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2019年3月 1日 (金)

春の小川

春の弥生の三月を迎えまして。
今回は、【その224】で少し書いた「春の小川」のことについて深掘り。文部省唱歌のあれこれについては、既に優れた論考がネット上にも各種存在するので、それらのつまみ食い状態になっちゃいますが

 

この歌は高野辰之が作詞、岡野貞一が作曲したとされるけれども、「文部省唱歌」の例に漏れず当初は作者名が伏せられており、また、高野の直筆原稿も見つかっていないらしい。

 

いわゆる文部省唱歌にはよくあることだけど、この歌の歌詞は途中で改変されている、それも2度。
このことについては、東京都渋谷区にある富ヶ谷一丁目通り商店街のサイトに詳しい。

 

http://www.tomi-1.com/index.asp?patten_cd=17&page_no=192

 

「春の小川」の舞台となったのは実はご当地の河骨川(こうほねがわ)だったというんですな。この川は1964年、宇田川などと同様に暗渠となり、もはや往時を偲ぶべくもないけれども。(高野の出身地の長野県中野市ではまた違う説もあるようですが。)

 

歌詞を発表順で見てみよう。

 

【1】1912年(明治45年・大正元年)『尋常小学唱歌 第四学年用』掲載

 

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一、
春の小川はさらさら流る。
岸のすみれやれんげの花に、
にほひめでたく、色うつくしく
咲けよ咲けよと、ささやく如く。

 

二、
春の小川はさらさら流る。
蝦やめだかや小鮒の群に、
今日も一日ひなたに出でて
遊べ遊べと、ささやく如く。

 

三、
春の小川はさらさら流る。
歌の上手よ、いとしき子ども、
聲をそろへて小川の歌を
うたへうたへと、ささやく如く。
-----

 

初出の時は3番まであったんですねえ。

 

【2】1942年(昭和17年)『初等科音楽 一』掲載

 

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一、
春の小川は、さらさら行くよ。
岸のすみれや、れんげの花に、
すがたやさしく、色うつくしく
咲いてゐるねと、ささやきながら。

 

二、
春の小川は、さらさら行くよ。
えびやめだかや、小ぶなのむれに、
今日も一日ひなたでおよぎ、
遊べ遊べと、ささやきながら
-----

 

初出から30年経ち、時局柄、国民学校への移行に伴い改められた教科書に載ったもの。文語体から口語体への転換が行われている。

 

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当時の国民学校令施行規則では国語で文語文を教えるのは5年生以上と定められていた。そのため、林 柳波が歌詞を口語体に変えた。さらに3番の歌詞を削除した。
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3番を削ったことに関しては、誠に大英断だったと思う。

 

【3】1947年(昭和22年)『三年生の音楽』掲載

 

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一、
春の小川は、さらさら行くよ。
岸のすみれや、れんげの花に、
すがたやさしく、色うつくしく
咲けよ咲けよと、ささやきながら。

 

二、
春の小川は、さらさら行くよ。
えびやめだかや、小ぶなのむれに、
今日も一日ひなたでおよぎ、
遊べ遊べと、ささやきながら。
-----

 

【2】から5年、戦争は終わり、1947年に文部省著作により出された最後の音楽教科書に載った歌詞。これがその後、民間発行の教科書にも受け継がれた。

 

以上のことを今回初めて知って、ツルはかなり驚いている。1番の最後のところを「咲いているねと ささやきながら」と歌うのは、「咲けよ咲けよと ささやきながら」を現代風に崩したものだとばかり思っていたので。
時系列からすると逆だったんですね!!「咲いているねと」が1942年の【2】、「咲けよ咲けよと」が1947年の【3】。もっと言うなら、この部分は1912年の【1】に戻ったわけだ。【3】で習った1962年生まれのツルは、【2】の「咲いているねと」が評判悪かったからだと理解しました。言葉が軽いだけではなく、全体の情景が相当変わってしまう(これは前々からよく指摘されてきたところだと思うが)。

 

さらに驚いたのは次のくだり。

 

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現在小学校で教えられている歌詞
1947年版の歌詞を教えるところもあり、また、新仮名遣いに改められた1942年版の歌詞を教えるところもあり、地域、教科書、学校によってまちまちである。また、合唱用としてオリジナルの歌詞を教わる場合もある。
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ホントですか なんでも、安田祥子・由紀さおり姉妹は【1】で通しているそうな。「合唱用として」の意味するところは、3番まで歌うということなんだろう。渋谷区では、中野市では、どう教えているんでせうねえ。

 

(続く)

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