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2020年10月 3日 (土)

三井住友信託銀行等の株主総会議決権行使集計問題についてのどこよりもわかりやすくて詳しくてためになる解説(の試み):後編

(承前)

 

本件については、経済系メディアにとどまらず一般メディアもこぞって取り上げた。

 

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(2020.09.24 毎日新聞 抜粋)

 

〔前略〕

 

同行[引用註:三井住友信託銀行]は20年ほど前から、株主総会が集中する繁忙期は事務処理の時間を確保するため、郵便局に本来の配達日より特例で1日早く議決権行使書を配達してもらう「先付け処理」をしていた。期限の翌日に届くはずの書類も実際には期限内に到着するが、集計の対象外としていた。だが、民法では書類は到着した時点で効力が発生すると定めているため、実際に受け取った日が期限内の議決権行使書を集計しなかったのは不適切と判断した。関係者によると、7月までに開催された株主総会では決議を左右するケースはなかったという。

 

〔後略〕
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へ?不適切であったと結論づけるために民法の一般原則を持ち出してくるわけ?微妙な違和感が。
しかし一般新聞らしいふにゃふにゃした書き方だにゃあ。

 

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(2020.09.24 朝日新聞 抜粋)

 

三井住友信託銀行とみずほ信託銀行は24日、株主総会の業務を請け負う計約1300社超の議決権行使書の集計に誤りがあったと発表した。10~20年前からの業務慣行で、期限までに郵送されていた書類の一部を無効と扱っていた。議決結果が覆るような影響はないと両行は説明するが、株主の権利が不当に損なわれる事態が続いていた。

 

〔中略〕

 

この運用を三井住友信託は少なくとも約20年前から、みずほ信託も約10年前から現場の慣例として続けてきたという。

 

〔後略〕
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朝日はん、「不当に」の3文字は言い過ぎです。「本来より早く」という意図に出たものを、短絡的に「本来より遅く」とするのは、解釈に幅のあり得るところだという点を理解してない論だと思う。

 

ピンとくる人はくるだろう。中央信託銀行と三井信託銀行が合併して中央三井信託銀行になったのが2000年4月(中央信託銀行を存続会社とする吸収合併)、それがさらに住友信託銀行と合併して三井住友信託銀行になったのが2012年4月(住友信託銀行を存続会社とする吸収合併)。
JaSt、すなわち日本株主データサービス株式会社が中央三井信託銀行とみずほ信託銀行の出資で設立されたのは2008年4月。両行の持分法適用会社である。
「先付け処理」が「三井住友信託は少なくとも約20年前から」というのなら、それは中央信託や三井信託の時代から行われていたのではないかという合理的な疑問が生じるわけです。一体どちらがこの手法を始めたのだろうか?

 

そして、日本の証券代行業界の最大手(ですよね?)、三菱UFJ信託銀行ではどうなのだろう?報道されてないからそんな実務はやってなかったということなんだろうけれど、それは「日本郵便から先付け処理で受領した行使期限最終日の行使書の束(受領日付は当該最終日の翌日、すなわち総会当日)までちゃんと算入していた」からではなく、「日本郵便から行使期限最終日の行使書の束(受領日付が当該最終日の翌日、すなわち総会当日となるところの)を先付け処理で受領なんかしてなかった、だからその分の算入もするわけがなかった」というだけのことに過ぎない(ハズ)。
株主/投資家側から見れば、同じX日前に行使したA社の議決権行使書葉書とB社の議決権行使書葉書とで、片や三井住友信託経由、片や三菱UFJ信託経由で会社側に届いたというケースを考えてみると、どちらも今回のようなギリギリの場合は「算入していない」という実態に変わりはなかったはずです。(You got it?)

 

証券代行業界というのは横並び意識が極めて強い(株主の扱いを統一的に保つためにという大義名分で)上に、既得権益にガチガチに守られたムラ社会なので(そこに風穴を開けようとして悪戦苦闘しているのが株式会社アイ・アール ジャパンである)、一部の証券代行業者だけが特殊な実務を執っていたということ自体が俄には信じ難い。

 

まとめますと。

 

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(2020.09.25 SankeiBiz 抜粋)

 

〔前略〕

 

調査の結果、三井住友信託は今年5~7月に総会を開いた975社、みずほ信託は6~7月に総会を開いた371社で有効票の未集計を確認した。ただ、いずれも議案の成否に影響はなかったと判断している。
三井住友信託によると、繁忙期にスムーズに集計作業を進める目的で、少なくとも約20年前にはこの運用方法を導入していた。顧客企業や株主はそれを知らされていなかった。
三井住友信託の西田 豊取締役専務執行役員は同日、東京都内で開いた記者会見で「証券代行業務をご委託いただいている会社や株主の皆さまに多大なるご迷惑とご心配をおかけしたことを重く受け止めている」と陳謝した。
東芝の株主であるシンガポールの投資ファンド、3D・インベストメント・パートナーズの指摘で露見した。3Dの行使書は期限の7月30日に三井住友信託側に届いていたが、翌31日の総会では無効とされた。
両行は今後、集計方法を見直し、実際に通知書を受け取った日を基準に集計業務を行うとしている。
議決権行使をめぐっては近年、スマートフォンを使った電子行使の利用が増えてきている。ただ、郵送による書面行使の比率は依然として高く、三井住友信託では今年の6月株主総会開催分で全体の約8割が書面行使だったという。
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そうなんですよ。株主数ベースでは圧倒的に多数を占める個人株主は電子行使には極めて冷淡。

 

「実際に通知書を受け取った日を基準に」というのは何を意味するんだろう???先付け処理で受領していた分も算入するというのであれば、確実に、株主名簿管理人たる三井住友信託/みずほ信託等と日本郵便との業務負担を増やします。それで実務が回るのかしらん?それとも・・・??
話はそれだけじゃない。悪くすると三菱UFJ信託なんかの実務まで一律に変えさせられることまで考えられるわけ。しかしそうでなければ投資家(や東証)は納得しないのではないかいな。

 

しかしさあ、3Dはなんで電子行使にしなかったわけ???機関投資家ならICJのプラットフォームとか使うの当たり前でしょ?今どき。
それに、なんで総会3日前の7月27日になるまで議決権行使しなかったのさ??株主総会招集通知は最低でも会日2週間前には発送することが法定されていて、今回の東芝総会では7月31日(金)の会日に対して7月16日(木)に発送されている(*)。自分で株主提案したのだし、機関投資家側が二言目には口にする「行使には熟慮期間が必要」という問題はこの際関係ないでしょう?そしていやしくも世界に名の通った巨大企業たる者(最近メタメタだけど?)として、東芝だって招集通知の英訳版は当然作成してるでしょ?一般的な日本の株主総会の議決権行使の cut-off date の観点からも、「3日前」はちっと遅過ぎない??いくら、その直前の7月23日(木)~26日(日)が(幻と消えた)2020東京オリンピックの開会式絡みで(日本じゃ)4連休になっていたとは言え。
もう、頭の中に?マークが飛びまくりです。後に尾を引く問題であることは間違いない。

 

(*) 当該発送日は法定期限ギリギリのところであり、同社の例年の日程に比べるとかなり遅い。昨年の同社の定時総会では、6月26日(水)の会日に対して6月3日(月)の発送だった。3週間以上前に出してたわけです。これは新型コロナウイルス感染拡大に伴い状況をギリギリまで見極めていたものと考えられる。そもそも、3月決算の同社が今年の定時総会を通常の6月下旬ではなく7月末に開いたのもコロナ影響によるもので、そのことは総会招集通知にも明記されている。
もう、すごく前のことのような気がするけど、僅か2ヵ月余り前のこと。

 

脱線するけど、ツルに言わせりゃ定時株主総会の前たった2~3週間の議決権行使期間のために株式会社ICJ(株式会社東京証券取引所の関係会社である)が各企業から毎回100万円も取っているのはとんでもないぼったくりだと思いますがね。東証の適時開示システム「TD-net」の会社側使用料だって年間12万円、確か。
ICJは、電子行使プラットフォームのシステム開発の負担が重いとかまだ参加企業数が十分でないから値下げできないとかの理屈を並べ立てているけれども、そんな問題じゃないでしょ??ついでに言えば、ここの開催しているセミナー(年1~2回だったと思う)も、ネタ自体に魅力がないことが多くて食指があまり動かない。ズレてるんだよなー、どこか。
そう思ってる総会担当者は多いはず(断言)。

 

でも今一番戦々兢々としているのは日本郵便かもしれない。だって、全国の株主から議決権行使葉書が私書箱に届いた後、各企業の株主名簿管理人に渡すまでに1日の余裕を持ってたことになるわけでしょ。Very time-critical な総会議決権行使という場面で、そのタイムラグが注目されたらいささかマズいことになるような気がします、民法規定の趣旨に照らしても。「実務が回るか」という問題は別にして、そのバッファが全ての問題を引き起こしているのだから。

 

・・・いや。
現行法令の解釈や規定そのものに欠陥がないと言い切れるのだろうか。当該タイムラグを正面きって認めてやることでも「株主の権利が不当に損なわれる」なんてことには当たららないだろという気が改めてしてきました。

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