映画・テレビ

2015年3月23日 (月)

角川映画「犬神家の一族」

古平町「ふるっぴ〜」で「犬神」ときたからにはもう、これを取り上げずには済まされぬだろうて。そう、「犬神家の一族」。言わずと知れた(?)第1回角川映画。

(以下、ばっちりネタバレしてる上に、昭和の薫りたっぷりです、十分ご注意下さい)

横溝正史(よこみぞ せいし(本名 よこみぞ まさし):1902.05.24〜1981.12.28)原作の古い推理小説(雑誌「キング」1950年1月号〜1951年5月号連載)を市川 崑(1915.11.20〜2008.02.13)が1976年に映画化したこの作品は、当時の角川書店の大々的な宣伝もあって大ヒットし(確か配給収入15億円を叩き出したのではなかったかと思う)、70年代後半に空前の「横溝ブーム」を巻き起こした。とともに、高度成長期には松本清張ら社会派の台頭ですっかり忘れ去られた存在であったこの老ミステリー作家を再び最前線へと押し出したわけです(この映画の冒頭と終幕に特別出演してます)。ツルと同年代以上の人なら、「横溝正史」の四文字を目にしただけであの「おどろおどろしい」世界の感触が甦るって人も多いのじゃないかしらん。

市川は横溝のミステリーの世界を借りて『現代の「母もの」を作りたい』と考えていたそうで、だから大女優高峰三枝子(1918.12.02〜1990.05.27)の出演が決まった時に「これでうまくいく」と大変喜んだと何かで読んだことがある。

高峰姓の女優にはもう一人、高峰秀子(1924.03.27〜2010.12.28)もいた。これまたツルはあまり詳しくありませんが、ツルの親が「高峰秀子はデコちゃんというニックネームで親しみやすい下町娘という感じ、高峰三枝子の方は冷たく理知的な美貌の貴族の令嬢のイメージ」と言ってたっけ。
だからこそ、鉈を振るっての血まみれ殺人をその高峰三枝子にやらせたのは相当インパクトがあった。彼女は市川の期待によく応えて見事に「母」を演じ切り、この大ヒット娯楽大作でブルーリボン賞を初めて獲得した(助演女優賞だけど)。

のみならず、この作品は市川崑にとっても特別な思い入れがあったようで、2006年には自身の手でリメイクされている(市川の遺作となった)。にしおかすみこがネタにしてましたね。探偵金田一耕輔はどちらも石坂浩二。
2006年版は、ラストシーンを除けばコマ割りや役者の位置、セリフの重ね方まで1976年版とほとんど同じで、同世代の映画監督新藤兼人(1912.04.22〜2012.05.29)をして「あんなに似ているとは驚いた」と言わしめた。ただ、一般的には1976年版の方がイイという人の方が圧倒的に多い気がします。この辺りはネット上にも沢山転がっているから深掘りしませんが、ツルもそう思う。ツル的理由は2点。

1.
犬神松子夫人を演じたのは1976年版が高峰三枝子、2006年版が富司純子(ふじ すみこ:1945.12.01〜)。富司は若い頃に藤 純子(ふじ じゅんこ)の名前で東映の「緋牡丹博徒」シリーズに主演した人です。梨園に嫁ぎ、七代目尾上菊五郎の妻、寺島しのぶ・五代目尾上菊之助姉弟の母でもあります。最近では2009年のアニメ映画「サマーウォーズ」で一族の要となるお祖母ちゃんの声を担当してました。

で、高峰松子が「息子を愛するあまり殺人を重ねてしまう哀しい母親」であるのに比べて、富司松子は「血に飢えた殺人鬼」にしか見えんのですよね、ツルには。

高峰三枝子

2.
ストーリー上重要な地位を与えられている野々宮珠世の役は、1976年版では島田陽子(現 島田楊子)、2006年版では松嶋菜々子が演じた。市川自身による再映画化に際して東宝から出された条件が松島の起用だったそうで、当代きってのマネーメーキングスターだからまあそれはそうなるんでしょうが。でもこの役、絶世の美女ということになっていて、これはそうでなければこのミステリー自体が成立しないというぐらいに重要な要素。
ツルは子供の頃から「美人女優というのは島田陽子のことだ」と思っていたところがある。NHKの「銀座わが町」(1973〜1974)とか日本テレビの「花ぼうろ」(1976〜1978)とか見てましたねえ(T_T)。とりわけ犬神家の一族の島田陽子は輝くばかりに美しかった。所属する松竹から借りてきたわけですよ、わざわざ。

島田陽子:遺言状の場

島田陽子:懐中時計の場

島田陽子:佐清侵入の場

松嶋程度のご面相じゃ珠世役はダメなんですよ、到底。
(ネット上では、島田は今や往時の見る影もないという風評が支配的。でもツルは、ひょっとして「美女」であることに倦み疲れてしまった、あるいは厭きてしまった人なのではないかと思ったりする・・・)

そう言えば高峰三枝子はツルも一度だけ見かけたことがある。80年代、京都に住んでいた時、鞍馬の火祭りを見に行って、テレビドラマの撮影をしているのに出くわしたんだよね。大女優のオーラたっぷりだった。川野太郎と一緒でした。確か2時間サスペンスものだったと思う、「鞍馬の火祭りに人が死ぬ」的な感じの。

そだ。またついでに思い出したけど、ツルは京都時代に左京区の黒谷にある金戒光明寺(こんかいこうみょうじ)の中の「清心庵」というところに下宿していて ――といってもごく普通の安アパートでしたが―― お寺の境内で京マチ子(1924.03.25〜)と丹波哲郎(1922.07.17〜2006.09.24)がロケしてたこともあったっけ。調べてみたらフジテレビ系「花王名人劇場」の1986年の「姥ざかり4」だったようです。
京は1950年の黒澤 明の「羅生門」などに出演した女優、丹波はテレビシリーズの「キイハンター」「Gメン'75」が有名ですね。その後「大霊界おじさん」になってしまいましたが。

その京マチ子も、犬神松子を演じたんですよねー、TBSテレビの横溝正史シリーズの「犬神家の一族」で。

京マチ子

目がイッちゃってます(笑)。

でも、テレビ版の横溝シリーズで一番ツルの印象に残っているのは「悪魔が来りて笛を吹く」。戦後間もなくの元華族の屋敷を舞台に、停電の中行われた砂占いで表れる「悪魔の紋章」とか、行方知れずになった黄金のフルートとか、銀座の宝石店から強奪された耳飾りの片方が殺人現場の温室で蘭の花の中から見つかるとか、もうキッチュなガジェット満載で。血に汚れたパフィオペディルム/Paphiopedilumのリップ(唇弁)の窪みの中からダイヤが妖しい輝きで覗いてんだよね。

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【2016.03.07 追記】
ふと記憶違いに気がつきました。

天銀堂から盗まれたダイヤの耳飾りが登場するのは、失踪した椿子爵のフルートのケースの中からです。蘭の花に残されていたのは、子爵夫人のダイヤの指輪でした。
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でも何と言っても白眉は淫蕩な子爵夫人を演じる草笛光子(1933.10.22〜)の悩乱する場面。アレはよかったーー(悶絶)。後年、DVD買っちゃいましたもんbleah

草笛光子&古谷一行

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