【加筆編】職業デザイナーとご当地公募:その3(沖縄復帰50周年・兵庫津ミュージアム・四国遍路世界遺産登録推進)
(承前)
翌年になると、村上はだいぶ公募に入れ込んでいたらしい。
2022.03.18にはこんなものができている。
沖縄県
沖縄復帰50周年 記念シンボルマーク
村上正剛(53歳:東京都:グラフィックデザイナー)
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誰もが沖縄をイメージする[花笠]をモチーフにデザインしたシンボルマークです。数字の[5]は沖縄の風と波、そして沖縄の歴史の流れをイメージ、カラーリングも直感的に沖縄を感じられる配色とし、「沖縄復帰50周年」のロゴをオリジナルで設計することで、より印象的にシンボルマークをアピールします。
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<選ばれた理由を一部ご紹介>
・華やかかつシンプルで記憶に残りやすい
・シンプルなのにぱっと見て沖縄のこと・50周年の事が分かりやすくて好感がもてました。
・地味になりすぎず、沖縄らしい配色がいい
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2022.05.15に復帰半世紀の記念日を迎えるに当たり、その2ヵ月前に(おいおい)発表されたわけ。村上作品としては、かつて華やかなりし「丸にブーメラン」デザインに最も近いものだろう。ちょっと不思議なデザインで、花笠の周りの青い部分は円形なのに、八角形に見える(ように仕組まれている?)。
返還当時、村上は3歳だったことになることに気づいて(前回の大伏線を見よ)愕然とするツルであった。
でも、ああ、他にももっと気になりますねーー。
各メディア等の記事の見出しだけ拾ってみると。
毎日新聞:沖縄復帰50周年シンボルマーク 県が発表 風と波、花笠モチーフ
産経新聞:復帰50年記念マーク発表 沖縄、自然と伝統イメージ
沖縄県:復帰50周年記念シンボルマークデザイン募集について
沖縄県:沖縄復帰50周年記念シンボルマークについて
読売新聞・朝日新聞その他は不明。
おわかり?
本来、「沖縄復帰」は本土側から見た言い方でしょ。現地サイドから見れば「(沖縄の)日本(本土)復帰」であるはずだ。
ブンヤだったらこのあたりは当然敏感だったろうよ。
地元紙では次のとおり。
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(2022.03.19 沖縄タイムス 抜粋)
花笠あしらい風と波を表現 復帰50周年記念シンボルマーク 村上正剛さん作品を選出
沖縄県は18日、公募していた沖縄の日本復帰50周年記念シンボルマークを決定したと発表した=写真。琉球舞踊の[花笠]をあしらったデザインが特徴。沖縄の風と波を表現した[5]と花笠の[0]で「50」を表現している。
全国73人から125作品の応募があり、1次審査を通過した8作品による一般投票を実施。投票総数860票のうち225票を集めたグラフィックデザイナーの村上正剛さん(53)=東京都=の作品が選ばれた。村上さんは本紙取材に「作品が選ばれて光栄。日本や沖縄にとって大事な節目であり、50年前のことを改めて考える機会になれば」と話した。
〔後略〕
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(2022.03.19 琉球新報 抜粋)
復帰50年のシンボルマーク発表 琉球舞踊の花笠モチーフ、沖縄の風と波、歴史イメージ
玉城デニー知事は18日、沖縄の日本復帰50周年記念のシンボルマークを発表した。琉球舞踊で使用される[花笠]をモチーフに、数字の[5]には沖縄の風と波、歴史をイメージしたという。デザインは公募により、東京都のデザイナー、村上正剛さんの作品を採用した。
シンボルマークは記念式典など今後の各イベントで活用していく。民間企業などでも県に申請して使用できる。
玉城知事は「沖縄の特徴が出ている、とてもすっきりしたデザインだ。ぜひ多くの事業者にも作品を活用してほしい。復帰50年の節目に、それぞれで思いを込めた取り組みを行ってほしい」と呼び掛けた。応募があった125作品の中から、一般投票を含む2次の審査を経て決定した。
〔後略〕
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ほうらね、やっぱり。
なんかね、2つの立場を止揚するようなデザインは作れなかったのかとも思う。文字ではうまく表せないものがビジュアルでは表現できたのではないか、デザインの力ってそういうことではないか、なんて。
ま、当の沖縄県サイト自体、途中で微妙に表現が変わっているぐらいだけど。つまり結果的に「沖縄復帰50周年」になったんですよ、ご当地でも行政上は。
(でもまたふと、これを県内限定公募ではなく全国公募とした背景に思い至ったりもする。)
因みに、本公募では「色数は7色まで」と指定されていて、これって本Seriesを書き始めてから10年余り、ツルの記憶にある限り最多記録だと思いまス。
そしてそれからわずか10日ほど後、2022.03.29に発表されたのが次のデザイン。
兵庫県
兵庫県立兵庫津(ひょうごのつ)ミュージアム
ロゴマーク
村上正剛(東京都世田谷区:グラフィックデザイナー)
↓
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・[白いライン]が兵庫の[兵]を表現
・中央の[赤色]部分が「初代県庁館」、[青色]部分が「ひょうごはじまり館」をイメージ
“和の佇まい”と“近代的意匠”のどちらにも違和感のないデザイン
[菱形]フォルムが上下左右・東西南北とあらゆる方向に広がり発展する兵庫を体現
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神戸市兵庫区にできた施設で、『博物館施設である「ひょうごはじまり館」と最初の兵庫県庁舎の復元施設である「初代県庁館」の2館が一体となった新しいタイプの施設』というのが売り。2021年11月に「初代県庁館」が、2022年11月に「ひょうごはじまり館」がオープンしており、ロゴマークはその狭間に募集され発表されたもの。
赤と青のパーツが「一体となった」と言えるかどうかは、うーん、微妙(笑)。
細かいところだけど、最終的には「p」の字と「t」の字は大文字に変えられている。前者はまあミスの訂正だけど、後者はなぜわざわざそうしたのだろう?Chicago Styleじゃハイフンの後は基本小文字が決まりでしょ。まあ、日本人はCap/Lowで書くの好きだから(笑)。
さらに、なんとその2日後の2022.03.31には。
徳島県・高知県・愛媛県・香川県
四国遍路世界遺産登録推進協議会
新シンボルマーク
(優秀賞)村上正剛(せいごう)(東京都)
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四国の[地形]をモチーフに、徳島・高知・愛媛・香川をイメージして[4色]でカラーリングしました。
[1本のライン]で構成されたフォルムは、最終目的地がなく、周回することができる四国遍路の巡礼の特長と四国がひとつになって取り組んでいる活動の協議会であること、お遍路さんと地域の人たちとの交流を表現しています。
世界遺産登録を目指す協議会にふさわしく、シンプルで力強く、一過性でないデザインを心がけました。
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同協議会は、前年の2021年4月に旧称の『「四国八十八箇所霊場と遍路道」世界遺産登録推進協議会』という長い名前から改称しており、心機一転、Icon更新を図ったらしい。
スペインのサンティアゴ・デ・コンポステラの巡礼路が世界遺産に登録されたのは1993年(2015年に範囲拡大)で、これを意識するところは大きいだろう。
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四国遍路とは・・・
徳島・高知・愛媛・香川の四国4県に点在する、弘法大師ゆかりの霊場を巡る1,400kmに及ぶ壮大な霊場巡拝です。多数の札所を巡る四国遍路は、最終目的地がなく、周回することができるという特徴のある巡礼で、四国の遍路道沿いには道標などが遺され、巡礼を支えるお接待などの慣習が今も地域の中に息づいています。四国遍路のすばらしさや、お遍路さんと地域の人たちの交流、四国がひとつになって取り組んでいる活動を知っていただけるよう、四国遍路世界遺産登録推進協議会の新たなシンボルマークを募集します。
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で、こんな結果になった↓。
なんかあんまり代り映えしないような・・・(苦)。
本公募の事務局は香川県高松市にある一般社団法人 香川経済同友会が務めた由。四国最大の都市、愛媛県松山市じゃなかったんだ?
(最優秀賞)
くにともゆかり(東京都)
(優秀賞)
村上正剛
眞鍋純久(東京都)
ま、こうして見てくると、基本的にカッチリ系のデザインということになるのかな。
(まだ続く)
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