【スーパーローカル編】伊都国の密室で(九州大学フジイギャラリー);第二密室
(承前)
フジイギャラリーのロゴマーク公募では、結果発表が2段階に分けて行われている。
まず2021.11.16にアナウンスされた時には入賞者名のみで、デザインは公開されなかった。確か、大賞1点(山崎千春)・総長賞1点・審査員特別賞1点それぞれの作者名が出ていたと記憶してるけど、その記事自体既に消えちゃってて・・・。メモっとかなかったのが悔やまれます。(このこと自体、採用された山崎が大学関係者であることを示しているような気もするが。)
その後、(コロナ禍による延期も経て)2022.05.11の開学記念日に合わせたギャラリーのグランドオープニングセレモニーでデザインがお披露目されたんですが、その時には次点のハナシは一切なし。「なかったこと」にされてるんですね。
で、候補作品群がまたなかなかソソるんですよ愚blog的には。無論、作者はいずれも不明なんであるが。
(一次選考順位 2位)
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人と情報がつながり、その積み重ねから新しいものが次々に広がっていく。あるいは逆に、人と知識が集まり、奥へ奥へと知見を深めていく。そんなフジイギャラリーに集まる人々の営みをかたどったマークです。
交流スペースも兼ねたギャラリーで知見を広げる様子から「翼」を、年季の入った机に人が集い、知見を深める様子から「渦」をモチーフに選びました。
これらのモチーフは当面の運営を担う九州大学総合研究博物館のロゴにも登場します。そこで、博物館のロゴがさらに羽ばたく姿を全体のイメージに据え、博物館とのつながりを連想させつつ、フジイギャラリーならではの新鮮味のある造形を選びました。
そのために、伊都キャンパスの近代的な建築をイメージした幾何学的な構造を持つテイストに仕上げ、ギャラリーを上から見たときの印象的な形を翼に盛り込んでいます。また、フジイギャラリーの頭文字「G」「F」を広がる翼と集まる渦に文字の意匠として忍ばせています。
最後に、イフジ産業のマークと共通する伝統的な朱色をカラーに設定し、博物館や九州大学の色合いと調査させつつ、強い情熱や活力の印象を与えています。
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コンセプトがやたら長いっ。妙に説明的な文章は、作者がインサイダーであることを示唆している気がする(微伏線)。
隠し文字の趣向は必要ないんじゃないっすか??
「総合研究博物館のロゴ」については後述します。
(一次選考順位 3位)
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フジイギャラリーの頭文字である「F」を用いて作成しました。
3本のラインは、異なる分野の交流と競合を示し、建築物の要素を取り入れた扇形の形は、発想と広がりを意味しています。
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え、「競合」?むしろ「競争」の方がまだわかる気がするけど、ダメですかねえ。英語ならどうせ同じか。
いくらギャラリー名のイニシャルとはいえ、資金提供者様の苗字とはいえ、従ってご当地公募では超スタンダードな手法とはいえ、[F]にこの際どれほどの意義があるのだろうという気がしてくる。「フジイさんのお金で建てられた(九大コレクションの)ギャラリー」ではなくて「(フジイさんのお金で建てられた)九大コレクションのギャラリー」ではないの?大学経営の視点からすれば。
(一次選考順位 4位)
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フジイギャラリーの外観よりイメージを起こし、G1の開放的な空間とG2の閉鎖的な空間の対比をネガポジで表現しました。「フジイ」を「241」の語呂合わせにし、2=二等辺三角形、4=四角形、1=直線に置き換え、多くの光を取り込む印象的なガラス窓を表しています。カラーはブルーを使用し、青空に映える白い建物であることを意味しています。
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それな。ギャラリーのパンフレットにこんな図が載ってるんだよ。
うーーーん、ちょっとねえ・・・。知的労働の密度は低いわねえ。語呂合わせ&数値化の合わせ技に至っては噴飯もの。何か隠し文字があるんじゃないのとか疑ってしまう。
ここまでは多かれ少なかれ同ギャラリーの[建物]というハードウェアが主役になってるわけですが、そんなものを大学は求めていたのだろうか?
いや、そりゃ求めてたとは思うんですよ。総合研究博物館は2000年4月に発足してからこの方、「今はまだ特定の建物がありませんが、移転に伴い、センターゾーンに大学の顔となる建物が建設される予定です」という流浪の民状態がずっと続いていたらしい(最高学府にしてこの貧しさはどうだ)。このギャラリーがその役割を果たすのかどうかはいまいち不明ですが。
その意味から言うと、次のものだけ発想が全く異なるんだけれども・・・。
(一次選考順位 5位)
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イフシ産業株式会社創業者 藤井徳夫氏の鶏卵鶏の目をモチーフにして九州大学総合研究博物館のロゴマークを併せ持ったデザインでフジイギャリーのイメージを形つくっています。また、大学での研究成果 社会環境と学生教育支援を目的に知的交流を促進する施設として研究教育活動に多大の寄与をする姿を謳いあげています。
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あー、一番これが笑った。一等、公募ガイダー臭キツいっす。特にコンセプト文章後半の意味レス感!
typo多いっす原文ママっす日本語微妙以上に不自由っす。固有名詞間違っちゃ失礼だろうが!それに「藤井徳夫氏の鶏卵鶏の目」って何事よ?
でだよ。「総合研究博物館のロゴマーク」がこうなんですね↓。
九州大学総合研究博物館
ロゴマーク
岩永省三(福岡市西区)
あはは、ちょっと似通い過ぎてる感じですな。
こちらは2005年1月制定、募集方法は「学内にチラシを配布、博物館ホームページに掲載」だったというから、おそらく(学内限定ではない)一般公募だったのだろう。それで集まった38点の中から選ばれ、九州大学芸術工学研究院視覚情報部門教授 佐藤 優によるリデザインを経たものである。これまた作者の詞書きがやったら長いんです。
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九州大学総合研究博物館は、自然史・文化史など多くの分野を総合した博物館です。そうした博物館の活動領域を象徴するように、見る方向によって様々な形に見えるような形態を考えました。蝶の羽根、巻貝の横断面、蔓植物の先端(唐草)、木の幹に止まった昆虫、額に刺青を施した人物の顔にも見えるはずです。上下逆転させれば、不死鳥フェニックス、あるいは未知の世界に漕ぎ出す船にもなるのです。
全体の雰囲気は、私が好きな芸術家、アルフォンス・ムハ(ミュシャ)(1860~1939)あるいはルネ・ラリック(1860~1945)の作品をイメージしています。アルフォンス・ムハは優美・華麗な女性像で有名ですが、植物を主要素材とし曲線を駆使する装飾的画面構成が特徴です。ルネ・ラリックは、アール・ヌーヴォー様式、アール・デコ様式に渡って活躍したフランスを代表する工芸作家です。作品には植物・昆虫・魚類・動物などの自然界の素材が頻出し、怪しい魅力に満ちています。
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こりゃ強烈に吹いてますなーーー。
へぇえ、Art Nouveauが好きって正面切って宣うアーティストがいるんだ今でも。(いや、素人ツルは大好きですよ、あの優美な曲線と装飾性と象徴性が。)
と思ったらこの作者、伏せてある(と思うんだ)けど実は当の総合研究博物館の教授かつ副館長だったらしい(同名異人である可能性も否定し切れないがww)。2021.03.23発行の「九州大学総合研究博物館ニュース」No.35には退官に際し本人が稿を寄せている。
専攻は考古学、現在の肩書は「独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所都城発掘調査部客員研究員」(33文字!)でまたまたびっくり。
つまりさ、インサイダー選んじゃう伝統はこのロゴから既に始まってたんでしょう(学内公募だった可能性も完全には否定できないがww)。
もしも今回5位作品を採用するのだったら、左右反転させた方が収まりがよかったんじゃないですかねえ、博物館ロゴと一対にして表示する場合を考えりゃ(笑)。
行書と楷書ぐらいの違いはあるわな。
そうか!フジイギャラリーロゴマークの最終版のベーシックカラーは、この色に似たところで選ばれたのかもしれない。
おそらく、イフジ産業の社員さんたちに投票させたらこれが一等賞になったろうという気がするww。でもこれだとニワトリの資料とか鶏卵の歴史とかばっかし展示してあるような感じになっちゃうじゃん、意味合い上。これを候補の中に残したってことは大学側に藤井德夫氏への忖度があったということだろうとツルは理解した。
それに、同博物館の下にある同ギャラリーという関係性が曖昧になっちゃうんじゃないですかね?同格に見えちゃうっつうか。もっとも、同博物館は「当面の運用」を担うということだから、いずれそのうち格付けも変わるのかもしれないが。
ここにきて種明かしをすると、実はフジイギャラリーの建物自体、「九大博物館ロゴの形状がデザインに取り入れられています」ということなんですわ。設計した株式会社徳岡設計(大阪市中央区)のサイトにはこう出ている。
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コンセプト:
九州大学の旧箱崎キャンパス内の総合研究博物館には約145万点の様々な分野の学術標本・資料が収蔵されています。フジイギャラリーは九州大学の伊都新キャンパスにおいてこれらの貴重な資料を展示する場となり、大学博物館の知的活動と交流を支援する機能の一部を担うものとして整備されました。建物デザインコンセプトは、総合研究博物館のロゴから発想した「鳥の羽」をモチーフとし、九州大学の学生が大志を持ちより大きく羽ばたいて欲しいという、大学関係者や卒業生の想いにもつながるデザインとしました。
また、本ギャラリーは伊都新キャンパスの玄関口に位置しており、大学の主要施設である講堂と図書館をつなぎ、魅力的な人の流れを生み出す役割も担っています。
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てことは、一次選考2位の作品は、博物館ロゴ → ギャラリー建物 → ギャラリーロゴという出現の流れに忠実に沿ったものでもあったんですな。それに対し5位の作品は中抜けしてダイレクトに博物館ロゴ → ギャラリーロゴときて、そこに横っちょからイフジ産業(「イフシ産業」ではないよ)ゆかりの鶏が飛び込んできた感じ・・・。
いや、そもそも、フジイギャラリーのロゴマークなんて新たに作る必要があったのだろうか?総合研究博物館のロゴマークをそのまま利用することでもよかったじゃん。そうしなかった理由はどこにあるのか ――おそらくはギャラリーの「当面の運用」の主体になるに過ぎないから―― 、そこをきちんと説明しないで済ませようとしたから歯切れが悪いし、応募も51点と(国立大学のデザイン公募としては)低調に終わったんじゃないですかね。
しかし危ない橋を渡っとるのぉ、ツルも(謎)。しかもIvory Towerの誇り高き住民たちに対してさっ。
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