす?」)

 

ちょっと昔めのガイダーが居並びました(大伏線①)。

 

なお、このイベントのポスター原画として公募されたものは次のとおり。

 

「希望をこめて 〜緑の光〜」
大道ひな(北海道深川市立深川中学校3年)

 

正確にはこれは、「深川市を緑にする会」(事務局:深川市建設水道部都市建設課計画係)が同市内の小中高生を対象に行った平成30年度「緑化に関する作品募集」で最高位の優秀賞を獲た作品で、これがその後全道の小中高生による「緑化活動啓発作品コンクール」で最優秀賞に選出され、全国育樹祭ポスターの原画となったもの。藁しべ長者系です
なお、大道はこの2年前、中学1年の時にも、同会の同じ募集で佳作に入賞していた。若きコンテスト荒らしなんでしょう。(大伏線②)

2019年3月30日 (土)

【加筆編】エビフライ、テンプ○風(愛夢ちゃん)

今度は、十二支が一巡りするほど昔々のお話なんですが。

 

愛知県
第16回全国ボランティアフェスティバルあいち・なごや
マスコットキャラクター
 ↓
愛知県社会福祉協議会ボランティアセンター
マスコットキャラクター
愛夢ちゃん
久和かなこ(福岡市)
(愛称)三井栄子(愛知県知多郡武豊町)ほか7名
愛夢ちゃん(当初版)愛夢ちゃん(最終版)

 

当初、2007年9月に名古屋市で開催される全国イベントに向けて作られたキャラで、こう紹介されていた。

 

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愛知の頭文字[A]をモチーフに、手を広げ助け合う姿を表しているキャラクターです。
名古屋名物[エビフライ]の形をした帽子を被り、赤く輝く太陽の下、心を一つに躍動する様子を表しています。
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もとは赤丸が付属していたものかもしれないけど、わかりません。
そしてソレは、本当は名古屋の名物なわけではない。そんなわけがない。単に、名古屋人の好物というだけであろう。

 

♪エビフラ〜〜イが お好きでしょ
 もう少〜〜し つくりましょ
 ありふれ〜〜た カタチでしょ
 それで いいの キャラは

 

♪エビフラ〜〜イが お好きでしょ
 このキャラ〜〜が 似合うでしょ
 あなたは〜〜 忘れたでしょ
 昔 描いた ことも

 

認知症進行中、だけど食欲旺盛にして揚げ物好き、なプロファイリング。
何のことやら。

 

イベント後に肩書(と所属?)が微妙に変えられ、[地名]表示も削られた際にも、名古屋人好物の頭の揚げ物はそのまま残った。

 

名古屋を馬鹿にしている?(ツルはタモリと同じ高校を出ている。)
いーーーえ。

 

イベント当時のプロフィールは次のとおり。

 

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生年月日 2006.10.9

 

出生地 ボラン星雲ティアラ星

 

身長 180cm

 

体重 180kg

 

顔周 400cm

 

性別 不明

 

特徴 秒速1mで走り、何故か日本語を話す。
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それが今ではこう変化している。

 

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名前
愛夢ちゃん

 

生年月日
平成18年10月9日

 

出身地
ボラン星雲ティアラ星

 

年齢
12歳(見た目は歳をとらないらしい)

 

性別
男の子

 

言語
あいむ語(○○だむ!)

 

身長
18cm(イベントなどでみんなに会いに行くときは大きくなる)

 

性格
おっとりしている。目立つのも大好き!!

 

趣味
ダンス(踊るの大好き!)

 

好きな食べ物
エビフライ(地球に来たときに初めて食べたもの。あまりのおいしさに感動し、それからずっと頭にのせている)

 

好きな言葉
「愛を知り 夢を育む ボランティア」

 

家族構成
パパ、ママ、おじいちゃん、おばあちゃん

 

お家
愛知県社協ボランティアセンター

 

地球デビュー
第16回全国ボランティアフェスティバルあいち・なごや(平成19年9月22日・23日)
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作り込みが詳しくなって肉付けがされたというより、何やら世間ずれしてクドくなった印象で、好感は持てない。エビフライ愛をここまで採り入れたのもまた名古屋人自身なわけでしょきっと。でもそれが愛知県全体に妥当するのかどうか、ツルにはわかりませんが。
なお、ティアラ星生命体では出生・成長後に性の分化ないしは転換が起こることが知られている(偽)。あたかも一部の魚類のようである(真)。

 

「好きな言葉」で挙げられているのは、無論、ボランティアフェスティバルのメインテーマ(by 山口昌之:愛知県豊田市)。つまりはこれがキャラクター愛称の由来ともなったわけです。

 

まー、そんなこんなのコザコザより、パッと見の印象はですねえ。

 

≪あ、また井口やすひさのテンプレワークだ!!・・・・・・うん?ん?? (・_- )?≫

 

そう感じた人は少なくないはず。作者の久和がやすひさ作品を意識していたのは間違いないと思う。でも、両手が異常に大きくて、バランスの悪さが目立つんだよねえ。じっと見ていると、ひどく妙なフォルムに感じられてきました。

 

【2016.05.19「公募ガイダーの甘えと傲り:起」】
香川県坂出市
坂出市人権啓発マスコットマーク
じんけん愛坊
井口やすひさ
(愛称)松下 彰
〔2007年9月頃決定〕
じんけん愛坊2

 

【2016.05.20「公募ガイダーの甘えと傲り:承」】
東京都
東京都シルバー人材センター連合
イメージキャラクター
シルバーくん
井口やすひさ
〔2007年7月以前決定〕
シルバーくん

 

手が大きめのものでもこのくらいだもん。こなれの悪さって、そういうことネ。(別にやすひさキャラがこなれがいいと言ってるのじゃありませんよ。)

 

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ウイスキーが、お好きでしょ
 作詞:田口 俊
 作曲:杉 真理
 編曲:斎藤 毅
 歌: SAYURI
 (1991.02.21リリース)

 

ウイスキーが お好きでしょ
もう少し しゃべりましょ
ありふれた 話でしょ
それで いいの 今は

 

気まぐれな 星占いが
ふたりを めぐり逢わせ
消えた恋 とじこめた
瓶を あけさせたの

 

ウイスキーが お好きでしょ
この店が 似合うでしょ
あなたは 忘れたでしょ
愛し あった ことも

 

〔refrain〕

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2019年3月29日 (金)

もうやめようよ、ご当地キャラとか。(その223:くだまる):弐

(承前)

すでに旧聞に属しますが、2019.03.20 14:21、例の「選挙」の開票結果が出たようです。

20190320kudamatsucitycharaelection
ほぼリアルタイムで、Facebookの『下松市長の「くだまつ日記」』に早速掲載された。
候補番号2が圧倒的トップ当選ってことは、この塩キャラ↓に決まったってことやね。

山口県下松市
下松市公式マスコットキャラクター
くだまる
福添(ふくぞえ)歩美(43歳:グラフィックデザイナー)
くだまる(歩美案)

 

つまりはこういうことである。

Kudamalelectionbulettin

・有権者数:3,202名
・投票総数:3,193票(投票率:99.7%)
・有効投票数:3,188票

1位 1,806票
候補番号2(No.592)
くだまる
福添歩美(43歳:大阪市:グラフィックデザイナー)

2位 781票
候補番号1(No.756)
下松コン → くだまる
玉城妃奈(たまき ひな)(20歳:埼玉県鴻巣市:学生)

3位 601票
候補番号3(No.66)
くだまる
高柳順子(47歳:静岡県三島市:グラフィックデザイナー)

しかし、小学生が投票し、中学生が開票事務に当たった本選挙にも、不透明な動きがなしとはしない。
実は、同市サイトに掲載された『「下松市公式マスコットキャラクター」最終候補作品』というPDFファイルが途中で差し替えられていて。

Kudamalcandidates1
 ↓
Kudamalcandidates2

・各作者の年齢が「○代」から確定数値の記載とされたこと(「H31.1.27(審査委員会開催日)現在」との注書きまである!)
・玉城作品のみ愛称が変えられたこと(誰のが改称されたんだろうと思ってたんだよね、「応募作に付けられた名前を参考に」候補名を統一したというのは)

などが判明します。

さらに、開票結果が発表されて数日経ってから(日付は不明)PDFは再度差し替えとなり、これまで公表されていなかった分を含めて各賞がしゃらっと掲載されていた。2度の差し替え!!

・最優秀賞(1点)
Kudamalresults1af
・優秀賞(2点)
Kudamalresults2tamakitakayanagi
・奨励賞(5点) ※うち1点は辞退
・審査委員特別賞(11点)
・市長奨励賞(14点)

「辞退」というのは、最優秀賞や優秀賞に入った作者の重複入賞に伴うものであったかもしれないし、あるいはまた類似問題が生じたのかもしれないが、いずれも推測の域を出ない。
愚blogで取り上げてきた公募ガイダーで言うと、他には審査委員特別賞に里見節子の名前が見える程度である(しっかしこのガイダーも、どの作品を見ても似たり寄ったりだよなあ表情がっかりダッシュ)。
しかし一番びっくりするのは、高柳の年齢が再び修正されていること。

40代 → 47歳 → 45歳

単なるミスだったのだろうか、それとも・・・表情ほっ表情ほっ

記載内容をより適切・正確なものに修正すること自体は、特に×がつくことだとは思わない。問題なのは、これらをだまてんでやったことです。そうしたやり方は昔からあるけど(いずれまた取り上げるつもり)、足跡は残しておくべきだと思う。
実害はない?∵投票行動に影響はない?(初回の差し替えがいつ行われたかは定かでないけど、前にこのネタを取り上げた2月中旬以降であることは間違いないと思う。一方、投票が市内全8小学校で持ち回り実施されたのは3月5日までである。)
いいえ、そんなもんじゃないんだよ、Complianceちうものは。

下松中学校の2年生諸君、よく考えたまえ。
以上の経緯は大人の事情で行われたものであって、君たちの責めに任ずるところではないと思うかもしれない。しかし、大なり小なり関わった者には注視の目が向けられる、それが社会というものだ。本件では特に、「誰が差し替えを指示したのか」という検証の対象に、開票の重責を担った君たちも含まれることになるのだから。

以上。

2019年3月28日 (木)

【覚え書き】黒五輪、黒歴史

(承前)

先月気になったニュースからもう1点。

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(2019.03.15 09:12 朝日新聞)

2020年東京五輪・パラリンピック招致に絡む買収疑惑で、仏司法当局の捜査対象になっている日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長(71)の退任が避けられない状況になっていることが複数の関係者への取材で明らかになった。疑惑を発端に、竹田氏の資質を問う声が大会組織委員会やJOCの関係者らから高まっていた。
竹田氏は01年に会長に就任し、現在10期目。13年9月には、20年大会招致委員会の理事長として招致に成功した。現在は大会組織委の副会長も務める。JOC会長としては6月に改選期を迎えるが、当初は「東京五輪までは竹田体制で」と続投が既定路線だった。
だが、疑惑報道を受けて開いた1月の記者会見で、自らの主張を述べる一方で質問を受けず、7分間で席を立った。この姿勢が世論の反発を招いた。大会組織委関係者らからは「東京大会のイメージを損なう」などと続投を疑問視する声が強まった。
海外出張を取りやめるなど、職務にも支障が出始めた。竹田氏は3月上旬、自ら副会長を務めるアジア・オリンピック評議会がバンコクで開いた総会を欠席した。国内では仏当局の捜査権は及ばないが、国外では身柄拘束を請求される可能性があるためとみられる。関係者によると、国際オリンピック委員会(IOC)からも、竹田氏に対して早期の退任を求める動きが出ていたという。
また、JOCが竹田氏続投を前提に進めていた「選任時70歳未満」の役員定年規定の変更や会長在任期間の長さは、スポーツ庁が策定を進める競技団体の新たな運営指針「ガバナンス(組織統治)コード」に反するとして批判を招いた。
これらの状況を受け、12日のJOC常務理事会では、竹田氏の続投に異議を唱える意見が出ていた。一方で、竹田氏に近い幹部は15日、「追い詰められているという状況ではない。これは竹田さんの心の中の問題」と話した。
買収疑惑を巡っては、仏当局が昨年12月、「東京招致が決まった13年に180万ユーロ(約2億3千万円)の贈賄に関わった疑いがある」として竹田氏をパリで事情聴取したことが今年1月に判明。竹田氏を容疑者として本格捜査に乗り出した。竹田氏は2億3千万円について「シンガポールのコンサルタント会社に支払った適切な対価」と主張しているが、この金が開催都市決定の投票権を持つIOC委員の買収工作に使われた嫌疑がかけられている。
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竹田は結局、3月19日にJOC会長を6月末の任期満了で退任することを発表した。

うーん表情考え中。竹田の肩を持つつもりは全くないけれど、贈賄工作のことはずいぶん前から取り沙汰されていたじゃないか。(cf. 2016.06.19「パロディの不在 下」)

それに、「記者会見を質疑応答も行わずに7分で終了した」ことなんて、「世論の反発を招いた」というより「マスコミの反発を招いた」だけのことじゃないかね、所詮。

究極、もしこの180万ユーロがなかったら東京五輪は到底実現するものではなかったとして、それでもいい、渇すれども盗泉の水を飲まずだと力強く言い切れる日本人はどれほどいますかね。

五輪には日本に来てほしい、でも不正なんてイヤ。マスメディアを含めたそんな「常識」ないしは「良識」こそ、疑ってかかるべき問題ではないだろうか。

2019年3月27日 (水)

【覚え書き】違法ダウンロードに関する議論について:Click 3

(承前)

結局、文化庁の案が自民党をすんなり通ることはなかった。

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(2019.03.08 08:02 産経新聞 抜粋)

インターネット上の海賊版対策として、政府が今国会への提出を目指す著作権法改正案をめぐり、自民党が8日の総務会での了承を見送り、違法ダウンロードに関する項目の削除を求める方針を固めたことが7日、分かった。複数の関係者が明らかにした。改正案はダウンロードの規制対象を全著作物に広げることが柱で、党内から「ネット利用を萎縮させる」との懸念が出ていた。
安倍晋三首相は6日夜、総務会メンバーで超党派のMANGA(マンガ・アニメ・ゲーム)議連会長を務める古屋圭司元国家公安委員長と電話で協議し、削除を指示した。改正案は党文部科学部会などで再び議論し、政府は修正の上、今国会での成立を目指す。

〔後略〕
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(2019.03.08 21:30 朝日新聞 抜粋)

権利者の許可なくインターネットに上げられたと知りながら漫画や写真、論文などをダウンロードすることを違法とする著作権法改正案について、自民党は8日の総務会で議題にしなかった。改正案に慎重な同党議員からは「自民党の良識を示すべきだ」などの声もあがっており、修正や開会中の通常国会への提出先送りの可能性も出てきた。
8日に国会内であった総務会では、著作権法改正案は議題に上がらず、意見も出なかった。1日の総務会では、関係者からの聞き取りが不十分だとして了承を先送りし、文部科学部会などに差し戻しをした。同部会は6日に漫画家らの意見を聴いた上で改めて了承したが、加藤勝信総務会長は8日の記者会見で、「関係者からの様々な懸念の解消の努力が進められていると思う」と述べるにとどめた。党関係者によると、来週にも総務会で再度、議論する見通しだ。

文化庁が示している改正案は、現在は音楽と映像に限って違法としている著作権侵害物のダウンロードの対象範囲を、漫画や写真、小説や論文などネット上のあらゆるコンテンツに拡大する内容。著作権侵害物だと「確定的に」知らなければ違法にはならないが、ネットでの情報収集が萎縮するとして党内にも根強い異論がある。
6日の部会で法改正の先送りを主張したMANGA(漫画)議連会長の古屋圭司・元国家公安委員長は同日、安倍晋三首相と対応を協議した。改正案のうちダウンロードにかかわる部分について、次期国会への先送りが可能かどうかなどについて意見交換したとみられる。
開会中の通常国会に政府が法案提出するためには、来週中にも決着が必要。著作権法の専門家や日本漫画家協会は、違法とする行為を「原作のまま」のダウンロードで、「権利者の利益が不当に害される場合」に絞り込むよう求めており、これに沿った修正をするのか、今国会への提出は見送って臨時国会を目指すのかなど、調整が続く。

ある自民党議員は「原案のまま通すのも、今国会はあきらめるのも極端すぎる。修正という中間地点に落ち着くのではないか」とみる。「このまま国会に出したら野党が必ず反対する。この問題で強行採決はありえない。国会への提出前に折り合えるところを探すしかない」
(及川綾子、上田真由美)
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しかし、3月13日、自民党の文部科学部会と知的財産戦略調査会(会長の甘利 明(元 経済財政担当相)はもとは文化庁案に賛成だったはず)の合同役員会で、今国会への上程は見送りとなった。次は臨時国会狙いですな。

結論から言えば、今回は文化庁の勇み足だったということにはなるんだろう。
放置すれば(マンガという)文化の衰退を招くことにもなりかねない海賊版サイト横行に対して法整備を急ぐ必要がある、その点についてはもちろん異論はない。
国家による情報統制がどうのとか、まるで中国みたいねとかまで思っているわけでもないし、利権だの天下りだのの話も聞き飽きたClicheな感じ。(もっとも、本件が非親告罪とされている点については注意が必要だと思うが。)
一方、文化庁が思ったより著作権者寄りの立場だったことが明るみに出た、それは一つの収穫ないしは教訓だけれど、議論は公明正大に、そして情報公開は正確かつ厳格に、それは当然の大前提と思います。
それなくば、法秩序自体に対する国民の信頼も損なわれるだろう。

ま、この法案がそのまま通ったら、一番困るのは実は伝達者たるメディア、とりわけネットメディアだったんじゃないっすかね(笑)、ちゃんちゃん。

2019年3月26日 (火)

【覚え書き】違法ダウンロードに関する議論について:Click 2

(承前)

朝日の2月の記事には、2月13日の文化審議会著作権分科会で出された各界の意見が載っていて参考になる。

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(2019.02.13 17:09 朝日新聞 抜粋)

〔前略〕

■田村善之・北海道大大学院教授
「(著作権侵害だと知っていたかという)主観的要件だけで絞ろうとすると、(著作権に)詳しければ詳しいほどダウンロードできなくなる。拙速な立法化は避け、慎重な議論をすべきだ。先日あった集会では、漫画家自身からも一般的な創作活動を阻害されかねないという反対の声があがった。範囲を限定し、最適な法案を準備してほしい」

■永江 朗・日本文芸家協会理事(文筆家)
「アップロードは違法なのだから、ダウンロードは違法化しなくてもいいのではないか。主観要件は恣意的に運用される懸念がある。ときの権力が変われば、忖度して主観のガイドラインがどんどん変わるのではないか。私は評論を書くが、日常的にキーワードに沿って自動的にネットで情報を集め、それを毎日チェックして参考にしている。違法か合法かをいちいち気にしているぐらいなら、こんな安い原稿料で原稿を書くのは嫌だとなる。それが萎縮ということ。萎縮というのはじわりじわりと無自覚なところで効いてくる、真綿で首をしめるようなもの。ダウンロード違法化そのものに賛成できない」

■河野康子・日本消費者協会理事
「一番重要なのは、普及啓発。本屋さんの店先からお金を払わずに雑誌を持ってきてしまえば泥棒で、刑法違反。ところが、スマホやパソコンでコンテンツをダウンロードすることは、現在、いいのか悪いのかという判断が示されていない。個人が家で楽しむからという理由でコンテンツをとってきて使っていいものか、しっかりと考え方を整理してコンセンサスを得ないといけない。丁寧な対応は必要だが、一番大事なのはリテラシーの向上だ」

■井村寿人・日本書籍出版協会常任理事
「出版界は、すでに海賊版によって甚大な被害を受けている。ここでこうしている間にも、本当にたくさんの違法アップロードとダウンロードによって売り上げが損失している。違法性を知りながら、大手を振って利用している人たちが本当に多い。慎重に進める必要はあり、留意する点もたくさんあるが、ダウンロード違法化の法改正を進めていただきたい」

■多葉田 聡・日本新聞協会新聞著作権小委員会委員長
「権利者として海賊版対策は非常に必要だと考えているが、表現の自由や知る権利という、大変重要な権利がある。一般のネットユーザーが萎縮することがないように、法制化には十分な配慮をしてほしい」

■森田宏樹・東京大大学院教授
「現に被害が深刻化していないところにも、将来、問題が生ずるかもしれないのであらかじめ未然防止をするために違法化の範囲を拡大するというのは適当ではない。違法と適法の間には非常に広いグレーゾーンがあり、裁判になればそこで白黒がつけられるかもしれないが、一般の人が行為するときには判断がつきかねる、違法だということがはっきりしていれば、人のものを盗んじゃいけないのは当たり前だが、盗品かどうかわからないときにどういう行動をとるかというのが問題だ。国民一般の自由の過度の萎縮をもたらさないようにしなければいけない」
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一読して感じるのは、日本消費者協会の河野&日本書籍出版協会の井村とそれ以外の意見との間に見られる次元の相違である。前二者は「海賊版問題をどうすべきか」について述べているだけで、今般焦点となっているはずの「規制対象拡大の是非」には触れてないんですね。

日本書籍出版協会はいわば本件に関する最大のロビイストだろうから(^_-)、井村の意見についてはさもあらむって程度。(因みに日本漫画家協会はこの文化審議会著作権分科会には入っていないのだろうか?)

強く疑問を感じたのは、河野の意見の方。一見、非常に正論のように見えるところが恐ろしい。各論でいくのも馬鹿馬鹿しいが、一応手数を踏んでおくと。
本屋に売り物として並べられている本を「盗む」のなら、そりゃ許されないのは当たり前。しかし、ネットに並べ立てられているあらゆる情報を、それと同等に論じることはできないと思う(例示としてはむしろ、「骨董屋に並んでいる掛軸が盗品なのか(あるいは贋物なのか)よくわからない。それを買うのは違法か」というケースを考えた方が示唆に富むと思うが。盗品故買、現刑法に言う盗品等関与罪は無論犯罪です)。その意味で、ツルは東京大学大学院教授の森田の意見に近い。
「インターネットは世界をを変える」と喧伝されてから久しいが、それはビジネスのあり方を大きく変えるものであったと同時に、「知」のあり方を変革するものでもあったはずだ。(2010年代後半の現在、流行り言葉となっている「IoT/Internet of Things」は専ら前者の範疇に入るものでしかないと思うが。つまり実は狭い概念ではないか。)
換言すれば、「知」が必ずしも「売り物」として存在するものではなくなったところに、今日のインターネット隆盛の本質(の一端)があるのではないか?今までの常識で語ることは妥当なのか?一般に、インターネットの利用は圧倒的にダウンロード≫アップロードという状況だと思うが、そこに包括的な制限を加えることによって社会に生じる影響 ――メリット、デメリット―― については、どのように捉えるのか。
河野の論はそのあたりの問題をやり過ごしてありきたりの「普及啓発」や「リテラシー」という結論に逃げ込んでいると思える。
「消費者利益への配慮」はどこへ行ったのだ。

(続く)

2019年3月25日 (月)

【覚え書き】違法ダウンロードに関する議論について:Click 1

このところ、愚blog的に気になったニュースから。

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(2019.03.04 12:08 朝日新聞)

法改正を進めるために賛成意見を水増しして与党に報告し、海外での先行事例も恣意的に選んで都合のいいところだけ紹介している――。
権利者の許可なくインターネットに上げられたと知りながら漫画や写真、論文などをダウンロードすることを全面的に違法とする著作権法改正を進めようとしている文化庁が、自民党に正確ではない説明をしたと指摘する「検証レポート」が3日、明治大学知的財産法政策研究所のホームページで公表された。
自民党の文部科学部会などは先月こうした説明などをもとに法改正を了承したが、反対意見も根強く出ている。党の最高意思決定機関である総務会は1日の会合で、関係者への説明不足などを理由に異例の了承先送りを決めたばかり。与党に不正確な判断材料を提供していたとの指摘は今後の議論に影響を与えそうだ。
今回の検証は、違法とする行為をもっと絞り込むように緊急声明で求めていた著作権法の専門家らの一部が行った。法改正について議論した昨年10月から今年2月までの文化審議会の会合でどんな意見が出たのか、自民党議員らに説明するために文化庁が配った資料を入手して分析したという。その結果、自民党への説明で主に以下の問題点があったと指摘した。

■賛成意見を水増しした
文化庁は、法改正の方向性をまとめた2月の文化審議会著作権分科会でどんな意見が出たのかを紹介するため、発言者の名前を伏せて「慎重な意見」を三つ、「積極的な意見」を七つ、説明資料に載せた。
慎重な意見については、8人の委員の連名で慎重な検討を求める意見があったことも付記されてはいたものの、分科会の議事録と照らし合わせると、法改正に「積極的な意見」のうち【学者】の発言とされた四つが、1人の2回にわたる発言を論旨ごとに四つに分割したものだったという。
また、文化庁が示した方向性に賛同している委員の意見は余すところなく紹介しているのに、「慎重な意見」を出した4人の意見は省略し紹介すらしていない▽紹介した慎重派2人の意見についても重要な部分を省略している▽別の慎重派2人の意見の一部を切り取って、積極派であるかのように誤解させている――とも言及。全体として「積極的な意見は少数派であるにもかかわらず、多数派であったような誤解を誘っている」と指摘した。
「政策判断を行う上で、審議会における議論の状況を正確に把握すべき立場である与党に正確な情報が提供されていない点は、立法過程における極めて重大な問題をはらんでいる」と批判している。

■「諸外国の取り扱いも踏まえ」法改正するとの説明←比較対象国の選定がフェアでない
文化庁が配布資料で、ドイツやフランス、カナダなどの「諸外国」を引き合いに出し、著作権侵害物のダウンロードを全面的に違法とすることが国際的な潮流だと読めるような説明をしていることについても、「比較対象国の選択がフェアではない」と指摘した。
米国や韓国、台湾、シンガポールなど、公正な利用と認められれば権利侵害にはならない「フェアユース」の規定を持つ国もたくさんあり、軽微なスクリーンショットやコピー&ペーストなどは適法と考えられているためだ。こうした国々について「なぜ参考にしないのか、理由が不明」だと疑問視。ドイツなどの実情についても都合のいいところだけを紹介した「つまみ食い的な比較」と切り捨てた。
今回の検証レポートは、「これまでの文化審議会の歴史において極めて異例の形で報告書のとりまとめが行われた」とも指摘。文化庁は審議会での審議結果を忠実に法改正案に反映したと主張しているが、審議会の報告書などを無視していると厳しく批判している。
自民党総務会の1日の会合では、今国会で法改正案を成立させる必要性については一致したものの、「(関係者への)説明不足だ」との意見が相次いだ。日本漫画家協会も、違法範囲を絞り込むよう求めていることなどを踏まえ、加藤勝信総務会長は記者会見で、「漫画家の利益を守るのが今回の措置なのに理解が得られていない」と話し、改正案への理解を求めていくよう促している。
(上田真由美)
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え?文化庁、そんなことやってたの!?!?宮田亮平くん、汚点ですよ。マンガ家サイドからもダメ出しされてるじゃん。

ずいぶん乱暴な話だとは思ってたんだよねー、年明けあたりだっけ、この話が報じられ始めた頃から。

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(2019.02.13 17:09 朝日新聞 抜粋)

権利者の許可なくインターネット上にある漫画や写真、論文などあらゆるコンテンツについて、著作権を侵害していると知りながらダウンロードすることを全面的に違法とする方針が13日、文化審議会著作権分科会で了承された。「スクリーンショット」も対象となり、一般のネット利用に影響が大きいことから反対意見が出ていた。悪質な行為には罰則もつける方向で、文化庁は開会中の通常国会に著作権法の改正案を提出する。早ければ来年から施行となる見込み。
著作権者の許可を取らずに勝手にインターネット上に著作物をアップロードすることはこれまでも著作権法違反だったが、ダウンロードは音楽と映像に限って違法だった。被害の深刻な漫画の海賊版サイト対策を機にした今回の改正で、小説や雑誌、写真、論文、コンピュータープログラムなどあらゆるネット上のコンテンツに拡大されることになった。個人のブログやツイッターの画面であっても、一部に権利者の許可なくアニメの絵やイラスト、写真などを載せている場合は、ダウンロードすると違法となる。ブログ内に載せられた歌の歌詞を端末内でコピーして張り付けるような「コピー&ペースト」も禁止だ。
メモ代わりにパソコンやスマートフォンなどの端末で著作権を侵害した画面を撮影して保存する「スクリーンショット」も、著作権を侵害していれば違法ダウンロードに含まれる。著作権侵害だと確定的に知っていた場合に限って違法となるが「ネット利用が萎縮する」と批判が起きていた。

ただ、刑事罰の対象範囲については、著作権分科会の法制・基本問題小委員会で「国民の日常的な私生活上の幅広い行為が対象になる」ため慎重さを求める声が相次ぎ、「被害実態を踏まえた海賊版対策に必要な範囲で、刑事罰による抑止を行う必要性が高い悪質な行為に限定する」こととした。いわゆる「海賊版サイト」からのダウンロード▽原作をそのまま丸ごと複製する場合▽権利者に実害がある場合▽反復継続して繰り返す行為――などを念頭に、今後文化庁が要件を絞り込む。

〔後略〕

(上田真由美)
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一旦ここまで。

「確定的に」違法性の認識があれば、という主観要件は何の限定にも法濫用抑止にもならない。法を知悉する者のみ縛り付ける矛盾を引き起こすだけであーる。
スクリーンショットまで一概にNGとなるのであれば、パソコンメーカーはそんな違法行為を誘発するようなツールをつけられなくなるのじゃないのかね(笑)。このステキなお店のお料理がインスタ映えするからスマホで撮影、というのとはちょっとわけが違うでしょ(シェフの知的所有権を侵害し得る、という点では似てるだろうけど)。

(続く)

2019年3月24日 (日)

【加筆編】地域産業と人々の暮らし(佐伯市ナンバープレート)

一連の自動車用地方版図柄入りナンバープレート第2弾の発表が終わってほっと一息つく間もなく、1月にバイク用のこんなものが発表されてました。

 

大分県佐伯市
佐伯市ご当地ナンバープレート
<いざ、進水!>
垂水秀行(44歳:香川県丸亀市:デザイナー)
佐伯市ナンバープレート

 

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[造船業]など海の産業が盛んな佐伯市を象徴するように、[進水式]をモチーフにデザインしました。「さいき」という読みがわかるように[アルファベット]を添えました。[殿様]が[紙吹雪]を撒きながら祝福し、明るく活気に溢れるイメージに仕上げています。
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選考理由は次のとおり。

 

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左右のバランスや視認性などのデザイン面においてかなり優れており、また[造船業]並びに[進水式]をモチーフとして本市の推進する主要産業の方針とも合致していると思われるため。
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「かなり優れており」って誉め方は一体何なんだよ(苦)。

 

(優秀賞)
<輝け!虹色ジョーヤラ!>
鍜治屋朱寿(すず)(12歳:佐伯市:佐伯市立渡町台小学校6年)
佐伯市ナンバープレート(鍜治屋案)

 

<美しき故郷・心の佐伯市>
工藤和久(53歳:青森県弘前市)
佐伯市ナンバープレート(和久案)

 

あら。工藤一族がナンバープレートで入賞するのは珍しいことではないかいな。
「ジョーヤラ」とは何のことやらでしたが、「八幡五丁の市」という行事の通称らしく;

 

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漁業の盛んな佐伯ならではの祭。「ジョーヤラ ジョーヤラ」のかけ声にあわせ、色鮮やかな[大漁旗]を飾りつけた[船]をこぎ、大漁を祈願する勇壮な海上パレードが行われます。
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てなことが佐伯市観光協会サイトに出てます。

 

俯瞰してみると、二つのことに気づく。
まず1点は、垂水はバイク用とクルマ用でデザインの傾向を意識的に変えているらしいこと。バイクの方がより自由でユーモアがあってツルは好みですが、自動車となるとなかなかそうもいかんのでしょう。
そして、佐伯市を表すのに、ありがちなご当地アイテムの類を用いず、やや堅めの「産業」そのもので作り込んだところは、直球で勝負をかけた印象です。その中で能天気なお殿様を登場させたわけだ。
ちょっとこの辺りにテイストが似ちゃいましたけどね。

 

【2017.06.01「二兎を追う者二兎を獲て、の巻」】
左:
和歌山市
城フェスタ ポスター
堀江 豊
〔2006年8月決定〕
右:
香川県高松市
さぬき高松まつり
ポスター
堀江 豊
〔2007年4月決定〕
和歌山市城フェスタポスター・さぬき高松まつりポスター

 

もう1点。
自動車用地方版図柄入りナンバープレート第2弾 全17地域の募集は、2018年の夏に行われたものが多い。公募ガイダーたちは久しぶりに忙殺されていたことでありましょう。佐伯市の募集はその後、同年11〜12月だから、それこそ一息ついたとこ。そこを頭に入れて見返してみると、和久作品がどうにも気になるんですね。
ビジュアルにせよタイトルにせよ、もとよりLocalityを追求したものではないと思える。むしろ、【2019.03.02「故郷」】で書いた;

 

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地域を超えて、世代を超えて、日本人として共有する/できる原風景ないしは原体験というものがこの歌で(文部省唱歌で?)目指されたのならば、それを特定の「ご当地ネタ」に適用させるというのはちょっと違うんじゃないかと感じる次第。
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というところが当てはまる。それに対する可否は論の分かれるところだろう。ツルも、名物アイテムてんこ盛りのデザインには基本反対の立場ですし。
しかし和久の場合、地域性や個別性に背を向けるということは、即ちボツネタをよそに使い回すことを意味するのではないか。実績上、その疑念は故なきものではないと思う。

 

【2015.02.17「In Quest of the Complete Recycle」】
福島県相馬市
そうま音楽夢工房
シンボルマーク
(優秀賞)
工藤和久
〔2010年2月決定〕
そうま音楽夢工房(和久案)

 

北海道札幌市
札幌交響楽団
札響くらぶ
シンボルマーク
工藤和久
〔2012年2月決定〕
札響くらぶ

 

【2014.01.22「総合芸術家の作り方:Formula 2」】
鹿児島県垂水市
垂水市立垂水中央中学校
校章
工藤和久
〔2009年3月発表〕
垂水中央中学校

 

山形県東置賜郡高畠町
高畠町立高畠中学校
校章
工藤和久
〔2013年9月発表〕
高畠中学校

 

【2013.06.06「Family... Business?? Part 2」】
千葉県浦安市
浦安市立東野小学校
校章
工藤和久
〔2011年2月制定〕
東野小学校

 

【2017.05.24「Hのし過ぎは教育上よくないざーます!!」】
北海道小樽市
小樽市立北陵中学校
校章
工藤和久
〔2016年9月決定〕
北陵中学校

 

ボツじゃなくても採用されたら採用されたでまた使い回すからな、このガイダーの場合。文部省唱歌的本作もどこかの出涸らしではなかったかと憶測する次第。左下に見えるのは[豊後二見ヶ浦]だと思うけど、これとて「伊勢志摩」の「夫婦岩」との相似が気になる(cf. 2019.03.16「イセエビロデオ!の巻」)。

 

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最優秀賞には1万円相当の佐伯市特産品、優秀賞については5千円相当の佐伯市特産品を贈呈いたします。
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ま、力が入らなかったというわけですか。

2019年3月23日 (土)

【加筆編】てんこ盛りHyper Imagination(市原ナンバープレート)

(承前)

 

「市原」候補作品Aの作者コメントに出てきた、「アンケートで多数票のあった市原の美しい特色が前面に出るようにしています」という言葉が気になってちょっと調べてみると。

 

公募の前年の2017年9月、ご当地ナンバー導入に関する市民アンケートが実施されており、その中で「(導入された場合は)どんな図柄なら取り付けたいと思うか」というQに対し、他を相当引き離して上位三傑を占めたのは;

 

「市の花コスモス・市の木イチョウ・市の鳥ウグイス」
「小湊鉄道」
「養老渓谷の紅葉」

 

だった。

 

つまり垂水は、そのうち[小湊鉄道]をメインに、[市の鳥]をスパイスに使って、言い換えれば絞り込んで勝負に出たわけ。
一方、それとは対照的にスーパー全部乗せに仕立てたのがこのあたり。

 


<The Ichihara>
市原ナンバープレート(優秀賞C)

 

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市原市代表的なもので市原市を表現してみました。
[小湊鉄道]から市の花[コスモス]、市の木[イチョウ]、市の鳥[ウグイス]及び養老渓谷の[観音橋]、[紅葉]まで、市原市特有なアイデンティティーを厳密な計算でフレームに組み込んでみました。
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「厳密な計算」がウリでこれっての・・・ひどく脱力しますな。いや、素人にはそれとわからぬところこそプロの計算づくというものであろうか。(だったら言葉で書くなよ

 


<市原市オールスター勢揃い>
市原ナンバープレート(優秀賞E)

 

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市原市にある数多くの有名な名所を揃えました。左上から養老渓谷の[紅葉]、[チバニアン]、[トロッコ列車]、[高滝湖]、[ゴルフ場]、[鶴舞公園]、[コスモス畑]、[田園風景]、[ダイヤモンド富士]、[国分尼寺]、[五井東口]、[コンビナート]と[夜景]。そこへ緑の[五線譜]のそよ風が吹き、[梨]や[イチジク]、[コスモス]、[イチョウ]が譜として奏でています。[オッサくん]は絶対必要かと存じます。このナンバープレートをつけて市外や他県に行った時、それを見た人たちが、市原市の見どころの多さに関心を持って来てくれれば、という願いをこめました。
-----

 

胸焼けしそう・・・。ひたすら盛りに盛っただけで、ストーリーもコンセプトも成立してはいない。(盛り過剰で、コスモスなんて2回出てくる。)

 

制定側がガイダンスを出すことを一概に否定するものではないけれど、結局問われるのはデザインする側/伝達する側のリテラシーということになるのじゃないかな。意図が伝わらなければデザインではないだろう。

 

市民アンケートは、調査票郵送と同市サイト上とで実施され(後者は「誰でも回答可能」だったので厳密には市民限定ではない)、ご当地ナンバーの導入自体に対しては「ぜひ取り付けたい」「まあまあ取り付けたい」の合計が前者では65.7%、後者では79.3%と、それなりに高い賛同を得ていた。住民の合意は形成されていると言い得たわけです。

 

賛成理由の中から目を惹くものを適宜抜き出すと;

 

・袖ヶ浦の知名度が低いから。
・袖ヶ浦ナンバーの地域が広すぎると感じていたから。
・現状の「袖ヶ浦」ナンバーにとても違和感があるから。

 

など。一方、反対理由としては、「今のままで支障ないから」が多く、「袖ヶ浦ナンバーに愛着があるから」はその約3分の1と少数。「その他」として;

 

・市に財政負担がなくてもどこかが負担する。税金のむだである。
・導入に効果があるのか。もっと他のもので「市原」をアピールすべき。
・「市原」の知名度が低く、田舎っぽい印象だから。
・市原の交通マナーが悪くて恥ずかしいから。
・住居地を特定されたくないから。
・房総半島としての一体感を持っていたいから。

 

といった結果だった。

 

もっと興味深いのは自由記載の意見・感想で、いくらか拾ってみると。

 

(肯定的意見)
・市原ナンバーができたら更に市原に誇りが持てる。
・他県で「袖ヶ浦」はどこかと尋ねられることがあるので、「市原」ナンバーを使用することは、全国へPRする手段として有効だと思う。
・「市原」ナンバーを付けることで、事故、違反など無い運転をひとり一人が心掛けると思う。

 

(否定的意見)
・ムダな税金は使わないで欲しい。
・市原ナンバーで地域が活性化するとは思えない。
・地名だけ知れ渡っても中身がともなわなければ意味がない。
・市原の人は運転マナーが悪いので、「市原」に悪いイメージがつきそうだ。

 

(デザイン関連)
・市原と聞いて思い浮かぶ代表的な観光地やランドマーク的なものがない。
・どこにでもある紅葉などでは「市原」とわかりづらいと思う。市原ならではのものを。
・工場の風景は公害イメージがあり好ましくない。
・図柄、カラー等が選択できればよいと思う。

 

(その他)
・「市原」ありきではなく、公募にて決定してほしい。
・ひらがなで「いちはら」にする等の工夫がほしい。
・「市原」をPRするのなら、まずは「五井駅」を「市原駅」にする方がよい。
・現行の袖ヶ浦ナンバーと市原ナンバーを選択できれば、なおよい。
・「市原」では住んでいるところが特定されてしまうのでせめていくつかの市と一緒に導入してほしい。

 

全うなものから住民エゴに類するものまで、様々な本音が並んだ印象。
個人的には、「居住地を特定されたくない」という意見が意味するところについて考え込んでみると、怖い気がしてくる。個人情報保護とはそんなに偉いものなのか。社会を弱体化させる側面も持ち合わせてはいないか。

 

あ!!候補作品Eのスーパーてんこ盛り発想は、「代表的な観光地やランドマーク的なものがない」に対する反論だったのかあ!!そっかそっか(爆)
「工場の風景は公害イメージがあり好ましくない」というのも、あの「四日市」に対するアンチテーゼになってるなw。

2019年3月21日 (木)

【加筆編】人々の暮らしと智恵(市原ナンバープレート)

(承前)

2018年の暮れもさらに押し詰まった頃、遂にあのスペシャリストの自動車用プレート初(だよね?)の採用が発表された。(国交省提出後の発表であることが明らかにされている。)

千葉県市原市
市原版図柄入りナンバープレート
<菜の花と桜と里山トロッコ>
垂水秀行(香川県丸亀市:グラフィックデザイナー)
〔2018.12.27発表〕
市原ナンバープレート

ああ、やっぱり。これまた垂水作品ではないかと目をつけていた。真横から見た[列車]を採り入れるのは垂水お得意の安定的構図。

【2015.10.25「いはばしる バイクの臀の プレートの;C」】
神奈川県鎌倉市
オリジナル・ナンバープレート
垂水秀行
〔2013年11月発表〕
鎌倉市ナンバープレート

【2017.11.27「♪天国じゃなくても ♪信号はなくても」】
千葉県銚子市
銚子市ご当地ナンバープレート
(優秀賞)
垂水秀行
〔2014年11月発表〕
銚子市ナンバープレート(垂水案)

そして決め手となったのは[ウグイス]の扱い。

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一面に広がる[菜の花畑]の向こうに、[里山トロッコ列車]が[桜]を横目にトコトコ走る、市原の春の情景を描いたデザインです。
近くで見ると、[駅舎]の屋根の上で[ウグイス](市の鳥)が列車を見送っている姿が確認できます。手前の菜の花から奥の山々まで、遠近感を意識した構図で大自然の広がりを表現し、「花プロジェクト」でこの景色を作り上げた人々の温かい想いが感じられるように柔らかいタッチで描きました。
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うん、気づいてた。隠し絵的趣向は垂水にはいくつか例があるので。

ううむ。さすがだと思う。他の候補作品のコンセプトと並べてみると、視点の違いははっきりする。

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<自然息づく市原>
市原ナンバーで外出するのが誇らしく、楽しくなることをコンセプトに制作しました。アンケートで多数票のあった市原の美しい特色が前面に出るようにしています。
カドのない柔らかさと折り重なる養老渓谷の紅葉を半透明ほどの正円でポップにあらわし、渓谷から流れる清流が、市の花である秋桜と菜の花の咲く市原の文化であり歴史である小湊鉄道まで広がることで、自然と発展が両立した住み心地の良い市であることをアピールしています。


<地球の鍵>
市原が誇るチバニアン。
地磁気逆転という特徴を有するチバニアンは、地球の歴史を知るうえで重要なカギとなるとのこと。
日本の期待、そして世界の歴史をひも解く役割を背負った地層を“地磁気逆転”というキーワードでイメージ化しました。


<The Ichihara>
市原市代表的なもので市原市を表現してみました。
小湊鉄道から市の花「コスモス」、市の木「イチョウ」、市の鳥「ウグイス」及び養老渓谷の観音橋、紅葉まで、市原市特有なアイデンティティーを厳密な計算でフレームに組み込んでみました。


<あでやかな銀杏と秋桜>
市原市のシンボルであるイチョウとコスモス。
広大な市原の景色をあでやかに彩る、鮮やかかつ繊細な様子を、やさしい微細なタッチでイラスト化しレイアウトしました。
イエローとピンクの配色は、見た目にも鮮やかでありつつ、ナンバーの視認性にも寄与するものと思います。


<市原市オールスター勢揃い>
市原市にある数多くの有名な名所を揃えました。左上から養老渓谷の紅葉、チバニアン、トロッコ列車、高滝湖、ゴルフ場、鶴舞公園、コスモス畑、田園風景、ダイヤモンド富士、国分尼寺、五井東口、コンビナートと夜景。そこへ緑の五線譜のそよ風が吹き、梨やイチジク、コスモス、イチョウが譜として奏でています。オッサくんは絶対必要かと存じます。このナンバープレートをつけて市外や他県に行った時、それを見た人たちが、市原市の見どころの多さに関心を持って来てくれれば、という願いをこめました。


<菜の花と桜と里山トロッコ>
(垂水作品)


<イチョウ・コスモス・ウグイス>
私の中で市原市のイメージは何だろうと考えた時に市原市のシンボル、イチョウ・コスモス・ウグイスの印象が強かったのでそれらをもちいたシンプルなデザインにしました。
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Eをはじめ、他の作者が名所とか名物とかのアイテムを盛ることに終始した(それは決して本公募に限ったことではないけれど)のに対して、垂水はご当地の人々の暮らしや思いに配慮している、敬意を払っているんですね。次元の違いは歴然だと思う。それはご当地に在住しているのか、そうではないのか、そうしたところからは離れた地平の問題だろう。
なお、優秀賞は当初4点程度を選ぶものとされていたところ、垂水作品を除く上記候補6点がそのまま全て優秀賞とされた。

垂水の視座の明確さは受賞コメントにおいても然り。

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この度は、私の作品を選んでいただきまして、ありがとうございました。
[小湊鐵道]を[菜の花]が彩る景色が、市民の皆様の手によって守り続けられていることに感銘を受け、この景色をデザインのモチーフとして選びました。そして、皆様の温かい想いが伝わるように、優しいタッチで表現しました。
このナンバープレートが、市原市のPRだけでなく、ドライバーの皆様の穏やかな気持ちを引き出し、安全運転に繋がるように願っております。
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最後の一文がはっとさせます。前に吊るし上げた「白河」優秀賞の「だるまナンバー」や東京都の「動く防犯の眼」とは対極の思想です。いわば北風と太陽。

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(2018.12.27 市原市サイト 抜粋)

平成30年11月に実施した市民投票には合計11,700票の投票をいただきました。ご協力ありがとうございました。

【投票数】
(1) ウェブサイト投票 1,504票
(2) 一般投票(投票用紙による投票) 3,967票
(3) 学校投票 6,229票

【提案図柄「菜の花と桜と里山トロッコ」への投票数】
・ウェブサイト投票及び一般投票
有効投票5,437票中2,414票(得票率44.4%)で第1位
・学校投票
有効投票6,211票中1,647票(得票率26.5%)で第1位
・総合
有効投票11,648票中4,061票(得票率34.9%)で第1位
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投票は市内在住・在勤・在学者(「学校投票」は中学校だけだったらしい)、1人1回に限られており、Web投票の実務でそれがどのように担保されたのか、そこは不明です。
2位以下の得票数は発表されていないけれども、7点で争われて3分の1超を占めたというのは、圧勝といっていいのじゃないかしらん。(そうでもない?)

まあ、全体のプロセス上ちらちらと目につくところもあるけど、とりあえず、おめでとうございます。

(続く)

2019年3月17日 (日)

【加筆編】屋島再生計画のその後(高松ナンバープレート・高松市ナンバープレート)

(承前)

伊勢志摩ナンバー発表の3日後には、今回四国から唯一のエントリーとなった高松ナンバーが発表された。となればこの作家の動向がいやでも気になってたんですが・・・。

香川県高松市
高松版図柄入りナンバープレート
(優秀作品)<黒松×屋島×饂飩>
垂水秀行(香川県丸亀市)
〔2018.12.21結果発表〕
高松ナンバープレート(垂水案)

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瀬戸内の穏やかな波と海岸を、[うどん]と[ダシ]に重ねて描き、奥には[屋島]を望み、左右には[黒松]を添えました。シンプルかつスマートなデザインを目指し、ナンバーの視認性や、車のデザインとの調和を心がけました。
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おおっ!!麺だけでなくダシにまでこだわりが!!(爆)。でも、海が茶色というのはちょっとマズかったかもね(笑)。

これも垂水作品であろうことは半ば確信していた。

【2015.11.29「いはばしる バイクの臀の プレートの;再び」】
福島県喜多方市
ご当地ナンバープレート
垂水秀行
〔2015年11月発表〕
喜多方市ナンバープレート

【2017.12.03「バイクをクルマに乗り換えて('_'?)」】
香川県
香川版図柄入りナンバープレート
(優秀作)
垂水秀行
〔2017年12月発表〕
香川ナンバープレート(垂水案)

これが世に言う「麺類三部作」である(ウソ)。
願わくば、もしも「博多」ができたあかつきには、長浜ラーメンでこってりデザインしてネと在外博多っ子からのこれはお願い(笑)。「喜多方」よりよかやつを一つよろしく。当然、細麺で頼むじぇ。

その他の入賞は次のとおり。

(最優秀作品)
<高松港から屋島を望む>
中井幹夫(68歳:高松市:陶芸家)
高松ナンバープレート

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[高松港]から[屋島]を見た風景です。高松港には、市の木である[黒松]が植わっています。丁度、女木島から高松港に[めおん号]が入ってきました。
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「めおん号」とは高松市の雌雄島(しゆうじま)海運株式会社の運営する小型フェリーで、高松港−女木島(めぎじま)−男木島(おぎじま)を結んでいる。両島は、泣く子も黙るあのトリエンナーレ、瀬戸内国際芸術祭の会場ともなっていて、4回目の開催年に当たる今年は4月26日〜5月26日の日程で開催されます。おかげでまた乗船も増えるんでしょう、芸術祭様様(男木島では移住者増により、休校中の小学校が再開するという「奇跡」も起きたとか)。

ツルは基本的偏見として、「陶芸家」という肩書に胡散臭ーい印象を持っている(「陶工」と書かれた方がよほど本物っぽい)。NHKでは、「中井さんは、会社を定年退職したあとデザインを本格的に学び始め」とも報道された。
なんぼのもんじゃいと思って調べてみれば、意外なところに情報が落ちていた。NTTデータグループのOB会サイトに以下の文章が寄せられている。

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この度、「高松市ナンバープレート」の応募で私がデザインした「高松港から屋島を望む」が市民投票で1位になり、最優秀賞をいただきました。
市役所からその連絡を受けた時は、私は「115件の中から、プロのデザイナーさんも沢山応募しているのに、なんで私が選ばれたのか」と本当にビックリしました。
2010年、60歳の定年退職と同時に、趣味にしていた陶芸を本格的に学びたいと2年間、島根県の山間部にある島根デザイン専門学校に入学しました。その時に陶芸と一緒に学んだのがデザインでした。そのデザインのソフトも年賀状、個展やグループ展の案内状には使っていましたが、陶芸の方に集中して、あまり使っていませんでした。
2017年10月に島根デザイン専門学校の学園祭に行ったおり、学生さんがデザインした、鳥取県に採用されたナンバープレートの原画を見た時、私も機会があれば作ってみたいと思いました。その後、今年の8月に高松市のナンバープレートの図柄募集があり、挑戦することにしました。
作成するにあたり、メインとする図柄を何にするか悩みましが、幼い時から「屋島」を見て育ちましたので、これしかないと思いました。どの方向から見た屋島をデザインするか考えました。やはり高松市の玄関である高松港から見た屋島が一番と思いました。すぐに高松港へ屋島の写真を撮りに行きました。丁度、女木島からのフェリー「めおん号」が入港して来ました。屋島の緑色と瀬戸内海と空のブルー、そしてめおん号の赤色のバランスがとても素敵でした。
写真からスケッチをしてプレートを完成しました。作業時間は2週間位でしたが、作業全体の1/3は、右側の黒松で何度も手直しをして大変でした。

〔後略〕
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なんと、これ↓に触発されたものだったとは!偶然の集積の為せる僥倖でもあったろう。

【2019.02.15「誰が為に梨は成る:下」】
鳥取版図柄入りナンバープレート
<砂丘、大山、梨>
深石直希
〔2017.08.09選考〕
鳥取ナンバープレート

そうか。団塊の世代のRole Modelとしてぴったりくる感じ。

(優秀作品)
<瀬戸内海に浮かぶ彩り豊かな街・高松>
仙頭英知(愛媛県松山市)
高松ナンバープレート(仙頭案)

-----
光り輝く美しい瀬戸内海から、緑豊かな[屋島]と日本の伝統美を感じさせる栗林公園という高松市を代表する風景を望み、高松市花である[ツツジ]が、より彩豊かで活気ある街をイメージさせるようデザインしました。
-----

以上3点、どれにも[屋島]が描かれた。残りの候補2点も1点は屋島盛り(もう1点は栗林公園)。この史跡の抱える課題は【その116】で書いたけど、ツルはがっかり名所だと思っていたのでm(__)m、ちょっと意外です。
実はご当地ではバイク用プレートも[屋島]あしらいである。

香川県高松市
原動機付自転車 ご当地ナンバープレート
白色(〜50cc)
黄色(〜90cc)
桃色(〜125cc)
〔2013年2月頃発表〕
高松市ナンバープレート

目立たないけど、下部に「瀬戸の都」と書かれていて、人口ではご当地に勝る愛媛県松山市への対抗心がむき出しww。

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下地が白のものは、「屋島」の美しい稜線を緑色で表したほか、黄色の下地は紅葉の「屋島」を、桃色の下地は赤冨士になぞらえて、夕焼けの「屋島」をイメージしたものです。
黄色と桃色につきましては、全国で初めての試みとして、ドット印刷を用いて、色に濃淡をつけ山の高さを強調しています。
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法令で定められた(でしょ?)地色をネタに取り込んでしまうという恐ろしい荒業は初めて見たけど、青色(ミニカー)と緑色(小型特殊自動車:農耕用含む)は作られていない。「ドット印刷」についてはコメントのしようもございません。

再生計画により、「屋島」は今や再び栗林公園以上の扱いになりつつあるのネ。

(続く)

2019年3月16日 (土)

【加筆編】イセエビロデオ!の巻(伊勢志摩ナンバープレート)

(承前)

ちょいと間が空きましたが、自動車用デザインナンバープレート、続けます。

次の公募も注目してたんだけど、一番地味目な、いや抽象的なのが採用された印象で、少し意外だった。

三重県 伊勢市・志摩市・鳥羽市・多気郡明和町・度会郡度会町(わたらいちょう)・同 玉城町(たまきちょう)・同 南伊勢町
伊勢志摩版図柄入りナンバープレート
<吹き行く魅力>
丸山晴美(静岡県伊東市)
〔2018.12.18発表〕
伊勢志摩ナンバープレート

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心温まる有数の観光施設や人の交流を[赤い風]で表し、恵み豊かな海に囲まれ潮風が満ちている様子を[青い風]で表現。赤と青の風が[伊勢神宮の鳥居]をくぐり[志摩半島]に多くのパワーや魅力が吹き渡る所をイメージしてみました。
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ふっ、変な文章。得体の知れぬ説明は、作者が職業デザイナー ―公募ガイダーというより― であることを示していると思う。でも、「デザイン」なる所業が「伝える」ことに本質を持つのならば、それには成功してないと思いますよ、ツルは。
ただ、丸山は2018.12.18の表彰式で「[志摩半島]を置いて1つの地域としてのまとまりを意識したデザインにしました」と語っており、そっちの方がコンセプトとしては重要ではなかろうか。

喜びの/お楽しみの受賞コメントと選定委員長ご講評(三重大学教育学部教授 岡田博明)は。

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(2018.12.20 南伊勢町サイト)

ご当地ナンバープレートに選んで頂き有難うございます。
受賞のお知らせにはビックリと喜びでいっぱいでしたが、移動出来る広告として伊勢志摩の魅力を全国に届きますよう地域の皆様の新たな顔になれたら嬉しいです。
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やっぱり、温度感極めて低し。

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(同上)

最優秀作品は伊勢志摩を代表するような景観や[鳥居]を風が気持ち良く渡るイメージと、エリアの[地図]を画面構成のバランスをとる要素として大変うまく用い、3市4町すべての住民に理解を得られるような作品である。優秀作品についても地域を走る車のナンバープレートデザインとして優れていると思われます。
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(2018.12.18 NHK 抜粋)

選定委員会の委員長を務めた三重大学の岡田博明教授は「ナンバーの数字もしっかりと見えたので評価が高かった。伊勢志摩地域のPRに一役、買ってくれることを期待している」と話していました。
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むむぅぅ。予想されたことではあるが・・・

≪つまらん講評出してんじゃねえよ

失礼。

本公募では、候補6点のうち3点までが写実的に[イセエビ]を描き入れており、「伊勢海老への愛があふれてる」だの「海鮮のクセがすごい!」だのとネットで一部盛り上がっていた。適宜画像とともに紹介しますと。

(優秀作品)
<えびちゃんのお伊勢参り>
世古あゆみ

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この地を訪れたことのない人でも、絵を見れば「伊勢志摩」をイメージできる[伊勢神宮の鳥居]と[伊勢海老]をシンプルに表現してみました。小さなお子様にも親しみやすいようにお絵書き絵本風に仕上げました。見た人がどこかほっこり優しい気持ちになっていただけたらうれしいです。
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ヘタウマ狙いなので、このイセエビはオミット。

<伊勢海老と夫婦岩>
渡會麻莉菜
伊勢志摩ナンバープレート(渡會案)

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伊勢志摩といわれて思いつき、形に特徴のある二つをモチーフにしました。
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そうなんだよね。「わたらい」はもともとこの字を書くのじゃないですかね(そこかよ)。

<世界に誇る伊勢志摩 (Ise-shima proud of to the world)>
高瀬 洋

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伊勢志摩をイメージする、[宇治橋]、[鳥居]、[夫婦岩]、[海女]、[真珠]、リアス式海岸、[島]、[海]、[川](宮川・五十鈴川等)をモチーフに、豊かな自然と文化、歴史と伝統をタイトルの“世界に誇る伊勢志摩”でデザインしました。
プレート下部の[青い色のウェーブ]は、海と川の波や流れ、それと時の流れと[二本の白い曲線]は伊勢参りで賑わった街道を表現したものです。それらの表面には海中で漁をする美しい海女の姿と、伊勢志摩7市町をシンボル化した輝く真珠を配しました。右上部は鳥居と宇治橋でグラデーションで深い森と神域を、左上部の大小のシルエットは夫婦岩で、その間に取り付ける封印ビスを太陽や月に見立てこの地の象徴的な景色を表現しました。また夫婦岩の下に並ぶ大小の[楕円]は、鳥羽湾や英虞湾に点在する島々やリアス式海岸をイメージしたものです。
伊勢志摩の皆さまはもとより、市町以外の方々にも親しみ愛される、視認性と認知性を意識した物語のあるプレートにしました。
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長過ぎ・・・、400字以上。
時折目にする、「日本人にありがちなプレゼンの失敗」というのを思い出した。PowerPointの画面で見せるのと逐一同じ内容でシナリオを読み上げるなんて愚の骨頂!て論です。
高瀬はどうやら伊勢市のインテリアデザイナーらしい。ビスまで無理やり取り込んだてんこ盛りDogmaに囚われて、「物語」は未消化なまま「言葉で語る」ものになっちゃった。
返す刀で斬っとくと、結果発表時には英語から「to」の語が外れ、一層こっ恥ずかしいことになってます。

<伊勢志摩の海>
楠 麻耶
伊勢志摩ナンバープレート(楠案)

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三重県の魚でもあり、「伊勢」を名前に冠する名産の[イセエビ]と伊勢志摩の美しい[リアス式海岸]をモチーフにナンバープレートをデザインしました。飛沫を立てて大きくうねる[波]を前面に描くことで、画面に動きが出ることを意図としています。また、シンプルな表現にすることで、遠くからでも図案が認識できるようにしています。
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いつ頃から「伊勢は伊勢海老」てな話になったんだろう。ツルが京都にいた80年代はそんな風ではなかったような。県魚制定は1990年11月。

<伊勢志摩の暁>
垂水秀行
伊勢志摩ナンバープレート(垂水案)

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[夫婦岩]と[伊勢海老]をモチーフにしたデザインです。夫婦岩の間から昇る[太陽]を、伊勢湾の真珠にも重ねて大きく輝くように表現しました。伊勢海老が元気よく跳ねている姿は、伊勢志摩地域の発展や、観光地としての活気がますます勢いづくように思いを込めています。
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おっ、じゃーん遂に垂水作品、お目見えっす

イセエビがロデオみたいに飛び跳ねる躍動感、祝祭感は他とは比べ物にならない。実はこれ、垂水作品じゃないかと予想はしてました↓。

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【2018.11.21「「ご当地ナンバー」なるものについて:9-A」】

「伊勢志摩」の6点の候補あたり、垂水案が入ってそうな気がしてるんだけどなあ。「高松」の5点の候補ももちろん気になる。
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予想はばっちり。でもよく考えれば、選考側が伊勢海老ネタを何点も残した、特に渡會作品と垂水作品の双方を候補に入れといたのはどうなんだという気がしてくる。

・・・今回の見出し、どれだけの人が読み間違えたでしょう・・・わっはっは。元ネタはご当地にある鳥羽水族館の飼育員スタッフblogの古い記事です(2000.03.02付)。

(続く)

2019年3月14日 (木)

【加筆編】ゆるキャラ City Promotion? その3

(承前)

昨秋のゆるキャラグランプリ2018の組織票問題が、今月に入って四日市市議会で取り上げられたそうな。

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(2019.03.05 15:06 朝日新聞)

三重県四日市市は4日、昨年のゆるキャラグランプリ(GP)で騒動になった大量の「組織票」の実態を、市議会で明らかにした。
1人当たりの1日平均投票数は、最も多い部署で200票だったという。
市のキャラクター「こにゅうどうくん」はネット投票で暫定1位だったが、投票IDに不正があったとして票数が減らされ、最終的に3位になった。
提出された資料や市の説明によると、計1万8620個の投票IDを市役所で作っていた。
投票開始から約1カ月後の8月末に行った調査では、市役所の投票数は6152票。市が投票ID6555個を作り、積み増しを要請した後の10月上旬の調査では1万3602票に増えていた。さらに市は職員1人あたり5票の積み増しを要請するため、投票IDを1万2065個作った。
10月中旬にGP実行委員会が不正IDを削除し、多くのIDが使えなくなった後も、市はさらに積み増し、最終的に不正IDは約2万個になったという。
また、部署間の競争をあおるため、「平日1人当たりの投票平均」の順位付けをしていた。1位は東京事務所の200票。4人で800票を毎日投じていた。2位はGP担当の観光交流課で平均140票、3位がIT推進課の49票だった。(大津正一)
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実に腑抜けた内容だと思う(記事が?議事が?)。市によって用意されたIDが18,620個あったとか、1日1職員当たりの投票が最大200票だったとかの話だけでは片手落ちだ。木を見て森を見ず(おっ、うまい符合やんけ)。ツルの知りたいのは全体像である。

ゆるキャラグランプリ2018での「こにゅうどうくん」の得票は、不正投票と判定された無効票が大量に発生し、ネット投票分 約118万票(11月1日時点中間集計) → 最終得票 約80万票(ネット投票分・当日投票分の合計)と大きく減らされた(cf. 2018.11.20「ゆるキャラGP2018の結末 ―― 四日市市長の主張など」)。因みに当日投票分はネット投票分の3倍にカウントするという傾斜配分方式であり、内訳は公表されていないので、ネット投票分の無効票数は不明である(38万票以上あったことにはなるが)。

グランプリ運営側のこの数字に対し、参加側の四日市市の市職員による(当該IDを用いた)投票はつまりトータル何票あって、無効票何票のうち何%を占めたのか。そこをまず明らかにしなければ、検証の入り口にも立てない。(だからと言って、それを深掘りしたところで四日市市の行政の質の向上につながるかと言うと、そこは疑問だが。)

なお、本件に関し、直近で四日市市長 森 智広のオフィシャルブログ「31万人元気都市四日市に向かって!」に出ているのは次の記載。

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(2019.03.04 12:06)

【市政報告レポート第33号配布中】『ゆるキャラグランプリ2018』『全国学力テスト結果』等を掲載

市政報告レポート最新号、第33号を12月3日の近鉄四日市駅北口の駅立ちから配布開始しています。

第33号の発行が、「ゆるキャラグランプリ2018」直後であったことから、こにゅうどうくんが大健闘した「ゆるキャラグランプリ2018」の振り返りを大きく取り上げています。

『市政報告レポート 第33号』の記事は、以下の構成です。

◆【ゆるキャラグランプリ2018】「こにゅうどうくん」が3位入賞!

◆【全国学力・学習調査】小中学校の全科目で全国平均超え又は同等

◆【全国施行時特例市市長会 会長に就任】

◆【アセットマネジメント基金設置へ】未来の子ども達の為に!

◆【知事との1対1対談】不足する児童精神科医、小児整形外科医

◆【四日市市初の女性副市長が誕生】市川典子氏が就任!

◆活動報告
・街頭演説 8年目に突入!88ヵ月連続実施中!!
・駅立ち634日到達!!

市政報告レポートは、駅立ち、街頭演説等で配布しております。

過去の「市政報告レポート」は、私のホームページにてご覧頂けます。
[URL]
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ああ、お気楽。因みに森市長の「現在の」市政報告レポートは彼のホームページでご覧いただくことはできません。ブログには画像が出てるけど。

二つの記事、「時点」に注目してみると面白いんすよねえ。市議会で本件が取り上げられたのは3月4日。市議会サイトで調べると、4つの「常任委員会/予算常任委員会各分科会」が午前10時から開かれている。
市長は4日の正午過ぎに上述ブログ記事を公開した。午前中の審議が終わってものしたんでしょうか?朝方いろいろ吊し上げられたので、昼メシ時にブログで一矢報いたとかさ(秘書が代筆したりしてるかもだが)。

率直に言って、筋の悪いブログだとは思う。時折現れるコメント書き込み(無論、基本的に匿名/ペンネーム)は露骨に市長を持ち上げるものばかり。少々胸焼けがします。

政治家の情報発信(ブログは公式なものか個人的なものか等々については議論のあるところと思うが)で、野放図に書き込みを許してたら手に負えない事態になっちゃったりもするだろうから、そこをSelectiveにやるのは問題ないと思うんだけど、基本的には。
SNS系ではないオープンなブログで発信するについても、社会的影響の大きさに鑑みてとか、行政というものの公共性とか、ある程度長文化することが多いからとかの理由はあるだろう。そこは別に情報弱者だなんて風には思わない。

ただ、これを戦略的に見てどうなのかと疑問に思うのは、支持者からのコメントばかり公開するという態度では、新規の支持の獲得は望めないということである。政治家が気持ちのよい繭の中に潜り込んでどうする。
そんなことならいっそ腹括ってコメント不可の設定にすりゃいいのに。

2019年3月13日 (水)

【加筆編】「デザイン」という重みに耐え得るか?(群馬いのちの電話)

(承前)

いやなに、今回は小ネタなんですがね。でも見逃すわけにはいかない。
前々回、あのガイダーの名前を久しぶりに目にしたので、前から気になっていたところをば。

群馬県前橋市
社会福祉法人 群馬いのちの電話
ロゴマーク
KUNPU(鹿児島県)
群馬いのちの電話


がっつりこってり、濃ゆーい塩味。
自殺防止の電話で、2017年10月に「開局」25周年を迎えるに際して公募されたものです。どうやら2018年の元日に発表されたらしい。
別に集まりが悪かったわけではなく、応募総数は453名から534点。財政面も人材面も厳しい運営が続く中、採用対価は5,000円の図書券だった。そのことを考えれば、公募としては大健闘ですが。

では、愚blogの関心事として、「KUNPU」なる作者は誰であるか。ツルの見立てでは、ずばり、平山陽一ですね。(ここだけの話、鹿児島って他に公募ガイダーいないんだもん。大変わかりやすっ。)
ひょっとして鹿児島には薫風高校という学校でも存在するのかと思って検索してみたけど、出てきたのは鹿児島市内の「カイロプラクティック 薫風館」のみでしたとさ

まあ、平山にはこんなものだってありましたから。

【2017.03.14「採用はアナタへの復讐」】
大分県警察本部 安全・安心まちづくり推進室
振り込め詐欺撲滅シンボルマーク
平山陽一
〔2012年9月以前制定〕
大分県警振り込め詐欺撲滅(最終版)


【2014.02.13「白昼堂々、Evil Under the Sun: 1st」】
富山県
とやまエコ・ストア制度 統一シンボルマーク
(優秀賞)
平山陽一
〔2013年10月発表〕
とやまエコ・ストア(平山案)


やっぱりね、という再確認ができたに過ぎない。

この辺り↓の塩真似なんぞももいちどツッコんでおこう。忘れませんとも。

【2013.11.28「平成の世に 多き不訶思議」】
岡山県都窪郡早島町
健康づくり推進運動 シンボルマーク
(優秀賞)
平山陽一
〔2013年10月決定〕
早島町健康づくり(平山案)


【その69】
京都府
京都府地域力再生活動 ロゴマーク
塩崎栄一
〔2007年9月発表〕
京都府地域力再生


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【2014.02.16「白昼堂々、Evil Under the Sun: 4th-1」】
埼玉県戸田市
戸田市社会福祉事業団
ロゴマーク
Peace(ペンネーム:鹿児島県)
〔2014年1月発表〕
戸田市社会福祉事業団


佐賀市
佐賀市市民活動応援制度 チカラット
ロゴマーク
平山陽一
〔2012年10月発表〕
佐賀市市民活動応援制度


自分の(そして他人の)いのちを大切にするのはとても大事なこと。自分の(そして他人の)デザインを大切にするのもまた然りであるとツルは思いますがね。それをこのガイダーにはまるで感じない(もしこれが平山作品でなかったら、心よりお詫びしますが)。

因みに本公募では優秀賞が以下のとおり10点も選出されている。

永瀬遥菜(岡山県)
田中侑美(神奈川県)
濱口温男(高知県)
長井勇輝(愛知県)
大川美里(埼玉県)
齋藤哲哉(札幌市)
金津 博(新潟県)
鳴海 徹(札幌市)
井口千鶴子(群馬県)
塩崎エイイチ(大阪府)

画像は公表されてませんが、まあ、推して知るべしの懐かしめなガイダーが入っとります。同法人サイトには、珍しく「尚、選考結果にご質問がある場合はお問い合わせください」なんて書いてあるけど、さすがにツルもそこまで暇人じゃありません。学生くん達に頼んじゃおうかしら。

やっぱりねー、何か一つこういうのを選んだとこって、まず間違いなく他にもテンプレガイダーの作品が入ってくるんだよね。臆病だから一人歩きはしないのさ。

そして、一度味を占めちゃったら、感覚が麻痺してこういうのを何とも思わなくなる。しかし、公募とは、ガイダーの生活や利得の御為に存在するものではないと考えます、一義的には。利用者の視点を持たぬなら、それはデザインとは呼べまい。

2019年3月12日 (火)

【加筆編】京風テンプレ、もひとつどうどす?(健康長寿のまち・京都・北海道育樹祭)

(承前)

前回取り上げたものとはちょっとテイストが違うけれど、[京]モノにはこんなものまである!

京都市
健康長寿のまち・京都市民会議
健康長寿のまち・京都 ロゴマーク
〔2016年5月決定〕
健康長寿のまち・京都

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「希望の[太陽]輝く五山,鴨川の豊かな自然を背景」に,[京](頭,顔,足)[と(都)](右手)の文字が組み合わされたものです。また,「明るく元気な姿」で「広く親しみ愛されるよう」なデザインとして作成されたものです。
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いいえ、五山も鴨川もここには存在しない。
いいえ、右手は血飛沫を上げて屹立する男根のMetaphor。

コメントは和久に負けず劣らず押しつけがま男、その2です。非公表だけど、作者は駒井 瞭以外考えられない。「駒井レッド」collectionがまた増えました。

雑駁ながら、時系列で並べときますと。

【2016.05.15「繰り返す 繰り返す さざなみのように 〜〜ただ繰り返す〜〜 寄せ波」】
秋田市
秋田市エコー少年ラグビークラブ
ロゴマーク
駒井 瞭
〔2004年9月制定〕
秋田市エコー少年ラグビークラブ

【2014.10.05「配達されない三通の手紙:四通目 第三葉」】
愛知県半田市
はんだスポーツの日 シンボルマーク
ハルスくん
駒井 瞭
〔2013年6月デザイン決定〕
ハルスくん

【2015.04.07「十年に一度の逢瀬:4」】
兵庫県高砂市
市制施行60周年 記念シンボルマーク
(入選)
駒井 瞭
〔2013年10月決定〕
高砂市60周年(駒井案)

【2015.03.27「十年に一度の逢瀬:1」】
滋賀県湖南市
湖南市制10周年記念事業 シンボルマーク
駒井 瞭
〔2014年3月発表〕
湖南市10周年

【2016.05.16「繰り返す 繰り返す さざなみのように 〜〜ただ繰り返す〜〜 引き波」】
厚生労働省
「仕事と介護を両立できる職場環境」の整備促進のためのシンボルマーク
トモニン
駒井 瞭
〔2014年3月デザイン発表〕
トモニン

【2014.10.05「配達されない三通の手紙:四通目 第三葉」】
長野県駒ヶ根市
信州駒ヶ根ハーフマラソン 大会シンボルマーク
(応募作品)
〔2014年9月決定〕
駒ヶ根ハーフマラソン(応募作品)

【2018.02.20「未来へと噴き出す血潮:上」】
大阪府八尾市
八尾市シティプロモーション推進ロゴマーク
(市民投票対象作品 No.3)
〔2018年2月発表〕
八尾市ロゴ候補

ほんとはもっとありますけど、厳選して、だね。

でもそれだけぢゃない。「駒井グリーン」も偶然新たに発見しちまいましたぜ。

北海道
第44回全国育樹祭 シンボルマーク
(優秀賞)
駒井 瞭(大阪府東大阪市)
〔2018年12月発表〕
北海道育樹祭(駒井案)

2020年秋に開催される北海道大会のロゴ公募の次点作品。幸か不幸か、例の「駒井式Cryptography Method」はここでは披露されていない・・・。屹立あるのみ。
しかしこの作品で恐ろしいと思うのは、先立つ2016年秋の全国育樹祭京都大会のシンボルマーク公募に出してた(であろう)作品を手直ししただけなんじゃないのという疑いを持っちゃうこと。「き」「ょ」「う」「と」を表しています、木立は北山杉です、なんて言われたら反論しにくいんですよ、それが駒井式ひらがな/アルファベットCryptography Method。
邪推ですか?でも、15年も同じことを繰り返し続けているなんて!!そしていまだにこんなものを選ぶ自治体があるなんて!!

ああ、割れるように頭が痛い。

2019年3月11日 (月)

【加筆編】永遠の京風テンプレ、其の弐(みやこユニバーサルデザイン・京都府安心・安全サポート事業所・京都モデルファーム・京都育樹祭・世界の京都・まちの美化)

(承前)

 

[京]のテンプレデザイン、まだまだたんまりおま。芋のぞぞりこ状態。

 

京都市
みやこユニバーサルデザイン シンボルマーク
(優秀作品)
樋口 功(大阪府)
〔2006年11月決定〕
みやこユニバーサルデザイン(樋口案)

 

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京都の[京]とユニバーサルの[U]の文字をモチーフにして,あらゆる人が使いやすく,楽しくなる姿をデザインしました。
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「あらゆる人が使いやすく」って・・・、ゾクっ。

 

京都府
京都府地域の安心・安全サポート事業所 シンボルマーク
工藤和久(青森県)
〔2010年11月頃発表〕
京都府安心・安全サポート事業所

 

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京都府の[京]の文字を基調に、安心・安全のまちの元気な笑顔でサポート事業所を表現しました。
[紫色]は雅で、伝統と文化と風土に恵まれた京都を明快にイメージしました。
親しみやすく、可愛らしく、多くの人に長く愛されるデザインです。
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ああ、押しつけがま男, as always。雅にも粋にも程遠い。

 

京都府・一般社団法人 京都府農業会議
京都モデルファーム運動 シンボルマーク
平山陽一(50歳:鹿児島市:グラフィックデザイナー)
〔2013年3月発表〕
京都モデルファーム

 

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京都の[京]をモチーフに、自然の恵みを表す豊かにふりそそぐ[太陽]の光と自然・風土をイメージし、中央には農業に取り組む人の笑顔とともに「農業の豊かさ」「実り」を表現したデザイン。
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2011年度というから、8年前の今日発生した東日本大震災の後に始められた運動です。主目的は耕作放棄地の再生と活用。つまり平成版「新しき村運動」ってとこかね(そりゃまたえらく例えが古いがな)。

 

≪繋がることは美しき哉≫

 

京都府
第40回全国育樹祭 シンボルマーク
(優秀賞)
重田 修(70歳:神奈川県:会社員)
〔2015年3月発表〕
京都府育樹祭(重田案)

 

重田はん、アンタその歳で再就職しはったんw(°O°)w!?(2017.11.26「重き霧の晴れて後」)

 

京都市・京都市まちの美化推進事業団
世界の京都・まちの美化市民総行動 ロゴマーク
(優秀賞)
草野敬一
〔2017年11月発表〕
世界の京都・まちの美化(草野案)

 

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京都の[京]をモチーフに、世界一美しいまちの実現を目指して美化活動に励む、市民の積極的な取組と爽やかな行動力を親しみやすく表現しました。
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企画からして、妙。「世界で最も美しい村」連合会よりなお軽い。この「市民総行動」には実行委員会もあって、事務局は京都市環境政策局。[箒]持たしてかの有名な京の「門掃き」を推奨したりするらしいっす、今どき。きっちり自分とこの家の前しか掃いたらあかんのんえ。お隣さんのとこにどんなに落ち葉が溜まってたかて、それやってしもうたら「アンタとこがひとっつも綺麗にせんさかいウチが竹箒持っててんてこ舞いせんならんようになりますわ、ほほ」と意思表示したことになるからです。「京のぶぶ漬け」と同じ原理。「総行動」実現のための苦労が思いやられます。

 

こうしたものが次々に生まれてくるのは、風土の問題でもあろう。80年代、京都に住んでいて、京都(花柳界とかじゃなくて一般の)の美意識の低さにはよく溜め息をつかされた、そんなことを思い出しました。

 

考えてみれば、[京]の中心に開いた口は、テンプレ公募ガイダーが誰しも落ち込む陥穽かもしれぬ。二度とは出られぬ、二度とは入るな、真実の口。

2019年3月10日 (日)

【加筆編】永遠の京風テンプレ、其の壱(京都エコスタイル)

(承前)

前回書いた公募の件、採用されたのはあのSpellbinder。

京都府
一般社団法人 京都産業エコ・エネルギー推進機構
京都エコスタイル認定製品 ロゴマーク
池田克也(埼玉県狭山市)
〔2018年11月発表〕
京都エコスタイル認定製品

(優秀賞)
田中康夫(京都府京丹後市)
塩崎榮一

ううーん。左右対称のカタチがガイダー心をくすぐるんでしょうけど、[京]モノのデザインって、どうしてこうもつまらんのですかね。

【その163】
京都府
京都はあとふる企業認証制度 シンボルマーク
(優秀賞)
塩崎歩美
〔2011年10月発表〕
京都はあとふる企業(歩美案)

【2016.07.05「きょうのわだい」】
京都市
京都はぐくみ憲章 ロゴマーク
梅村元彦
〔2014年1月発表〕
京都はぐくみ憲章

あだしことはさておきつ。
本公募の募集要領上、コンセプトは;

「製品の製造や使用の段階において環境負荷が低くエコが認められる製品であることを想起させるもの」

とされてたんですが、それをよく表したデザインとはとても思えない。池田案は障害者雇用にも子育て支援にも、何だったら京野菜PRにも修学旅行誘致にも転用できちゃうでしょ。'All' means nothing.

表彰式が行われたのは2018年11月26日、ホテルグランヴィア京都にて(榮一の出欠は明らかでない)。京都駅に直結してるあそこです。お金があるのねえ。
採用の対価は図書カードを10万円相当、次点2点に対しては3万円相当。しかし応募は90点にとどまった。

一方、認定製品の方は。

2008年度 16件
2009年度 14件
2010年度 6件
2011年度 10件
2012年度 8件
2013年度 10件
2014年度 10件
2015年度 8件
2016年度 9件
2017年度 9件
 計  100件

内容を見てみると、概して、一見で「エコ製品」とわかりやすいものが年々減り、「スマート○○」なぞを謳うシステム製品だのが増えてきていたようです。

2018年度は次のとおり。

「そのまま持ってけBOX(防災用の収納箱)」
株式会社カスタネット(京都市南区)

「ピークカット用デマンド制御装置」
株式会社シーエープラント(京都市右京区)

「Clic-19,21,40,47 Clicライト-19,21,40,47(金属マット)」
ミヅシマ工業株式会社(京都市南区)

「Solar Link ZERO(自家消費型太陽光発電向け自動出力制御システム内蔵)」
株式会社ラプラス・システム(京都市伏見区)

「環境にヨシの箸(環境に優しい葦を使用したバイオプラスチック製の箸)」
有限会社ワイエス商事(京都市伏見区)

因みに1番目は『広島平和記念公園に世界中から送られた「折り鶴」を再利用』した点、5番目は『宇治川の葦等を原料とした』点がウリ。(そのままストローには使えないんかな?アシの茎。)

以上、5件。そう、5件。過去最少、すごぉく微妙。けれどツルははじめ、これは10年(多分)を越えて心機一転、再び「わかりやすさ」を主眼に選考したんではないかと善意に解釈した。
しかし、実は応募自体がこの5件だけ・・・。そう、5件。えっ!?!?ほんま??何やねん、その盛り下がりっぷりは!!しかも京都市内の企業ばかりだとは。「オール京都体制」はどこへ行ったのだ。「すごぉく微妙」では済まされなくなっていると思う。

(続く)

2019年3月 7日 (木)

もうやめようよ、ご当地キャラとか。(その225:京都エコスタイル)

(承前)

昨年の11月には、こんなものが出ていた。

京都府
一般社団法人 京都産業エコ・エネルギー推進機構
京都エコスタイル認定製品 ロゴマーク
(優秀賞)
塩崎榮一
京都エコスタイル認定製品

なんだかなー。つまんないなー。[ECO]をそのままモチーフにしたのはまあいいとしよう、ヒネリは何もないけれど。[双葉]も超ありふれてるけど、百歩譲って許しましょう。しかし、[五重塔]には品がないし、この構図で無理くり[地球]が中空に浮かんでるのって、どうなのよ。

結局、説明的に過ぎるからこなれてなくて面白くないのね、きっと。
・・・いや、そうじゃないか。「顔」の入っていない、すなわちcharacteriseされていない塩ロゴは、訴求力が大幅に低下する。となるともう、「いつかどこかで見たような」という印象しか残らない, as follows:

【2016.02.01「無明の闇(その11)」】
大阪市
公益財団法人 地球環境センター
大阪CDMネットワーク(現 大阪JCMネットワーク
ロゴマーク
(作者不明)
〔2004年2月設立〕
大阪CDMネットワーク

【その159】
静岡県富士宮市
富士宮国際姉妹都市協会(FISCA)
ロゴマーク
佐藤健二(大阪市)
〔2015年6月発表〕
FISCA

で、この機構は一体何者であるか。

サイトに載っている理事長 中本 晃の「ごあいさつ」を読んでみると。

-----
「一般社団法人 京都産業エコ・エネルギー推進機構」は、京都府内の経済界、大学、行政、産業支援機関が結集し、古くから自然を取り入れたライフスタイルや自然素材を活かした製品づくり、更に関連する有力企業や最先端の研究を行う大学・研究機関の集積など京都の強みを活かしたグリーンイノベーションの創出に取り組み、世界的なエコ・エネルギー課題の解決に貢献することを目的として、京都府、京都市、京都商工会議所及び(公社)京都工業会をはじめとするオール京都体制の下で、平成25年3月に発足しました。
京都府及び京都市からのエコ・エネルギー関連補助金の執行のほか、コーディネーターを配置し、事業者における製品化や販路拡大、エネルギーコスト削減等につながる支援を行うとともに、EMS(エネルギーマネジメントシステム)の普及拡大に向けて、関係者間のネットワークの強化にも努めて参りました。

〔後略〕
-----

First Sentence、実に約240文字。こういうのを「翻訳しにくい日本語」というのよ。トップメッセージがこれではねェ。お里が知れます

一方、「京都エコスタイル認定製品」は同機構の発足より前、遅くとも2008年度には実施されていたもので;

-----
京都エコスタイル製品推奨基準

1. 企業のスタイル
新技術の導入や新たなマーケット開拓など、イノベーションを目指す製品として、企業にとっての経営上の位置づけや思いが明確なもの

2. ものづくりのスタイル
原材料の調達から製造・流通までの段階において、エコの価値が具体的に示せるもの

3. 消費のスタイル
使用から廃棄・再利用までの段階において、消費者のエコ行動につながるもの
-----

てな具合。おそらく、ロゴ制定は制度発足10周年を記念して、とかいうものだったに違いない。

お気づきでしょうか?全体的に、微妙に古臭いんですよ。↑の内容だったら「製品およびサービス」とするのが普通でしょ、今どき。「グリーン購入」やら「グリーン調達」やら「Supply Chain Management」やらの思想が盛り込まれているのはわかるけど、だったらなぜそう書かんのだ。ツルは読んでてイライラしました。
これらを一言にまとめれば、「SDGs/Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標」という流行り言葉になって、それはそれで多少の眉唾感は持つけれども。
"Sustainable" って、そんなに夢のような魔法の言葉なんでしょうか?今や、上場企業のCorporate Governanceまで「持続的成長のために」という御題目がついてるけどさあ?

募集要領には;

-----
一般社団法人 京都産業エコ・エネルギー推進機構(以下、「エコエネ機構」という。)は、「京都の中小企業が生産するエコ製品」を募集・認定し、京都産業の特色を広くアピールする京都エコスタイル認定制度を実施しています。
-----

ともあるので、地場産業に対する制度であることが知れます。

もう一つ、割と大事なことだと思うんだけど、この制度って、この手のものですっかり一般的になった「認証」じゃなくて「認定」なんですねえ。この違い、ツルはあまり詳しくないのだけれども、行政/公権力によるものか否か、強制力/拘束力がどの程度あるかといったところではないかと理解している。「認定」の方が強力なのだろうと。

また、こんな記載↓もあって;

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この要領でロゴマークとは、「シンボルマークとロゴタイプを組み合わせたもの」及び「シンボルマークのみ」を言います。
-----

-----
応募者は、所定の応募用紙に必要事項を記入(日本語に限る。)し、作品とともに、エコエネ機構に郵送により応募して下さい。
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やっぱり20年ぐらい昔な感じがします。今どきメール送信を認めないなんて・・・

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(Wikipedia)

京都議定書(英:Kyoto Protocol)は、1997年12月に京都市の国立京都国際会館で開かれた第3回気候変動枠組条約締約国会議(地球温暖化防止京都会議、COP3)で同月11日に採択された、気候変動枠組条約に関する議定書である。正式名称は、気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書(英:Kyoto Protocol to the United Nations Framework Convention on Climate Change)。
-----

そうか。これがもう20年も経つのか。そのままずっと時が止まってる感じ。
そうか。それが「京都」の待つ永遠性の裏返しなのかも。

2019年3月 3日 (日)

朧月夜

高野辰之&岡野貞一のコンビによる作品、3連発でまいります。

叙景歌の優品、「朧月夜」は1914年(大正3年)の『尋常小学唱歌 第六学年用』が初出である。

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菜の花畠に 入り日薄れ
見渡す山の端 霞深し
春風そよ吹く 空を見れば
夕月かかりて 匂い淡し

里わの火影も 森の色も
田中の小路を 辿る人も
蛙の鳴く音も 鐘の音も
さながら霞める 朧月夜
-----

現代だとねえ、春先にゃ黄砂やらPMナントカやらの飛来でやんやん騒いだりしておるわけですが、色を失いゆく黄昏の世界でなおも鮮やかにこんな和風パステルの情景を描き出した言葉の力にはやっぱり強いものがあると思う。

ふと、奥野和夫が「日本秋祭 in 香港」ロゴマークを制作した際、「一般的に秋というと茶色を連想されることが多いかと思いますが、日本の秋は古来より色鮮やかなイメージがあります」と詞書に書いたことが対照的に思い出されたりもする(cf. 2018.11.18「校章エキスパートの来歴:4」)。

日本秋祭 in 香港

ひらがなで書いてみるとはっきりするけれど、「うさぎおいし かのやま」の「故郷」が「六・四」調(ひょっとしたら「三・三・四」調とも言えるのかもしれない)であるのに対して、こちらはきっちり「四・四・六」調が守られてますな。

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なのはな ばたけに いりひうすれ
みわたす やまのは かすみふかし
はるかぜ そよふく そらをみれば
ゆうづき かかりて においあわし

さとわの ほかげも もりのいろも
たなかの こみちを たどるひとも
かわずの なくねも かねのおとも
さながら かすめる おぼろづきよ
-----

うううむ!

そして、2番の歌詞は豪速球を続けざまにストレートで投げ込んでくる感覚だと、いつも思う。情景の速射砲でたたみかけて、「さながら霞める」で一気にまとめて受ける剛腕の力業です。しかもそれは聴覚にまで及んでいる。2番が好きって人も多いんじゃないかなあ。ツルもそうですが。

一方、この歌の歌詞の解釈については;

・『芭蕉の「菜の花や 月は東に 日は西に」の句とは異なり、この歌の「月」は三日月である(べきだ)』

とか、

・『「1番から2番へは時間の経過があり、「霞」が「朧」に変わるのがその証左』

とか、

・『2番は木火土金水(もくかどごんすい)の五行説に沿っており、その森羅万象が「さながら霞める」と受けているのだ』

とか、

・『だから(2番は)原典どおり句読点つきの記載とすべき』

といった論考も多いようですが、ほんまにどうでもええ。音律に乗せて歌うことが大前提の歌曲の表記方にさほど深い意義があるとは思えないし、解釈の明確化は時に鑑賞の矮小化を招くと思います。

2019年3月 2日 (土)

故郷

今度は、「故郷」について。この文部省唱歌も「春の小川」と同じく、作詞 高野辰之、作曲 岡野貞一によるもの。

1933年(昭和8年)『新訂尋常小学唱歌 第六学年用』掲載

-----
一、
うさぎおひし かのやま
こぶなつりし かのかわ
ゆめはいまも めぐりて
わすれがたき ふるさと

ニ、
いかにいます ちちはは
つつがなしや ともがき
あめにかぜに つけても
おもひいづる ふるさと

三、
こころざしを はたして
いつのひにか かえらん
やまはあをき ふるさと
みずはきよき ふるさと
-----

へー、見事に「六・四」調の連続になってるんだ。

昔からちょっと不思議に思ってるんだけど、「恙無しや」は「恙無きや」ではないのかという個人的疑問が消えない(さほど文語体の文法に詳しいわけではないので)。でもそれだと「恙無きか」としないと文法的に成立しないのかしら。

この歌のことは、「信州ゆかりの不思議な歌」というサイトにいろいろな情報が出ている。

http://home.r07.itscom.net/miyazaki/zakki/uta.html

-----
文語体だが誰にでもわかる内容で、せつせつと日本人の琴線にふれて美しい。「ウサギを食べると美味しい」と覚えた子どももやがて大きくなると理解する。この歌を作詞したのは高野辰之(たかのたつゆき)(明治9/1876〜昭和22/1947)という信州人だ。長野県北部の寒村、下水内(しもみのち)郡豊田村(合併で現在は中野市)出身の国文学者で、東京音楽学校(現、東京芸術大学音楽学部)教授のとき、同じ学校の声楽の助教授だった岡野貞一とともに、文部省唱歌をつくることを命じられる。
いわば業務命令によるコンビだが、この二人による唱歌は驚くほど多く、しかも今なお歌い継がれている。

〔中略〕

著作権という考え方がない時代で、すべて「文部省唱歌」で片づけられ、家族も戦後になってはじめて知ったものもあるという。
-----

うんうん。小学校の音楽の教科書にも、「文部省唱歌」には作者名がクレジットされてなかったよね。

-----
唱歌「故郷」(ふるさと)は海外にいる日本人が涙を流す歌だ。もはや「国民歌」、あるいは「君が代」につぐ「第2国歌」という地位を占めているといってもよかろう。

〔中略〕

戦後ソ連によってシベリアに抑留された日本兵はこの歌に滂沱の涙を流したという。
私もそうした場面に出会ったことがある。一度目は1ドル360円時代のロンドンで、二度目は1ドル100円台のアムステルダムで。この間10数年があいていたが、それぞれ日本企業のビジネスマンと家族がいるパーティーの席だった。日本企業の尖兵としての気負いや、郷愁が入り混じっての涙だろうが、3日前に日本を出たばかりの私もほろりとした。
「うさぎ追いし かの山・・・」の故郷の山河の描写のあたりはともかく、「いかにいます 父母・・・」あたりでもうだめだ。忘却の彼方から一気にそれぞれの人の「故郷」を引っ張り出して懐旧にひたらせてしまうのだ。
-----

「第2国歌」という指摘が真に的確なものかどうかはわかりかねます、何と言っても「さくらさくら」(作者不明;近世の箏曲にルーツありとなむ)なる強力なライバルもいますので。
しかし、ここに書かれた在外邦人の心情は確かにそのとおりだろうと思う。そこから考えると、「この歌のモデルとなった場所はどこか」などという詮索、じゃない考証はどうでもいい気がしてくる。「名も知らぬ 遠き島より 流れ寄る 椰子の実一つ」(「椰子の実」:作詞 島崎藤村:cf. 2013.03.13「五七調の歴程」)はどこが舞台かなんてのとは本質的に異なると思う。
そして、地域を超えて、世代を超えて、日本人として共有する/できる原風景ないしは原体験というものがこの歌で(文部省唱歌で?)目指されたのならば、それを特定の「ご当地ネタ」に適用させるというのはちょっと違うんじゃないかと感じる次第。

このサイトには次のようなAnecdoteも紹介されている。

-----
日本人にとって「故郷」(ふるさと)はいまや国民歌というべき存在になったと思うが、その歌の力を如実に示したのが2011年3月11日日本を襲った東日本大震災だった。被災地で、神戸で、遠く離れた海外で、それぞれ励ましと復興を願ってこの歌が歌われた。
そうした中で圧巻は、世界三大テノールの一人、プラシド・ドミンゴ(70)が震災から1ヵ月後に歌った「故郷」だろう。震災とそれに伴う福島原発のメルトダウン事故で多くの音楽会が公演を中止したなかで彼だけはあえて来日した。これまで20回以上訪れ、コンサートやオペラ公演を行ってきたドミンゴは3000人の聴衆を前に「今回は特別に意義の深いコンサートだと思って来日しました。私もメキシコ地震で親戚を亡くしましたので皆さんの気持ちがよく分かります。いつの日か必ず強い気持ちを取り戻せる日が来ることを皆さんも信じていてほしい」と語りかけ、収益の一部と会場で集めた募金を被災地に送った。
そして「プラシド・ドミンゴ コンサート イン ジャパン 2011」(4月10日、東京・渋谷NHKホール)のアンコール曲に選んだのが「故郷」だった。「皆さんも一緒に」とソプラノのヴァージニア・トーラとともに日本語で最後まで歌い上げた。コンサートを聴いていた銀行家が後に書いているところでは「2番の『如何にいます父母、恙なしや友垣、雨に風につけても、思い出ずる故郷』の部分では、聴衆はほとんど全員が立ち上がり、涙を流していた。想像を絶する被災と苦難の中で、日本の原風景のような東北の風景を思い浮かべ、私もとめどなく涙が流れた。」
-----

ううう、涙腺をいたく刺激されます。

そしてもう一つ。
3番の「志を果たして いつの日にか帰らん」には、「志を果たすまでは帰らない/帰れない」という含意があるか否かという議論があるらしい。ツルは明確に意識はしていなかったけれど、ずっと肯定説で解釈してきたように思う。
けれど、バブル期に社会人となり、気がついてみればあと数年で定年退職を迎えるような年齢まで生きてみて、すこぅし違う感覚にもなってきている今日この頃(T-T)。福岡に帰ることばかり考えていたりもする。もちろんこんなこと↓も思いますけれども。

-----
小景異情(その二)
   室生犀星

ふるさとは 遠きにありて 思ふもの
そして悲しく うたふもの
よしや うらぶれて
異土の乞食(かたゐ)と なるとても
帰るところに あるまじや
ひとり都の ゆふぐれに
ふるさとおもひ 涙ぐむ
そのこころもて
遠きみやこに かへらばや
遠きみやこに かへらばや
-----

2019年3月 1日 (金)

春の小川

春の弥生の三月を迎えまして。
今回は、【その224】で少し書いた「春の小川」のことについて深掘り。文部省唱歌のあれこれについては、既に優れた論考がネット上にも各種存在するので、それらのつまみ食い状態になっちゃいますが

この歌は高野辰之が作詞、岡野貞一が作曲したとされるけれども、「文部省唱歌」の例に漏れず当初は作者名が伏せられており、また、高野の直筆原稿も見つかっていないらしい。

いわゆる文部省唱歌にはよくあることだけど、この歌の歌詞は途中で改変されている、それも2度。
このことについては、東京都渋谷区にある富ヶ谷一丁目通り商店街のサイトに詳しい。

http://www.tomi-1.com/index.asp?patten_cd=17&page_no=192

「春の小川」の舞台となったのは実はご当地の河骨川(こうほねがわ)だったというんですな。この川は1964年、宇田川などと同様に暗渠となり、もはや往時を偲ぶべくもないけれども。(高野の出身地の長野県中野市ではまた違う説もあるようですが。)

歌詞を発表順で見てみよう。

【1】1912年(明治45年・大正元年)『尋常小学唱歌 第四学年用』掲載

-----
一、
春の小川はさらさら流る。
岸のすみれやれんげの花に、
にほひめでたく、色うつくしく
咲けよ咲けよと、ささやく如く。

二、
春の小川はさらさら流る。
蝦やめだかや小鮒の群に、
今日も一日ひなたに出でて
遊べ遊べと、ささやく如く。

三、
春の小川はさらさら流る。
歌の上手よ、いとしき子ども、
聲をそろへて小川の歌を
うたへうたへと、ささやく如く。
-----

初出の時は3番まであったんですねえ。

【2】1942年(昭和17年)『初等科音楽 一』掲載

-----
一、
春の小川は、さらさら行くよ。
岸のすみれや、れんげの花に、
すがたやさしく、色うつくしく
咲いてゐるねと、ささやきながら。

二、
春の小川は、さらさら行くよ。
えびやめだかや、小ぶなのむれに、
今日も一日ひなたでおよぎ、
遊べ遊べと、ささやきながら
-----

初出から30年経ち、時局柄、国民学校への移行に伴い改められた教科書に載ったもの。文語体から口語体への転換が行われている。

-----
当時の国民学校令施行規則では国語で文語文を教えるのは5年生以上と定められていた。そのため、林 柳波が歌詞を口語体に変えた。さらに3番の歌詞を削除した。
-----

3番を削ったことに関しては、誠に大英断だったと思う。

【3】1947年(昭和22年)『三年生の音楽』掲載

-----
一、
春の小川は、さらさら行くよ。
岸のすみれや、れんげの花に、
すがたやさしく、色うつくしく
咲けよ咲けよと、ささやきながら。

二、
春の小川は、さらさら行くよ。
えびやめだかや、小ぶなのむれに、
今日も一日ひなたでおよぎ、
遊べ遊べと、ささやきながら。
-----

【2】から5年、戦争は終わり、1947年に文部省著作により出された最後の音楽教科書に載った歌詞。これがその後、民間発行の教科書にも受け継がれた。

以上のことを今回初めて知って、ツルはかなり驚いている。1番の最後のところを「咲いているねと ささやきながら」と歌うのは、「咲けよ咲けよと ささやきながら」を現代風に崩したものだとばかり思っていたので。
時系列からすると逆だったんですね!!「咲いているねと」が1942年の【2】、「咲けよ咲けよと」が1947年の【3】。もっと言うなら、この部分は1912年の【1】に戻ったわけだ。【3】で習った1962年生まれのツルは、【2】の「咲いているねと」が評判悪かったからだと理解しました。言葉が軽いだけではなく、全体の情景が相当変わってしまう(これは前々からよく指摘されてきたところだと思うが)。

さらに驚いたのは次のくだり。

-----
現在小学校で教えられている歌詞
1947年版の歌詞を教えるところもあり、また、新仮名遣いに改められた1942年版の歌詞を教えるところもあり、地域、教科書、学校によってまちまちである。また、合唱用としてオリジナルの歌詞を教わる場合もある。
-----

ホントですか
なんでも、安田祥子・由紀さおり姉妹は【1】で通しているそうな。「合唱用として」の意味するところは、3番まで歌うということなんだろう。渋谷区では、中野市では、どう教えているんでせうねえ。

(続く)

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