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2019年6月26日 (水)

【誤植編】校正畏るべし:2

(承前)

「児童虐待推進キャラ」の報道記事を読んで、「姦淫聖書」のことを思い出した人は多いと思う。旧約聖書のモーセ五書(*1)の二番目、出エジプト記第二十章第十四節に出てくる「十戒」の第七、"Thou shalt not commit adultery." の "not" が抜けて "Thou shalt commit adultery." となり、「汝姦淫する勿れ」が「汝姦淫すべし」となってしまったというもの。焚書を免れた実物が少数現存しており、当然大変な値段がついているという、「史上最も有名な誤植」です。

(*1)
創世記/Genesis
出エジプト記(出埃及記)/Exodus
レビ記/Leviticus
民数記/Numbers
申命記/Deuteronomy

確かこれもお上の作ったものではなかったかと思って調べるとやはりそうで、1631年、イングランド・スコットランド・アイルランドの王チャールズ1世(1600.11.19~1649.01.30;処刑)の命により出版されたイングランド国教会(*2)の欽定訳聖書(*3)。王立印刷所で印刷されたというから念が入っている。東京都福祉保健局どころの騒ぎではなかったわけです。

(*2)Church of England。イングランド王・アイルランド王ヘンリー8世(1491.06.28~1547.01.28)が、王妃キャサリン・オブ・アラゴン(元は早世した兄の妻だった)との離婚および愛人の王妃侍女アン・ブリンとの再婚(後に離婚 → 処刑)を望んだことに端を発して、1534年にバチカンから独立した一派。因みにこの王様は生涯に6度結婚しており、最初の妃キャサリンとの間に生まれたのがBloody Maryことメアリー1世(1516.02.18~1558.11.17)、二番目の妃アンとの間に生まれたのが処女王エリザベス1世(ユリウス暦1533.09.07~グレゴリオ暦1603.04.03)、三番目の妃ジェーン・シーモアとの間に生まれた待望の男子がエドワード6世(1537.10.12~1553.07.06;つまり15歳で死去)である。

(*3)一般に「欽定訳聖書」として知られているのは、20年前の1611年に父のイングランド王・アイルランド王ジェームズ1世(=スコットランド王ジェームズ6世)(1566.06.19~1625.03.27)が命じて作らせたもの。

以上ややこしいけど、ヨーロッパの外れの弱小な島国が統一され強大になっていく時代の話で、即位の順で言うと、ヘンリー8世 → エドワード6世 → メアリー1世 → エリザベス1世 → (スコットランド王ジェームズ6世 →) ジェームズ1世 → チャールズ1世となる。

で、この「姦淫聖書」は、重版時の組版ミスということになるわけ。

因みに、Wikipediaには;

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歴史的に、notの欠落は、よく見られる誤植である。例えば、AP通信のスタイルガイドでは、この誤りを防ぐために「無罪」を表すのにnot guiltyの代わりにinnocentを用いるように勧めている。
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と書いてあるけど、そんなの限りなく言葉狩りに近いじゃん。ミスを起こしにくいプロセスや体制を整備・強化していくことは無論大切、でもこんな↑簡単な話で済ませようとするのは何の解決にもならないと思う。

石川や浜の真砂は尽きるとも
世に過ちの種は尽きまじ

そう言えばちょっと前、こんな仰天ニュースもあった。

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(2019.05.10 09:59 ロイター 抜粋)

Australian50dollar

オーストラリアで発行された新デザインの50豪ドル札(約3830円)に、恥ずべきスペルミスが見つかった。すでに数百万枚が出回っており、印刷・流通の前に中央銀行が見落としていたもようだ。
この誤植はラジオ局「トリプルM」のリスナーが、新50豪ドル札の拡大写真を送付したことで知れ渡った。このお札では、「responsibility(責任)」のつづりが3カ所、「responsibilty」となっており、「i」が1個抜け落ちている。
この紙幣は2018年10月18日に発行され、偽造防止のための新機能や視覚障害者向けの触覚要素が導入されている。中銀によると、50豪ドル札は同国で最も広く流通しており、他の紙幣の半分近くを占めている。
中銀の広報官はロイターへの電子メールで「中銀はそれを認識しており、次回の印刷時に修正される」と説明。「これらは法定通貨であり、これまで通り継続使用できる」と述べた。発行されている新紙幣の正確な数や、新紙幣が回収されるかどうかについては直ちに回答しなかった。

〔後略〕
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「マイクロ文字」と呼ばれる微細文字の印刷技術を用いたものだけど、とんだところで足元をすくわれたわけです。偽造防止以前の問題だよねえ。逆に正しい綴りのものがあったらそれが偽札だというww。「責任」以前の問題とも言えるのか(爆笑)。

しかし、この失敗で一番恥ずかしいのは、「綴りを間違った」ことではなく(そこは "To err is human" である)、「スペルチェックかけなかったの?」でもなく、「同じミスを3回も繰り返した」ことである。コピペしてたの??豪快なるかの国の中央銀行さんよww。
結局、数百万枚どころか既に約4,600万枚も出回っており、回収はなさらず「次回印刷分から修正」となる由。だから東京都福祉保健局さんも、あんまりくよくよしなさんな。話が小さい小さい(冷笑)。

(次回は6月27日に続く)

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