似て非なるもの - 小中一貫教育校 vs 義務教育学校:後編
(承前)
小中一貫教育校や義務教育学校において、一般にメリットとして挙げられているのは、「カリキュラムの自由性」「中1ギャップの解消」などだいたい一緒なのに、不思議なのはデメリットとなるとずいぶんバラけていること。そして、たいていその内容がハッキリしないこと。
今回はそのデメリットの部分を集中的に見てみる。
-----
(2016.04.01 広島県廿日市市役所学校教育課 抜粋)
・小学校と中学校の節目がなくなり、新たな気持ちの切り替えや進学する充実感がなくなる可能性がある
・小学生が中学生をこわがってしまうのではないかという心配がある
・小学校と中学校の組織文化、習慣の違いが大きく、その調整に時間がかかるなど
-----
2016年4月と言えば、改正学校教育法が施行され、義務教育学校の設置が認められた時である。当時はこんな次元の低い話だったんですね。
-----
(株式会社ゆうきプランニング お受験ナビ 抜粋)
・生徒の人間関係がリセットできない
小学校と中学校が同じであるため、入学から卒業まで学年の生徒の顔ぶれが基本的に変わりません。
もし相性の悪い生徒同士や問題のある生徒がいても、中学進学で人間関係をリセットして再スタートすることはできません。
・教員免許が偏っている
教職員の持つ教員免許は小学校と中学校のどちらかでかまわないため、より専門的な教育ができるか不安が残ります。
ただし、義務教育学校のように原則として両方の教員免許を持っていることが条件となる小中一貫校が生まれたため、他の学校でも併有を求める方向へ移行すると見込まれます。
・子どもがみんな進学できるわけではない
近くに小中一貫校がなかったり、選抜試験に合格しなければ進学できなかったりするなど、全員に門戸が開かれているわけではないのもデメリットでしょう。
義務教育学校であれば一般的な小学校や中学校と同じように無試験で誰でも入学できますが、まだ数が限られているのが現状です。
-----
記載時点が明らかでないが😔😔😔、おそらくこれも2016年4月の改正学校教育法施行の後間もない頃ではないかと思われる。
3番目のポイントは論点がズレていると思います。
-----
(2021.06.03 株式会社Shift 塾プラス)
・合わなかった場合に環境を変えづらい
小中一貫校では、9年間同じ学校でほぼ同じメンバーで過ごすという点がデメリットにもなりえます。学校の教育方針になじめなかったり、友達と合わなかったりした場合に環境を変えにくいからです。
そのため、教員が子ども1人1人に目を配り、子どもに寄り添ってケアを行うことが求められます。
・学校の数が少ない
子どもを小中一貫校に入れたくても、近くに小中一貫校がない地域も多いことでしょう。
小中一貫校は、平成29年時点で253件であることを前述しました。当時はまだ検討中だったところもあり、その後も総数として増えてはいます。
しかし、学校をつくるには莫大な費用がかかり、工事にも時間がかかるため、簡単ではありません。他の自治体の導入具合を見ながら検討するという地域もあるようです。
-----
だからよ。「数が少ない」は本質的なデメリットではないでしょう?そもそも、公立学校で「選択できない」というのはデメリットなのかね?孟母三遷の教えには胡散臭さも感じてきたのだけど、ツルは。
-----
(2022.02.14 株式会社SUI ソクラテスのたまご 抜粋)
たとえば、いじめの問題。小学校課程・中学校課程と同じ人間関係が続くことで、いじめが悪化するケースもあります。
また近年、首都圏を中心に中学受験をする家庭も増えています。1999年の学校教育法改正をきっかけにスタートした、中高一貫校の数は年々増加傾向にあります。
さらに少子化による生徒数確保の思惑なども加わり、高校からの入学を募集停止する高校が増えてきています。
高校受験・大学受験を見据えている方は、選択肢そのものが狭まる可能性もあるので、情報を逐一チェックしておきましょう。
-----
「いじめの長期化・悪化」をここまで明らさまにしているのは初めて見た。ただ、そうなると、いじめの深刻化は長年あれほど叫ばれているのに、これらの一貫教育はその問題に解決策を見出す前に走り出したことになるじゃないか。
-----
(2022.04.28 株式会社KG情報 ママ賃貸コラム 抜粋)
交友関係で揉めるとリセットしにくい
小中一貫校は9年間同じ環境で過ごすため、友人関係などが途中でこじれた際にリセットしにくいことがデメリットの一つです。
いじめや不登校に発展する可能性に課題が残ると指摘されています。
これまで以上に、学校や保護者が十分に目を行き届かせるなどの配慮が必要となるでしょう。
小学校や中学校の良かった点が失われることも
小学校では高学年が下級生をリードし行事をおこなうなど、学年が上がるほど活躍や成長の場が見られるのが良いところです。
小中一貫となると、その機会が減少してしまい、リーダーシップや自信の創出につなげにくいという懸念もあります。
また、小学校の卒業式もないため、けじめをつけにくいこともデメリットといえるかもしれません。
転入・転校・受験対応に懸念
小中一貫校は学校ごとに独自のカリキュラムを編成するため、学校ごとに特色や学習の進め方などに違いがでやすいことが特徴です。
転入や転校する児童にとっては、応用がききにくいことも懸念されます。
特に中学校から進学する場合や、中学校受験などの対応が難しくなりがちなことが課題の一つです。
-----
リーダーシップの問題は、確かになるほどと思える。
転校生の問題は、何も一貫教育に特有の問題ではないはずだ。ツルも中1の時に福岡県大牟田市から福岡市南区に引っ越してきて、英語の授業の進み具合がまるで違うのに驚いたっけ。NHKラジオの基礎英語にずいぶん助けられましたが。
どの論調にも共通している、「環境が固定化するので・・・」という点は、しかし、単に「だからもしいじめに遭った時に・・・、人間関係が悪化した時に・・・」という観点から論じられるべき問題だろうか?むしろ、「変化への対応力が育まれない」という問題の方が重大だと思うのだけれど。簡単に言えば、「中1ギャップ」は起こらなくても「高1ギャップ」は起こり得るでしょ、ひょっとしたらもっと深刻な形で、ていうこと。
//
もう一つ、一貫教育とゆとり教育の関係性というのがよくわからない。
1980年代に始まったとされる「ゆとり教育」については、Wikipediaに次のような記述がある。
-----
2008年、新しい学習指導要領が改訂され、ゆとり教育から脱却したということから「脱ゆとり(教育)」と称され、小学校では2011年度、中学校では2012年度、高等学校では2013年度から完全実施された。この教育は、文部科学省によるとゆとり教育でも詰め込み教育でもなく、生きる力をはぐくむ教育と説明している。
-----
「生きる力をはぐくむ教育」というのは、小中一貫教育校や義務教育学校のサイトをあれこれ見ていてよく出くわした気がする。円周率が整数の3ではないことを知る、ってことでしょうか(笑)。
その脱ゆとり世代がそろそろ大学を出て社会人になり始めているわけだ。と見てくれば、今の一貫教育世代はポスト「脱ゆとり」世代ということになるんじゃないかしらん。
そしてこれは、「コロナ世代」と呼ばれる年齢層/概念とほぼ重なっているのではないかと思う。小さい頃から苦労の連続やねえ😢、「氷河期世代」あたりよりも。
一方、メリット/デメリットを論じることより、初等~中等教育に対するコスト削減意識が優先されているのではないかというプリミティブな疑問点に明確な答えを出す方が先決かもしれない。そこがスッキリしないから、保護者側には反対や懸念が生じやすいってところもあるでしょ。教師側には教師側で、小中の教員資格を取ることなどに対して負担増の声が上がるだろうし。
そういった問題を一つ一つ解決していったとしても、ではこれらのアタラシイ義務教育の形が日本のスタンダードとして一般化するのかというと、そこまでは行かないんじゃないかという感じ、私見では。理由は、東京などの大都市圏で、生徒減による公立小中学校の統廃合まで伴う変革を迫られているわけではないというのが1点。また、(やはり東京中心の話になるだろうけど)小中一貫という制度が、私立校の中高一貫とバッティングしやすいというのが1点。
その行く末をツルは見届けられないような気もしますが😓。
最近のコメント