【加筆編】草の根分けて探し出してまいりました:四本目(しすいちゃん・シュシュタン・しすぴー・しすい丸・しすい姫)
(承前)
草野キャラ、さらに時計を巻き戻して2012年にはこれ。なかなか侮れない。
千葉県印旛郡酒々井町(しすいまち)
酒々井町マスコットキャラクター
井戸っこ → 井戸っこ(しすいちゃん)
草野敬一(57歳:長崎市:広告デザイナー)
〔2012年11月表彰〕 →
初め色白だったのが、[徳利]の酒を一杯きこし召してほろ酔い加減になったようです。梅花も紅に染まっている。難読だからってことで[町名]がアルファベットで示されたのはご愛嬌。
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(2012.11.19 千葉日報 抜粋)
〔前略〕
「井戸っこ・しすいちゃん」は、町名の由来になったともいわれる「酒の井伝説」にちなみ、「井戸に住む[妖精]」の設定。町の花・[梅]が頭に飾られている。
まつり[引用註:2012.11.18 第34回酒々井町ふるさとまつり]特設ステージで行われた式典で、小坂泰久町長から賞状などを手渡された草野さんは「町のイメージアップにつなげてもらえればうれしい」と話した。
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1点誤りがありますな。ウメは町の花ではなく町の木で、町の花なのはスイセン。ついでに言うと町の鳥はメジロです(微伏線)。なぜ、早春のものばかり選んだのだろう。町内に梅や水仙の名所があるわけでもなさそうだし、ありきたりだ。戦略的に見て good とは思えない。
ほんでもって、今度は「井戸の妖精」。謂れは次のとおりなんですが・・・
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(2016.05.03 産経新聞 抜粋)
〔前略〕
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-昔むかし、印旛沼の近くの村に年老いた父親と息子が住んでいた。親思いの息子は酒好きの父親のために毎日一生懸命働いて、父親に酒を買っていた。ところがある日、どうしても酒を買う金を用意できなかった。
「このまま帰れば父の楽しみをなくしてしまう。こんな親不孝はない」。途方に暮れて歩いていると、道端の井戸から良い香りが漂ってきた。水をくんでなめてみると、なんと酒の味がした。
父親は「うまい酒だ」と喜び、息子はこの日以降、毎日井戸から酒をくんで飲ませた。
だが、この井戸は親子以外の人が飲むと、水の味しかしなかったという。周囲は「きっと、孝行息子の真心が天に通じたに違いない」とほめたたえ、村は「酒々井」と呼ばれるようになった。
■
大正2年の印旛郡誌にも記されている「酒の井伝説」と呼ばれる言い伝えである。町教委生涯学習課の酒井弘志さんは「詳細は不明ですが、鎌倉から室町時代にこの話が広まったと考えられています」と話す。室町時代の応永14(1407)年ごろの記録には、この地は「須々井(すすい)」と記されていたが、江戸時代以降の資料には「酒々井」や「酒井」「酒酒井」となっていた。読み方は「すすい」や「しゅすい」だったとされる。
明治7年の文献にも酒々井と書いて「しゅすい」と呼ばれていた記録が残るが、町制が施行された22年には、なぜか「しすい」町に。酒井さんは「この15年間で何があったのかも不明です」と説明する。
〔後略〕
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「この井戸は親子以外の人が飲むと、」は、「この井戸は親子以外の人が汲むと、」にすべきぢゃないかと思いまス、断然。なぜ、「酒の井」(読み方不明)と「酒々井/しすい」の町名とは同じではないのだろう。
いかにも中国の説話集あたりに出てきそうな儒教的親孝行譚です。しかしね、この井戸、とうの昔に涸れてるんですよ。まさに伝説の井戸、井戸伝説。でも、そんな伝承を顕彰するだけのためにわざわざキャラクター作ったんじゃないはずで。(だから「井戸っこ」の愛称は事実上却下されたわけでしょ。)
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(同上)
〔前略〕
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伝説の舞台となった井戸がある円福院が、江戸時代末期ごろから住職のいない無住寺だったことも謎の一つだ。戦後、混乱に乗じて人が住み着いたという話もあるが荒れ放題に。伝承の碑とされる板碑は残されていたものの、井戸は枯れていた。
見かねた地元の住民らが平成18年、井戸周辺の整備を始めた。刈り取った草などのごみは小型ダンプカー8台分に上ったという。整備された井戸では、そばのボタンを押すと伝説に関する音声案内が流れ、井戸の底からちょろちょろと水があふれる演出も施されている。水は近くの別の井戸からくみ上げたものだ。
整備活動から10年が過ぎた現在、井戸の周囲には地元小学校の児童らが植えた花壇やベンチが整備されている。児童らに伝説を語る取り組みに力を入れる「酒の井の碑広場管理委員会」の中台 隆委員長(77)は「伝説が消えないように大切にしていきたい」と話す。
伝説と井戸を大切にしようとする地元の人々の取り組みは、孝行息子の真心から生まれた難読地名とともに長く続くことだろう。ただ、酒好きとしては、井戸の水が枯れてしまったことだけが残念である。(大島悠亮)
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なぬー?「水は近くの別の井戸からくみ上げたもの」?!それじゃ意味がないじゃん、せめてもう一遍井戸掘れ、と思うのは外野の余計な囀りかしら。
ま、とにかく涸れ井戸の整備から6年、めでたくご当地を代表するキャラクターの制定と相成ったわけです、候補10点による町民人気投票を経た上で。この候補作品がまた面白くってねー。いかにもな公募ガイダー臭あるテンプレキャラの常連作者当てがやめられまへんがな(お下劣)。
①シュシュタン
②しすいくん
③杯小僧「酒々井坊」
④しすぴー
⑤しすい丸(優秀賞)
八谷早希子(北海道江別市)
⑥しすい姫
⑦しすたん
⑧しすいちゃん
⑨しすりん
⑩井戸っこ(最優秀賞)
草野敬一(長崎市)
あっ。すると表彰式で草野敬一の隣にいるのが八谷早希子ということになるな・・・。
その八谷は次点となった⑤だけでなく④も作っていたらしい、∵[星の瞳]は八谷最大の武器。2012年のこの頃から既に頭角を現しつつあったわけですw。①は作風からして埼玉県狭山市の池田克也で間違いないだろう、いや間違いない。お腹に入ってるのは後述の千葉氏の[家紋]の「真向き月星」。難読地名の酒々井町=しすいまちで「シュシュタン」の読みは望まれなかったろうと思うけどね😁。⑥は静岡県三島市の高柳順子作品だと思います。他にもっと興味深い作品もあるけど(^_-)、それは後日の愉しみにとっとこう。
ご当地的名所としては他に国指定史跡の本佐倉城(もとさくらじょう)跡というものもあるが、これについては酒々井町教育委員会が三代目城主千葉勝胤をモデルにした「勝っタネ!くん」をどうやら2009年から有しているので、このネタは避けられたようです。だから涸れ井戸なんぞをキャラクターにしたんやね(意地悪上等!)
ご当地の名誉のために一応言っとくと、酒々井町は実際に水の豊富なところらしく、「酒の井伝説の地で汲んだミネラルウォーター」という触れ込みで、しすいちゃんや勝っタネ!くんのラベルの「酒々井の水」が販売されてたりするんではあるが。ご当地には清酒「甲子(きのえね)正宗」もある。
因みに、上記10点の投票対象候補とは別途に、本公募では次の2点に賞を与えた。
(アイデア賞)
しーちゃん
大島由依(酒々井町)
(ユニーク賞)
町長くん
押田明日香(酒々井町)
あんまりいいことじゃないと思いますね、特別賞的な枠を設けるのは。そうするなら投票候補にも入れとくのが筋なのであって、と思いますよ。(ここだけの話、押田の「町長くん」はほんとにユニークで、町長の小坂泰久その人を井筒に入れてそのまんま似顔絵に描いたキャラクターである。)
ご当地に新名所、三菱地所系の「酒々井プレミアム・アウトレット」が開業したのはこのキャラクター制定からわずか半年後、2013年4月。ここもいろいろ制約があって盛りアイテムにすることはできなかったんでしょう。成田空港から車で約10分と程近いこの商業施設もインバウンド需要にがっつり狙いを定めていたはずですが、それから10年も経たぬうち、大きな転機を迎えていることと思う。ご当地キャラともども、COVID-19問題を考えると頭の痛いことだろうなあ。
(まだ続く)
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