仕事かよ。

2017年6月30日 (金)

終わりましたよ

吉例、年に一度の株主総会ご報告でございます。

今年もつつがなく開催できました。都内M駅近く、いつもの某所にて(ただし名称がインバウンド需要狙いに変わっている)。

昨年に続き、天候は雨(終わった頃には止んでたけど)。いつもどおり朝10時00分に開会し、11時34分まで94分間、想定範囲内。出席株主数は356名(株主たる役員17名を含む)、昨年と比べると僅かに増えて+12名。株主各位のご発言については11名から手が上がった次第、これも同レベル。
昨年は「雨だったから出席者数が減ったのかな?」なんて書いたけど、今年の方が本降りだったような気がするんだがなー。結局やっぱり、そんな理由は誰にもわからない、わかるはずもない、不思議な会議ではある。

会場前ロビーでは製品展示を大々的に(でもないか)行ったり、来場土産をお渡ししたりして、これも前々から準備が相当タイヘンなんですが、最新トレンドでは大企業でお土産を廃止するところがじりじり増えていて、今後この流れは大きくなっていくものと思われます。「総会出席は株主の義務の履行ではなく権利の行使であるところ、儀礼とは言え土産を差し出すというのは筋違いではないか」「株主間での平等の原則に照らして疑義あり」といった問題(株主は全国にいるのに総会は一極集中ですから)が徐々にクローズアップされてきている次第。それに「来場土産の費用対効果は」なんて総会で質問されても答えに窮するしね。

質疑応答タイムのご発言内容は今年もほぼまともで、多少厳し目なのを敢えて挙げれば、ノーマークだったOB株主から、業績低迷の責任と社長再選の妥当性を紐付けた質問があったぐらい。他には、復配時期;中期計画達成確度;事業関連のあれこれ;高齢者に配慮した商品開発;役員候補者の持株数(の少なさ)について;etc。
私見ながら、最後の件は、「持株数が少ないから株主と視点が共有できない」というわかりやすい図式に則ったものではあるけれど、それ自体Dogmaticに過ぎて、見るべきところは少ないと考えます、特に日本企業の「役員」が従業員制度の頂点/ゴールとしての「社内役員」中心であることを考慮すると。つまりはガバナンスモデルとしてどんなものを採用するかにも関わってくる問題のはずなのだけれども、マスメディアの(相変わらず)表面的な報道に左右されやすい個人株主の傾向をよく表しているものと思われ。個人株主は決して馬鹿ではないが、そこはもっと投資家教育を要するところだと、筋金入りの真面目な総会担当者は考えます。

今年の株主総会における発言の一般的トレンドとしては、昨年辺りからのガバナンス関連に加え、例年になく総務・人事労務系の質問が多いというところ。例えば;政府の提唱する「働き方改革」と長時間労働防止;Yマト運輸等の料金値上げに伴う物流コスト上昇の懸念;Aスクルの倉庫火災による休業に端を発したリスク管理;海外で頻発するテロへの安全対策;役員退任者の顧問就任への批判;などなど。「顧問」の問題は5月末から日経が盛んに追及キャンペーンを張っていたもの。
当然これらに対してもおさおさ怠りなく想定Q&Aは用意していたんだけど、当社ではこれらの時事ネタ系質問は飛んできませんでした。

最集中日(決算期日の3ヵ月後の最終営業日の1営業日前とされる;今年は29日(木))の集中率は、今回遂に初めて3割を切って29%に(会社数ベース。株主数ベースならもっと低いはず)。ツルがこのギョーカイに飛び込んだ頃に比べると、誠に隔世の感ありです。

本年6月総会の目玉だった企業について言うと、会計不正が尾を引いて上場継続にも黄信号が灯るT芝はウチと同日の開催(今年から会場を国技館 → 幕張メッセに変更)、エアバッグ問題が屋台骨を揺るがして民事再生法申請のTカタは前日、合弁による連結子会社F士Zロックスの海外子会社での会計不正が明るみに出たF士FイルムHDは翌日。因みに長時間労働問題のD通は12月決算の3月総会なのでちょっと埓外。
T電HDを除く電力各社もウチと同じ日。そのT電HDは今年から開催日を1週間ほど早めている。

裏話は今回も勿論豊富にあるけど、例の極めて特殊な約1名の株主様(77歳)は、一昨年・昨年に続き、6月20日にまたもや警視庁組織犯罪対策3課に逮捕されました(*_*)。報道によれば、本年5月25日、テレビ朝日HDの株主として同社に株主名簿の閲覧請求をかけた際、社員に暴行を加えたとして強要未遂に問われており、現在まだ身柄を拘束されてるはず。
H氏逮捕はもはや年中行事化しつつあるけど、今回は前2回とはやや異なり、会社法の世界、株主としての行動に関するものであることが目を惹きます。総会ハイシーズンに向けて警察が動きを封じるにしても、さすがに3年続けてあからさまな別件でしょっぴくことは憚ったものと見た。
因みに今年はウチの会社へのコンタクトはありませなんだが、なんとあのYマダD機(本社:群馬県高崎市)の総会で、自分を取締役に選任せよという株主提案をかけていて驚いた。

もう一つ、昨年以上に感じたのは、「株主の高齢化」という点。役員も「発言株主は白髪頭ばかりで若い人はいなかったよなあ」という感想を洩らしてましたもん。

・・・ホントは、「実質株主判明調査と議決権行使促進活動」とか「機関投資家のスチュワードシップコード行動への対応」とか「議決権行使助言会社ISSの反対推奨に対する反駁レター作成と機関投資家の説得」とか「賛否結果の取締役会報告」とか、諸々のガチな問題にも取り組まなきゃならないので、そこら辺が今どきの総会担当者として一番の腕の見せどころというか、脳みその汗のかきどころなんですが、ちとマニアックに過ぎるので控えとこう・・・。

はー、こうして怒濤の3ヵ月もやっと終了した次第。8月上旬にゃまた第1四半期の決算発表ですがね(汗)。

えー、話はちょっと変わりまして。ツルが総会を担当するのは、今回が最後になるはず。異動の希望出してて、認める方向だと言われてるもん。四半世紀超、株式業務はやり尽くしたし、下も育ってきているし。総会後の新しい大ボスは人事部担当でもあるしネscissors。狙っているのはピンポイントに、コーポレート・ガバナンス担当部門。

今度はガバナンスの鬼となってやるぜ、フフフ。

2016年6月30日 (木)

終わりましたよ

年に一度の定時株主総会のご報告でございますwink

今年もつつがなく終わりました。都内M駅近く、いつもの某所にて。

珍しく、雨降る中の開催。いつもどおり朝10時きっかりに始まって、11時40分まで丁度100分間。出席株主数345名(株主である役員18名を含む)、昨年と比べると△67名。12名からご発言を賜った次第。
このところ毎年出席者数が過去最高を更新してたんですが、今回一転して70名近く減った理由は、ひとえに天気のせいじゃなかったかと愚考する次第(そんなもん、確定的なところは誰にもわからんけど)。

今回は、昨年みたいなOBハッスル祭りになっちゃうこともなく、ということになりますか。質問内容もめっきりまともで、配当について;年明け以来の株価下落の中での株価対策(自社株買い含む)について;英国のEU離脱の影響について;事業関連の諸々;社外取締役の役割と持株数について;人員減と商品開発力低下のリスクについて、などなど。このところの総会トレンドをきっちり(かつバランスよく!)押さえてありましたww。

いつも言っている、質問内容が「玉」か「石」か、という点から言えば、昨年とは違って「玉」のご質問が多かった、と言うより「石」がほとんどなかった、という印象。生真面目な総会担当者の素直な感想として、だから「いい総会」だったと言っていいだろう。

裏話は今回も様々あるけど、例の極めて特殊な約1名の株主様(76歳)は、昨年に続き、20日にまたもや警視庁組織犯罪対策3課に逮捕されちゃってたのよ(+_+)。まだK署に身柄拘束されてるはず。産経新聞には、いわゆる不規則発言で今年だけで12社(@_@)(@_@)の総会で議長から退場命令を食らっていたと出ていました。
ぶっちゃけ、今回も別件逮捕ぽい容疑なので、総会ハイシーズンに向けて警察が動きを封じ込んだ、というところです。まさか2年続けて豚箱に入るとは思わなんだけど、真面目な総会担当者として(くどいっ)、ツルは同情はしません。威圧的態度や暴力的言動に出れば、それは株主民主主義(数が全ての世界とは言え)に対する挑戦だす。「世直し」なんてとんでもない。ウチにも来訪されたりしてたんだけどさ(小職ご指名ですがな;幸い当社でモメたことはない、今までのところ)。

えー、本年総会のいわば目玉だった台湾資本受け入れのSャープ、会計不正が尾を引くT芝、燃費偽装のM菱J動車の社長交代御三家(こらこら)はいずれも先週開催だった。一方、当社と同日の開催だったのは某AアBッグメーカーとか、あるいは全国の電力会社ぐらいかな、目立つとこでは。

最集中日(決算期日の3ヵ月後の最終営業日の1営業日前とされる)の集中率は昨年の41%から一気に10ポイント近く減って32%になる旨東証から事前情報が来てたけど、これは曜日の問題も大かも。総会って月曜は基本開催しないものなので、その絡みで昨年は最集中日が6月26日(金)だった、けれど今年はそれが29日(水)になる、でもそれじゃさすがに遅すぎるだろ昨年来のコーポレート・ガバナンスの嵐の中じゃ、てなもんで。

専門的な観点では、米国の議決権行使助言会社ISS/Institutional Shareholder Servicesの影響力低下は否めなかったかな。機械的なNegative Screeningに終始してっからだよ、なんて口が裂けても言えませんが、表向きには。

もう一つ、本音を吐けば、今回なんだかひどく「高齢の株主が多いなー」と感じた。足の悪そうな方とか、耳の遠い方とか。高齢化社会ですなあ。
そりゃまよろしいんだけど、気になったのは出席株主の質の低下。説明聞いてる態度が悪いんだよねー。いえ、尊大だとかいうんではなくて、単に姿勢が悪い、ダラケた感じで。会議や打ち合わせで他人の話聞く時に、半跏の姿勢取る人なんていますか?弥勒菩薩じゃあるまいし。家でテレビ見てるのとは違うんですよ。

この類いの話、実はいろんな企業の総会屋、いや総会担当者の間で近年密かに囁かれていることです。つまりは「品位」の問題。
証券会社さん、そういう意味での個人投資家教育、もっと力を入れて下さいよ。「NISAで優雅に」だの「夢の株主優待生活」だの「各社総会を効率的に回って土産をたんまりget!!」なんてことばかり宣伝するのはいい加減にしてさ。

ああ、企業のイヌとお呼び。

2015年6月25日 (木)

無事っ!

毎度おなじみ、総会報告でございます。

本日、無事に終わりました。いつもの都内某所にて。

天気はもう暑いぐらいの好天。朝10時きっかりから始まって1時間42分。出席株主数412名(株主である役員18名を含む)、昨年に引き続き、当社の株主総会で過去最多を更新しました(わずか+13名だけど)。延べ14名(重複を除くと実質9名)からご発言を賜りました。
今回は総株主数が少しばかり減っていたんですが、来場者数が増えたのは一般的趨勢どおり。団塊の世代が定年を迎えつつあり、平日の午後に動きやすくなったためだと言われております。

今回の当社総会の特徴は、OB大会になっちゃったということですかね。ご発言のあった9名のうち3名がOBだったという(汗)。
傾向としては決して好ましいものではないと、真面目な総会担当者としては考えますがね。

毎度のごとく裏話はイロイロっす。
今日は早朝に東急電鉄が人身事故だかで一部止まってしまい、その方面に住んでいる役員が遅刻しちゃうんじゃないかと気が気じゃなかったとか(幸いそのような事態には至りませんでしたが、円滑な総会運営のためにはどんなに細心の注意を払っても払い過ぎるということはないのよ)、出席を依頼していた某法人大株主が会場に向かっていたところが、そのタクシーだかハイヤーだかが事故を起こし、警察の現場検証に立ち会わなければならなくなり遅れそうだという電話連絡が入ってきたりとか(こちらも9時52分には来場されましたが)、裏方としては肝を冷やす場面も多かったけど、まあ、まずまずな総会だったと言えるかなー。もちろんこんな突発事態ぐらいで右往左往しているようじゃプロの総会屋は務まらないんである。

いつも言っている株主各位からの質問の内容については、例年よりもやや「石」が多かったような気もしますが・・・、「玉」より。ううむ。

近年話題になってた、極めて特殊な約1名の株主様(75歳)は、22日になんと警視庁に逮捕されちゃってたのよ。ぶっちゃけ、企業の総会担当者はいささか胸を撫で下ろしていると思う。4月以降、当社にも数回電話でコンタクトはあってたんだけどね(小職ご指名で)。
不動産取引を妨害した容疑となっていて、総会屋的活動とは全く関係がないので、総会ハイシーズン直前のこの時期、限りなく別件逮捕に近いですが、同情はしません。
週刊新潮最新号にもこの株主に対する揶揄的記事が載っています(一部不正確だけど)。実名入り、過去の破廉恥な犯罪歴入りで。

もひとつ、本日は国技館でT芝社が総会を開いていて、同社はご承知のとおり決算不正が大問題となっており、定時総会だというのに年次決算を報告できないという異常事態になっている(だから、有価証券報告書も提出できないと思う)。
既に、決算報告のために9月末を基準日とする臨時総会を開くことが決まっていて、これも聞いたことがない。総会担当者のご苦労ご心労はいかばかりかと拝察申しあげる次第。

ともあれ、ふうぅ、お疲れ様です、です。今日はもうなんもやりたくないや。

2014年6月26日 (木)

無事

本日の株主総会、終わりました。例の都内某所にて。

天気は保ちましたね、やや蒸し暑いぐらい(雨だとまた大変なのよ、いろいろ)。ニュースにもなってましたが、一昨日あたり都内西部では突拍子もない天気になって、すんげえ雹/ひょうが降ったりしてたので、心配してたのですがね。「住民はひょうかきに追われました」にはちょっと笑っちゃったね。

朝10時から1時間45分。出席株主数399名(株主である役員19名を含む)、昨年に比べると81名の増加で、当社の株主総会で過去最多。12名からご発言を賜った次第。
今回は株主数が4,500名ほど減少していたのですが(株価が持ち直したからだと思う)、やっぱり、来場者数は関係ないのね。増えているのは一般的傾向のようです。

もちろん裏話はてんこ盛りですが、まあ、まずはええ総会だったと言えるのではないかな、実務担当者の感想としては。株主各位からの質問内容にやや「石」めいたものが混じっていた(「玉石混淆」のね)とか(まあそこを云々してもしょうがないですけど)、役員の回答がややリキが入り過ぎて冗長気味になってた(そこは云々せにゃいかんなあ)とかいうツッコミはできたにせよ。

昨年も話題になっていた、大変特殊な約1名の株主様は、本日は新高輪でN社だのM社だののAGMに出席なさった由。最近活動を尖鋭化させていて、この6月総会でも、メディアでも報道されてたS社とかJ社とかA社とかの大規模総会で不規則発言により退場命令を出されてますな。もう誰もまともに取り合わなくなっているのも事実ですが。

ともあれ、ふうぅ、やり切ったぜ、です。

2013年6月26日 (水)

無事!

株主総会が終わった。従来同様、雅叙園にて。ずいぶん久方ぶりに、雨の総会。

朝10時から1時間33分。出席株主数318名(株主である役員20名を含む)、昨年に比べると、60名の増加。で、9名から16件程度の発言。
今回は総株主数(つまり分母ね)が13,000名ほど増えていたので、も少し増えるかと予想してたんですがね。

一般に、来場株主数が増えているのが昨今の特徴で、例えば数日前のS社総会では初めて来場株主数が1万人を超えた由(@_@)。来場土産が足りなくなって、総会で不満の声が上がったそうだから、ここまでの増加は運営側としても想定外だったんでしょう。(不足分は後日郵送するんだと、大変なこっちゃ)

来場株主数が各社で増えているのは、団塊の世代が定年を迎え、平日の午前中に動きやすくなったからだという見方があるようです。説得力あるなあ。構造的変化というわけですか。

あと、大変特殊な1人の個人株主で、その道では非常に悪名高い70代半ば(?)のおじいさんが、最近活動再開している。200社ほどの企業の株を持っていて、日常的に都内各社の本社を訪問しては警察を巻き込んだトラブルになったりしてるとか。昨年総会では数社で不規則発言を続け退場命令を出されている。
10年ほど前に強姦罪で実刑判決を受けた元医師(@_@)、といえば総会担当者で知らぬ者はないでしょう。てなとんでもない破廉恥漢で、反社会的存在と言ってよいとツルは考えますが。

総会屋とかじゃないよ。クレーマー型の個人株主。だからこそ歯止めが効かず要求がエスカレート/ヒートアップしやすい危険さがある。

実はウチでも今回この株主から事前に電話コンタクトを受けたということがあった。毅然とした対応は取りましたよ、もちろん。
最近のご主張は「警察OBを採用するな」というもので、郵送されてきた事前質問状もその趣旨。本人も認めるとおりの悪筆で、解読にえらく骨が折れましたが。

本日は某証券会社や某重厚長大企業の総会に来場してモメてた由。自分とこの総会に来なくてよかったと思った(他社の)総会担当者は多かったはず。

ともあれ、自分にお疲れさま。

2013年1月24日 (木)

A社に聞くインサイダー取引防止への取り組み:下

―強化策の効果は出てきていますか。

ツル:はい。特に「情報管理」という面ですね。例えば,社内の重要会議体のはじめに「重要事実に該当する内容を含むから十分留意せよ」といった注意喚起をするようになりましたし,重要事実が生じやすい戦略部門や広報部門などから問い合わせを受けることも増えてきました。内々に「実は今度こういうプロジェクトがある。これはインサイダー規制に係るような案件なのか」と聞かれます。
あらかじめそういった部門には東証の適時開示ガイドブックなどを渡してあるものですから,自分たちで軽微基準を計算して,「今回は金額が小さいので,問題はないと思うがどうか」というところまでまとめて来てくれます。このあたりの意識が社内で強くなってきたと感じるところです。

―先ほどのお話からも出てきた役員,従業員への意識付けという点に関して,個々人のコンプライアンス意識を高めるために,重視していることがあれば教えてください。

ツル:私自身意識を変えましたのは,性善説でなくて性悪説に立って進めていかなければいけないということです。つまり,「悪心を起こさせない」という観点ですね。普通,どこの会社でも社則というものは基本的に性善説に立っていると思います。例えば,「12月になるとお酒を飲む機会も増えるけれど,飲酒運転禁止のルールは必ず守りなさい」というのが普通の考え方で,「君は飲酒運転するだろうから,12月になったら車の運転は公私とも全面的に禁止します」ではないでしょう。
ところが,インサイダー取引防止はこれでは不十分なのですね。しかもこの規制はちょっと特殊で,会社の規則でありながら24時間人を縛るのです。勤務時間外に家族に内部情報を話してもダメ,マンションを買う頭金にするために自社株を売ってもダメとうたっているのです。
したがって,3月31日に決算期が締まる,そうしたら,その翌日から5月の決算発表日までの期間は売買全面禁止としたのです。金商法以上のところまで規制するのですから,初めは社内から不満の声もなかったわけではありません。しかし,これはもう会社の規則としてきちんと決めたことですから,そこは徹底しています。


金融機関と事業会社

―金融機関に比べて事業会社の方は,インサイダーに対する意識が弱いように感じますが,その点はどうお考えでしょうか。

ツル:金融機関と事業会社を比較して,事業会社のほうがガバナンス,コンプライアンスが弱いと一概に言うことには多少違和感を覚えます。
つまり,金融機関やマスメディアなどは,お金とか情報を相手に仕事をしていく上での職業倫理が大事であるという業界であって,そこはインサイダー取引規制の領域とそっくり重なるわけです。
一方,事業会社には事業会社のコンプライアンスのあり方があります。メーカーだったらものづくりにおける職業倫理をまず持たなければいけない。そして,これとはちょっと違う領域だけれども,インサイダー規制といった倫理もまた当然守らなければならない,そこを意識する必要があると思います。ですから,事業会社が金融機関と同じような考え方で仕組みを作れば優れたガバナンス,コンプライアンスがすぐ実現できるのかといったら,少し違うように感じます。


実務上の悩み

―ツル様が感じる実務上の悩み,もどかしさというものがあれば教えてください。

ツル:これはいろいろありますね。
例えば,金商法の内部者取引規制と,証券取引所の適時開示規則は似ているようで趣旨も内容も違います。災害による損害が発生した場合,純資産への影響度合いに加えて,取引所の規則では経常利益や純利益についても基準があって,より厳しくなっているといったものです。そこはきちんと管理しなければなりません。
それから,海外子会社へのグループ規程の適用ということもあります。日本の金商法は海外の従業員には及ばないでしょうが,インサイダー取引をしてはならないのは世界中どこのマーケットでも同じですし,当社のグループ規程は海外子会社にも適用があって,英訳版もあるのです。グローバルに事業展開している会社さんであればどこでも,ここは真剣に考えなければいけない問題でしょう。
もう一つは,インサイダー規制が,不作為のインサイダー取引を防止できるような法令にはなっていないという点です。
公表されたら必ず株価が上がるだろうという未公表の内部情報があるとして,それを知って,株式を買い付ける行為はもちろん禁じられています。ところが逆に,今持っている株式を売るのを少し延期して,公表されてから売るのであれば不問です。市場へのアクセスの平等という観点から言えば社員の立場を不当に利用した違法な取引のはずですが,これについてはどう考えたらよいのか。法令上仕方がないことですが,真面目に考えるともどかしいところです。
そこはもう,「心にやましいことをしてはいけない」というコンプライアンス意識を地道に植えつけていくしかないのでしょう。


体制整備の重要性

―最後に,事業会社におけるインサイダー取引防止や体制整備の重要性につきまして,改めてコメントをお願いします。

ツル:やはりインサイダー取引は絶対にあってはならないことです。企業の使命は,商品やサービスを提供することだけではありません。安心して株式を持って頂く,取引して頂くということも同じように大切なことです。そのことを肝に銘じながらコンプライアンスの強化に取り組んでいく,それしかないように思っています。

―ありがとうございました。

(2012年11月28日 A社本社にて)

A社に聞くインサイダー取引防止への取り組み:上

 A社ではインサイダー取引の防止に向けた様々な取組みが行われている。そこで,担当者であるXX課のツル様に,事業会社におけるインサイダー取引防止策の重要性,社内整備のあり方を語って頂いた。


インサイダー取引防止体制

―まず,インサイダー取引防止に向けた貴社の取組みを教えてください。

ツル:基本的なところから申しますと,親会社である当社だけでなくグループ会社まで対象とした「グループ規程」という規則体系がありまして,その中に「内部者取引防止基本規程」というものを定めています。この規程の中では,内部者取引の禁止と情報管理の徹底とをうたった上で,金商法にもとづいて,当社あるいはグループ会社において「どういった情報が重要事実に該当するのか」「軽微基準(重要事実とならない基準)は何か」を別表形式でまとめてあります。当初の制定は1989年で,この時の証券取引法改正によって,各社さんともこうしたものを作られているかと思います。
しかし,これだけでは決して十分ではありません。この「基本規程」はなにぶん堅苦しいものですし,「別表」部分も分量が多いですから,法務部員や実務担当者でもなければなかなか理解しきれるものではありません。そこで,とにかく新入社員にでも分かりやすいものが別途必要だと。文章量も極力減らして,「何々をしてはいけません」「これこれをしてください」といった基本的,一般的な指針を「インサイダー取引防止ガイドライン」として示しています。これらは電子的な掲示板に常時掲載して周知徹底を図っているわけですね。
でもこれも,自分で掲示板を見に行って初めて内容がわかるというものでは効果が限定的になってしまいます。これを実務対応で解決しようということで,1998年から,重要事実が社内に滞留する時,例えば決算発表等に際して,いつからいつまでは自社株式を売買してはいけませんよという電子メールの「売買禁止のお知らせ」を送るようにしました。従来の実務から一歩踏み込んで,こちらから情報を発信することで機動性と実効性を高めたわけです。
また,役員の自社株売買については,事前に可否を「情報管理委員長」に照会する仕組みを取っています。


インサイダー取引防止の強化に向けて

―不幸にも数年ほど前,貴社の監査役(当時)によるインサイダー取引が発覚しましたが,それを受けての再発防止策などありましたらお聞かせください。

ツル:この件についてはもう,ただただ申し訳ないと思っています。これは社長はじめ経営陣も心底同じ気持ちであったと思います。
 ではどうやって再発防止を図るか。これは社内だけで進めるのではなく,公正な社外の眼を入れるということで,弁護士による再発防止委員会に検証していただきました。委員長は当社社外取締役(当時)でもあった弁護士です。この委員会の調査,提言をまとめた報告書はもちろん公表していますけれども,その中では「当社の内部者取引防止の取組みは総じて有効にワークしている。けれども,コンプライアンス体質の強化を目指すには,規程・仕組み等のハードの整備だけではなくて,ルールの対象となる役員,従業員への意識付けのための施策作りが重要である」と結論付けられています。この報告書の提言を受けて,インサイダー取引防止の強化策をいろいろと実施していきました。
どのようなところを強化したのか。まず,不正行為そのものの防止策です。先ほど申し上げたように,決算発表時には以前から「売買禁止のお知らせ」のメールを送っていましたが,この対象を役員から顧問,嘱託,派遣なども含めたグループ会社の社員全員にまで広げました。また,その内容も「売上や利益等の概要を知ったら,売買してはいけない」というものだったのですが,これを「知っていようが,いまいが」一律禁止としました。四半期ごとに決算期日の翌日から決算発表まで,自社株売買をとにかく全面的に禁止したのです。
次に,社内教育という面での取組みですが,Eラーニングを始めました。15分程度で分かりやすく学べるようにして,最後には選択形式の確認テストをつけ,解説つきの解答確認もできるようにしています。
当時,東京証券取引所がインサイダー取引防止のEラーニング教材を希望する会社に配付していましたので,それを入手して,当社の実情に合うように内容を整理した上で社内システムに取り込みました。
システム上の問題も出てきたりと,なかなかの力仕事になったのですが,若い課員たちがやり抜いてくれました。結果的に,役員から正社員,顧問や派遣社員,グループ会社まで含め,計76%の者が受講しました。正社員ではほぼ9割という数字です。これは社内で行っている各種のEラーニングの中でも高い数値となりました。
その他にも,外部から弁護士等の講師を招いて役員研修を毎年株主総会後のタイミングで行うとか,3ヵ月ごとに全役員から自社株売買の内容を会社に書面で提出させるといったコンプライアンス強化策を実施しています。

―それらの施策を実施していくにあたって,特にどういった点を検討されましたか。

ツル:まず,「分かりやすさ」です。なぜかというと,金商法の規定が分かりにくいからですね。
「基本規程」は,金商法166条にほぼ沿った内容なのですが,なかなか読み込んではもらえません。ですので,Eラーニングでは,社員が日常の業務で行き当たりそうな部分に絞り,言葉もできる限り平易なものにして,分かりやすさには特に留意しました。
もう一つは,他の制度との整合性です。自社株の売買を完全に禁止している会社もあることは承知していますが,何でもかんでも禁止すれば意識が高まるのかというと,必ずしもそうではないと思うのです。
福利厚生の一環として当社にも従業員持株制度がありますが,そこでは「株式をお持ちなさい」と奨励している。ところが一方で「株式の売買は全面的に禁止です」ということになると,果たして意識の向上は本当に望めるのか。そういったことを考えさせられました。

2012年12月22日 (土)

たまには仕事のことなんか

このあいだ、さる真面目な法律雑誌から取材を受けちゃった。題材は「事業会社におけるインサイダー取引の規制について」、おお、ガチに堅い!

数年前だけど、退任した監査役が在任中にインサイダー取引やってたことが発覚するなんていう前代未聞の不祥事があった会社。本人は課徴金の行政刑に処せられ、退職慰労金も会社に返還した。実はツルの昔の大ボスだったりする・・・ああ。

会社は思いっきり信用と風評を落とし・・・って、今じゃどれほどの人が覚えてるか定かではないですが。

むろん、そんな面白いネタを持ってる会社だからこそインタビューを申し込まれたのは間違いない。その後どんな対策を講じたのかってとこを超真面目に論じましたがな。30分予定のところを1時間にわたって。「面白おかしくなってしまわないように」ということには最大の注意を払いつつ。

原稿もすでに来たので、バンバン手を入れて非常に力強い内容となっております(笑)いかに真摯にコンプライアンスに力を入れとる会社かっちゅう話で。

来年の3月号だから発売にはまだ間があるけど、名前と写真つき、微妙にわくわく。(こういうの、初めてだし。)

2012年6月29日 (金)

闘いの日々は過ぎて

とりあえず。
まあ、いい株主総会だったと言えると思う。プレッシャーも相当なものがあったけど、何とかミスらしいミスもなく運営することができたし。株主各位からの質問内容も、玉石混淆であったにせよ(これっ!)、「玉」の方が多かったし。

これから燃え尽き症候群がまた襲ってくるのだろうなぁ、あは。

そんな腑抜けた気分の中、職場の中庭に今年もキジバトが巣をかけたことに気づいた。去年と同じ木(ヤマボウシ)、けどちょっと違う枝。ガラス越しだけどほんとに観察しやすい位置(笑)

ヤマボウシの枝陰にキジバト

あ、写真はかなりクォリティ低くて蒙御免。真ん中にシルエット的にいるんだけどね、母さん鳩が。

去年も思ったけど、キジバトの巣って、ほんとに簡素で小さいんですねえ。細々とした仕事、苦手なのかしらん。

去年は5月にかけた巣を途中放棄しちゃったんだけど、夏過ぎてかな、同じ巣にもう一度巣籠もりし、無事に雛を孵して育て上げた。
同じ親なのかなー。

2012年6月27日 (水)

目黒にて

昨夜から目黒のホテルに泊まり込んでるツル。
今日はとうとう株主総会だ。どうかうまくいきますように。

旧本社の前を通りかかると、工事中だった。勤め先だったところの跡地にタワーマンションが建つ。今年の12月に完成とか。やっぱ、ちょいとセンチメンタルになるなあ。

在りし日にはここに○イ○ニ○本社が・・・

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