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2019年9月14日 (土)

似て非なるもの - 芋 vs 薯 vs 藷

cf.
2012.11.11【その6】

「豆」の次は「芋」です。

「芋」とはそもそも何だろう。「薯」や「藷」とはどう違うのだろう。

現代の日本で「いも」とは、ごく大まかに言って4つある。ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、ヤマノイモ。どういう対応関係に立つんだろう。

もともと日本にはヤマノイモ科のヤマノイモ/Dioscorea japonicaや縄文期に入ってきたというサトイモ/Colocasia esculentaぐらいしかなかったはず。∴古来から「山芋」対「里芋」という認識はあったのだと思う。

芥川龍之介が「芋粥」のベースにした今昔物語集の話はヤマノイモのお粥のことで、これはヤマノイモを甘葛(あまづら(*1))で煮たもの。お米は入ってなかったらしく、饗宴の終わりに出てくるお楽しみのデザートだったようです。五位の中流貴族が「哀レ、何カデ署預粥ニ飽カム」と漏らしたのは、「あー、お腹いっぱいになるまでケーキ食べてみたいケーキハートぴかぴかひかる」的な子供じみた願望だったわけや。「署預」=「薯蕷」=「いも」です。ありゃ、「蕷」まで出てきちゃった。

(*1) ブドウ科で落葉性のツタ(ナツヅタ)/Parthenocissus tricuspidata(*2)の煎じ汁とも、ウリ科のアマチャヅル/Gynostemma pentaphyllumの煎じ汁であるとも。仏教の灌仏会すなわち花祭りに使われる、ユキノシタ科のアマチャ/Hydrangea macrophylla var. thunbergii(*3)の葉を煎じた甘茶とは別物。

(*2) ウコギ科の常緑性のキヅタ(フユヅタ)/Hedera rhombeaとは全く別物。

(*3) 実はアジサイ/Hydrangea macrophyllaの変種。アジサイの葉っぱも甘いんだろうか。

このヤマノイモの自生品は現在「自然薯」と呼ばれてますね。

その後、江戸中期に甘藷先生青木昆陽が関東に広めたヒルガオ科のサツマイモ/Ipomea batatasは「甘藷」で、明治になって北海道で栽培が本格化したナス科のジャガイモ/Solanum tuberosumは「馬鈴薯」ともいう。子供の頃、ツルの母親はたいがい「ばれいしょ」と呼んでいて、微妙に古臭いと思ってた気がするけど今は懐かしいや。

漢字としては、まず「芋」は、植物が根や地下茎に養分を溜め込んだものの最も一般的な名称である。サトイモ科のコンニャク/Amorphophallus konjacの球茎なんかも含み得るわけですな。とともに、特にサトイモのことを意味したらしい。
「芋」の字に入っている「于」は、感嘆の意味があるほか、「大きい」を表す(「宇宙」の「宇」もそんな感じね)。「芋」には「根茎部が大きい」「葉が大きい」の二つのOriginがあるようで、後者なら確かに葉っぱのでっかいサトイモ(のみ)が当てはまることになりそうです。

万葉集には;

はちす葉はかくこそ有るもの
意吉麻呂が家なる物は宇毛(うも)の葉にあらし

という歌があり、この「うも」は「いも」の古名です。宴会に招かれて、蓮の葉に盛られた料理を前に「いやあ、ウチなんぞは芋の葉(に盛ってるぐらいのもの)ですよ」と詠んだもので、御馳走を褒め立てる意も絡めてあるのだと思う。これも、葉が大きくて一見ハスに似ているサトイモでなくては意味が通らない。

因みに「于」も「芋」も(「宇」も)音読みは「ウ」。近代日本画の小川芋銭(1868.03.11(慶応4.02.18)~1938(昭和13).12.17)の読みは「うせん」です。

「薯」は、どうやらもともとはヤマノイモの仲間のつる性多年草植物、ないしは粘り気のある「いも」を指したらしい。
「藷」の方は、サトウキビ、ナガイモ(*4)、(「薯」と通じて)いもの総称、といった意味があるのだそうな。この字はもと「薯」の異体字だったということでもある由。
そう言えば、皮の生地に擂り下ろした山芋を加えて蒸して作る「じょうよまんじゅう」も、「薯蕷饅頭」「藷蕷饅頭」両様に書くとかで、先ほど出てきた「蕷」もヤマノイモを指す言葉なんだそうです。

(*4) 種としては、ヤマノイモとは異なるDioscorea polystachyaということになる(この場合、その差異にどれほどの意味があるのかは別として)。

うーーーん、一向にスッキリしない感じではありますが(汗)。

そだ。イネ科サトウキビ属のサトウキビ/Saccharum officinarumにも「かんしょ」の別名があるな。これは「甘藷」ではなく「甘蔗」と書く。「藷蔗」という呼び名もあります。てことは、「蔗糖」は本来、砂糖の中でもサトウキビ糖を指すことになる。
因みに、サトウキビは種子島では「おうぎ」、徳之島では「うぎ」、沖縄では「うーじ」と呼ばれ、これらは「おぎ」(荻)が訛ったもの。ただし、オギ/Miscanthus sacchariflorusは同じイネ科ながらススキ属です。時々、花屋さんの店先で「ミスカンサス」という葉物を見かけるけど、まさかススキの仲間のことだったとは!「Miss Kansas」とか何とかいう品種名だとばかり思ってました、今の今まで。

他方、肥大した根茎部のことをなべて「いも」と言うのかというとさにあらず。「ところ」という言葉もあって、キジカクシ科またはユリ科に分類されるアマドコロ/Polygonatum odoratumやナス科の有毒植物ハシリドコロ/Scopolia japonicaなんてのもあるわけです。埼玉県所沢市の地名の謂れはこれだし(因みにご当地出身の所ジョージの芸名の名付け親はあの宇崎竜童である。「所沢の柳ジョージ」の意)、東京五輪エンブレムの作者、野老朝雄の名字もこれのことだろう。

園芸を多少かじったことのある人ならすぐわかるだろうけど、キク科のダリア/Dahliaの球根も、サツマイモにとてもよく似ている。これはまあ、「芋」になるんだろうな。

ああ、でも、今回はこのくらいで。もういいもん、だ。

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