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2019年3月 3日 (日)

朧月夜

高野辰之&岡野貞一のコンビによる作品、3連発でまいります。

叙景歌の優品、「朧月夜」は1914年(大正3年)の『尋常小学唱歌 第六学年用』が初出である。

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菜の花畠に 入り日薄れ
見渡す山の端 霞深し
春風そよ吹く 空を見れば
夕月かかりて 匂い淡し

里わの火影も 森の色も
田中の小路を 辿る人も
蛙の鳴く音も 鐘の音も
さながら霞める 朧月夜
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現代だとねえ、春先にゃ黄砂やらPMナントカやらの飛来でやんやん騒いだりしておるわけですが、色を失いゆく黄昏の世界でなおも鮮やかにこんな和風パステルの情景を描き出した言葉の力にはやっぱり強いものがあると思う。

ふと、奥野和夫が「日本秋祭 in 香港」ロゴマークを制作した際、「一般的に秋というと茶色を連想されることが多いかと思いますが、日本の秋は古来より色鮮やかなイメージがあります」と詞書に書いたことが対照的に思い出されたりもする(cf. 2018.11.18「校章エキスパートの来歴:4」)。

日本秋祭 in 香港

ひらがなで書いてみるとはっきりするけれど、「うさぎおいし かのやま」の「故郷」が「六・四」調(ひょっとしたら「三・三・四」調とも言えるのかもしれない)であるのに対して、こちらはきっちり「四・四・六」調が守られてますな。

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なのはな ばたけに いりひうすれ
みわたす やまのは かすみふかし
はるかぜ そよふく そらをみれば
ゆうづき かかりて においあわし

さとわの ほかげも もりのいろも
たなかの こみちを たどるひとも
かわずの なくねも かねのおとも
さながら かすめる おぼろづきよ
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うううむ!

そして、2番の歌詞は豪速球を続けざまにストレートで投げ込んでくる感覚だと、いつも思う。情景の速射砲でたたみかけて、「さながら霞める」で一気にまとめて受ける剛腕の力業です。しかもそれは聴覚にまで及んでいる。2番が好きって人も多いんじゃないかなあ。ツルもそうですが。

一方、この歌の歌詞の解釈については;

・『芭蕉の「菜の花や 月は東に 日は西に」の句とは異なり、この歌の「月」は三日月である(べきだ)』

とか、

・『「1番から2番へは時間の経過があり、「霞」が「朧」に変わるのがその証左』

とか、

・『2番は木火土金水(もくかどごんすい)の五行説に沿っており、その森羅万象が「さながら霞める」と受けているのだ』

とか、

・『だから(2番は)原典どおり句読点つきの記載とすべき』

といった論考も多いようですが、ほんまにどうでもええ。音律に乗せて歌うことが大前提の歌曲の表記方にさほど深い意義があるとは思えないし、解釈の明確化は時に鑑賞の矮小化を招くと思います。

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