【加筆編】象牙の塔の田舎公募(さにーちゃん)
(承前)
岡山医療センターネタ、もう少し引っぱります。調べていくうち、超意外な事実が判明しまして。
この病院は小児医療に力を入れているらしく、小児科に特化したキャラクターを作ったのもその表れということらしい。
採用されたキャラクター「さにーちゃん」はこんな感じ。
岡山市北区
独立行政法人 国立病院機構
岡山医療センター 小児科
マスコットキャラクター
さにーちゃん
松本 唯(岡山県)
こういうのが夜中にテレンパレンと(多分、博多弁)病棟をうろついてたりしたら、それなりにコワいとは思いますが。いや、「Sunny」だから夜は出ないのかぁww。
不思議なことに、一見、頭に盛ったマークが裏返しになっているように感じられますが・・・
でも、もっと不思議なことに、よくよく見るとこれでいいんですよ、コレが。
このキャラクターが制定された時には、同センターの広報誌に次のような記事が載った。
-----
(2018.06.20 ザ・ジャーナル!! Vol.13 No.1)
小児科マスコットキャラクターの紹介
■小児科医師 井上拓志・6B病棟看護師 松本 唯
当院小児科では、小児の療養環境の改善のための試みとして『マスコットキャラクター』の作成に取り組んで参りました。キャラクター案は公募の結果、合計38点もの応募をいただきました。厳正な審査の結果、『さにーちゃん』が小児科マスコットキャラクターに選ばれましたのでご紹介させて頂きます。
おなまえ さにーちゃん
せいかく やさしくてあかるい
せいべつ ありません(あえてのユニセックス)
かいせつ
【あたま】
さにーちゃんの頭は『晴れの国おかやま』の[太陽]をモチーフにしています。トゲの一部分は岡山医療センターの[マーク]になっています。
【ふく】
病院にいる人たちはほとんど白衣を着ています。少しでも白衣に対する恐怖がなくなれば…。そんな願いを込めて[白衣]を着ています。白衣には[カプセル]型のボタンと[お薬袋]型のポケットが付いていて、ここからみんなを元気にするお薬が出てくるかも?!背中には[点滴]、そこから[翼状針]の形のしっぽが生えています!
【からだ】
さにーちゃんの指は4本です。人のからだにはいろんな個性があって、5本指だけではありません。世の中にはいろんな体のひとがいる、そんなメッセージを込めました。
最後に…
子どもたちが少しでも快適に病院で過ごしたり病院に通ったりできるように療養環境の改善を目指すことは私たち小児医療に携わる者の務めです。当院小児科では今後もいろいろな創意工夫を凝らして取り組んでいきたいと思いますので、みなさま応援よろしくお願いいたします。
さにーちゃんから一言
さにーちゃんのお仕事は、病院で頑張っている子どもたちやその家族に笑顔を届けて、元気や勇気、安らぎを与えること。
(もちろん、病院で働くスタッフの皆さんにも!)
これから、色んな人と仲良くなれることを楽しみにしているよ!見かけたら、ぜひ声をかけてね! 写真撮影も大歓迎!
-----
背中に点滴しょってるたというキャラ設定にはびっくりするけど、まあそれもありなんでしょう、趣旨に照らせば。どうせなら本物の翼状針(そんな言葉初めて知った)もかわいいちょうちょなんかの形にしちゃったらどうです?
「5本指だけではありません」とストレートに言ってのけたところは目から鱗だった。これって、従来のご当地キャラクタービジネスでは御法度とされてたことじゃないかと思うんですよね、いわばPolitical Correctnessの観点から。例えば、井口やすひさが持っているウェブ版「公募ガイド」誌の「公募スクール」のキャラクター添削講座では、サンプルで;
【2016.09.04「頬紅の ご当地キャラぞ 哀しかるべき」】
-----
手の指4本の表現は禁物
身体のご不自由な方への差別を連想する。
-----
とあった(項目のナンバリングには誤りあり😠)。
こういう問題って、官公庁とか巨大企業とかになればなるほどやかましかったりするのはツルも知っている。友人で、○TT○コモの広報紙制作を請け負っていた奴が、「五本の指に入る」とか「片腕として」とかの表現がクライアントからNG食らったって言ってたっけ。
しかし、ここではそんな縛りを軽々と飛び越えちゃったんです。Dogmaticなものの見方とどちらが筋のいい話か、心ある読者にはわかっていただけることでしょうが。
さて、いい話はここまで。
この公募も所詮は田舎公募なんですよ。象牙の塔の密室選考。
気がつきました?上掲の紹介記事の筆者の一人の名前に。
松本は内部者でありながらキャラクター公募に応募し、採用され、そしてニューズレターにその紹介記事を書いたことになる😱。しかも記事中そのことは伏せられているので、明らかに秘匿の意思があった、「これはバレたらマズいのじゃないか」と思っていた、ということになる。
募集要項には「応募資格 この企画の趣旨に賛同してくださる方は、どなたでもご応募いただけます」、募集ポスターにも「応募資格 この企画の趣旨に賛同してくださる全ての方」とあったので、そこを盾に取れば、明確な規定違反はなかったじゃないかという見方もできるだろう。
しかし、「公募」として行う限り、公正の観点から厳格に内部者の応募はすべからく禁ずべしというのが愚blogの基本スタンスです。つまりCompliance、公序良俗ね。嚙んで含めりゃ「他の応募者はどう思うか」っつうことだ。
ガチで言えば、「特に有利な立場にあったわけではない」ことを証明するのってとても難しいでしょ。だから初めからそういう不安要素は取り除いておくんじゃん。そこがわかってなくて自分たちの都合のよいように引き寄せて考えるから田舎公募だと言うんです。
それに、QUOカード5万円分の採用対価も出してるでしょ。松本の場合は業務上の報酬との境界が曖昧です。「看護師としての職務とは無関係な、個人としての応募だ」なんて主張したとしても誰も聞き入れてはくれないでしょう。
作者の素性が明かされたのは、2018年3月の決定から1年半経ち、院長 久保俊英が受けた次のインタビューにおいてである。
-----
(2019.09.16 岡山の医療健康ガイド MEDICA 抜粋)
〔前略〕
―マスコットが子どもたちに人気です。
2018年3月に小児系マスコットキャラクター「さにーちゃん」を誕生させました。全国から約40件の応募があり、審査の結果、当院の看護師による作品が選ばれました。顔は[太陽]がモチーフで、岡山医療センターの[マーク]が入っています。[白衣]を着ているのは子どもたちに医師や看護師を身近に感じてもらおうという願いが込められています。イラストは小児科スタッフが身に着けるユニホームに取り入れているほか、お正月やこどもの日といった毎月作成する季節のポスターにも登場しています。製作した着ぐるみには看護師が入り、病棟で子どもたちと遊ぶ活動を展開しています。ゆくゆくは手術室まで付き添ったり、病室を定期的に訪問したりしていきたいです。
〔後略〕
-----
繰り返しになるけど、「当院の」の一言が「全国から」を無効化しちゃう。
本公募が行われたのは前院長 佐藤利雄の時であり、2019年4月に就任した久保に責めを負わせることはできないだろう。しかしこの新しい院長先生もしゃらっとバラしちゃってるので、結局問題意識がない、ひいてはリテラシーが低過ぎる、ということになるんです😖。
こうなると、2点の次点のうちの1点「サニーくん」の作者「兒山弓子(岡山県)」も同センターの関係者ではないのかと疑わしくなってくる(もう1点は前回取り上げた榮一とっつぁん)。
検索をかけてみると、2018年の岡山市消防局の公式マスコットキャラクター公募で次点に選ばれた時には「パート」とのみ記載されているので、微妙なところ。
結論として、病児のQuality of Lifeを高めたいという大目的は崇高だと思う。けれど、制定のプロセスは不適切だと思います。
(続く)
« 【手遊び編】カラバリ塩キャラデジタル塗り絵(岡山医療センター・丹波篠山市章・丹波市章・JA愛知みなみ・みなみくん・とまらん♪ロゴ) | トップページ | 【加筆編】そしてOld Fashioned Templateは続く(公募ガイド キャラクター添削講座 サンプル) »
「Visual界:キャラクター/シンボル/ロゴ」カテゴリの記事
- 【加筆編】職業デザイナーとご当地公募:その4 もしくは打ち止め?(ホクト文化ホール40周年)(2023.05.20)
- 【加筆編】職業デザイナーとご当地公募:その3(沖縄復帰50周年・兵庫津ミュージアム・四国遍路世界遺産登録推進)(2023.05.13)
- 【加筆編】職業デザイナーとご当地公募:その2(ヘルス・グラフィックマガジン表紙・3R推進ポスター)(2023.05.07)
- 【手遊び編】職業デザイナーとご当地公募(静岡社会健康医学大学院大学・京都大学医学部附属病院)(2023.03.21)
- 【手遊び編】Comme ça de Templé / パロディってこんな風?(士幌町100周年・八戸市90周年・88周年)(2023.01.28)
« 【手遊び編】カラバリ塩キャラデジタル塗り絵(岡山医療センター・丹波篠山市章・丹波市章・JA愛知みなみ・みなみくん・とまらん♪ロゴ) | トップページ | 【加筆編】そしてOld Fashioned Templateは続く(公募ガイド キャラクター添削講座 サンプル) »
コメント