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2019年3月26日 (火)

【覚え書き】違法ダウンロードに関する議論について:Click 2

(承前)

朝日の2月の記事には、2月13日の文化審議会著作権分科会で出された各界の意見が載っていて参考になる。

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(2019.02.13 17:09 朝日新聞 抜粋)

〔前略〕

■田村善之・北海道大大学院教授
「(著作権侵害だと知っていたかという)主観的要件だけで絞ろうとすると、(著作権に)詳しければ詳しいほどダウンロードできなくなる。拙速な立法化は避け、慎重な議論をすべきだ。先日あった集会では、漫画家自身からも一般的な創作活動を阻害されかねないという反対の声があがった。範囲を限定し、最適な法案を準備してほしい」

■永江 朗・日本文芸家協会理事(文筆家)
「アップロードは違法なのだから、ダウンロードは違法化しなくてもいいのではないか。主観要件は恣意的に運用される懸念がある。ときの権力が変われば、忖度して主観のガイドラインがどんどん変わるのではないか。私は評論を書くが、日常的にキーワードに沿って自動的にネットで情報を集め、それを毎日チェックして参考にしている。違法か合法かをいちいち気にしているぐらいなら、こんな安い原稿料で原稿を書くのは嫌だとなる。それが萎縮ということ。萎縮というのはじわりじわりと無自覚なところで効いてくる、真綿で首をしめるようなもの。ダウンロード違法化そのものに賛成できない」

■河野康子・日本消費者協会理事
「一番重要なのは、普及啓発。本屋さんの店先からお金を払わずに雑誌を持ってきてしまえば泥棒で、刑法違反。ところが、スマホやパソコンでコンテンツをダウンロードすることは、現在、いいのか悪いのかという判断が示されていない。個人が家で楽しむからという理由でコンテンツをとってきて使っていいものか、しっかりと考え方を整理してコンセンサスを得ないといけない。丁寧な対応は必要だが、一番大事なのはリテラシーの向上だ」

■井村寿人・日本書籍出版協会常任理事
「出版界は、すでに海賊版によって甚大な被害を受けている。ここでこうしている間にも、本当にたくさんの違法アップロードとダウンロードによって売り上げが損失している。違法性を知りながら、大手を振って利用している人たちが本当に多い。慎重に進める必要はあり、留意する点もたくさんあるが、ダウンロード違法化の法改正を進めていただきたい」

■多葉田 聡・日本新聞協会新聞著作権小委員会委員長
「権利者として海賊版対策は非常に必要だと考えているが、表現の自由や知る権利という、大変重要な権利がある。一般のネットユーザーが萎縮することがないように、法制化には十分な配慮をしてほしい」

■森田宏樹・東京大大学院教授
「現に被害が深刻化していないところにも、将来、問題が生ずるかもしれないのであらかじめ未然防止をするために違法化の範囲を拡大するというのは適当ではない。違法と適法の間には非常に広いグレーゾーンがあり、裁判になればそこで白黒がつけられるかもしれないが、一般の人が行為するときには判断がつきかねる、違法だということがはっきりしていれば、人のものを盗んじゃいけないのは当たり前だが、盗品かどうかわからないときにどういう行動をとるかというのが問題だ。国民一般の自由の過度の萎縮をもたらさないようにしなければいけない」
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一読して感じるのは、日本消費者協会の河野&日本書籍出版協会の井村とそれ以外の意見との間に見られる次元の相違である。前二者は「海賊版問題をどうすべきか」について述べているだけで、今般焦点となっているはずの「規制対象拡大の是非」には触れてないんですね。

日本書籍出版協会はいわば本件に関する最大のロビイストだろうから(^_-)、井村の意見についてはさもあらむって程度。(因みに日本漫画家協会はこの文化審議会著作権分科会には入っていないのだろうか?)

強く疑問を感じたのは、河野の意見の方。一見、非常に正論のように見えるところが恐ろしい。各論でいくのも馬鹿馬鹿しいが、一応手数を踏んでおくと。
本屋に売り物として並べられている本を「盗む」のなら、そりゃ許されないのは当たり前。しかし、ネットに並べ立てられているあらゆる情報を、それと同等に論じることはできないと思う(例示としてはむしろ、「骨董屋に並んでいる掛軸が盗品なのか(あるいは贋物なのか)よくわからない。それを買うのは違法か」というケースを考えた方が示唆に富むと思うが。盗品故買、現刑法に言う盗品等関与罪は無論犯罪です)。その意味で、ツルは東京大学大学院教授の森田の意見に近い。
「インターネットは世界をを変える」と喧伝されてから久しいが、それはビジネスのあり方を大きく変えるものであったと同時に、「知」のあり方を変革するものでもあったはずだ。(2010年代後半の現在、流行り言葉となっている「IoT/Internet of Things」は専ら前者の範疇に入るものでしかないと思うが。つまり実は狭い概念ではないか。)
換言すれば、「知」が必ずしも「売り物」として存在するものではなくなったところに、今日のインターネット隆盛の本質(の一端)があるのではないか?今までの常識で語ることは妥当なのか?一般に、インターネットの利用は圧倒的にダウンロード≫アップロードという状況だと思うが、そこに包括的な制限を加えることによって社会に生じる影響 ――メリット、デメリット―― については、どのように捉えるのか。
河野の論はそのあたりの問題をやり過ごしてありきたりの「普及啓発」や「リテラシー」という結論に逃げ込んでいると思える。
「消費者利益への配慮」はどこへ行ったのだ。

(続く)

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