蘊蓄Field:似て非なるもの

2022年10月22日 (土)

似て非なるもの - 小中一貫教育校 vs 義務教育学校:後編

(承前)

 

小中一貫教育校や義務教育学校において、一般にメリットとして挙げられているのは、「カリキュラムの自由性」「中1ギャップの解消」などだいたい一緒なのに、不思議なのはデメリットとなるとずいぶんバラけていること。そして、たいていその内容がハッキリしないこと。
今回はそのデメリットの部分を集中的に見てみる。

 

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(2016.04.01 広島県廿日市市役所学校教育課 抜粋)

 

・小学校と中学校の節目がなくなり、新たな気持ちの切り替えや進学する充実感がなくなる可能性がある
・小学生が中学生をこわがってしまうのではないかという心配がある
・小学校と中学校の組織文化、習慣の違いが大きく、その調整に時間がかかるなど
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2016年4月と言えば、改正学校教育法が施行され、義務教育学校の設置が認められた時である。当時はこんな次元の低い話だったんですね。

 

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(株式会社ゆうきプランニング お受験ナビ 抜粋)

 

・生徒の人間関係がリセットできない
小学校と中学校が同じであるため、入学から卒業まで学年の生徒の顔ぶれが基本的に変わりません。
もし相性の悪い生徒同士や問題のある生徒がいても、中学進学で人間関係をリセットして再スタートすることはできません。

 

・教員免許が偏っている
教職員の持つ教員免許は小学校と中学校のどちらかでかまわないため、より専門的な教育ができるか不安が残ります。
ただし、義務教育学校のように原則として両方の教員免許を持っていることが条件となる小中一貫校が生まれたため、他の学校でも併有を求める方向へ移行すると見込まれます。

 

・子どもがみんな進学できるわけではない
近くに小中一貫校がなかったり、選抜試験に合格しなければ進学できなかったりするなど、全員に門戸が開かれているわけではないのもデメリットでしょう。
義務教育学校であれば一般的な小学校や中学校と同じように無試験で誰でも入学できますが、まだ数が限られているのが現状です。
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記載時点が明らかでないが😔😔😔、おそらくこれも2016年4月の改正学校教育法施行の後間もない頃ではないかと思われる。
3番目のポイントは論点がズレていると思います。

 

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(2021.06.03 株式会社Shift 塾プラス)

 

・合わなかった場合に環境を変えづらい
小中一貫校では、9年間同じ学校でほぼ同じメンバーで過ごすという点がデメリットにもなりえます。学校の教育方針になじめなかったり、友達と合わなかったりした場合に環境を変えにくいからです。
そのため、教員が子ども1人1人に目を配り、子どもに寄り添ってケアを行うことが求められます。

 

・学校の数が少ない
子どもを小中一貫校に入れたくても、近くに小中一貫校がない地域も多いことでしょう。
小中一貫校は、平成29年時点で253件であることを前述しました。当時はまだ検討中だったところもあり、その後も総数として増えてはいます。
しかし、学校をつくるには莫大な費用がかかり、工事にも時間がかかるため、簡単ではありません。他の自治体の導入具合を見ながら検討するという地域もあるようです。
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だからよ。「数が少ない」は本質的なデメリットではないでしょう?そもそも、公立学校で「選択できない」というのはデメリットなのかね?孟母三遷の教えには胡散臭さも感じてきたのだけど、ツルは。

 

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(2022.02.14 株式会社SUI ソクラテスのたまご 抜粋)

 

たとえば、いじめの問題。小学校課程・中学校課程と同じ人間関係が続くことで、いじめが悪化するケースもあります。
また近年、首都圏を中心に中学受験をする家庭も増えています。1999年の学校教育法改正をきっかけにスタートした、中高一貫校の数は年々増加傾向にあります。
さらに少子化による生徒数確保の思惑なども加わり、高校からの入学を募集停止する高校が増えてきています。
高校受験・大学受験を見据えている方は、選択肢そのものが狭まる可能性もあるので、情報を逐一チェックしておきましょう。
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「いじめの長期化・悪化」をここまで明らさまにしているのは初めて見た。ただ、そうなると、いじめの深刻化は長年あれほど叫ばれているのに、これらの一貫教育はその問題に解決策を見出す前に走り出したことになるじゃないか。

 

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(2022.04.28 株式会社KG情報 ママ賃貸コラム 抜粋)

 

交友関係で揉めるとリセットしにくい
小中一貫校は9年間同じ環境で過ごすため、友人関係などが途中でこじれた際にリセットしにくいことがデメリットの一つです。
いじめや不登校に発展する可能性に課題が残ると指摘されています。
これまで以上に、学校や保護者が十分に目を行き届かせるなどの配慮が必要となるでしょう。

 

小学校や中学校の良かった点が失われることも
小学校では高学年が下級生をリードし行事をおこなうなど、学年が上がるほど活躍や成長の場が見られるのが良いところです。
小中一貫となると、その機会が減少してしまい、リーダーシップや自信の創出につなげにくいという懸念もあります。
また、小学校の卒業式もないため、けじめをつけにくいこともデメリットといえるかもしれません。

 

転入・転校・受験対応に懸念
小中一貫校は学校ごとに独自のカリキュラムを編成するため、学校ごとに特色や学習の進め方などに違いがでやすいことが特徴です。
転入や転校する児童にとっては、応用がききにくいことも懸念されます。
特に中学校から進学する場合や、中学校受験などの対応が難しくなりがちなことが課題の一つです。
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リーダーシップの問題は、確かになるほどと思える。
転校生の問題は、何も一貫教育に特有の問題ではないはずだ。ツルも中1の時に福岡県大牟田市から福岡市南区に引っ越してきて、英語の授業の進み具合がまるで違うのに驚いたっけ。NHKラジオの基礎英語にずいぶん助けられましたが。

 

どの論調にも共通している、「環境が固定化するので・・・」という点は、しかし、単に「だからもしいじめに遭った時に・・・、人間関係が悪化した時に・・・」という観点から論じられるべき問題だろうか?むしろ、「変化への対応力が育まれない」という問題の方が重大だと思うのだけれど。簡単に言えば、「中1ギャップ」は起こらなくても「高1ギャップ」は起こり得るでしょ、ひょっとしたらもっと深刻な形で、ていうこと。

 

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もう一つ、一貫教育とゆとり教育の関係性というのがよくわからない。

 

1980年代に始まったとされる「ゆとり教育」については、Wikipediaに次のような記述がある。

 

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2008年、新しい学習指導要領が改訂され、ゆとり教育から脱却したということから「脱ゆとり(教育)」と称され、小学校では2011年度、中学校では2012年度、高等学校では2013年度から完全実施された。この教育は、文部科学省によるとゆとり教育でも詰め込み教育でもなく、生きる力をはぐくむ教育と説明している。
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「生きる力をはぐくむ教育」というのは、小中一貫教育校や義務教育学校のサイトをあれこれ見ていてよく出くわした気がする。円周率が整数の3ではないことを知る、ってことでしょうか(笑)。

 

その脱ゆとり世代がそろそろ大学を出て社会人になり始めているわけだ。と見てくれば、今の一貫教育世代はポスト「脱ゆとり」世代ということになるんじゃないかしらん。
そしてこれは、「コロナ世代」と呼ばれる年齢層/概念とほぼ重なっているのではないかと思う。小さい頃から苦労の連続やねえ😢、「氷河期世代」あたりよりも。

 

一方、メリット/デメリットを論じることより、初等~中等教育に対するコスト削減意識が優先されているのではないかというプリミティブな疑問点に明確な答えを出す方が先決かもしれない。そこがスッキリしないから、保護者側には反対や懸念が生じやすいってところもあるでしょ。教師側には教師側で、小中の教員資格を取ることなどに対して負担増の声が上がるだろうし。

 

そういった問題を一つ一つ解決していったとしても、ではこれらのアタラシイ義務教育の形が日本のスタンダードとして一般化するのかというと、そこまでは行かないんじゃないかという感じ、私見では。理由は、東京などの大都市圏で、生徒減による公立小中学校の統廃合まで伴う変革を迫られているわけではないというのが1点。また、(やはり東京中心の話になるだろうけど)小中一貫という制度が、私立校の中高一貫とバッティングしやすいというのが1点。
その行く末をツルは見届けられないような気もしますが😓。

2022年10月16日 (日)

似て非なるもの - 小中一貫教育校 vs 義務教育学校:前編

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「小中一貫教育校」と「義務教育学校」の違いは・・・と、これを書き始めると話がまた長くなるので別稿に譲ろう。
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これ、もともと差異のよくわからない概念だと思っていたので、この機会にいくらか調べてみた。お勉強、お勉強・・・。

 

これについてのWikipediaの記述はどうも要領を得ない感じなので無視するとしまして、まず手始めにここから。

 

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(2021.12.27 埼玉県日高市)

 

義務教育学校とは…
修業年限は9年(前期課程6年、後期課程3年)です。
校長は1人です。
教頭、養護教諭、事務職員は2人ずつ配置されます。
教員は原則として小・中学校教員免許を併有します。
(注釈)当面は併有しなくても勤務可

 

小中一貫教育校とは…
今までと同じ小学校6年、中学校3年です。
小・中学校それぞれに校長が配置され、教職員組織があります。
義務教育学校に準じた形で9年間の教育目標を設定し、系統性を踏まえて教育課程を編成・実施します。
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うーん、わかったようなわからんような。
misleadingな記述がありますね。義務教育校で「教頭、養護教諭、事務職員は2人ずつ配置されます」というのは、「小学校と中学校が統合して一つの学校体となっていて、校長は全体で1人しかいない」ことを前提にして、でも教頭等は各義務教育学校につき「2人ずつ(=前期課程と後期課程にそれぞれ1人ずつ?)配置」される、という意味だろうけれども、ツルは初め「前期課程と後期課程にそれぞれ2人ずつ配置」の意味に受け取って、「教頭先生が2人いるの?」と思った。

 

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(2020.09.29 株式会社ベネッセコーポレーション ベネッセ教育情報 抜粋)

 

義務教育学校と小中一貫校は、どちらも小学校と中学校の「区切り」を減らし、義務教育期間である9年間の学習をトータルで考えられるように創設された仕組みです。
二つの大きな違いといえば、小中一貫校が小学校・中学校にそれぞれ校長や教職員組織が立てられているのに対し、義務教育学校は小学校・中学校通して一人の校長、一つの組織となっていること。これにより義務教育学校の学年制を「6・3」ではなく、「5・4」や「4・3・2」という自由なまとまりで考えやすく、早い段階からの先を見据えた学習が取り入れやすくなっています。
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ここでいう「大きな違い」なんてのも、両者の本質的な差異とは言えないのではないかと思える。

 

例えば、2015年4月に小中一貫教育校として開校したみらさか学園(cf. 前回)で考えてみると;
校長の吉浪徳香は、「みらさか学園 校長」として出ているだけで、みらさか小学校と三良坂中学校それぞれの校長なのかどうかはサイト上明らかにされていない。どうやら法的には両校の校長であるようだが。
それと、小中一貫教育校に移行してから6年経てば、小1だった児童も小学校を卒業して中1になり、学籍問題がクリアできるから(?)、その時点で小中一貫教育校 → 義務教育学校に再移行し「みらさか小学校」と「三良坂中学校」は消滅して9年制の「みらさか学園」だけが存続する、なんて計画なのかしらとも思ったけれど、明らかでない(因みにみらさか学園は今年の春に丸7年を迎えた)。

 

その流れがはっきりしているのが次のご当地。

 

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(2016.05.19 株式会社日経BP 日経BP総合研究所 新・公民連携最前線 抜粋)

 

改正学校教育法の施行に伴い、2016年4月から小中学校9年間の義務教育を一貫して行う「義務教育学校」の設置が可能になった。佐賀県多久(たく)市は3年前の2013年4月に全国に先駆け、市内すべての小中学校で小中一貫教育へ移行した。移行の経緯や成果、今後の展望・課題を横尾市長に聞いた。

 

――多久市の小中一貫校は、この2016年4月に法制化された「義務教育学校」とは別物なのでしょうか。

 

3年前から多久市で行ってきた「小中一貫教育」と新制度の「義務教育学校」には、本質的な違いはないと思っています。これまで多久市でやってきたことが国の制度として整備されたと受けとめています。
実際、2013年から2年間は、文部科学省の「小中一貫教育校による多様な教育システム調査研究」の指定都市に選ばれ、国立教育政策研究所に各校を訪問していただくなど、制度化に大きく関わることができました。
法制度の整備によって、市の取り組みについてすっきりと説明ができるようにもなりました。これまでは、国・県に届け出た学校名と新設した名称が混在していたり、小中9年間の計画などの書類を小学校と中学校に分けて作成する必要があったりと、煩雑だったのが解消します。
法制化に伴い、2017年4月に義務教育学校に移行することを目指しており、議会や地区のPTAには説明を始めています。9月議会に条例案を提出する予定です。9年間のカリキュラムを今よりも柔軟に作れるとか、「多久学」のような独自科目も作れるようになるのではないでしょうか。現在の名称は「小中一貫校 東原庠舎(とうげんしょうしゃ) 中央校・東部校・西渓校」ですが、「義務教育学校 東原庠舎 中央校・東部校・西渓校」とする計画です。
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なるほどぉ、これでわかった。法制の歴史的な推移変遷があったということか。小中一貫教育校の方が前から存在してたんだね。
背景としては、深刻な生徒減により、例えば「卓球やバスケットボールまではできるけど、野球だと人数が足りなくてチームが組めない」といったことも挙げられている。

 

「東原庠舎」とはえらく難しい名前をつけたものだけど、これは旧藩校名に由来するもので、「庠舎」は中国語で「地方の小さな学校」の意味だとか。ゼッタイいたずら書きで「痒」って書き加えられそうな😆。
ネーミングセンスがいまいちなので、「義務教育学校 東原庠舎 中央校」と「義務教育学校 東原庠舎 東部校」と「義務教育学校 東原庠舎 西渓校」がそれぞれ別の学校であることがピンときません。施設分離型なのかと思った。よく考えれば、「義務教育学校 東原庠舎 西渓校」って、西なのか東なのか、原っぱなのか谷なのかはっきりせえっちゅう感じやし(⁠^⁠^⁠)。

 

まあ、米国のカリフォルニア大学/University of Californiaが、創立順に;

 

University of California, Berkeley/UCB
University of California, San Francisco/UCSF
University of California, Los Angeles/UCLA
University of California, Santa Barbara/UCSB
University of California, Riverside/UCR
University of California, Davis/UC Davis
University of California, San Diego/UCSD
University of California, Irvine/UCI
University of California, Santa Cruz/UCSC
University of California, Merced/UC Merced

 

の10校に発展してきたというケースで、一つの大学なのか複数の大学の連合体なのかよくわからんというのと似ているかも😅。Wikipediaによれば答えは後者で、「各キャンパスはそれぞれ独立に運営される別の大学であるため、カリフォルニア大学という大学が単体で存在する訳ではない」とされている。

 

おっと脱線。

 

(後編へ続く)

2022年2月27日 (日)

【退院記念企画】非にして非なるもの - 東京 vs 福岡:その後の変化

(承前)

 

前回、あれこれ書いていたら思いのほか福岡ネガティブ情報が多くなっちゃったので、何だか気分がすぐれないww。お口直しに、昨年のお正月に書いたことに関するアップデートなどちょっと。

 

・福岡の食いもんはまだ甘い?

 

> あと1年もすればまた何も思わなくなるんでしょうなあ。

 

はい、早いものでその1年が経ちまして、「甘っ!!」とはあまり感じなくなりつつあります、案の定。
でもなー、ツルはまだ芋焼酎のお湯割り、という境地にはまだ到達してないんであるよ。日本酒🍶好きだし😍。なぜ博多っ子はポン酒を飲まんのよ😠。貴様それでも日本人かァ!!てな具合。

 

・なぜ独り吞みをしない?

 

> そもそも福岡では一人で外に飲みに行くという習慣が
> ほとんどないようなんですよ。

 

ここんとこは、ツルはちょっと思い違いをしていたかもしれない。
なぜ福岡では独り吞みをあまりしないのか。実は簡単な話で、マイカー通勤の人が多いからである、さすがに地方都市らしく。日常生活の中で酒を呑むというのは、車の運転を終えてから家でゆっくりと、てなことになっちゃうんですねきっと。
そう言えば、ツルが2年前に転職した時の会社の歓迎会も、一旦家に帰ってから出直してくる人が結構いたのはちょっとしたカルチャーショックだった。通勤はマイカーで、飲み会に出てくる時は公共交通機関でというわけやね。新年会が土曜開催だったのにも驚いたけど。
因みに福岡県は飲酒運転が全国レベルのワーストクラスという不名誉な記録を永く保持してたんであるが、今どうなってるかは知りまっせん(またネガティブ情報が・・・w)。

 

・「糸島」がブランド化している
これまた食の話のついでに一つ。
福岡市の西隣に糸島市というところがあって;

 

福岡県糸島半島

 

玄界灘に突き出た竜の頭の西側の方ね。そのさらに西に行くと佐賀県唐津市になる。
もとは自然豊かでのどかな土地柄、福岡市のベッドタウン化に多少乗り遅れたところ(現在の福岡都市圏の拡大はまず南方向に向かって起こり、次いで東北方向に進んだと考えている)、よくってプチブル熟年博多っ子のちょっとした別荘地というイメージを持っていたんだけど、どうもその辺のイメージを逆手に取ってブラッシュアップしていったのではないかという気がツルはする。

 

で、同市のパンフレット「古今 糸島の食物語」には「やさい」として芥屋(けや)かぶ・キャベツ・ブロッコリー・ネギが挙げられているから、さほど珍しい種類が作られているというわけではなさそう。近郊型農業で都市圏に供給してるってことでしょう。「くだもの」としては、博多あまおう・あま伊都(ブドウ:マスカットベリーA x 巨峰)・はるか(ミカン:日向夏 x 甘夏柑)・柑橘(温州みかん 紅まる君・甘園坊・デコポン・アンコール)が挙げられていて、こちらではやや品種特化が進んでいる様子。
海産物だと、天然マダイ・糸島カキ・特鮮本鰆・天然ハマグリが掲載されている。「糸島市における平成29年度のマダイ漁獲量は955tで、7年連続日本一を誇ります」という記載があるし、近年ご当地の漁港界隈には冬になると「牡蠣小屋」なる飲食店が立って賑わうみたい(コロナ禍でそこはまた様変わりしてるらしいが)。とうとう2019年5月には「糸島カキ」が「地域団体商標」として登録されたそうな。

 

福岡市内の飲食店でも「糸島産の野菜を使っています」とか「糸島野菜のバーニャカウダ」とか謳うところが結構あって、ちょっと微笑ましい。糸島がまさかそんなことになってるとは思わなかったけれど、それがツルが福岡を離れていた年月というものなんでしょう。

 

ま、これには九州大学がキャンパスを福岡市内から糸島市に移転したことも影響してると思いますがね。

 

次回は遂に本編を復活させますばい。

2022年2月26日 (土)

【退院記念企画】非にして非なるもの - 東京 vs 福岡:三驚

不慮の骨折 in 京都からも順調に復活してまいりまして。

 

さて、1年前のお正月にもこのネタで書きましたが、さらに1年を重ねご当地在住満2年を超えた今、ふたたびしてみんとて、するなり。福岡移住のご参考までにどうぞ(爆)

 

・美人が多いか?
三大美人の産地、的な話になると、博多はまず間違いなくその中に入っていると思う。ツルの個人的経験からすれば、高校を卒業するまで住んでいた時代はそんなこと考えたこともなかったけれど、よその土地から友人の男どもが遊びに来て街なかを連れ回して歩いていると、彼らが周りを見回して、感に堪えないように「美人が多いなあ」と宣うなんてことはよくあった。
で、戻ってきてからのツルの肌感覚なんですが、確かにそれはほんと。顔のきれいな女の人、多いと感じます。おしゃれだとかセンスがいいとか垢抜けているとかお化粧が上手だとか、そんな人はそりゃあ東京の方が多いですよ。でも、顔立ちそのものが美形、出会ってハッとするような美人の割合というのはご当地の方が確実に高い(今の会社も美人率高いんですわww)。
系統的に言うと、意志の強さがそのまま美しさに表れているといったタイプの美人さんが多いです。タレントで言うと(とかく芸能人には困らない土地柄)、例えば牧瀬里穂。彼女が出てきた時は「あ、この子博多出身じゃないかな」と思ったらほんとにそうだった。(芸人のはなわが「佐賀県」で「牧瀬里穂も佐賀 やっぱ公表してねぇ」と歌ったのはガセネタらしいです。)

 

・「食」が本当にうまいか?
東京に長く住んでいて、博多出身だと言うと「食べ物がおいしいんですってね」的なことを返されることがだんだん増えていった気はする。ミシュランの星つきのお店の割合も福岡が全国一だと最近ネットで読んだことがある。
でもそうした諸々、ツル的にはかなり意外なことだった。鶏/かしわの水炊きは確かに別格である(断言)にせよ、焼鳥屋(店舗数が日本一多いとか)に行っても際立って旨いとも安いとも思わない。豚骨ラーメンは所詮B級だし(そのブランディングには「屋台」が果たした役割も大きいとは思う)、辛子明太子や高菜漬けは存在そのものがちょっと食の変化球、辺縁系というものだろうし、もつ鍋がなんで博多名物としてのし上がっていけたのかもよくわかっていないけど。
つい先日、湘南出身の友人と電話で話していたら、「自分は福岡って食のイメージしかないよ」と言われてまたビックリしました。

 

・サバを生で普通に食べるか?
青魚のサバは足が速いことから「鯖の生き腐れ」と言われて、焼き魚とか味噌煮とか、加熱工程を経て食するのが普通なわけです、全国的には。非加熱調理となればせいぜい昆布と酢で締めて〆鯖にするぐらいね、普通は。例外的に、新鮮な魚が手に入る地域では刺身で食べる習慣があって、博多もその一つという話で。
そのことはずっと昔から知っていたんだけれども、それに加えて、福岡にリターンしてみると「ごまさば」なるものの存在感がすごく増大しているのにちょっと驚いた(ゴマサバ/Scomber australasicusという魚の種類のことではなく、料理の名前のことです)。つまりはさばの刺身をすり胡麻と醤油だれで和えたもので、熱い白ご飯のお供にも酒の肴にもぴったり系、例によって甘い(甘じょっぱい)味つけだけど。
これは「博多ではサバが生で食べらるっとよ」というブランディング戦略の結果ではないかと思う。多分、大分の関サバ、関アジのブランド化が進んだ後に出てきたものだろう(いかにも博多小役人の考えそうなことだ)。
因みに魚類の生食の場合に常に問題となるアニサキスは、ざっくり言うと太平洋側と日本海側で種類が違っていて、前者の方が内臓から筋肉に出てくることが多くて格段に危険度が高いのだそうな。従って博多や長崎あたりでごまさばを食べて自分でも作ってみようという東京人のアナタ、いくら新鮮なものが手に入った場合であってもそれは危険なことだからおやめなさいまし(と言って参入障壁を高くしておく。しっかり冷凍すれば死滅するらしいですが)。

 

でもね、博多なんかより佐賀の唐津とか呼子とかの方が魚介類の新鮮度はもっと高いと思うとですよ。

 

・七味唐辛子か一味唐辛子か?
食のついでにこのことも。
基本的にツルは酒飲みなので、週に1回ぐらいは帰りがけに居酒屋とかワインバーとか立ち寄ったりもします。(とは言え最近は入院だのテレワークだのオミクロンだのですっかり足が遠のいてますが。)
焼鳥屋に入ったりもするんだけど、そこでテーブルに置いてあるのはたいてい、七味唐辛子ではなくて一味唐辛子であることに気がついた。都内の焼鳥屋で一味を置いてあるところなんかまず見ませんよねえ。博多っ子は先鋭的な辛さを好むんだろうか?それとも、甘いにつけ辛いにつけ、はっきりした味を好むんだろうか?よくわかりませんが。
ツルは昔っから七味の方が好みなんですけどねえ。一方で糸唐辛子は料理に時々使うけど。

 

・ビジネスの電話で「もしもし」って言う?
えーと、ツルは基本的に東京でしか仕事をしてこなかった(一時神奈川県川崎市くんだりまで落ちのびたこともありましたが)ので、社会人としてのマナーも江戸前で叩き込まれたわけです。新卒の頃、社内で人事部の新人研修を受けていた時、仕事上の電話対応で「もしもし」というのは御法度だと教え込まれたのでそのようにしてきたし、実際、そのように言う人は周りにも(社外を含めて)いなかったと思う。
それがだねえ。福岡に転職後、職場で「もしもし」って言ってるのをよく耳にするんだよねえ。
まだ慣れません。なんかねー、ダメ社会人みたいに思えちゃうんですよね、ツルには。

 

・路上でアレを見かけるか?
「アレ」とはズバリ、立ち小便。と言ってもこっちで日常的に目にするわけじゃありませんがww、この2年間で1回だけ見た。自宅近くで、昼日中に、オッサン(or 団塊の世代のジイサン?)が、路肩でww。南区老司ってどっちかっつうと街なかと言うよりゃ郊外なんだけど(自宅の庭で白昼にイタチを見かけた時はさすがに驚いた)、これには仰天したし、みっともないと思った。そんな行為、何十年と見たことがなかったのでそれなりに衝撃でした。
昭和かよ。

 

・通勤/通学の手段は何?
東京で公共交通機関と言えば一義的に鉄道だと思う。JRにせよ私鉄にせよ東京メトロにせよ、まさに網の目ね。しかも少しずつ延伸を続けている。それは日本の首都が膨張を続けている証しでもあるだろう。
然るに福岡(というか福岡市)では私鉄は西鉄電車(西日本鉄道)しかないし、地下鉄も福岡市営のが3路線ほどあるのみ。最大規模の交通機関は西鉄バスで、網の目に走っているのはこちら。言い換えれば地域独占状態。でもコレが大きな問題でして。
実は福岡市というのは交通渋滞のひどい街です。ツルは中学時代はバス通学だったけど、朝の通学時の渋滞はひどかった、特に雨の月曜日なんてバス停5つ分で1時間かかったりしてました(だから高校では自転車通学に切り替えました)。
2年前にUターンしてきて一番びっくりしたのは、その状況が一向に改善していないこと。むしろ悪化している地域もあるかもしれない。
これが40年ぶりに住んだ福岡の、一番気に入らない、もしくは一番住みにくい点です。ご参考まで。

 

これは、一つには西鉄電車のターミナル駅のある天神地区と、JRの博多駅地区とを蜘蛛の巣の二つの中心として、放射状にバス交通網を発展させてきた政策の限界を示しているのだと思う。インフラがもともと脆弱なところにもってきて、人口増大についていってないときている。
それと、経糸ばかり発展させて緯糸の整備に力を入れてこなかった(というより切り捨ててきた)ために、公共交通機関による緯糸方向の移動はいささか不便なものになっている。そこは自家用車でいいだろという考え方なのだと思います。

 

もう一つ、主役を担う西鉄バスの責任も重いと思う。いつも遅れてダイヤどおりに来ないことが常態化していて、ほんとにイライラします。朝だけじゃなく、夕方の帰宅時にも結構混むんで時間がかかるんだよねえ(ツルは通勤にはバスと電車を使ってますが)。朝夕の所要時間と昼間の所要時間は渋滞状況を織り込んで変えてあると思うけど、それでも実態に合っていない。一体どうやって調査・設定しているんだろう?
それだけではありません。ダイヤ上、ある行き先のバスが例えば20分も来ないかと思うとその次は3分後に来る、みたいな設定がごく普通にある。こげなとって、他の都市の路線バスでも同じなんやろうか??配車繰りの問題があろうことは理解するし、営利目的の私企業であることも理解するけど、利用者の立場の尊重がされているとは到底考え難いです。

 

これだから地方の殿様企業ってダメなんだよ。つまり、福岡を住みにくくしている諸悪の根源は西鉄バスである(暴論だが直言)。
そもそも、設備投資のかかる鉄道増設を捨てて(市営地下鉄を除く)バスを取ったという歴史的経緯があるわけだけど、その結果、現在西鉄バスも人件費負担に苦しんでいるのではないのかね。

 

でも一番異なるのは、マイカー通勤率かもしれません。東京では自家用車を持たないことは割と普通だけど、福岡(いや、地方都市全般に言えることだろうけど)ではなかなかそうはいかない。そしてこのこと自体が交通渋滞を引き起こしているわけだよね。
福岡よ、そんなことじゃ低炭素社会に向けた潮流にも乗り遅れちまうぜ。

2021年6月 6日 (日)

似て非なるもの - 技能五輪 vs アビリンピック

(承前)

 

敢えて、「似て非なるもの」として取り上げます。基本的にツルの知らない世界だけれど。

 

今どきの「ものづくり」とはどんなものをいうのかと思って調べてみたら、「Tokyo技能五輪・アビリンピック2021大会実施計画」で、技能五輪の方は競技職種として次の42職種が挙げられている。

 

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〔機械系〕(9)
機械組立て
プラスチック金型
精密機器組立て
機械製図
旋盤
フライス盤
試作モデル製作
自動車工
時計修理

 

〔建設・建築系〕(10)
タイル張り
配管
石工
左官
家具
建具
建築大工
造園
冷凍空調技術
とび

 

〔金属系〕(5)
構造物鉄工
電気溶接
自動車板金
曲げ板金
車体塗装

 

〔サービス・ファッション系〕(10)
貴金属装身具
フラワー装飾
美容
理容
洋裁
洋菓子製造
西洋料理
和裁
日本料理
レストランサービス

 

〔電子技術系〕(5)
メカトロニクス
電子機器組立て
電工
工場電気設備
移動式ロボット

 

〔情報通信系〕(3)
ITネットワークシステム管理
情報ネットワーク施工
ウェブデザイン
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ふーむ。中には首を傾げたくなるものもありますねえ。「冷凍空調技術」なんていう「職種」があるとは知らなかった。
おなじみWikipediaで「技能五輪全国大会」の項に当たってみると、これが「46職種(ただし、年度によって実施されない職種がある)」と書かれており、単純に両者の差分を取ってみますと。

 

Wikipediaに記載のある;

 

「抜き型」「木型」「冷凍技術」「れんが積み」「製造チームチャレンジ」「ITPCネットワークサポート」「情報技術」「広告美術」「グラフィックデザイン」「アニメーター」

 

がなくなって(「製造チームチャレンジ」なる職種については皆目不明)、Wikipediaに記載のない;

 

「プラスチック金型」「試作モデル製作」「冷凍空調技術」「とび」「移動式ロボット」「ITネットワークシステム管理」

 

が加わっており、10減6増。Wikipediaの情報の方がそりゃ古いんでしょうが、「とび」が令和の今になって加わるわけ??詳しいことはわからんけど。持ち回り開催だから地域性もあるんだろうか?
もっと不思議なのは、デザイン系が3つも減っていること。若年層は「ウェブデザイン」しかやらないのかしら?まさかね。

 

ええと、ここでプチ蘊蓄。「旋盤」も「フライス盤」も時々聞く言葉ですけど、違いってご存じ?
簡単に言うと、旋盤は加工される物を回転させるもの、ユウガオの実を薄く剥いて干瓢を作る時みたいに(かえってわかりにくいか💦)。対してフライス盤は、工具の方が回転して切削していく。てことは電動ドリルもハンディなフライス盤ってことになるの?違うだろうな。
以上、町工場の町、東京都大田区の下丸子に住んでいた時(既に懐かしいわ)、工場イベントに参加して教えてもらったネタでした。(cf. 2014.02.15「不運のおおたオープンファクトリー ― 台風と雪に祟られて」)

 

一方、アビリンピック2021の方は25種目となっている。

 

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〔建築・工芸系〕(5)
家具
建築CAD
義肢
歯科技工
木工

 

〔情報技術系〕(7)
DTP
ワード・プロセッサ
データベース
ホームページ
表計算
パソコン操作
パソコンデータ入力

 

〔電子・機械系〕(4)
機械CAD
電子機器組立
コンピュータプログラミング
パソコン組立

 

〔サービス・ファッション系〕(9)
洋裁
フラワーアレンジメント
ビルクリーニング
製品パッキング
喫茶サービス
オフィスアシスタント
ネイル施術
写真撮影
縫製
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「木工」「パソコン操作」「パソコンデータ入力」「縫製」については「知的障害者に限る」とされている。
なぜ、今もって「ワード・プロセッサ」なんてものがまかり通っているのだろう?それを言い出せば「電子機器組立」「パソコン組立」もちょっと違和感があるし、「コンピュータプログラミング」にも時代感がついちゃってる気がするけれど😅。

 

そしてどちらも、テレワークの進展にはまだ対応できていない様子。

 

世の中、知らないことはまだまだ多いってことっすかね。

 

技能五輪の「競技職種」とアビリンピックの「種目」の差は、単に主催団体が違うというだけではなしに、端的に言えば障害者の雇用の幅の狭さを意味してもいるんだろうなあ。全国の、そして東京都の民間企業の障害者雇用率(2021年3月に2.2%→2.3%に引き上げられた)の実態はどうなっているんだろう。
調べてみると、2020年で全国が2.15%(前年 2.11%)で、過去最高を記録したとは言え、やはりいまだに未達の状況。法定雇用率達成企業の割合は48.6%(前年 48.0%)。東京都だとこれが2.04%(前年 2.00%)。
ロゴマークやスローガンやマスコットキャラクターがどうこうよりも、そうしたことの方が大きな課題でしょ。

2021年1月 3日 (日)

似て非なるもの - 柚子胡椒 vs かんずり

(承前)

 

柚子胡椒のこと、もう少し深掘りしましょう(つくづくヒマ人やわ。実際には全く暇じゃないけれど。)

 

柚子胡椒は基本的に大分のもので、ご当地の一村一品運動の中で成長していった物産だと捉えている。今では福岡県産のものもあって、ちょっとびっくりします。基本的に緑色(鴬色?)をしたペースト状だから、青いユズ(の果皮)と青トウガラシをすりつぶして塩を加えて作るわけ。材料はそれだけ。中には赤いのもあって、それは熟したトウガラシと黄熟したユズを使う。たいがい塩雲丹と同じようなガラス瓶に入って売られてます。

大変辛味と塩気が強いので、ほんの少しずつ使うものです。一瓶あれば数年保つ(笑)。七味唐辛子(そう言えば、福岡では七味より一味の方が一般的みたい。うどん屋に置いてあるのもたたいてい一味唐辛子だけだったりします)やわさびが使える場面ならたいがい使えるんじゃなかろうか。つまりはテーブル用の調味料というかスパイスといった役どころで、少量でも柚子の香がぱっと立っていい感じ。湯豆腐なんかの鍋物のポン酢の薬味というのが最も一般的な使い途だろうけど、塩焼鳥とか、あるいは白身魚の和風カルパッチョにもよろしいです。天ぷらに添える抹茶塩の代わりにもできるんじゃないかな。前々回も書いたけど、夏ならツルは素麺もこれがなくてはダメです、きっぱり。

 

ツルの友人に料理の得意な新潟出身の男がいて、新潟の「かんずり」なる調味料をもらったことがある。やはり「何にでも合う」系の、柚子胡椒によく似た香辛料です。こちらは基本的に赤い。秋口に収穫した赤唐辛子をまず塩で下漬けして、それを雪国のこととて冬の最中に数日間雪の上に晒す工程が入るので、「かんずり」の名前もそこから来ている(かんづくり → かんづり?)のだと思います。山菜などを刻んで入れたバージョンもあり。

 

似ているとは言え、大きく違うところもあって、それはまず、かんずりは発酵食品であるということ。柚子と唐辛子と塩までは材料も同じだけれど、かんずりには米糀が入る。初めて味わった時ツルは、なるほど確かに柚子胡椒に糀が加わった感じのマイルドな風味ぢゃわいと思いました。ま、柚子胡椒の方がストレートに「柚子&唐辛子!!」なわけ。

ほんとは、この系統の食品は日本各地で北は青森から南は沖縄まであって、何らかの形で糀/麹を用いるものがほとんどなので、これが加わらない柚子胡椒の方が変わり種のようですが。
作る時期も、青柚子と青唐辛子を使う関係上、柚子胡椒では夏から仕込みが始まるという点が違います。

 

こうして見ると、北国のかんずりの方がだいぶ南国の柚子胡椒より手間がかかっているみたい。3年も熟成させて、最後にもう一度寒気に当てて完成するというんだもん。柚子胡椒は割合簡単に自家製も作れるようです。

 

今回調べていて初めて知ったけど、「かんずり」は新潟県妙高市の「有限会社かんずり」の登録商標なんだそうな!!柚子胡椒が各社から競って販売されているのとはやはり対照的です。

2021年1月 2日 (土)

【新年特別企画】非にして非なるもの - 東京 vs 福岡:二驚

(大晦日から続く)

 

福岡に都落ちした😆ツルの感じてる文化ギャップ、第二弾です。博多の正月らしく、鰤雑煮などいただきながらものしてまいりませう。

 

・ウーロンハイが飲めない
そうなんですよ。ツルは基本的に左党なので、会社帰りにどこぞの店で飲んだりすることは週に1、2回はあるわけです。ちょいと一杯ひっかける、というやつ。コロナのせいで隠れ家的飲み屋の新規開拓にもだいぶ遅れが出ましたけどネ😄。
でだ。生ビールの次は何を、となると、平日なんかじゃ日本酒までいくことはさすがにあまりなくて(地酒も好きですが)、東京時代はご多分に漏れずでハイボールとか酎ハイとかのお手軽なところを注文したりしていたわけ。青リンゴサワーとかカルピスサワーとかグレープフルーツハイとかも飲まないじゃないけど、甘くないウーロンハイも選択肢の中には常に入っていた。

 

ところが。福岡だと焼鳥屋や海鮮居酒屋なんかで、ウーロンハイを置いてないところがとても多いことに気づいた(ハイボールはさすがに必ずあるが)。半数を軽く超える印象。コンビニのお酒コーナーにも、ウーロンハイや緑茶ハイの類はまず見かけない。

もちろん、九州だから焼酎を頼む人はとても多いです。てかそれが基本。でもそれはお湯割りが王道なわけ。もちろんサワー類もあるけれど、それは女性のための飲み物という役割で早い話がジュース感覚。女の子は甘いお酒が好きでしょとか、大人の男は焼酎を白湯または水以外のもの --雑味のついた-- で割るものではないといった考えが支配しているように思う。男尊女卑の伝統がこんなところにも残っているのだよ。酒に対する豊かな思考じゃないですけどね。

家の近くのある焼鳥屋でウーロンハイ頼んだら(メニューにはなかったけど)、若い男の子の店員が年上のお姉さん店員に小声でこっそり「ウーロンハイってどう作るんですか」って訊いてたのには笑った。

 

・「お一人様お断り」の店が多い
たとえ堂々とそのように謳っていなくても、「今日は予約で一杯ですので」「混んでいるため料理をお出しするのに15分ほどかかってしまいます」など様々の理由をつけて一人客 --特にツルみたいな熟年男性の-- を追っ払う店はよくある、もちろん東京だってどこだって。しかしその比率が確実に高いと思う。言い換えれば福岡の方が実は店の敷居が高いのだ。
これは一つには東京の方が店の数が多く競争が激しくてそんなことは言っとられんということと(新大久保の焼肉屋なんて無料サービスメニューをがんがんつけてきますよね)、もう一つ、東京の方が未婚・晩婚・非婚の率が高い(ほんとにそうかどうかは知らない。ただし初めから「ほんになんもねえところだで嫁っこの来手がねえだ」みたいな田舎のことは念頭に置いてない。悪しからず)からお一人様需要を取り込んだ方が売上拡大につながるということだと思っていた。
一方で、福岡も大都市ではあるんだから出張者や旅行者も多くいるわけで、お一人様ってそういう風に見られがちな気はする。ツルは初めてのお店でも割と話をする方ですが、「40年ぶりに戻ってきて・・・」という話をすると、大将から「ご出張かと思いよりました、東京の人はやっぱり話し方がパリッとしとんしゃあですけんね」などと言われたりします。こっちは博多弁話してるつもりなのに、何かしらやはり違うんでしょう。

 

しかし、こうした認識自体、ちょっと違うみたい。そもそも福岡では一人で外に飲みに行くという習慣がほとんどないようなんですよ。外飲みだったらグループで。だけど晩酌するなら何か買うてきて家でやりゃあいいやん、そっちの方が安かよ、となる。これはいろんな人に聞いてみてわかってきたこと。だから、「お一人様NG」=「流行っている店」「計算高い店」という単純な図式でもないように思う。あ、ひょっとしたら屋台はまた別なのかもしれませんが。

 

ついでに言わせてもらうと、でもそういうのってやっぱり商売上手とは言えんよな、って感じ。一人客って基本的に会話しないで「飲み」「食い」だけをずっと繰り返してるから、実は客単価高めになるんじゃないん?ハーフサイズ作ったりするのってそんなに手間ですか?客あしらいが面倒?
それに、高齢化社会という中で捉えれば、配偶者に先立たれた単独世帯の高齢者も必然的に増えるわけでしょう(施設入り、というところはおいといて)。「一人暮らしのお年寄り」というと低所得で病気がちなイメージだけど実際にはそうでもないわけで、元気なんだけれど、経済的に余裕はあるけれど毎日の食事作るのが面倒という層も一定数いるはずだよね。そこを取り込めないの?お酒をたくさん飲んでくれなきゃ儲けになりませんか?食事の宅配サービスやファミレスばかりにこのビジネスチャンスを与えておくわけ?とは思う。

 

・居酒屋で靴を脱ぐところがやたら多い
酒場ネタが続きますが、さほど広くない店でも入り口に下足箱が置いてあることがわかってきた。いやむしろ、狭い方がそうなのかな。広いところだとカウンター席+小上がりの座敷が標準。カウンター+テーブル、は少な目。

会社の近くに早朝からやってる「古民家パン屋」があるんだけど(実はさほど「古民家」でもないし値段はお高め、イートインあり)、そこも脱いでスリッパはいて店内に上がるので初めはちょっとまごついた。どうやら、「店内で飲み食いする」≒「靴を脱ぐ」という衛生感覚なんじゃないかしらん。さすがにコンビニのイートインでそんなところは見つけていませんが。

これ、慣れるとそっちの方が確かにくつろげるんでしょうが、初めての店にふらりと入ってみるか、なんて時にはちょっと引けちゃいますね。

 

食や酒ばかりで終わるのも何なので、違う分野からも1点だけ厳選してと。

 

・過剰な婉曲表現が生きている
いつ頃のことだったのだろう、もうよく覚えていないほど昔だけれど、お店なんかで「こちらが○○になります」とか、「○○でよろしかったでしょうか」とか、「1万円からお預かりいたします」とかの言葉遣いがだんだん増えてきて、またそこに対して「それって変」という動きも出てきたということがありました。「バイト敬語」などと言われたアレです。ツルが社会人になってからのことだと記憶しているから、バブル崩壊後の(話が古過ぎるわ)東京に生きていた時、ということになる。

ツル自身、そんなのは「こちらが○○です/でございます」、「○○でよろしいですか/よろしゅうございますか」、「1万円のお預かりから○円のお返しになります」という方が洗練された物言いだろと思ってたクチだけどね。必要以上に「○○させていただきます」とするのも嫌い、「本日は休業とさせていただきます」とかね。歴史のない言葉に阿り諂う必要なんて、ないのよ。言葉おたくなところがあるから、ツルは敬語で悩まされた経験はまずない。

 

そうだ、こうした流れを受けて、文科省あたりが「日本語の敬語には尊敬語・謙譲語・丁寧語のほかに丁重語やら美化語やらがあります」なんて言い出したんだ。調べてみると、同省下の文化庁の文化審議会が「敬語の指針」でこれをぶち上げたのが2007年。「ら抜き言葉」「さ入れ言葉」問題の少し後に出てきた話だったかと。

 

でもいつしか、そうした言葉もあまり耳にしなくなっていった気がする、東京では(個人の感想です)。「正しく美しい日本語かどうか」というより、「そーゆー言葉使ってると馬鹿っぽく見られるしぃ」的な観点じゃないかと。

ところが、福岡に戻ってきてから、そういう言葉遣いを耳にすることが多いんだよねーー。東京でこんなのを耳にしてたらツルはきっと引っかかりを覚えたはずだけど、そんな経験は久しくしていなかったから、よけい耳障り。やはりそこは何らか文化のギャップがあるんでしょう。福岡では「あー、コイツあったま悪ぅー」と感じることがしばしば(こらこら)(福岡ネガティブ情報その3)。

 

それでもツルはこの街で生きていくんだよぉ。

2021年1月 1日 (金)

【新年特別企画】非にして非なるもの - 東京 vs 福岡:一驚

令和3年、🎍明けまして🎍おめでとう🎍ございます🎍。

 

愚blogではこれまで何度か、「似て非なるもの」Subseriesも書いてきてるわけですが(実は【2011.04.11「上新粉 vs 白玉粉 vs 道明寺粉」】が愚blog一番のAll-Time人気ネタだったりする😅)、その裏企画というわけで、これいきましょう。

 

40年ぶりのUターンから1年余りほど経った今、ツルがリアルに感じてる東京🗼🌸と福岡↪🗾の違い。
こうしたネタはネット上に腐るほどあると思うけど、ツルの高い知性と研ぎ澄まされた感性による日常の生活感覚的ギャップ、その文化的考察です(息を吐くようにウソをつく)。言っとくけど「首都 vs 地方」みたいな小難しい話じゃありませんよ今回。年の初めのやりっぱなしの書いて出しでアップロード📤💦。

 

・福岡の食いもんは甘い
とにかく甘い。スーパーの惣菜コーナーで、飲み屋のメニューで、何でも甘い。蕗の煮物なんて砂糖漬けのアンゼリカかと思うほど甘い(ちょっと大げさ)。魚の南蛮漬けもチキン南蛮のタルタルソースもダダ甘い。酢の物すらしっかり甘い。摂取カロリーが気になるぐらい。
九州の醤油が甘いというのはよく言われるところで、それは10年ほど前からツルも帰省の度に感じるようになっていた。漬物にちょっとかけた醤油の甘さにうわっと驚いたりとか。長年の東京暮らしに舌が馴染んじゃったんでしょう。九州の中でも南に下れば下るほど醤油の糖度は高まるんだそうな。でもそんなことに限った話じゃないんです。とにかく何でも甘い。甘くないのはカレーぐらい(そうとう誇張)。
けどこれ、なぜかツルはUターン直後より現在の方が強く感じる。あと1年もすればまた何も思わなくなるんでしょうなあ。それと、福岡を離れて1981年に京都に住み始めた時も、その後1987年に東京に住み始めた時も、これと逆のことを感じたりはしなかったのに、というところがまた不思議。

 

この文脈でいうと、先日、勤め先の社長と話をしていて、「福岡のお店は意外にあまり日本酒置いてないですねえ」と言ったら、「福岡の食べ物は甘いでしょう、それを焼酎のお湯割で洗い流すんです」と言われていたく納得。「甘い」、まずありき。大昔に聞いた話のような気もするけれど、すっかり忘れていた。(今度の会社は皆言葉遣いがめっちゃ丁寧なんで、そこも驚き。前の会社は上が下を呼ぶ時は呼び捨てが普通だったので。)

 

・コンビニの肉まんに酢醤油がついてくる
ツルが子供の頃は、豚まん(これを肉まんと呼ぶか豚まんと呼ぶかについては別途本Subseriesでの検討に値する重要な Subject である)はお母さんがたまに買ってきて蒸し器で蒸かしてくれて食べるものでした。コンビニの中華まんなんてもちろんなかった。というより、コンビニエンスストアが初めてできたのは高1の時。中学時代の友達がバイトしてて、「スーパーやろ?」「違う、コンビニエンスストア!」「何やそれ、長ったらしかー!!」なんて会話したのを覚えてます。
で、そういう時は酢醤油がつきものだった。たまには辛子も(そう言えばチューブ入りの辛子やわさびや生姜もまだなかった)。京都に進学した頃はもちろんコンビニは普通の存在になっていて、いつしかレジ前に中華まんだのピザまんだのの加熱ケースが幅を利かすようになったけれど、ごく初期を除いて酢醤油つけるってことはないわけです。ツルはその頃、「酢醤油つけなくてもおいしいように商品開発したんだ」と思ってました。
それがこちら福岡だと、今でも酢醤油と辛子の小袋がついてくる。正直ちょっとうざいんですけどね、最近コンビニでつけてくれるペーパータオルと同じぐらいに。

 

・カレー/シチュー用の豚肉は定番商品ではない
スーパー編です。東京人は豚ばっか食ってる、というのは関西人がよく東京もんを見下すところですが、ツルは基本、ポークがお好き。
昔、口内炎がなっかなか治らなかったことがあって、ドラッグストア行ってチョコラBB薦められて飲んだらほんの数日で完治し、ついでに目の充血やかゆみの症状(効能書きにも載ってます)があったのも嘘のように解消した。あまりによく効いたので、それまでの自分の食生活をいたく反省したことでした。で、ビタミンB群を積極的に摂るようになったわけ。豚肉はその筆頭。ニンニクやネギ、タマネギなどと一緒に食べるとビタミンBの吸収率が6倍に、なんて古い新聞記事をスクラップしてたりもします😅。ご存じ?ビタミンB1剤の「アリナミン」ってネギ属の属名 Allium に由来するんだぜ。
で、豚汁(これをとんじると呼ぶかぶたじると呼ぶかについては別途本Subseriesでの・・・後略)なんか冬場はよく作るし、カレーやシチューも豚肉で作ることが割に多い。ところがそういうモードの日にスーパー(そう言えば、「まいばすけっと」みたいなミニスーパーはまだ福岡にはないんだよなあ)に行くと、それ用の角切り肉が置いてなかったりするんです。これはいかんねー💢。煮豚・角煮用のでっかいブロックなら常にあるんだけどね。多分これ、福岡ではチキン --古風に言うと「かしわ」-- に走りやすいということだと思う(ご当地A級グルメ「鶏の水炊き」なんてのもあるし)。

 

・チョリソーは定番商品ではない
同じ意味合いで言うと、チョリソーがなかなか売ってないことにもびっくりした。他のいろいろなソーセージ --あらびきとか皮なしとかハーブ入りとかチーズ入りとか何とかかんとか-- はいつもあるのに。貧しいわ(T^T)(福岡ネガティブ情報その1)

 

・長年離れているうちに、東京 ↔ 福岡/九州で均質化したものももちろんある。
九州の高菜漬けとその油炒め、高菜ライス/高菜チャーハンが全国区になったのはもう30年ぐらい前のことだと思う。昔は「漬物を油で炒めるの?!?!」とドン引きされたものです。北部九州で広く漬け菜として栽培されるタカナ/Brassica juncea var. integrifoliaはアブラナ科のカラシナ/Brassica juncea var. cernuaの変種/varietasで、実は中国のザーサイ/搾菜/Brassica juncea var. tumidaも「コブタカナ/瘤高菜」と呼ばれる近縁種です。食感が似とるっちゃ似とるわね。タカナは冬場に大きな葉を広げ、寒さに当たると独特の赤紫色を呈するので、慣れれば畑に植わってるのを見ただけでも一目でそれとわかります。産地でいうと、福岡県筑後地方の「三池高菜」より、残念ながら熊本県阿蘇山の「阿蘇高菜」が断然うまい、てか上等。だって三池高菜ってスジスジが歯に挟まるっちゃもん(福岡ネガティブ情報その2)。阿蘇高菜は少し小ぶりで、歯触りが丁度いいんです。福岡空港や博多駅でお土産にお求めの際は是非とも「阿蘇高菜」とご指名を。
因みに、Wikipediaにこんなことが載っていた。

 

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大牟田市が発祥といわれる高菜の油炒めは三池炭鉱の労働者たちに愛され、現在でも地元で愛されている。
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ああ、そうだったの。重労働でカロリーが必要だったんでしょうねえ。もっとこのネタは売り出していいような気がするけど。
福岡県の最南端、熊本県荒尾市と接する大牟田市は、少年期のツルが小4から中1まで過ごした場所。江戸中期に一時幕府の天領となっていた歴史もあってか、校区の中には「天領町」「右京町」などという床しい地名もあった。Uターン後、まだ一度も訪れていない。家の庭のあのツツジの巨木はまだあるのだろうか・・・。

 

遅れてきたのが柚子胡椒です。柚子胡椒というものを初めて食したのは小学校高学年か中学校の時だったかと思う。父親の友人の大分別府の方から「何にでも合う」系の薬味としていただいたんだよな。ツルは夏場の素麺のつゆに入れるのも生姜じゃなくてこれです。あと、庭に自生しとるww茗荷と紫蘇も欠かせん。

えーっと、これも20年ぐらい前かな、ひいきにしていた世田谷の隠れ家飲み屋で大将と話していて、「柚子胡椒?粉になってるんですか?」と聞かれてこっちがびっくりしたことがある。ペーストですペースト。「胡椒」と言った瞬間にトウガラシ/chilli pepperじゃなくてコショウ/pepperを思い浮かべる人は多かった。ユズの果皮を乾かして粉にしてコショウと混ぜるイメージですかね。(九州で唐辛子のことを「こしょう」と呼ぶ風習はツルの親世代辺りまで残っていたように思う。沖縄の液体スパイス「こーれーぐーす」も「高麗胡椒」で、島唐辛子を泡盛に漬け込んだものだ。)

今や、東京のコンビニのおでん買うときにも「辛子にしますか味噌にしますか柚子胡椒にしますか」と聞かれるようになったので、出世したなあと思う次第。
後はまあ、ピエトロ(本社は福岡市中央区天神)のドレッシングとかマルタイ(福岡市西区今宿/いまじゅく)の棒ラーメンとかかいな。あ、辛子明太子と長浜豚骨ラーメンは別格ね(もつ鍋は苦手なので除外)。ジャイアントPRETZの明太子バージョン、普通に酒のつまみにうまいので時々会社帰りに博多駅の土産物屋で買うとります。大分麦焼酎の麦茶割りがすすむじぇ。

 

(続く)

2020年8月 8日 (土)

似て非なるもの - POP vs POS(あるいは Initialism vs Acronym)

お久しぶりの本Subseries、ほぼ1年ぶりに登板ですが・・・。

 

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「POP」と言っているが実際には「ポスター」だと思う
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でもPOPとPosterの違いを説いて回りたいわけじゃない。今回は言葉尻の問題です。

 

この場合の「POP」とは、「ポンと鳴る」(e.g. “popcorn”)や「飛び出る」(e.g. “pop-up book”)等の “pop” や、“popular” を略した “pop”(e.g. “pop music”)とは関係がなくて、“Point of Purchase” の abbreviation。もともとは「購買時点」の意味しかなくて “advertisement” が省かれてるわけです(そもそもPOPとは何ぞやという方はどこぞのサイトでお勉強なさってからまたいらして下さい;傲然)。

 

厳密には、一口に abbreviation と言っても、これを「ピーオーピー」と発音すれば initialism、「ポップ」と発音すれば acronym と呼ばれることになる(cf.【その84】)。

 

ア、そっか、“COVID/Coronavirus Disease” も acronym なのか。浸透してないけど。2019年に報告され2020年に(から?)世界的に猛威を振るったCOVID-19のみならず、2000年代の “SARS/Severe Acute Respiratory Syndrome/重症急性呼吸器症候群” も2010年代の “MERS/Middle East Respiratory Syndrome/中東呼吸器症候群” も、コロナウイルスにより引き起こされるものである。これらもいずれも acronym 扱い。

 

別の例を挙げれば、英語で “AIDS/Acquired Immunodeficiency Syndrome/後天性免疫不全症候群” を「エイズ」と発音するのも同じ。フランス語やスペイン語では語順が変わって “SIDA/Syndrome d’ImmunoDéficience Acquise/Síndrome de InmunoDeficiencia Adquirida” となるので、これらは「シダ」と読むのだと思う。とは言え、スペイン語あたりじゃ “AIDS” の方が通りがいいのじゃないかと思ったりする。フラ語は・・・自国語尊重主義はまだ続いているだろうから、やっぱり “SIDA” なんだろうな。

 

大昔、中学時代だったか高校時代だったか、acronym作りに長けているのはフィリピン英語だと新聞で読んだことがある。確か、初めから acronym がうまい具合に(既存/新規の)単語になるようにフルスペルの正式名称を考えていく、とかいうのじゃなかったっけ。適当に母音字を入れるようにするのがミソです。
無論、英語としては initialism の方が正統のはず。でも、社会の認知度が上がるにつれ、acronym に変わっていったりもするんだろう。

 

ツルの仕事絡みで言えば、10年ほど前盛んに喧伝されていた、“IFRS/International Financial Reporting Standards/国際財務報告基準” というのも、初め initialism だったのが acronym に鞍替えしちゃったようです。IFRSとは、“IASB/International Accounting Standards Board/国際会計基準審議会” による会計基準のこと。昔からある “IAS/International Accounting Standards/国際会計基準” まで含んだ概念として捉えられることもある。

acronym としては、初め「アイファース」と読んでいたのが、four letter word の連想を呼ぶという話になって、後に「イファース」と発音するようになった。これ、ツルは「屁をひる」の意味の “I fart” のことだと思ってたんですが、調べてみるとちょっと違ってました。
2009年5月に出た『国際会計基準IFRS完全ガイド ― 経営・業務・システムはこう変わる!! 』なるムック本にこんなことが書いてあるそうな。

 

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IASBでは、IFRSを「アイエフアールエス」または「イファース」と読んでいる。
山田氏[引用註:IASB理事 山田辰巳]によると、当初は「アイファース」と読んでいた。ところが、2002年に国際財務報告解釈指針委員会(IFRIC)ができた際に、その略称を「アイフリック」と読むと、禁句である「I XXXX you」に語感が近いため、「イフリック」と読むことにした。これに合わせて、IFRSの読み方も「イファース」に改められた。
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あー、そのものズバリ感の「I f_ck you」の忌み言葉だったのかぁ。

 

長い長い前置きはこのくらいにしてと。

「POP」に似た言葉には「POS」というのもあって、「POSシステム」とかいうあれです。こちらは “Point of Sale” で、「購買時点広告」に対して「販売時点情報管理」。アナログじゃなくてデジタルの世界の話。

 

因みに「デジタル化」を英語でどう言うかというと、“digitization”、“digitalization”の両様がある(後者は少なくとも動詞では “digitalise” と綴られることもあるらしい)。もっとも、この2つの語に全く差異がないわけではなく、前者は主に、アナログで作られた情報のデジタルデータへの変換といったレベルの内容を、後者はより高次の、デジタル技術の利用による事業機会や産業構造の変化なんぞを指すようです。つまりは後者は「トレンド」あるいは「テーマ」の問題なんだろう。

 

1970年代辺りまでの古い辞書には、“digitalize” の項には「~をジギタリス化する(薬学)」という説明だけが載っていた。ジギタリスとは植物のキツネノテブクロ(英名の “foxglove” の直訳とされる)のことで、花を楽しむ園芸植物であると同時に、強心剤として用いられた薬草(従って毒草でもある)。

これの属名がDigitalis(新エングラー体系のゴマノハグサ科 → APG体系のオオバコ科)なわけです。Wikipediaのジギタリスの項には;

 

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学名のDigitalis(ディギターリス)はラテン語で「指」を表すdigitusに由来する。これは花の形が指サックに似ているためである。数字のdigitやコンピューター用語のデジタル(ディジタル、digital)と語源は同じである。
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という記述がある。
「ジギタリス」という花のことは子供の頃から知っていたけれど、社会人になった後に「デジタル」と同源だということに気づいて、随分意外な気がしたものです。

 

ええと、話戻って。ツルが社会人になりたての80年代後半頃、新人研修で「お店のPOPの書き方」を習ったことがあって(馬鹿にしてたけど、その後の人生で案外役に立ったみたい)、その時確か「前はPOSと呼んでいたが、それは違うものを指す言葉として既に存在しているのでPOPと呼ばれるようになった」旨の説明を受けたように記憶している。(ひょっとしたら逆だったかもしれない。でももうどうでもいいぐらい昔の話。)

ほぼフルデジタルになった今でも、手書きPOPというものの効果が販売現場で信奉されているのはちょっと面白いけど、実際には「当店 No. 1 人気!!」と書いただけなんてものも多いから、どれほどビジネスに好影響を与えているのか、そこは甚だ疑問です。

 

ああ、本題がすっかり脇に回っちゃった。まいっか。

2019年9月17日 (火)

似て非なるもののおまけ - サンマ王国の凋落

(承前)

 

前回挙げたサンマの記事は3月の話だったけれど、それから半年経って次の報道が出ていた。やっぱりサンマもさっぱり不漁という不景気話で。

 

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(2019.09.07 朝日新聞 抜粋)

 

秋の味覚「サンマ」の漁の出足が、大不漁となっている。今秋に日本近海に来遊する量の予測からその恐れは出ていたが、現実になってきた。スーパーや飲食店はサンマの確保に四苦八苦し、店頭の値段も上がって食卓に影響が出ている。
サンマの水揚げ量日本一を誇る北海道・根室の花咲港。秋の漁が8月上旬、小型船を皮切りに解禁、同月16日までに戻ると衝撃が走った。水揚げはほぼゼロ。22日に中型船が実質的に「初水揚げ」をしたが、その量は17トンで、昨年の120トン強を大きく下回った。
26日に大型船の帰港が始まったが、昨年のこの時期の量には及ばない。サンマ漁船の古林 勲機関長は、「魚群がなかなかいないうえ、魚体も小さめ。例年になく漁は厳しい」と話す。
毎年恒例の「根室さんま祭り」にも暗雲が漂う。9月21、22日に開き、会場で箱詰めの生サンマを販売して開催費に充てる計画だが、不漁で必要量を確保できるかがわからない。実行委員会の関係者は、「来年以降は開催時期を後にずらすことも考えないといけない」と頭を抱える。
宮城県気仙沼市の気仙沼港では8月27日に初水揚げがあり、60トンを超えた昨年の1割強の8トンだった。6割が130グラム未満と小さい魚が多い。
東京・目黒駅前で9月8日に開かれる「目黒のさんま祭り」は今年、炭火焼きのサンマを冷凍物にすることに。毎年生サンマを送ってくれた岩手県宮古市が、不漁で祭りに必要な7千匹を確保できなかった。
祭りのサンマは、「専門店や料亭でもなかなか味わえない『トップクラス』の味」と新鮮さを売りにしてきた。急きょ、北海道産への切り替えも検討したが、脂の乗りが良いものを集められなかったという。祭りの実行委員長の中崎政和さんは、「今回で24回目だが、こんな事態は初めてだ」とため息をつく。
同県大船渡市で8月25日にあった恒例の復興支援の恩返しイベントでも同様に、炭火焼き用の生サンマが冷凍になった。生サンマの販売も、「後日発送」とした。
漁業情報サービスセンターによると、8月に全国で水揚げされたサンマは約1千トン。約9千トンだった昨年どころか、48年ぶりの大不漁だった2017年(約7千トン)にも届かない。市場での平均価格(1キロあたり)は642円。昨年(316円)の倍に跳ね上がった。
渡邉一功・漁海況副部長は、「今秋のサンマ漁の出足は、過去約50年間で最低水準とみられる」と話す。
08年は34万トンあった日本のサンマの水揚げ量は、15年以降は10万トン前後と不漁続きだ。水産庁は、日本近海の海水温上昇で、温かい水を嫌うサンマが近づかなくなったことに加え、中国や台湾の漁船による公海での漁が本格化し、資源が枯渇していることが原因とみている。
国の研究機関「水産研究・教育機構」の予測では、今秋に日本近海に来遊するサンマの量は、比較できる03年以降で17年に次ぐ少なさだった。このため大不漁の恐れが出ていたが、予測通りの出足になっている。
不漁続きの近年は、漁場が従来よりも沖合にできる傾向がある。水研機構は、9月下旬になれば来遊量が増えると予想するが、今年の漁場は近年よりもさらに沖合になると見ている。
沖合だと燃料代がかさむうえ、往復に時間がとられ、漁の時間が短くなる。鮮度の維持も課題になる。冷凍設備が無く、沖合で漁ができない小型船も少なくない。同センターの渡邉副部長は「9月下旬以降も厳しい水揚げの状況は続くのではないか」と予想する。

 

〔後略〕
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出た。サンマの話題になると必ずと言っていいほど書かれる「目黒のさんま」ネタについては、割と知られていることじゃないかと思うけど、目黒界隈で焼きサンマがタダで食えるお祭りは2つある。2019年でいうと・・・;

 

9月8日(日)
第24回目黒のさんま祭り
@目黒駅前商店街(品川区上大崎二丁目)

※同日は深更から翌未明にかけて台風15号が首都圏を直撃したけど、朝から夜半までは雨も基本的に降ってなかったんです。

 

9月15日(日)
目黒のさんま祭(第43回目黒区民まつり(目黒のSUNまつり)の一環として)
@田道(でんどう)広場公園(目黒区目黒一丁目)

※目黒区民センターに隣接する公園で、目黒駅からは700mほど離れている。

 

の週替わり、目黒駅(品川区にある)の東側(山手線の内側)と西側(同 外側)に分かれて。後者はついおとといの開催でした。

 

これらのイベントは以前から岩手県宮古市(上大崎方) vs 宮城県気仙沼市(目黒方)の漁協同士の面子をかけた代理戦争でもあったけれど、さらにいろんな思惑が絡んできて、だんだん浅ましさを増している気がする。

 

上大崎方では;

・和歌山県日高郡みなべ町産の備長炭
・徳島県名西郡(みょうざいぐん)神山町産のスダチ
・栃木県那須塩原市産の辛味大根の大根おろし

のご当地産品がお約束ごとになってきているらしい。

 

目黒方でも;

・大分県臼杵市産のカボス

が添えられるとか。

 

実は、目黒方の「目黒のさんま祭」(ああ、ややこしいわ)でも一昨年は冷凍サンマを使うことを余儀なくされたので、上記記事がそこに一切触れていないのは不自然に思える。今年も上大崎方同様、冷凍ものかと思っていたら、2日前の13日に気仙沼で水揚げがあって5千匹の生サンマを出せたそうです。

 

ついでに言うと、「大型船による通年操業」の件について何も書かれてないのも不思議。

 

企業城下町化による地域振興が常にリスク含みで捉えられる(cf. 2018.06.09【その213】・2018.06.11 「平成とともにパジェロ、去る(?)」)のに比べ、農林水産業や手工業などの伝統産業によるそれは安心感をもって受け止められやすいだろう。しかし、それも・・・。

 

もう、無理してやるのなんかやめりゃいいのに、古典落語の馬鹿噺に便乗した都会の祭りとか。資源枯渇が叫ばれてる時に無料で食わせたりするのってどうなのよ(試算すると、2つの祭り合計で1.5トン程度にはなる)。この7月も環境省が「土用の鰻はご予約を」つっただけで大炎上したじゃん。
結局のところ、「獲る漁業からつくる漁業へ」などと謳ってみても、水産業においては自然を手なずけて利用する度合いが農林業に比べ格段に低いということなのだろうなあ。

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