【加筆編】Retrospectiveなデザインが可能性を封印する:序(東桜小学校・光陵小学校・犀川小学校)
【2022.11.15 改稿】
家紋画像を白地黒紋から黒地白紋に変更しました。
こうしないとどうもしまらない。
-----
(承前)
奥野の校章作品を見た後は、比較対照的にこのガイダーの作品を見ていこう。
まず、最新のところから。
〔2023年4月開校予定〕
岩手県北上市
北上市立東桜(とうおう)小学校
校章
居関孝男(71歳:京都市:グラフィックデザイナー)
居関も校章・園章をばんばん作ってるんだよねーーー。
-----
(同市サイト)
「東桜小学校」の校名・市の木である[桜の花びら]を用いて、児童が両手を広げ大地に踏ん張る姿を彷彿させました。小さな4枚の花びらで統合する4校、大きな花びらで未来への成長と躍進、そして新しい学び舎を表してあります。
-----
え、5校統合かと思ったら4校なん?旧校と新校の両方をビジュアルに表すという点だけはユニークだと思うけど、なんか、こじつけっぽい。
この統合はもともと立花小学校・黒岩小学校・照岡小学校の3校で行う計画だったのが、2020年秋に口内(くちない)小学校が対象に加わったもので、校舎は「立花地区の県道一関北上線沿い」に新設される。
旧校の校章は次のとおり。
立花小学校
黒岩小学校
照岡小学校
口内小学校
立花小のデザインは、校名からしても橘紋モチーフだろう。
Localityや歴史の重みがカケラも感じられない校名(ばっさり)はやはり公募されたものだが、「とうおう」と耳で聞いて漢字がパッと思い浮かばないというのもツルに言わせりゃ致命的ですな。趣旨は次のようなことらしいですが。
-----
北上市の東部に位置しており、東部4地区が一丸となってつくられる学校であることを示す[東]と、地域住民に愛着のある、美しい花を咲かせる[桜]のように、子どもたちが美しい心・たくましさ・自信をもった人に成長してほしいという願いを込める「桜」を合わせて、「東桜」としました。
-----
そりゃまあ、ご当地だって桜の名所はあるでしょうけどね。
-----
(2022.07.27 岩手日日新聞 抜粋)
市教委は4月4日~5月27日、全国を対象に校章を公募。市内、県内外から177点が寄せられた。
地元4地区の関係者らで構成する東部地区小学校統合推進委員会で8点に絞り、市教委に上申。市教委で検討した結果、居関さんの作品は▽東桜小にちなんだ[桜]をイメージ▽[校名]がフルで入っている▽シンプルな表現―が評価された。
作品の中には「東」も多かったが、市内には黒沢尻東、和賀東の両小学校もあることからフル表記が望ましいとし、北上川などを盛り込んだ作品もあったものの、最終的にシンプルさを重視した。
居関さんは「市の木である桜の花びらを用いて、児童が両手を広げ大地に踏ん張る姿を彷彿させた。小さな4枚の花びらで統合する4校、大きな花びらで未来への成長と躍進、新しい学びやを表した」と説明。これらの制作意図も明確で、校名の趣旨に合致していると評価されたとみられる。
-----
「桜」も没個性なら、「東」もカブりが問題になるぐらいありふれとるわけだorz。「カブるからフル表記が望ましい」というのは足し算思考に過ぎないでしょ?「校名がフルで」という点も実はかなりはっきりと居関テンプレートなので、そこはまたいずれこき下ろします。
今春開校したところではこんな桜が。
〔2022年4月開校〕
福岡県宮若市
宮若市立光陵小学校
校章
居関孝男(京都市) →
-----
(2022.01 広報みやわか No.192 抜粋)
宮若東中学校区小学校再編準備委員会で選定を行い、教育委員会会議で居関孝男さん(京都市在住)の作品の採用を決定。その後、再編準備委員会委員、教育委員の意見を取り入れ、校章デザインが完成しました。
【デザインに込められた思い】
大きく両手を広げ地に根差した児童の姿と学校を大切にする気持ちを表しています。
-----
-----
(2022.09.23 居関 Facebook)
福岡県宮若市に令和4年4月に新しく開校した「光陵小学校」の校章。校名の[光]の文字を輝く[星]の形にして描き、中央の[弧]で「陵」、背後に宮若市の花である[サクラ]を配し、全体から大きく両手を広げた児童の姿に見立て、地に根ざす様、そして[校名]を入れ学んだ学校をいつまでも心に残る様に表しました。
-----
宮田東小学校・宮田小学校を統合して開校したもので、新校舎は2013年3月に閉校した旧 宮田光陵中学校(宮田中学校と統合 → 宮若東中学校)の跡地に建設された。玉突きのScrap & Buildです。
Facebookには当初版の方が出ているが(自分が作ったのはこちらだ、という言い分だろう)、リデザインでかなりフォルムが修整されて、色使いもモノクロになった・・・のだと思う(光陵小サイトには校章が掲載されていないので詳細不明)。構図が変えられたのは、桜花を倒立して配することに違和感ありとなったんじゃなかろうか。それと、バッジにしたときに尖ったところがあると危ないやら何やらの声も上がったっちゃないかいな。
しかしよく見ると不思議な構造をしていて、桜と星と「光陵小」は中心がズレてるんですね。しかもリデザイン後も完全には直されていない(72度ずつ回転させていくとわかりますよ)。それってアリなんですか??
180度回転させれば弧は弦月に変わるのでww、だったらいっそ雪月花か日月星のモチーフにしちゃえば?「陵」はどうせ大した意味など持たされてないでしょうが。最近の学校名にはしばしば登場する字だけど。
そもそも論で言えば、「光」と「陵」の字をビジュアル化したのなら、「光陵小」の表示は必要ないのじゃないの?それに同市には他にも小学校があるのだから、なぜここが市花を用いるのかというツッコミもありそうな・・・。「我こそは宮若市の小学校の代表」みたいな体で。
旧校の校章は以下のとおり。
あー、そうか、やっぱり。「宮若市の花」だからサクラが使われた、というだけではないのかもしれんな。
だいたい居関校章には桜モチーフがとても多いんです。というより、伝統的に全国津々浦々の学校の校章で最も頻繁に用いられてきたのが桜花紋ということだろうけれど。その前提で考える限り、(学校再編に伴う新校の開設であっても)どうしても桜花紋デザインが無難ということになるのだろう、ガイダー的発想では、あるいは制定側小役人の頭では。
次もまた福岡県内、また桜花紋です。
〔2020年4月開校〕
福岡県京都郡(みやこぐん)みやこ町
みやこ町立犀川(さいがわ)小学校
校章
居関孝男
グレーで表された部分はシルバーを意味するんだそうな。[二重輪郭]で描くのは居関が多用するお手の物の手法で、これまでにも多数見てきたし、上掲の東桜小もそう。一方、珍しく「犀川小」ではなく「犀小」という略称でデザインされているので、ちょっと「サイ/Rhinocerosの学校」みたいな感じで愉快。
-----
(同町サイト)
一筆で描ける[桜]から児童たちが仲良く手をつなぎ合う様、[犀川]の文字で学んだ校名を忘れないように願い、若草を意とする緑色で表してあります。
-----
-----
(2022.01.18 居関Facebook)
犀川小学校・柳瀬小学校・上高屋小学校、そして城井[引用註:きい]小学校が統合し、新たに開校する『犀川小学校(福岡県みやこ町)』の校章デザイン。現校章と旧犀川小学校の木であった[桜]からその花びらを用いました。一筆で描ける花びらから児童たちが仲良く手を取り合う様を意とし、[犀川]の文字で学んだ学校を忘れないように願ってあります。
-----
だからさ。「犀川」ではなく「犀」なんですってば!
ああいや、そこじゃないか・・・・・
そうか![一筆描き]であることを表すためには中央の部分を描くことがどうしても必要で、だから文字数が奇数の「犀川小」ではなく偶数の「犀 小」にして花心を覗かせたんだ!
4校統合を五弁花の桜で表したのも東桜小と同じで、旧校はいずれも創立100年を数える古い歴史があった。新校舎は旧犀川小敷地内に新築された由。
カラーにするとこうなる↓らしいんですが・・・(厳密には校旗じゃないかと思うけど。)
なんか、かなり違ってる気がするが(笑)。
やっぱ桜は必然だったわけだ、ある意味。でもよく考えると、逆に一筆書きできない桜ってあるのかな、と思うけど(笑)。雄しべは柳瀬小でも描かれてないじゃん。
見渡せば柳桜をこきまぜて「みやこ」ぞ春の錦なりける
素性法師
(続く)
« 【スーパーローカル編】伊都国の密室で;偶然の鍵(九州大学フジイギャラリー暖簾マーク) | トップページ | 【加筆編】Retrospectiveなデザインが可能性を封印する:壱(桜舞館小学校) 其の壱 »
「Visual界:キャラクター/シンボル/ロゴ」カテゴリの記事
- 【手遊び編】Comme ça de Templé / パロディってこんな風?(士幌町100周年・八戸市90周年・88周年)(2023.01.28)
- 【加筆編】そしてOld Fashioned Templateは続く(公募ガイド キャラクター添削講座 サンプル)(2023.01.21)
- 【加筆編】象牙の塔の田舎公募(さにーちゃん)(2023.01.14)
- 【手遊び編】カラバリ塩キャラデジタル塗り絵(岡山医療センター・丹波篠山市章・丹波市章・JA愛知みなみ・みなみくん・とまらん♪ロゴ)(2023.01.07)
- もうやめようよ、ご当地キャラとか。(その267:桃の妖精)(2023.01.01)
« 【スーパーローカル編】伊都国の密室で;偶然の鍵(九州大学フジイギャラリー暖簾マーク) | トップページ | 【加筆編】Retrospectiveなデザインが可能性を封印する:壱(桜舞館小学校) 其の壱 »
コメント