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2019年8月25日 (日)

似て非なるもの - アズキ vs ササゲ vs キササゲ

豆、もいっちょいきます。

そもそも、日本人にとって一番関わりの深いお豆さんと言えば間違いなくダイズだろうけど、二番手に来るのは何なのか。インゲンマメ?アズキ?エンドウ?ソラマメではないだろうけどなあ(これらはダイズとは区別され、「雑豆」という扱いです)。

ツルはそれはインゲンマメじゃないかと思ってたんですねえ。だっていろいろ「料理」に使われるじゃん。だから前回インゲンマメを取り上げたわけよ。
しかしどうやらさにあらず、二番手はアズキらしい(日本では)。こっちは和菓子やあんパンの餡かぜんざいか赤飯にするぐらいしかないんじゃないの、とか思ったんだけど、どっこい、地方の郷土料理ではなかなかに幅を利かせているようです。やっぱ、「赤い豆」には何らか呪術的な息災とか破邪とかの意味合いもあるんだろう。

で、アズキ(商品としては「ショウズ」の呼び名が一般的)というのはマメ科ササゲ属に属していて、この辺りがまた少々厄介。

【アズキ/Vigna angularis】
アジア原産で、日本での大産地は何と言っても北海道ですが、実は各地で穫れます。
「公益財団法人 日本豆類協会」のサイトによれば、「あずきは、豆類の中でも生育に際して環境条件からの影響を受けやすい作物」なのだそうで、「夏アズキ型」と「秋アズキ型」、さらには「中間型」の品種群に分かれ、それぞれ気象条件等に合わせて品種や作型を選ぶ必要があるそうな。
夏アズキは「生育期間中の日平均気温の累積値(積算温度)が一定レベルに達すると開花が始まる性質(感温性)」を持ち、沖縄を除く全国で栽培が可能。本州では春の4月~5月上旬に種を播いて夏の8月~9月上旬に収穫される(北海道では5月中下旬の播種、9月~10月の収穫となる)。
秋アズキは「日長が一定時間以下になると開花が始まる性質(短日感光性)」があり、6月~7月に種を播き、9月下旬~11月上中旬に収穫する品種で、主に西日本で栽培される由。
前者はサクラ、後者はアサガオみたいなもんですな。夏アズキを秋アズキのパターンで作ったり、その逆をやったりすると、植物体の生育と性的成熟のタイミングが合わなくなって収量や品質に影響が出るという、なかなかデリケートなお豆さんらしいです。

因みに、アズキにも豆の色はいろいろあって、中には白小豆なんてのもあり、珍しい小豆の白あんに加工されるそうです(普通の白あんは前回取り上げたインゲンマメの手亡豆あたり)。

アズキのうち、豆がより大粒で煮崩れしにくい高級品種が「大納言」で、豆の直径が1.8分≒5.46mm以上あって、かつ、煮ても皮が破れにくい、腹が切れにくいものでなければならないとされる。この品種名の謂れは数々あるけれども、宮中で切腹を賜ることのない公卿の官位に因んだものというのが一番有名だろう。当然、こしあんとかじゃなくて、粒の形をそのまま残すつぶあんとか甘納豆なんぞに使われるわけです。
これもやはり北海道で多く作られる一方、兵庫県や京都府、つまり丹波篠山辺りで栽培されている「丹波大納言」もよく知られてますな。(丹波産の農作物って、黒豆にせよ栗にせよ小豆にせよ、どうしてこう大粒で立派なものが多いのかしら。)

同じササゲ属にはこれもある。

【ササゲ/Vigna unguiculata】
こちらはアフリカ原産。実はソラマメ同様に上を向いてつき、これが物を捧げ持つ様子に似ているから「ササゲ」の名がついたという説がある。これも豆の色は日本で一般的な赤褐色のほか、白・黒・淡褐色・紫など様々で、白い豆では黒い斑紋を1個持つものがあり、ここから英語ではblack-eyed peaというらしい(beanじゃないのねえ)。

また、普通のアズキは煮ると皮が破れやすいのに対し、こちらも大納言アズキと同様、煮ても皮が破れないことから、江戸の武家では赤飯にアズキの代わりに使われるようになったという。しかし現在、少なくとも東京のコンビニのお赤飯のおにぎりにはアズキが使われてます(下丸子近辺のセブンイレブンで確かめた限りでは)。
一方、新大陸でも米国南部~南米にかけて、アフリカ系住民などのソウルフードとなっているそうな。

亜種にはジュウロクササゲ/Vigna unguiculata subsp. sesquipedalisというのもあって(三尺ササゲ等とも)、これは主に、長く生長する莢を青いうちに収穫して食用に供するものである。

ふむ。マダガスカル固有種の着生ラン、Angraecum sesquipedale(日本固有種のフウラン/Neofinetia falcataに割と近縁である)の種小名と同様の変種名を持っているのであるな。
ダーウィンらによる植物と動物の共進化モデルの予測が行われたことで知られるこの蘭はアングレカムの中でも大型で、草丈1mを超え、白い花の直径も15cmほどになります。種小名は「sesqui」=「1.5」、「pedale」=「足」、つまり「1フィート半」(1 foot≒30.48cmで1.5 feet≒45.72cm)を意味し、これは花の距の長さを表しているという。ダーウィンの死後になって、その予測を裏付ける異常に長い口吻を持つキサントパンスズメガ/Xanthopan morganiiがご当地で発見されたというのも有名なお話。
ただし、この蘭の距(およびこの蛾の吻)にはそこまでの長さはないとして、この種小名は葉の長さを表しているという説も主張されているらしい。個人的にはよっぽどそっちの方が無理があるように思うけど、アングレカム属の他種の葉に1.5フィートに達するものはないのかどうか、すぐにはわからないのでpendingです。

閑話休題。ジュウロクササゲではこれが莢の長さを表していることになるけれど、Wikipediaのこの植物の項に『「sesquipedalis(半尺)」と付けられているが、さやの長さは30 - 40cmと1尺以上にもなる』と書かれているのははなはだ不正確と思う。
明治時代以降、大工が用いる曲尺(かねじゃく)では1尺=10/33m≒30.30cm、呉服屋の用いる鯨尺(くじらじゃく)ではその1.25倍とされているので、ざっくり言えば「尺」≒「feet」ということになって、上記は『「sesquipedalis(1.5フィートあるいは1.5尺)」と付けられており、さやの長さは30 - 40cmと1尺以上にもなる』とでもするのが妥当ということになろう。

まあ、いずれにせよ、家庭菜園でちょっと作っとけば、莢を二、三本採ってくりゃ一家の晩ご飯の付け合わせにはもう十分、なボリュームではあるわけですw。
小学校に上がるか上がらないかの頃、父親の実家ですっごく細長ーい莢の豆を作っていたことがあって、目を瞠った記憶がある。今思えばあれがジュウロクササゲではなかったか。

で、ですねえ。またconfusingなのは、ササゲ属というのはインゲンマメ属と近縁であり、かつては後者に入れられていた種もいくつかあるらしいんですね。そのせいか、今でもネット上でササゲの類をインゲンマメ属としてあるものはかなりあります。
普及度や知名度では多少インゲンマメに劣るかもしれないけれど、これらササゲ類の豆を青いうちに莢ごと食するという場合、確かに見た目も調理法もさやいんげんとよく似てるんですよね。

「ササゲ」の名前つながりでもう少しだけ脱線してみよう。

【キササゲ/Catalpa ovata】
こちらはマメ科とは程遠いノウゼンカズラ科キササゲ属の中国原産の落葉高木だが、細長い実がササゲ類の莢に似ていることからこの名がある。この実には利尿作用があって、昔から腎臓の薬として用いられ、同属のトウキササゲ/Catalpa bungeiとともに日本薬局方に記載されている。
えーと、この木は世田谷の九品仏浄真寺の境内にひっそりと1本植わってたけど、今もあるんだろうか。

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