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2020年1月25日 (土)

【加筆編】むすんで、つないで:第七結節(宣伝会議賞ロゴ・菅野美術館展2007ポスター・般若心経)

(承前)

 

「筑西市おせち事件」で図らずも中断しましたが、野老朝雄リサーチに戻りましてと。

 

次は、文字系TOKOLO紋。
五輪エンブレム発表後間もない2016年8月には、次のものが華々しく発表された。

 

株式会社宣伝会議
宣伝会議賞 ロゴマーク
野老朝雄
Tokorosendenkaigiaward

 

キャッチコピーおよびCMコンテを対象とする日本最大規模の公募広告賞(日本で最高に権威があるかどうかは知らない)がロゴをリニューアルしたもので、野老にとっては五輪エンブレム決定後、初めての制作だったという。

さすがはギョーカイ、機を見るに敏、時の人・売れっ子ちゃんを持ち上げ持て囃す目聡さよ💣。でも野老本人は、オファーが来るまでこの賞のことは知らなかったのだとか。

 

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(2016.08.31 AdverTimes by 宣伝会議 抜粋)

 

〔前略〕

 

多くのつくり手が望んでいることかもしれませんが、私には「自分がつくった図形が、できる限り長く使われてほしい」という願望があります。私がデザインを考えるときの一つの基準として、それを「墓石に掘れるか」「タトゥーとして身体に刻印できるか」というのがあります。もちろん、実際にはやりませんが。それだけ長く維持できる、強度のあるデザインを実現したいと思っています。

 

〔中略〕

 

まず、「宣伝会議」という企業名・雑誌名、「宣伝会議賞」というアワード名に強いインスピレーションを受けました。今は当たり前のように受け入れられていますが、かつては「それが雑誌の名前?」と驚かれた時代もあったと思うんです。そんなインパクトのある名前を、現代に至るまで大切に維持してきたことへの敬意もあり、この漢字をロゴとして扱ってみたいと考えました。

 

具体的には、東日本大震災以降、日本人としてのアイデンティティを再確認しようとライフワークとして続けてきた「漢字のプロジェクト」のスキームを使って図形化しました。先ほどもお話ししたように、私は文字や言葉に強い憧れを持っています。26文字という限られた文字を組み合わせてコミュニケーションを成立させるアルファベットのシステムに感動する一方で、漢字の一字一字に込められた意味の重さ・深さに、言い表せない魅力を感じるんです。文字をデザインの視点で解釈し、そこに込められた思いやメッセージを立体/平面で図形化することで、自分もその世界に少しでも関わっていたいという思いがあります。

 

ビジュアルとしては、「頂点」を表現することを念頭に置きました。宣伝会議賞は、何十万と集まってくる言葉のトップを決める、凄まじいアワード。多くの人がめざす、その頂点を表現したいと考え、ピラミッドを上から見た様子をイメージしました。
さらに、平面で見たときには、「一つの言葉が、波紋のように周囲へと強く・広く影響を及ぼしていく」様子にも見えるようにと考えました。シンプルな佇まいを追求することで、単体でも、複数組み合わせてパターン化しても、力があるデザインをめざしました。

 

また、宣伝会議のコーポレートマークが非常に美しい形だなと思っていましたので、それとの調和も意識しました。小さな三角形で構成された10角形は、遠目には正円形にも見える。コーポレートマークの「△」「◯」に対し、「□」(正方形)で表現しようと。とは言え、そもそも漢字を使おうと思った時点で、正方形にするという方向性はほとんど決まっていたのですが。

 

〔中略〕

 

「自分は/あの人は、宣伝会議賞の受賞者なんだ」と誇りや尊敬の念を喚起するようなトロフィのアイデアが、実はロゴを考えるのと同時に、すでに頭に浮かんでいて。平面のデザインをつくるときは「どのように立体化するか」「どのようにパターン化するか」という応用展開を常に考えているので、今回のロゴの場合も、トロフィや賞状への展開イメージを並行して考えていました。

 

〔中略〕

 

言葉というのは、非常に幅広く、奥深いもの。詩や俳句に使われる言葉があれば、チラシやPOPに使われる言葉もある。想像や理想も内包した詩的な世界と、生活感のある現実世界、そのどちらにも言葉は生きています。そして領域・シーンごとに、それを操る才能が存在していると思います。
もしかすると、そのボーダーは、もっと自由に越えてもいいのではないでしょうか。建築、空間、グラフィック、ファッションとデザインの各ジャンルが連携や融合を見せ始めているように、小説と詩とコピーとつぶやき、それらが同じ「言葉」として、一緒に語られる場があってもいいのではないかと。広告界の外の才能が入ってくることで、広告コピーの世界が、ますます深みを増していくこともあるかもしれません。このロゴが、そのきっかけとなれたら、それは素晴らしいことだと思います。

 

〔後略〕
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「頂点に立つ」ということの意味は野老自身も噛みしめていたはずで。

 

話に出てくる[△]と[◯]のコーポレートマークはこちら。

 

Sendenkaigilogo

 

なんか、これを思い出しちゃいますね。

 

【2013.10.21「Olympics & Expos その2」】
2005年日本国際博覧会(愛・地球博/愛知万博)
シンボルマーク
大貫卓也
'05愛・地球博

 

[□]と[○]になっているけれど、ピース数も10個、遠目には同じにも見える(笑)。

 

これに対して、[□]のこういう書体は「九畳篆/くじょうてん」と呼ぶらしい(中国繁体字では「九叠篆」)。中国の宋代以降公式文書の印章に用いられた書体で、「幾重にも折り畳まれた篆書」といった意味でしょう。Wikipediaの「篆書体」の項では;

 

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なおこの九畳篆の登場により官印の意匠が完全に硬直化してしまい、以後の官印は書道・美術の方面からは顧みられなくなった。
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とばっさり斬り捨ててあるけど、野老はそこに敢えて斬り込んだわけやね。
宣伝会議賞の場合、29×29マスの方眼紙を用意して、それ自体正方形の各マス(pixelと呼んだ方が今風かしら)を緑と白で塗り分けた2色の正方形パズルとなっているとも考えられる。いや、オセロと言った方が早いか。

 

トロフィは野老の発案により3Dプリンターで作成された由です。

 

Tokorosendenkaigitrophy

 

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(2017.03.15 株式会社宣伝会議 サイト)

 

株式会社宣伝会議(東京都港区、代表取締役会長 東 英弥)は3月10日(金)、日本最大規模の公募型広告賞である「第54回宣伝会議賞」の贈賞式を、都内で開催しました。
今年は、公式ロゴマークに合わせて、グランプリ・コピーゴールド・CMゴールド・眞木 準賞に授与されるトロフィも刷新。ロゴマーク同様、東京2020大会エンブレム作者の野老朝雄氏が制作しました。トロフィは正八面体で、頂点から見るとロゴマークが浮かび上がります。野老氏による2Dスケッチをもとに、丸紅情報システムズの協力を得て3Dデータ化しました。一般的なトロフィとは一線を画す形状とすることで、トロフィの新しい「持ち方」をデザインする意図もあります。
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掟破りを承知で書かせてもらうと、丸紅情報システムズって、以前から愚blogへのアクセスが異常に多い企業なんですよ、なぜかは知らないが(ああ、とうとう言っちゃった)。ご覧いただくのはありがたいけど、仕事中に業務に関係のない(でしょ?)サイトを閲覧しまくるのはコンプライアンス上いささかよろしからずではないかと。アナタ、内部通報の対象にもなりましてよ、お気をつけあそばせ、ふふふっ。

 

野老がこの賞のことを知らなかったというのは驚きですが、「文字や言葉に強い憧れを持っています」というのもかなり意外。文字紋への傾倒は、文字や言葉の内容に対する関心というより、客体の構造へのそれ、定規とコンパスへのそれ、文系より理系のそれだと思っていたので。

 

このタイプのデザインも、前から作っていたらしい。2007年7~9月開催のこの作品展のポスターもそう。

 

宮城県塩竈市
公益財団法人 菅野美術館
野老朝雄展 -Solo Exhibition of Asao TOKOLO-
ポスター
Tokolokannomuseum2007poster

 

こちらは23×23マスの2色正方形オセロです(あるいは21×21マスと解すべきかもしれない)。

 

それが正三角形を加えて5色オセロとなったり↓(cf.【第四結節】);

 

日本テレビ放送網株式会社
24時間テレビ40 愛は地球を救う
チャリTシャツ
野老朝雄
Tokoro24hourtvtshirts

 

無限唐草を茂らせてこうなったり↓してるわけ(cf.【第二結節】)。

 

宮城県塩竈市
公益財団法人 菅野美術館
野老朝雄展 Solo Exhibition of Asao TOKOLO [LINKABLE MATTERS 2]
ポスター
〔2019年2~3月開催〕
Tokolokannomuseumposter

 

2001年9月の同時多発テロ以来、野老が毎日数点の紋様を制作することを自らに課し一千点になるまで続けたという中には、文字紋も多く含まれていただろう。(意地悪な見方をすれば、若き日の「千本ノック時代」の資産を切り売りしていることになるのかもしれない。その意味で、時代と切り結ぶ新しさを感じさせるものでもない。)

 

2014年7~8月に上野の東京藝術大学陳列館で開かれた「マテリアライジング展Ⅱ 情報と物質とそのあいだ」にも次の作品が出展されていた。

 

「般若心経」壁面写経
野老朝雄
Tokoroheartsutra

 

これはさすがにマスの数は決まってないようです。

どうせなら王 羲之の「蘭亭序」本文324文字で作りゃよかったのに。諸本あるけど300文字に数十文字足りない般若心経より多少労力は食いますが、古来から行書の最高峰扱いされてきたこの詩集序文の新しい解釈ってな意味合いでウケたかも。まあ、この九畳篆が「般若心経」であることにどんな意味性があったのか、そこがわかっていないので世迷い言と思って下さい。

 

だんだん、香道由来の紋様「源氏香」のことも再び気になってきた(cf. 2009.04.07「団 家紋夜話」)。

 

(続く)

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